ジェフ・フリーマンのRPGコラム"Ack!"



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オンラインでロールプレイする唯一正しい方法
The One True Way to Roleplay, Online:



著者:ジェフ・フリーマン(Jeff Freeman)
翻訳:馬場秀和



 ウルティマ・オンラインにハマってからというもの、僕はテキストベースのMUD(あるいはMUSH)といった、オンラインチャットRPGには手を出さなくなった。1年半やそこらの間、僕はウルティマ・オンラインの世界にどっぷり浸かっていたんだ。それからしばらくの間、バルダーズ・ゲート(Baldur's Gate)をやって、今ではエバークエスト(EverQuest)びたりの毎日。早く「Asheron's Call」や「Hero's Journey」、それに「Middle Earth」がリリースされないか、うずうずしながら待っている。そうそう、「Freelancer」の「一貫性のある背景世界を持った多人数参加版」も早くやってみたい。(たぶん、最初の半年くらいは「今のところそれほど多人数は参加できない版」になると思うけどさ)

 そういうわけで、僕には自由時間が足りないんだ。(訳注:著者ジェフ・フリーマン氏は、Ack!の連載を1年近くさぼっていた)

 多人数参加型オンラインゲームにおけるロールプレーヤーは、ロールプレイングに関して、とても奇妙な考えを持っている。彼らにそういう考えを吹き込んだのは、ロールプレイングゲームのプレーヤー達であり、さらにはオンラインチャットRPGのプレーヤー達だ。そして、そういう考えが、皆の楽しみを台無しにしている。

 ポイントはこうだ。「ロールプレイングゲームの魅力とは、ロールプレイできるということではない。空想上の世界で自分が素晴らしいパワーを持っているかのように振る舞えるということである」

 どう違うのか分からないって?

 では説明してあげよう。

 真のロールプレイングにおいては、各キャラクターが持っている人格は、そのキャラクターのものである。そのキャラクターを誰がプレイしているかは、実は大した問題ではない。だから、真のロールプレーヤー達は、本当にキャラクターを交換することが出来るし、交換された後も各キャラクター達は今までと全く同じように振る舞うことだろう。

 実際のロールプレイングとは、「僕はエルフのふりをしてるんだ」ということだ。例えば、不機嫌なプレーヤーがプレイするドワーフは、不機嫌なドワーフになる。次の週に、ハッピーなプレーヤーがそのキャラクターをプレイしたとすると、そのキャラクターはハッピーなドワーフになってしまうのだ。こういうのは、にせロールプレーヤー、にせゲーマーのやり方だ。君が、ハーベイ叔父さんを説得してRPGをプレイさせることに成功したとしよう。ハーベイ叔父さんは、きっと「エルフの魔法使いになったハーベイ叔父さん」になるのさ。

 誰もが、最初は「実際の」ロールプレイングというのをやりたがる。エバークエストやAsheron's Callやウルティマ・オンラインに参加する目的は、真のロールプレイングなんかじゃなくて、自分自身が、現実にはない能力を持って異世界に入りたいということなんだ。銀行家ジョーが異世界に入って、戦士ジョーになる。でも、人格はジョーのままなんだ。

 君はこう言うかも知れない。「いいじゃないか。それも立派なロールプレイングだ。ただ、ちょっとやり方が異なるだけだ。ちょうど演劇とキャラクタープレイは異なるけど両方とも演技だというのと同じことさ」

 問題は、何千何万といる「なりきりロールプレーヤー」達は、その意見に反対するだろうということだ。彼らは「プレーヤーとは会話したくない」という一念で、エバークエストの開発者に「ロールプレイング・スイッチ」を作るように要求し、それは受け入れられた。これによって、ロールプレイしている人と、そうでない人を区別できるようになったのだ。

 これがどんなに凄い機能か知りたい人は、/roleplayと入力してみよう。システムは「あなたは現在ロールプレイしています」と回答してくれることだろう。

 すげぇや。

 また、なりきりロールプレーヤー達は、悪人をプレイする。つまり、邪悪な所業に手を染めるのだ。彼らは相手が自分と同じなりきりロールプレーヤーであろうと、にせロールプレーヤーだろうと、同じように邪悪なことを仕掛ける。にせロールプレーヤーは、もしチャンスがあればの話だが、こう問いかける。「なんで、そんなひどいことをやるんだ」 答えはこうだ。「ロールプレイング!」

