馬場秀和のRPGコラム 1999年12月号



『アジアン・ポップカルチャーな人々に学ぶ(後編)』



1999年12月8日
馬場秀和 (babahide*at*da2.so-net.ne.jp)
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 ニューズウィーク日本版の1999.11.17号に「アジアの若者は、キュートな日本
文化にぞっこん」などという記事が載っている。それによると、現在、日本語を
習うアジア人は約150万人で、5年前に比べて20%も増えているそうだ。

 なぜ日本語を学ぶ人が増えたのか。上の記事には「日本のホップカルチャーが
“キュート”だから」とか何とか適当なことが書いてある。しかし、もちろんそ
れだけでは日本語を学び始める動機としては抽象的にすぎるだろう。これは私の
想像だが、最近になって日本語を学び始めた人の動機として意外にポピュラーな
のは“日本のゲームの攻略本を読みたい”というものではなかろうか。

 他人から聞いた話では、香港や台湾には10代をターゲットに書かれた軽い娯楽
小説、日本でいう「ティーンズ小説」「ライトノベル」というものがないため、
読書好きの少年少女は“ティーンズ小説を読むために”日本語を勉強するという。
むろん、もっと多くの若者たちが、“日本のコミックを、リアルタイムで(翻訳
されるより早く)読みたい”と思って日本語を学んでいることは間違いない。

 前回にも触れたが、我が配偶者も“香港映画のセリフを聞き取りたいから”と
いう動機で広東語を勉強しているし、アジアン・ポップカルチャーな日本人の間
では“大陸ロックミュージックに憧れて”中国語の勉強を始める人は珍しくない。


**


 かくのごとく、ポップカルチャーは語学勉強のための強力な動機付けになる。

 普通に考えれば、外国語を学ぶのは多大な努力と根気を要する辛いことなので、
よほど切実な目標か、やむを得ない事情でもない限り、手を出す気にならないと
思える。ところが、外国のポップカルチャーにハマった人々は、辛いはずの語学
勉強に対して、自発的に(というより、むしろ嬉々として)取り組むのだ。なぜ
だろうか?

 それはおそらく、初心者でも取っつき易く、言葉が分からなくてもそれなりに
楽しめ、そして「言葉さえ分かればもっと楽しいだろうに」という一抹の悔しさ
を感じさせる、そういうポップカルチャーの特性によるものが大きいに違いない。

 悔しいだけでは、人はそれを避けてしまう。手軽で楽しいだけでも、「あー、
楽しかった」で終わってしまう。「ちょっと試してみたら、けっこー楽しかった。
でも××さえあればもっと楽しめただろうに。・・・何か悔しい」という気持ち、
これこそが、人をその先へと駆り立てる原動力になるのだろう。

 「手軽さ」「楽しさ」「(一抹の)悔しさ」という要素が絶妙な割合で混じり
合ったとき、人は強く動機付けられるもののようだ。ちょうど気化したガソリン
と酸素が適度に混じったようなもので、ちょっとした火花が散っただけで大爆発
して大きなエネルギーが放出される。

 コンピュータゲームにハマったときのことを思い出してみよう。最初のうちは
「手軽に楽しめる」から手を出したはずなのに、「楽しいけど、やっぱり悔しい。
あとちょっとなのに!」という気持ちに駆り立てられて、気がつくと全ユニット
のデータを一覧表にしたり、必殺技のコマンド入力を何度も何度も練習したり、
いわゆる経験点稼ぎに半日を費やしたり、ぜーんぜん「手軽」でも何でもない、
どっちかというと「苦行」に近い作業に燃えている自分を発見した。そんな経験
はないだろうか?

 そう。80%の楽しさと、20%の悔しさ。これが人をハメるポイントなのだ。


**


 本題に移ろう。

 前回は、RPGをよく知らない人に、RPGに対する興味を持たせ、初めての
セッションに誘うにはどうすればよいかを考えた。

 今回はその続きで、最初のセッションで初心者をRPGにハメる(すなわち、
RPGに手を出す強い動機付けを与える)にはどうすればよいか。これについて
考えてみることとしたい。

