Scoops RPG 読者の声



『Scoops RPG 読者の声』2002年6月


馬場秀和



 どうしてScoops RPGには「読者の声」コーナーがないのだろう?

 掲示板ではない。「読者の声」欄だ。雑誌によくある、掲載された記事に対する読者からの「感想」「反応」「指摘」「評論」「批判」などなど各種のお便りを載せる、例のコーナーだ。

 どう考えても、Scoops RPGにそういうコーナーがあっていけないという理由はなさそうなので、おそらく“今までそういう投稿がなかったから”コーナー新設の必要性がなかった、といったあたりが真相ではないだろうか。

 では、なぜそういう投稿がなかったのか。よく考えてみよう。それは、“そういう投稿を受け付けるコーナーがなかったため”ではないのか。そうに違いない。

 お分かりの通り、ここには深刻なデッドロックが生じている。コーナーがないために投稿がなく、投稿がないためコーナーが設けられない。誰も気づいていないかも知れないが、これこそScoops RPGが抱えている最も大きな矛盾といっても過言ではない。

 誰かが、この現状を打破しなければならない。

 そうでない限り、Scoops RPG読者の声はどこにも届かないのだ。考えてもみてほしい。読者の声を無視するメディアに、いったいどんな展望があるというのか。

 そう、Scoops RPGの健全な発展を見据え、最初の「読者の声」の投稿を送る、今がそのときだ!

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 と、まあ、どんなにつまらないネタからでも「問題提起コラム」を書くことは簡単に出来るのだ、という例である。

 ともあれ、これだけ挑発しておけば、管理人のベンさんもScoops RPGに「読者の声」欄を新設せざるを得ないに違いない。(まさかこの投稿を平然と「その他」カテゴリに登録する度胸はあるまい、などと重ねておく)

 で、その「読者の声」コーナーであるが、まあ、何でもいいからScoops RPGに登録された記事について、感想なり何なり自由に書いて投稿するコーナーということになるだろう。掲示板への書き込みと違うのは、「作品」として登録・保存されるので、それなりの完成度が求められる、ということだろうか。

 どの記事について書いてもよいのだが、投稿時点でなるべく最近に登録されたものを選ぶのが吉であろう。今さら"Ack!"について感想を書くというのも何だかなあである。

 さあ、Scoops RPGの新コーナー「読者の声」に、あなたも投稿しよう!

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 あー、やれやれ、済んだ済んだ。

 後は「こんなのでよいのなら、僕にも書けるぞ/私にも書けるわ、と思わせるいい加減な、いや良い加減な文章を書くだけだ。試しに書いてみよう。

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 というわけで、記念すべき最初の「Scoops RPG 読者の声」は、この記事について深く掘り下げてみる。その記事とは、

『業界トップサイトが明かす秘密:セックスで稼げ!』
    http://www.scoopsrpg.com/contents/soap/soap04sep01.html


 ・・・いや、やっぱり別のやつにしようと思いました、今。

『予言、予知、予兆 - 未来を知る能力を持つキャラクタの使い方』
    http://www.scoopsrpg.com/contents/nifties/nifties20jun01.html


という記事について書きます。

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 この『未来を知る能力』コラムは、Dan Pondという著者が連載している"Bag o' Nifties:Tricks for GMs" というシリーズの1つである。最初に、私はこのシリーズをとても気に入っている、ということを告白しておくべきだろう。何と言っても、このシリーズ、非常に実用的なのが良い。もっともらしいだけで使えないRPGコラムが多い中で(私も人のことは言えませんが)、この実用性の高さというのは、注目に値すると思う。この路線を守ってどんどん続けていってほしいものである。

 さて、『未来を知る能力』は、その手の能力をゲーム上どのように処理すればよいのだろうか、というテーマで書かれたコラムだ。作者はこの問いに対して、次の3つの解決案を提示している。

 それぞれの解決案についての説明をここで繰り返すつもりはない(中学生の読書感想文じゃあるまいし)。未読の方は、ここでDan Pond氏のコラムをよく読んでから先に進んでほしい。

 さて、これらの解決案はどれも実用的な良いアイデアなのだが、読者としては「あまり体系的じゃないなあ」という不満を覚える。何だか、単に、思いついた解決案を3つ並べただけ、という感じを受けるのだ。

 そこで、Dan Pond氏に代わって『未来を知る能力』の処理方法を体系的に考えてみることにしよう。

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 まず、キャラクターの『未来を知る能力』というものを簡単に定義しておこう。

 キャラクターにとっての時間軸上のある時点をT0とする。T0より未来に位置する別の時点をT1とする。ここで、T0の時点において、T1の時点における状況について「通常の方法では得ることの出来ないような有用な情報」を獲得する能力を、『未来を知る能力』と呼ぶことにする。

 さて、この能力に関するゲーム上の処理をどの時点で行うか、という観点で、以下の3つのケースが考えられるだろう。

 まずケース1から考えてみよう。ケース1は、T0すなわちキャラクターが予言や予知を行うときに、それに対応するゲーム上の処理を行うというもので、まずまず最も自然なやり方だ。

 この場合、問題になってくるのは「キャラクターにとってT1が未来であるのと同様に、ゲームマスターとプレーヤーにとってもT1は未来であり、実際に予言・予知することは出来ない」という、まさにその点である。