 うんうん。

 テーブルトークRPGでは、真のロールプレイが重要になる。なぜならGMは全てのNPCの役をやらねばならず、全てのNPCが「ハーベイ叔父さん」だとお話にならないからだ。たぶん、毎週集まってRPGをプレイしているグループがいれば、全員が一度はGMを担当することになるだろう。君もGMをやったことがあるかも知れない。戦士ジョーに飽きてきて、何か別のことをやりたくなったら、戦士「別人」をやりたくなるわけだ。

 これは結構なことだし、ごく自然なことでさえある。ところが、高校時代にRPGをプレイしていた人のうち、今でもRPGをプレイし続けている人が10人に1人くらいしかいない原因が、まさにこれなのだ。残りの9人は、自分が戦士になったふりをしたかったのであって、戦士「別人」のロールプレイには興味がなかったというわけだ。

 ここで面倒が生ずる。なりきりロールプレーヤー達は、「真の」ロールプレイと「実際の」ロールプレイは、単に方法が違うのではなく、前者こそが唯一正しいプレイであると見なすのだ。alt.games.everquest ニューズグループにおいて、ドリアコス氏は彼らを「ロールプレイング・ナチス」と呼び、それがどのようなものかを次のように説明している。

 ロールプレイング・ナチス。彼らはもともとウルティマ・オンラインをアジトにしていましたが、今やどこにでもいるのです。あの、キャラクターになりきる連中のことです。

 彼らとのプレイは不愉快です。なにしろ彼らは古語で会話しようとしますし、ジョークを飛ばすこともしません。ついでながら、古語でジョークを飛ばすことすらしないのです。彼らは決して/ooc(アウト・オブ・キャラクター、プレーヤー発言)コマンドを使いません。彼らにとって大切なのは、架空のキャラクターを維持することなのです。だから「/ooc 銀行はどっちだっけ?」みたいなプレーヤー発言は許されません。たとえ、あなたが挑発したとしても、彼らは「/ooc 僕はキャラクターとしてしか発言しないんだ。だからあっちへ行けよ」といった答えすらしないのです。

 彼らは相手によって態度を変えます。あなたが何年も彼らとロールプレイをやってきた仲間だとしましょう。あるとき、あなたがスパイス・ガールズに関するジョークを飛ばしてしまう。すると、彼らはもう二度とあなたと会話してくれなくなるというわけです。

 ところが、もしあなたが女の子なら、彼らはあなたが何を言おうと許してくれるばかりか、ちやほやもてはやしてくれるのです。もちろん、そういう扱いを受けるためには、あなたはときどき「あらら、ネコちゃんがコップをひっくり返しちゃった。あたしの胸のところ、びしょびしょ」とか言ってあげる必要がありますけど。Dewds に比べればマシとは言え、私は彼らを見かけるとイライラするのです。

 あるいは、次のような会話例を見てみよう。

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[登場人物]
  ロロリーリョルュンリンロリィン(ローリィ)−エルフのクレリック(初心者)
  ぼうけんやろう − 絶叫戦士
  店の人 − 店の人
  どろろろりんろころりん − ロールプレーヤー
  テュパカリプス = 謎の旅人