 ・・・といっても、結論は既にお分かりのことと思う。そう。80%の楽しさ
と20%の悔しさ。これだ。これを初心者に対して意識的に与えてほしいのだ。


**


 初心者相手だと、“とにかく楽しませなければ”という強迫観念にとらわれる
のか、過剰にサービスするゲームマスターを見かけることがある。ゲームバラン
スは甘甘、プレーヤーが何も工夫しなくても自動的に見せ場が与えられ、危ない
ときにも判定なしに成功し、目標は簡単に達成された上、思わぬ成果まで上がっ
ちゃったりして、最後はNPC達から感謝されてめでたしめでたし、という具合
だ。

 が、初心者をRPGにハメるという観点からすると、これはむしろ逆効果では
ないだろうか。これでは「あーあ、楽しかった」で終わってしまい、自発的にR
PGに手を出す(例えばルールブックを購入して、ルールを覚える)という気が
起こらないのではないか。私はそれが心配だ。

 「人をハメるには、楽しさ80%、悔しさ20%」というさきほどの考えから
すると、むしろ「目標はほぼ達成したが、惜しいところで完遂にはならなかった」
という結末に持っていって、少し悔しい思いが残るようにした方がよい。例えば
邪悪な陰謀は防いだけれど、黒幕を取り逃がしてしまったとか。

 いいところで判定に失敗して、せっかくの見せ場が台無し、というシチュエー
ションだって、1つくらいあった方がよいだろう。

 そして、セッション後の会話で、「あの魔法さえ使えていれば」とか「ルール
をもっとよく知ってさえいれば」とか「もっときちんと聞き込みして肝心な情報
を引き出していれば」とか、プレーヤー達と一緒に悔しがってあげるのだ。そう
すれば、彼らは「次回こそは・・・・」と考えることだろう。

 さあ、これで新しいRPGプレーヤーが誕生したわけだ。うまく動機付けてや
れば、彼らは自発的にルールブックを購入し、そして「次は、どんな風にプレイ
してやろうか」などと考えながら読んでくれるに違いない。

 初心者を相手にマスターリングするとき、ついつい「もてなす」「接客する」
という姿勢になりがちな人は、今度からは発想を変えて、「少し悔しがらせる」
「動機付ける(ハメる)」ということを念頭に置いてほしい。

 前回の最後に、初心者を相手にしたセッションでゲームマスターとして気をつ
けるべき最も重要なポイントは「悔しがらせること」ではないだろうか、と書い
たのは、そういう意味なのだ。


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 さて、初心者相手のマスターリングについて、他に色々と注意すべき点を見て
みよう。

 まず、全てのゲームマスターに強くお願いしておきたいのが「社会常識や礼節
を守る」ということだ。具体的に言う。遅刻、周囲の迷惑を省みない大声、セク
ハラ、器物破損(壁に足跡を付けることも含む)、ゴミの無分別な投棄、危険な
行為(30cm定規を振り回す等)・・・これらは厳に慎むこと。服装も可能な範囲
でなるべくきちんとしたものにして。そうそう、前夜は、ちゃんと風呂に入って
おくように。

 話し方や態度にも注意を払うべきだ。早口でしゃべりまくる、初心者には分か
らないジョークやギャグを連発する(そして、一人で笑う)、親しくもないのに
馴れ馴れしい口をきく(特に異性の相手に)、相手がRPGに詳しくないからと
いって偉そうな態度をとる。・・・これらは全て御法度だと思ってほしい。

 特にまずいと思うのは、最後のケースだ。「自分はRPGに詳しい」「自分は
色々なRPGをプレイした経験がある」ということで優越感に浸って、初心者を
見下した態度をとるゲームマスターの存在だ。本人にしてみれば「初心者に親切
に話している」つもりなのかも知れないが、端から見ると「相手を見下したしゃ
べり方をしている」としか思えないことが多い。

 なぜRPGに詳しいことが優越感の拠り所になるのかは分からないが、おそら
くあれは、ある種の劣等感の裏返しに違いない。いずれにせよ、こういう態度を
とれば、RPGプレーヤーに対して初心者が持つ印象が最悪になるのは、言うま
でもないだろう。

 ついでながら、その逆に、必要以上に卑下したり露悪的な態度をとるのも止め
た方がいい。RPGがいかに極悪非道なゲームであるかとか、RPGプレーヤー
という連中がいかに鬼畜〜〜で邪悪な連中であるか、などといった話題を初心者
相手におもしろおかしくしゃべるゲームマスターを見かけることがあるが、あれ
では初心者を遠ざけてしまうだけだ。(話の内容そのものは事実だとしてもだ)

