RPGnetゲームレビュー



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『ブループラネット第2版 プレーヤーズ・ガイドおよびモデレーターズ・ガイド(Blue Planet V2.0 [Player's Guide and Moderator's Guide])』

著者:ジェフリー・バーバー(Jeffery Barber)
カテゴリ:ゲーム
出版元:ファンタジー・フライト・ゲームズ社(Fantasy Flight Games)
シリーズ:『ブループラネット』
価格:50ドル
ページ数:279ページ
ジャンル:サイエンスフィクション、ホラー、遠未来、宇宙、スパイ、陰謀、西部劇
レビュー著者:エルトン・ロブ(Elton Robb)、2000年8月26日
レビュー翻訳:馬場秀和
レビュー翻訳者による『ブループラネット』紹介ページ
http://www004.upp.so-net.ne.jp/babahide/bpguide.html



[はじめに]

 よし、今日、俺は『ブループラネット』のレビューを書くことに決めたぜ。理由は2つある。まず、俺は『ブループラネット』の背景世界が好きだ。次、『D&D第3版 プレーヤーズ・ハンドブック』のレビューは、もう死ぬほど書かれている。今さら俺が書いても仕方ない。どちらのゲームも持っているけどね。ついでながら、『D&D第3版』に含まれる他の2冊についても、レビューを書く気はない。だって、どうせRPGnetに死ぬほど大量のレビューが載るだろうからね。

 このレビューは『ブループラネット』RPGに興味がある読者のために書かれている。背景世界、システム、特徴について俺の見解を述べるつもりだ。

 さてと、そもそも『ブループラネット』って何かというと・・・。それはゲームであって、しかも我らが愛するロールプレイング・ゲームなんだ。異世界を舞台に、現実の人生で直面するような状況に置かれたキャラクターをロールプレイできる。それから、そう、このゲームは*分別のある*プレーヤーのために作られているんだ。すごいだろう。

 どういうことかって?

 俺に聞かないでほしい。そもそも、RPGに興味を持つ人は、誰もが創造的で、知性あふれる方々ばかりのはずだ、公式には。パワーゲーマー(マンチキン)なんて奴らはRPG界には一人もいない。そうだね。じゃ、*分別のない*プレーヤーというのは一体どんな連中を指しているんだろう。ただただカッコいいロールプレイをやるためにRPGに手を出すような奴ら(俺とか)のことだろうか。それとも、RPGに現実逃避を求める連中のことだろうか。うううむ。ま、とにかくこのゲームでは、現実の人生で直面するような状況に置かれたキャラクターをロールプレイできるのだ。

[ゲームメカニズム]

 実は『ブループラネット』第1版のゲームシステムをプレイしてみたことはないんだけど、第2版の方が洗練されていることは間違いない。といっても、『パラディウム』とかさ、あと、言いたくないけど、『ロールマスター/スペースマスター』(俺は今でも好きだ)と比べれば、の話だけど。結論として、『ブループラネット』第2版のシナジー・ゲームシステムは、もっと複雑な他のシステムと比べれば、洗練されていて理解しやすい。うん。

 『ブループラネット』においては、殴ったり、蹴ったり、剣で切ったりするだけで、キャラクターはころりと死んでしまうことがある。第2版のシステムは、この方向のまま、かなり洗練されたものとなっている。負傷部位の処理は止めて、傷の深さだけで生死を決めるのだ。というわけで、「伝説とロマンスに満ちたヒーローの大活躍」なんて目指しちゃ駄目だよ。戦闘をいかにして避けるか、っていうのがこのゲームのポイントなんだから。

 スキル判定のルールは、『D&D第3版』とか、『ジェンド・オブ・ザ・ファイブリングズ』にちょっと似ている。判定に成功すれば、望んだ結果が得られる。

 キャラクター作成ルールは、他のゲームと比べてずっと細かい。キャラクターとその個性について、かなり詳しいところまで設定するんだ。様々なパッケージを選ぶことで、キャラクターの背景が決まる。「パッケージ」には、出身、教育、職業といったものがある。また、サンプルとして、いくつかアーキタイプが載っている。技術者(イルカ)、エコテロリスト(原住民)、さらにはギャングの親玉(優生人)なんてのまで様々なアーキタイプが提供されていて、本当にそのままプレイすることも出来るんだ。

 それから、キャラクターに生体改造を施すことが出来る。サイバーからバイオ、遺伝子セラピーに至るまで何でもありだ。

 そうそう、原種人、生体改造人、遺伝子改造人、知性化されたイルカ、オルカといった種族を選ぶことが出来る。プレイが難しくなるので、イルカだのオルカだのを選ぶことはお勧めしない。が、どうしてもやりたければ、それは君の自由だ。