 ローリィ:さあ、やっと棍棒と呪文を手に入れたわ。行くわよ。
 ローリィは2歩前進した
 ローリィ:叫ぶ;誰か助けて、いったいここはどこなの!
 ローリィはコケうさぎに殺された
 データをロードしています
 ローリィ:うーんと、アイテムを買ってきた方がいいかし・・・
 ローリィはコケうさぎに殺された
 データをロードしています
 ローリィ:叫ぶ; 道に迷ったの! 誰か助けて!
 店の人:防具の店にようこそ
 ローリィ:H,A...と入力中
 ローリィは店の人を攻撃
 ローリィは死にました
 データをロードしています
 ローリィ:しまった。エンターキーを押さなきゃいけないんだったわ。
 どろろ:エンターキー? エンターキーとは何か。そなたは奇妙な言葉を話す。エンターキーとは。エンターキーとな。
 どろろからローリィにメッセージ:馬鹿やろう、プレーヤー発言するならその前にOOCを打てよ。君はロールプレイを台無しにしているんだぞ
 ローリィ:ごめんなさい、初心者なの
 どろろ:初心者? 初心者とは何か? 何と奇妙な言葉・・初心者・・初心者?
 ローリィは店の外に逃げ出した
 ぼうけんやろう:叫ぶ;“コケのよろい”だよ。1つで2プラットだよ!
 ローリィ:さあ、準備おっけーよ。たとえ腐ったゾンビハムスターが出てきたってターンアンデッド一発でクリスマスツリーにつける安物だけどかわいい小物にし
 ゾンビハムスターはローリィを攻撃
 攻撃の対象を選択して下さい
 攻撃の対象を選択して下さい
 攻撃の対象を選択して下さい
 攻撃の対象を選択して下さい
 攻撃の対象を選択して下さい
 ゾンビハムスターの攻撃
 ローリィは歯周病に感染した
 ローリィ:何よそれ、歯医者なんていないじゃない
 攻撃の対象を選択して下さい
 攻撃の対象を選択して下さい
 攻撃の対象を選択して下さい
 ぼうけんやろう:ねぇ、誰かもうスターウォーズみた? すげぇよあれ、ボバ・フェット最高!
 攻撃の対象を選択して下さい
 攻撃の対象が近すぎます
 攻撃の対象が近すぎます
 攻撃の対象が近すぎます
 攻撃の対象が近すぎます
 ゾンビハムスターはローリィを攻撃したが外れた
 攻撃の対象が近すぎます
 攻撃の対象が近すぎます
 ローリィ:えーと、呪文をかけるには射程距離内に入って・・・
 どろろ:射程距離、「射程距離」って何ぞや。何と不思議な言葉を使うのか
 どろろからローリィにメッセージ:君・の・せ・い・で・皆・が・大・迷・惑・だ・ぞ!!!
 ローリィ:あのー、だけど・・
 ゾンビハムスターはローリィの射程距離に入った
 ローリィ:これでもくらえ!
 ローリィは店の人を攻撃
 ローリィは死にました
 データをロードしています
 ローリィ:OOOOoooOOOOooo
 ティパカリプス:U SUK (訳注:ばーか)
 ローリィ:OOOOoooOOO?
 MarilyNMAnson:野郎、俺の金塊を盗みやがったな!
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 まあ、それはそれとして。

 ゲーム開発者は、大衆受けするゲームを作ろうとしているのだ。そして、大衆受けするゲームでは、ロールプレイは出来ない。普通の人は、ロールプレイしたいなんて、ちっとも思ってない。普通の人は、自分自身がスーパーヒーローになったふりをしたいのだ。(いや文字通りのスーパーヒーローとは限らないけどさ。魔法使いだって、伝説の戦士だって、バンパイヤだって、「会計士ボブ」とかに比べればみんなスーパーヒーローみたいなもんだろ)

 コンピュータRPGは大衆受けする。その理由は、要するにコンピュータRPGではロールプレイする必要がないからだ。それが「RPG」と呼ばれるのは、つまるところゲームの主人公が「能力値」や「スキル」を持っているからに過ぎない。コンピュータゲームには、「実際の」ロールプレイであれ、「真の」ロールプレイであれ、「その他の」ロールプレイであれ、とにかくどこにもロールプレイは含まれていないのだ。

 では多人数参加型オンラインRPGはどうだろう。ここにもロールプレイはない。特に、なりきりロールプレーヤー達がやっていることは、あれはロールプレイなんかじゃない。

 一方、人間同士が顔をつきあわせてプレイするテーブルトークRPGでは、ある発言がキャラクターのものか(新しい剣を買いたいんだ。町に行こうよ)、それとも「プレーヤー発言(アウト・オブ・キャラクター)」なのか(この戦闘が終わったらピザとろうぜ)真剣に考える人はいない。なぜなら、どちらであるかは馬鹿みたいに明白だからだ。

 しかし、ずっと昔に、オンラインチャットRPGをやっていた誰かなりきりロールプレーヤーが、プレーヤー発言には、アウト・オブ・キャラクターであることをはっきり表示すべきだとか考えたのだ。そのためにプレーヤー発言の前にはOOC:と表示することになった。これで、その発言がアウト・オブ・キャラクターであることが分かるという仕掛けだ。「OOC:電話がかかってきたので抜ける。すぐ戻るよ」とか。これがないと、誰かがそれをキャラクター発言だと勘違いするかも知れない。

 さらには「OOC:スターズがスタンレイ・カップに優勝したぜっ」とか発言することさえ出来る。もしOOC:がないと、キャラクターがこんな発言をしたことになってロールプレイが台無しになるというわけさ。

 もちろん、そう、どう見てもこれらの発言がプレーヤーのものであることは馬鹿みたいに明白だ。でもそうじゃない場合もある。僕は誰かが「OOC:走れ!!」と発言したのを見たことがある。今日に至るまで、なぜこれがOOC:なのか分からないのだ。

