ジェフ・フリーマンのRPGコラム"Ack!"



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いったい僕たちは何を考えていたんだろう?
What Were We Thinking?



著者:ジェフ・フリーマン(Jeff Freeman)
翻訳:馬場秀和



 僕たちがゲームを、中でも『ダンジョンズ&ドラゴンズ』をプレイするのにどのくらいの時間を浪費してきたか信じられるかい?

 確かにあれは面白かった。洞窟を這いずり回って、モンスターを殺して、金貨を手に入れる。それから山羊を生贄に儀式をやって、焚き火を囲んで全裸で踊り狂い、聖書を逆さに唱え、悪魔を讃えるのだ!

 だって『D&D』ってそういうゲームだし。

 挙げ句の果てに僕たちは大量殺人に走る。ペットを殺し、両親を殺し、友人たちを殺して、最後には自殺するんだ。

 まあ、その手の事件が起こるのを個人的に目撃したことはないんだけどさ、でも本当のことに違いないんだ。だって、ニューズウィーク誌に書いてあったんだもんね。それにGeraldoもレポートしてたし、20/20はともかくとして、地方紙やChristianity Todayのいくつかの号にも載ってたんだ。

 今にして思えば、何という時間の無駄だったことか。あんな無意味なゲームなんて、僕たちが本当にやるべきだったことに比べれば、間違いなくずっと退屈だ。

 本当にやるべきことって何かって。そりゃ、えーと例えば『ヴァンパイア』とか。『マジック・ザ・ギャザリング』でもいいや。こういうゲームをやっている今どきのゲーマーは、僕たちの頃より楽しんでいるんだ。彼らがやっていることは、僕たちが昔やってた「処女を生贄に捧げる儀式」なんてのよりはずっと面白い。この僕が言うんだから間違いない。

 というのも、つまり「処女を生贄に捧げる」という儀式は、その定義からして、処女に手をつけちゃ駄目、お触り厳禁だよ、ということだからだ。

 僕がぐちぐち言ってるのは「隣の芝生は青い」式の偏見じゃない。今どきのゲーマーが僕らの頃よりぐっと楽しんでいることは事実なんだ。新聞にだって載ってる。タブロイド紙じゃないよ、「ちゃんとした」新聞にだ。だから本当のことに違いない。

 奴らはセックスしてるんだ。

 ううむ。信じられるかい? 僕たちが若い頃は、邪神を前に聖書を逆さまに詠唱していたというのに、今どきのゲーマーはセックスカルトに溺れているというのだ。

 まあ、後から考えれば、僕たちに選択の余地などなかったかも知れない。女の子は僕たちなど眼中になかったし、『D&D』をプレイするなんてあり得なかった。僕たちとのセックスなんて論外だった。

 あのころ、君は「10代の妊娠」対抗セービングスロー(成否判定)に成功したかい? 僕は成功した。いや、ちゃんと避妊したというわけじゃなくてさ、婚前セックス自体を避けることに成功したという意味だよ。これは僕がいかに賢明だったかということだな。

 ゲームショップにいって店内を見回してみよう。

 『ワールド・オブ・ダークネス』のサプリメント数百万冊ほどの山を堀り漁ってる今どきのゲーマーのグループがいて、そのうち何人かは女性なのだ。たぶん女性だと思う。実は僕にはよく分からないんだけど。ともかくみんな凄い服を着ていることは確か。つまり僕が言いたいのは、今どきのゲーマーはファッションにも気を使っているということだ。それに比べると、僕ときたら、会社の制服を脱いだときに何を着たらいいやら見当もつかない。それなのに、今どきのゲーマーは、新聞の記事によると、『ヴァンパイア』だか『マジック』だかとにかく何かをプレイし、ピザを食べ、セックスするのだ。順番はこの通りではないかも知れないけど。

 ゲームショップの店中には、『AD&D』な連中もいる。彼らはさっきのグループと比べると、もっと若いか、ずっと歳をくっていて、比較的ファッション意識に乏しい、っていうか(それを言うなら)そもそも自意識に乏しい。そもそも縞柄のズボンなんてものを「考えついた」のが誰かは知らないけどさ、そいつだってまさか縞ズボンに格子模様のシャツを合わせるなんてダサい格好はしなかったはずだ。それはともかく、彼らが手にしている『AD&D』の最新サプリメントを使えば、自分のハーフ・ダークエルフの戦士魔法使いのキャラクターを、レベル963にまで成長させて、天界の神々を全て蹴散らして、「唯一の真なる神」にすることができるのだろう。その先にどんなキャンペーンをやればいいのか僕には分からないが、いずれそれをサポートするサプリメントが出版されるのは間違いないのだ。それから、彼らはピザを食べ、BGMにヘビメタをかける。

 はは、冗談さ、もちろん。ヘビメタなんて音楽が存在したことを覚えてる人がいるだろうか?