 もちろん、どんな場合でも社会常識や礼節は守るべきだが、初心者がいる場で
はいつもより気を引き締めて礼儀正しく振る舞ってほしい。たとえその初心者が
友人であったとしても、親しき仲にも礼儀ありである。他人行儀だと思われよう
が、RPGやRPGプレーヤーに関して拭い難い悪印象を与えるよりは、ましで
はないか。

 そうそう、言い忘れていたが、最初にきちんと挨拶するように。黙って、ぬっ、
と部屋に入ってきて席につき、無言で鞄をがさごそかき回してマスタースクリー
ンを引っ張り出す、なんていう態度はよろしくない。


**


 さて、礼儀正しく挨拶してテーブルについたあなたが、次にやらなければなら
ないことは、おそらく「で、これから具体的に何をするの?」という皆の疑問に
答えることだろう。参加者を集める段階で説明しなければならないケースの方が
多いかとも思われるが、いずれにせよあなたには「RPGって何?」ということ
を、予備知識のない相手に分かりやすく解説するという試練のときがやってくる。

 余談だが、RPGについて質問されたとき、説明を面倒くさがって「まあ一度
やってみれば分かりますよ」で済まそうとする人がいるが、あれは非常にまずい
と思う。ただでさえRPGは世間から「何だかうさん臭い遊び」と思われている
のだ。興味を持った人が説明を求めても、「やってみれば分かる」としか答えて
もらえないようでは、うさん臭さがますます強まるだけではないか。カルト宗教
みたいだ、と思われても仕方ない。

 だから、我々はRPGについて、全く予備知識のない初心者にもきちんと説明
できるようにしておくべきなのだ。

 そういうわけで、初心者にRPGを説明する方法について考えてみた。参考に
してほしい。


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 まず、とにかく次のことをよく理解してもらうようにしよう。


    ・RPGとは、架空の世界を舞台に、与えられた状況や制限や障害の下
     で、登場人物を自由に動かして、目標達成を目指すゲームです。
     状況/制限/障害/目標といったものは、原則としてゲームマスター
     (と呼ばれる特別な参加者)が決めます。これに対して、背景となる
     世界の設定、ゲームを進めるために必要となるルールは、大抵ルール
     ブックに書かれています。ただし、必要ならこれらについてもゲーム
     マスターが補うことがあります。

    ・RPGでは、目標を達成したかどうかより、達成を目指す過程でキャ
     ラクターをどれだけ「うまく」動かしたか、の方が重視されます。
     (何が「うまい」プレイなのか、ということについては、後で詳しく
     説明します)

    ・プレーヤー(ゲームマスター以外の参加者)達が担当する登場人物を
     「プレーヤーキャラクター」と呼びます。その他の登場人物は「ノン
     プレーヤーキャラクター」と呼ばれ、全てゲームマスターが担当する
     のです。

    ・ゲームマスターは、状況/制限/障害/目標を決め、ノンプレーヤー
     キャラクターを担当するだけでなく、ゲーム中に様々な出来事を起こ
     し、登場人物の言動の結果として事態がどのように進展したかを決め
     ます。また、必要に応じて様々なこと(例えばある行動は成功したか
     失敗したか、など)を「判定」するのもゲームマスターの役目です。

    ・簡単にまとめてしまうと、プレーヤーは自分の「プレーヤーキャラク
     ター」をいかに「うまく」動かすかというゲームに挑戦し、ゲームマ
     スターはそのゲームを良いものにするために、必要なあらゆる作業を
     行なう。それがRPGです。


 ここまでのところをゆっくり説明し、質問があれば親切丁寧に答えてあげる。
おそらく、何の予備知識もない人でもここまでは比較的容易に理解できるはずだ。


**


 次に、どうしても次のことを理解してもらわなければならない。


    ・RPGにおける「うまい」プレイとは、次の4つの条件を満たすよう
     にプレーヤーキャラクターの言動を決めることです。

     A. ゲームマスターから与えられた「目標」の達成に近づく。

     B. 自分のプレーヤーキャラクターに期待されている役割(戦闘とか
       治療とか情報収集とか威嚇とか権力行使とかユーモアとか・・・)
       をきちんと果たす。

     C. プレーヤーキャラクターの言動が、背景世界設定、およびキャラ
       クターの属性(年齢、性別、職業、特徴、性格、生い立ち、各種
       の能力、その他その他の設定情報の集合)と整合している。
       プレーヤーキャラクターの言動は、背景世界やキャラクター属性
       と矛盾しないだけでなく、それらを活かしたものにすることが、
       より望ましい。