 Dan Pond氏の解決案のうち、「予言」と「予兆」がケース1に分類される。氏の解決方法は単純かつ巧妙である。要するに問題をすり替えているのだ。「予言」は、実際には予言を「パーソナルゴール」にすり替えるという方法だし、「予兆」は未来に関する情報を「ゲームマスターからのヒント」という形にすり替えているわけだ。

 ゲームマスターへの教訓

「解決困難な問題にぶつかったときは、問題をすり替えよ」

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 ケース2は、何か特定の出来事や状況が発生してから、過去においてそのことを予言・予知できていたか、という形でゲーム上の処理を行う方法だ。このケースでは予言・予知の対象が明確になっているので、ケース1のような問題は生じない。

 ただし、ケース2には別の問題がある。何しろ過去において予言・予知が成功していたことになれば、キャラクターはT1の事態を変えようと努力したはずだ、ということになる。つまり未来T1の情報を過去T0に送ることで、T0からT1に至る歴史が改変される恐れがあるわけだ。これはタイムパラドックスというやつだ。

 例えば、T1の時点でキャラクター達が敵の不意打ちを食らったとしよう。この時点で、「未来を知る能力」を持ったキャラクターが、そのことをT0時点で予知していたことにしたい、と主張する。もしゲームマスターがその主張を受け入れ、プレーヤーが判定に成功すれば、キャラクター達は不意打ちを避けようとしたはずだ。結果として、T0からT1に至る歴史を大きく改変しなければならない。

 タイムパラドックスの処理法によって、ケース2はさらに2つに細分できる。

 Dan Pond氏の解決案のうち、「予知」がケース2aに分類される。すなわち、予言・予知が成功した場合は、T0からT1までの出来事は「なかったこと」にして、T0の時点からゲームをやり直すわけだ。

 明らかに、この方法だと、T0とT1の間の間隔(プレーヤーにとっての時間)を長くすることは出来ない。例えば、セッション3時間分を「なかったこと」にしてやり直す、と言われれば、どんなプレーヤーだってうんざりするだろう。

 従って、ケース2a(Dan Pond氏の「予知」)におけるT0とT1の時間間隔は、一瞬(とっさに地面に伏せるだけの時間)であるか、せいぜい1戦闘ラウンドがいいところだろう。そのくらいなら「なかったこと」にしても大きな問題はない。

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 T0とT1の間隔が、一瞬からせいぜい数秒しかとれないとすれば、「未来を知る能力」の有用性は著しく損なわれる。そこで、ケース2bが重要になってくる。

 なぜDan Pond氏がこのケース2bについて何も書いてないのか不思議だ。まずまっさきに思いつく方法だと思えるのだが。

 ケース2bの処理は、「こんなこともあろうかと」方式といってよいだろう(あるいは「ご都合主義の神髄」という名称の方がよいか)。

 例えば、例によってT1の時点でキャラクター達が敵の不意打ちを食らったとしよう。またもや「未来を知る能力」を持ったキャラクターが、そのことをT0時点で予知していたことにしたい、と主張する。ゲームマスターがその主張を受け入れ、プレーヤーが判定に成功しても、キャラクター達は不意打ちを避けることは許されない。というよりも、それまでのストーリー、キャラクターの言動、全ての「明に語られた」歴史を維持しなければならない。

 ただし、この制限を守る限り、裏で密かに対策を打っていたということに出来るわけだ。「こんなこともあろうかと思って、昨夜のうちにあらかじめ罠を張っておいたのですよ」というセリフと共に、不意打ちをかけてきた敵の足元に巨大な落とし穴が!

 この方式の問題は、お分かりの通り、あまりにも「未来を知る能力」が強力になり過ぎる、という点である。どんな窮地に陥ろうが、たとえデスラー砲の直撃を食らおうが、「ふっ、全ては私が予知した通り」「こんなこともあろうかと」の一言で逆転してしまうのである(ご都合主義というのはそういうものだが)。

 従って、このケース2bを採用する場合、ゲームマスターはゲームバランスに気をつけて、あまりにも非現実的な「裏で行われた密かな対策」は許可しないか、厳しい判定を行わせるべきだろう。「昨夜のうちに、密かに一人でそんな巨大な落とし穴を掘ったって? ふーむ。ではまず落とし穴を掘れたか体力で判定し、次に他人に見つからなかったか隠密行動スキルで判定し、夜中に一人で行動していて野獣やモンスターに会わなかったことを遭遇判定する。どれか一つでもまずい結果になれば、何の対策も打てなかったことにする。それでいいかね? それとも、もっと現実的な対策に切り換えるかね?」といった具合だ。

 ゲームマスターへの教訓

「プレーヤーの自分勝手な提案を却下するな。取り下げさせよ」

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 さあ、以上の「読者の声」を50字以内(句読点含む)に要約せよ。[15点]

回答例

 このコラムは実用性が高いところが気に入っている。体系的な書き方をすれば、より優れたものになるだろう。

 何じゃそりゃあ散々理屈っぽいことをぐだぐだ書いてきてそれが要約かいそもそもケース3はどないなったんじゃそうだそうだケース3について書いてないぞ体系的とかいうのははったりかい、と言われるかも知れないが、これでいいのである。「読者の声」とは、そういうものなのだ。

 ゲームマスターへの教訓

「話の流れが破綻したときは、そういうシナリオなのだと開き直れ」


馬場秀和


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