 さて、オンラインPRGをやっているなりきりロールプレーヤーにとって、「プレーヤー発言でロールプレイを台無しにするな」というのは鉄則となっている。

 もちろん、テーブルトークRPGでは、いつだってプレーヤー発言が飛び交う。僕らはモンティ・パイソンのネタで盛り上がり、『レッドドワーフ』や『プリンセス・ブライド』のセリフを口走る。そんなのは当たり前で、誰も問題だとは思わない。ところが、オンラインRPGだと、プレーヤー発言とキャラクター発言を区別するのは非常に重要だということになる。もし、君が自分の「アーマークラス」の値について発言してしまい、その場になりきりロールプレーヤーがいたら、君はロールプレイを台無しにし、ゲーム世界を破壊した罪を糾弾されることだろう。発言の前に、OOC:と付けない限り。

 これだけではまだ不十分とでも言うのか、なりきりロールプレーヤーは、プレーヤー知識とキャラクター知識に違いがあることを、さらには違いがありうるということさえ、完璧に無視しようとする。

 エバークエストでは、/WHOコマンドを打つことで、他人のキャラクターの種族、クラス、現在地などを知ることが出来るのだが、ロールプレイモードに入っているプレーヤーについては、他人からの/WHOコマンドが効かないようになっている。

 なぜか。それはつまり、キャラクターは、キャラクターの属性についての情報を知らないはずだからだ。

 でも、待ってくれ。最初に/WHOコマンドを打つのは誰だっけ? キャラクターか、それともプレーヤーか?

 そういうこと。

 一緒に冒険する仲間を見つけるためには、/WHOコマンドで得られるような情報が必要になるのだ。相手がロールプレイしているか否かに関わらず。でも、キャラクターが知るはずのない情報を隠すためにプレーヤーにその情報を表示しないようにする機能があるために、結果的にプレーヤーは「君のクラスとレベルは何?」とか会話するはめになる。

 馬鹿げた話だ。

 ところで、オンラインRPGの背景世界は底が浅くて漫画的なので、そもそもなんでそんなもののために「ロールプレイを台無しにしてはいけない」「背景世界のリアリティを破壊してはいけない」とか言われなきゃいけないのだろう。

 底が浅い? もちろん。エバークエストだってそうだ。この世界に老人や子供はいない。全世界の食料供給を1つの農場が支えている。むろん農場では何の作物も育っていない。ある町に行くと、必ずある女性が「山に住んでいる妹に手紙を届けて下さい」と言い出す。もう何千人もの冒険者が手紙を届けたはずだ。それでも、まだ彼女は出会う冒険者に手紙を届けてくれるよう頼み続けている。もし君がその手紙を届けなくても、届けても、2回届けても、別人に届けても、何も変わらない。

 また別の場所では、逃げ出した猫男を見つけて殺し、その証拠として猫男が盗んだキーを持ち帰ってほしいと言われる。僕はその猫男を50回は殺した。でも、猫男は今でもキーを盗んで逃げ続けている。

 町に近づくと、あたり一面に初心者の死体が散らばっているのですぐに分かる。彼らはレベルアップしてもっと強い動物と戦えるようになるために、町の近くでネズミやヘビと戦って経験値稼ぎをしていたのだ。

 こういうことは、ひどく馬鹿げている。それなのに、もし君が「よーし、レベル10になったぞ」とか言うと、誰かがすぐに「OOC コマンドを使え! 君は背景世界のリアリティを破壊しているんだぞ!」とか糾弾してくるのだ。

 誰かが「君はロールプレイしてる?」と尋ねたら、僕はこう言った方がいいような気がする。「それは、君がロールプレイをどう定義するかに依存するね」

 実は、僕は「君はロールプレイしてない。ロールプレイが嫌なら“クエイク”でもやってろよ。これは“ロールプレイング”ゲームなんだから」とか言われるんだ。

 僕に言わせれば、いや議論にはうんざりだ、今度からこう言ってやろう。「そりゃロールプレイなんてしてないさ。だって、これはコンピュータRPGなんだぜ、コンピュータRPGじゃロールプレイなんて関係ないからね」「ところで、僕の(ゲーム世界の)妻に会ってくれないか」


この記事は米国RPGnetの許可に基づき翻訳されたものです。日本語訳については当サイト管理者ben*at*land.linkclub.or.jpまたは翻訳者まで。記事の内容については本人へ英語で連絡してください。

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