     D. ゲームのジャンルや狙いを再現すること。例えば「ホラーRPG」
       であれば恐怖感を、「冒険活劇RPG」であれば痛快な冒険を、
       プレーヤーが疑似的に体験する(再現する)ことが望ましい。

    ・実のところ、常に「4つの条件を全て満たす」ようにプレーヤーキャ
     ラクターの言動を決めることは困難で、不可能であることさえ珍しく
     ありません。ですが、それでも常に4つの条件を念頭に置きながら、
     キャラクターの言動をどうするべきか考えて、決めることが大切なの
     です。なぜなら、それがRPGというゲームの本質だからです。

    ・ちなみに、4つの条件のうち特にB.とC.のことを「ロールプレイ」と
     呼びます。もともとは、B.のことを役割(ロール)遂行(プレイ)と
     いう意味でロールプレイと呼んでいたのですが、最近では、B.とC.を
     合わせたものがロールプレイだとされています。このように「ロール
     プレイ」を特徴とするゲームであることから、ロールプレイングゲー
     ム=RPGという名称が使われているわけです。

    ・一方、RPGにおける「へたな」プレイとは、4つの条件のうち一部
     だけに執着し、プレーヤーキャラクターにバランスを欠いた言動をさ
     せることです。例えば、A.やB.にばかり固執すると、プレーヤーキャ
     ラクターは単なる「コマ」になってしまい、RPGらしさが失われて
     つまらないゲームになってしまうことでしょう。逆にC.やD.しか念頭
     にないと、登場人物たちが好き勝手に振る舞っているだけで、ゲーム
     として成立しなくなる恐れがあります。

    ・RPGというゲームの本質は「常に4つの条件を念頭に置きながら、
     キャラクターの言動を考えて、決める」というところにあるのです。
     ですから、常に一部の条件にだけ偏っているプレイは、「へたな」プ
     レイというよりも、そもそも「RPGをプレイしているとは言えない」
     ことになってしまいます。


 上に書いたことはとても大切なことなので、必要なら何度でも説明してあげて
ほしい。これをきちんと理解した人は、後から問題プレーヤー化する恐れがぐん
と少なくなると思う。


**


 続いて、ゲーム進行について説明しよう。

 例えば、キャラクターシートという紙に様々なキャラクター属性を書き込み、
それが変化すれば消しゴムで消して修正すること。ゲーム中に何か「判定」する
場合、ダイスを振って決めること。ゲームマスターとプレーヤーが、どのように
会話を進めてゆくか。(まずゲームマスターが状況を説明し、次にプレーヤーが
それぞれ自分のキャラクタープレーヤーの言動を決め、それに対してゲームマス
ターが状況の変化やノンプレーヤーキャラクターの言動を説明し・・・)

 ただし、「判定」のところで、次のことを補足する必要があるだろう。


    ・他のゲームにおいては、「ゲーム」と「ルール」は一体となっていま
     す。つまり、ゲームをプレイすること=ルールを守ること、と言って
     よいでしょう。しかし、RPGはこの点で非常に特殊で、「ゲーム」
     と「ルール」は、必ずしも一体ではありません。ゲームをプレイする
     ことは、すなわちルールを守ることとは限らないのです。

    ・分かりやすくするため、RPGでは「ゲーム性」「ゲームマスター」
     「ルール」がこの順番で優先されると思って下さい。つまり「ゲーム
     性」を高めるためならば、「ゲームマスター」は、あえて「ルール」
     を破ったり、変更したり、無視したりすることが許されるのです。
     ただし、これは「ゲームマスター」だけの特権であり、その目的は、
     「より良いゲームにするため」に限られます。プレーヤーが勝手に
     ルールを破ることは許されませんし、ゲームマスターだからといって
     理由もなくルールを無視してよいということにはなりません。

    ・このように「ルール」を不当に軽んじるのはいけませんが、必要以上
     に固執するのも止めるべきです。「ルール」は、「ゲームマスター」
     が「ゲーム性」を高めるために使う道具です。ゲームマスターが何か
     を決めたら、それがゲーム性を損なうことがない限り、たとえルール
     と違っていても受け入れるべきだと思って下さい。