[背景世界]

 『ブルーフラネット』の背景世界は、素晴らしく詳細に設定されている。第1版のサプリメントだった『アーキペラゴ(群島)』の情報は、第2版では『モデレーターズ・ハンドブック』に収録された。このハンドブックには、『ブループラネット』をプレイするために必要な設定情報はもちろんのこと、さらにもっともっと大量の設定情報が載っている。

 さて、もし君が環境保護運動ってのが大嫌いなら、きっとこのゲームは好きになれないだろう。未来世界において、人類はバイオテクノロジー、遺伝子操作の秘密を解き明かしていた。だが、不幸なことに、これらの技術は、人類が自然を征服し支配するためにではなく、予期せぬ大災害を引き起こすために使われてしまった。穀物を枯らすカビを駆除するために作られた怪物が自然環境に流出し、カビだけでなく、穀物自体を攻撃し始めたのだ。そして「ブライト」(立ち枯れ病)が生じた。

 人類絶滅の瀬戸際に立たされた各国政府は、国連の下部組織であるGEO(世界環境機構)に全権を委譲することになった。GEOは、地球環境再建のために創設された組織で、要するに環境保護主義者の巣窟ってわけだ。

 なんで各国政府がGEOに全権を渡すことに同意したのか、実のところ俺にはよく分からない。未来の連中は、環境保護のためなら文明を捨ててもいいと思うような奴らばっかりなのか。たぶん違うよな。

 ところで、ブライトが生ずるより前に、ワームホールの彼方に新世界が発見されていた。ヘビ座のラムダ恒星系の第2惑星、ポセイドンと名付けられたこの惑星の表面はほとんど海洋に覆われ、陸地といえば小さな島々と群島があるだけだった。地球からポセイドンに、遺伝子改造人(ジーニー)が植民者として送られた。そしてブライトが生ずると共に、地球と植民地の通信は途絶えてしまった。

 地球がブライトで滅びつつある間も、植民地は生き延び、人口を増加させていった。ただし、文明は次第に失われていった。地球の騒ぎが一段落して、新たな植民者を送ったところ、驚いたことに最初の植民地が生き残っていることが発見された。今や人類は、ニューエイジ植民者と、企業家に分かれたってわけだ。

 他にも色々あるけど、とにかくこの本に書かれている背景世界設定は、素晴らしくよく出来ている。

 いくつかの企業は、ポセイドンに企業州を作って、飽くなき資源開発に乗り出し、環境保護の砦であるGEOと対立することになった。それだけではなく、地球からの新参者とポセイドンの原住民との対立も深刻化した。原住民の一部は、勝手にポセイドンにやってきて資源を消費してゆく企業州に対する戦いを開始した。ところで、ポセイドンで発見された最も貴重な資源は、ロング・ジョンと呼ばれる奇妙な物質だ。この物質を応用することで、バイオテクノロジー、遺伝子セラピー技術が大幅に進歩したのだ。

 原住民はGEOの態度にも憤慨した。それから、そうそうアボリジニーがいる。アボリジニーは、このゲームにおける謎の存在だ。ナショナル・ジオグラフィック誌の編集長から、米国の国税庁に至るまで、誰もがアボリジニーについて知りたがっている。彼らは何者なのか。何を狙っているのか。何をしたいのか。なぜ彼らはここにいるのか。アボリジニーは、どうやら、ポセイドンへの侵略者である我々に敵対しているらしい。それとも、そうではないのだろうか。判断は君に任せよう。

[まとめ]

 新しい洗練されたゲームシステム、素晴らしい背景世界、詰め込まれたシナリオアイデアの数々によって、『ブループラネット』は現実的なロールプレイを求めるゲーマーにとって非常に優れたゲームになっている。ただし、伝説とロマンスに生きるヒーローに現実逃避したい人には向いてない。

 次の条件を満たす人には、特にこのゲームを強く推奨したい。

 俺は、このゲームに「内容:5(最高!)」をつけるが、完成度については「4(よく出来ている)」にしておきたい。なぜなら、イラストの出来ばえが、悪いとは言わないまでも、『D&D第3版 プレーヤーズ・ハンドブック』には及ばないからだ。それと、次に改版するときには、カラーイラストを増やしてほしいな。

完成度:4(よく出来ている)
内容 :5(最高!)


この記事は米国RPGnetの許可に基づき翻訳されたものです。日本語訳については当サイト管理者ben*at*land.linkclub.or.jpまたは翻訳者まで。記事の内容については本人へ英語で連絡してください。

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