 ゲームショップ内には「伝統的ウォーゲーム」のコーナーもあるが、そこに分類されるということは「品切れ絶版」だということを意味する。箱が3つしか置かれてない小さな棚を「コーナー」と呼べるならの話だけど。ウォーゲーム業界に何が起きたにせよ、どうして誰もあの恐竜たちに「君たちの時代は終わったんだ」と言ってあげないんだ? 今さらウォーゲームを買おうという奴は、たぶんメンコも買うのだろう。

 今どきのウォーゲーマー達は、FASA社から出ている超複雑なゲームをプレイしている(訳注:『バトルテック』のことと思われる)。1040-HUHを使う? キャラクターシートというより税金申告書に記入するような作業をやることになるぞ。それでもいいというのなら、どこか他の店で購入して、RPGプレーヤーに近づかないでくれないものかな。

 困ったことに、以前はRPGを購入するためにコミック本が山ほど並んでいる階に行かなければならなかったものだけど、今やそれだけでなく、RPGが置いてある棚までたどり着くためにはアクションフィギュアの山までかき分けなければならなくなった。SF本、コミック、RPG、ウォーゲームが同じ階に置いてあるのは、まあ分かる。でも、一体全体、何でまた「アクションフィギュア」まで同じ階に置くんだ? 僕にどうしろというんだ?

 というわけで、僕は「ファイナル・ファンタジーVII」のアクションフィギュア完全セットを購入して、あと1つ特注を出しておいた。

 子供たちのために買ったんだってば。

 それから、プラスチック製の小さな人形を手にカウンターに並んで、『AD&D基本ルールCD-ROM版』を買おうかどうしようか迷いながら、僕はまた『ヴァンパイア』プレーヤー連中の方を振り返って、どうして僕はちっともセックス出来ないんだろうと思った。というのも、そこにいる女性の一人がキュートだったからだ。

 少なくとも僕は、あれは女性だったと思う。

 それにしても、RPGをプレイするのに、あんな類の(うまい言葉が見つからないんだけど)ゲーマーになる「必要がある」のだろうか。僕の馴染みのバーテンダーは、昔はゲーマーだった。いくつか僕の書いたAck!コラム(インターネットに不自由な人のために、紙にプリントしたもの)を奴に読ませてみたところ、奴はジョークを理解してくれただけでなく、他の友人にまでコラムを読ませてくれた。そいつらも昔はゲーマーだったのだ。

 しかし、中でも奴は特別にクールだ。なんたって、奴はバーテンで、キックボクサーで、近ごろ若者に大人気のロックバンドでリードギターを弾いてるんだ。すげえクールじゃないか。今よりもっとクールになるためには、宇宙飛行士かディスクジョッキーにでもならなきゃいけないだろう。

 でも奴は、悪魔崇拝の儀式にも、もちろん(僕の知る限り)セックスカルトにも用はない。

 ああ、確かにリードギタリストって職業自体が既に一種のセックスカルトだという気もするけどさ。

 ときどき、「昔々あるところで」RPGをやっていた連中が、もう一度あれをやってみようかしらと思いつくことがある。もし奴が一緒にRPGをプレイしようと言いだしたら、僕はどう返事すればよいだろう。そんなことをしたら、奴のイメージが台無しになってしまうかも知れない。奴がエルフになって駆けずり回り「マジックミサイルの呪文を唱えるよ」とか言っているところを想像してみな。Ack!

 だから、返事はこうならざるを得ないだろう。「そんなことより、どこかでセックスでもした方がいいぜ」

 僕は、ホワイトウルフ社とウィザーズ・オブ・ザ・コースト社にセックスカルト疑惑について尋ねてみた。ホワイトウルフ社からの返事は「ノーコメント」だった。でも、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社は、僕を啓発するべく、てきぱきとした返事を返してくれた。「ノーコメント」。

おーけー、「僕には」コメントがある。

誰もしゃべる相手がいない人、何でもいいから趣味を持ちたいと心から願っている人は、時間つぶしにRPGをプレイした方がいい。「僕たちゲーマー」が不道徳なことをやっているという馬鹿げた話をでっちあげるよりはマシだ。


この記事は米国RPGnetの許可に基づき翻訳されたものです。日本語訳については当サイト管理者ben*at*land.linkclub.or.jpまたは翻訳者まで。記事の内容については本人へ英語で連絡してください。

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