 もう一つ。「会話」のところで説明しなければならないことがある。


    ・RPGにおいては、プレーヤーキャラクターの言動をゲームマスター
     に申告するときに、実際にキャラクターのセリフを口にしたり、身振
     り手振りを活用するなど、キャラクターの「演技」あるいは「表現」
     を行うことがあります。これを、前述した「ロールプレイ」と区別し
     て「キャラクタープレイ」と呼ぶことがあります。

    ・「キャラクタープレイ」には次の3つの利点があります。うまく活用
     するとRPGをより楽しむことが出来るでしょう。

     1. キャラクターの言動を、説明するよりも正確に生き生きとゲーム
       マスターに伝えることが出来る。

     2. キャラクターに対する感情移入(思い入れ)が強まり、またキャ
       ラクターの存在感(あるいはリアリティ)が高まる。

     3. 場を盛り上げたり、他の参加者を楽しませたりすることが出来る

    ・ただし「キャラクタープレイ」に熱中するあまり、RPGというゲー
     ムの本質(前述したように、4つの条件を常に念頭に置きながら、キ
     ャラクターの言動をどうするか考え、決めることです)を見失うこと
     のないように注意して下さい。「キャラクタープレイ」は、あくまで
     RPGというゲームをより楽しくプレイするための工夫です。そのた
     めにゲーム性を損なうことがあってはなりません。またRPGプレー
     ヤーのなかにはキャラクタープレイを嫌う人もいますし、近くにRP
     Gを知らない人がいるときにはうさん臭い目で見られることもありま
     すから、キャラクタープレイをするときには周囲をよく見て、他人に
     不快感を与えないように注意しましょう。


 ここまで説明すれば、RPGに関する一般的な説明と留意事項は伝えたことに
なるだろう。後は実際にプレイするRPGのルール(キャラクター作成、ダイス
ロール、その他)とシナリオについての説明に入るだけだ。


**


 最後に、シナリオについて述べておこう。

 初心者を相手にするときには、シナリオは短く、単純な構造にした方がよい。

 RPGに不慣れなプレーヤーの場合、セッションは長くても4時間が限度だろ
う。それ以上に長いとプレーヤーの集中力が途切れてしまう。できれば、3時間
以内におさめたいところだ。

 また、複雑怪奇で、事態が二転三転するようなシナリオを用意しても、初心者
はついてゆけない。いったい、何をすればよいのか分からず、途方に暮れるのが
オチだ。目標や障害が明確で、そのRPGのジャンルにおける典型的な話にして
おいた方がよい。そうすれば、RPGに慣れてない初心者でもあまり迷わないで
済む。ひねくれたゲームマスターが、「少し単純(直球)すぎるかな」と思うく
らいのシナリオで、ちょうど良いのだ。


**


 前後編に分けて「RPGを始める人を増やすにはどうするか」というテーマに
ついて書いてみた。まだまだ書くべきこと、考えるべきことが残っていると思う
が、とりあえず、ここまでにしておこう。

 前回書いた通り、アジアン・ポップカルチャーな人々は、一人一人が勧誘する
ことで仲間を増やし、何年もかけて大きな市場を育て上げてきた。我々RPGプ
レーヤーは、そこから学べることがあるはずだ。

 このコラムを読んだ人は、これからはRPGを楽しむだけでなく、RPGをプ
レイする仲間を増やすことを積極的に試みてほしい。多くの雑誌にRPG記事が
載り、本屋にはRPGコーナーが常設されていた良き時代と違って、今や私たち
一人一人が意識的に勧誘しない限り、RPGプレーヤーは増えないのだから。


[補足]

    今回のコラムの発表後、ここに書いた内容をベースにまとめた“初心者
    に対するRPGの説明”を、次のウェブページに置きました。

      『初心者のためのRPG入門』
        http://www004.upp.so-net.ne.jp/babahide/whatsrpg.html

    このページは自由にリンクして構いません。連絡は不要です。あなたが
    RPG関連のウェブページを開設したとして、RPGに関する分かりや
    すい説明や、初心者に対するプレイ指針といったものを自分で書くのが
    面倒であれば、ここにリンクを張るとよいでしょう。



馬場秀和
since 1962


馬場秀和が管理するRPG専門ウェブページ『馬場秀和ライブラリ』


 この記事はScoops RPGを支える有志の手によって書かれたもので、あらゆる著作権は著者に属します。転載などの連絡は著者宛てにしてください。

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