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『ブループラネット第2版 プレーヤーズ・ガイド(Blue Planet v.2 Player's Guide)』

著者:ジェフリー・バーバー(Jeffery Barber)、グレッグ・ベネージ(Greg Benege)
カテゴリ:ゲーム
出版元:ファンタジー・フライト・ゲームズ社(Fantasy Flight Games)、バイオハザード・ゲームズ社(Biohazard Games)
シリーズ:『ブループラネット』
価格:28ドル
ページ数:255ページ
ISBN番号:1-887911-04-7
SKU:BP02
ジャンル:サイエンスフィクション、宇宙、スパイ、破滅後の世界
レビュー著者:ジェブ・ボイ(Jeb Boyt)、2000年10月8日
レビュー翻訳:馬場秀和
レビュー翻訳者による『ブループラネット』紹介ページ
http://www004.upp.so-net.ne.jp/babahide/bpguide.html



[はじめに]

『ブループラネット第2版 プレーヤーズ・ガイド』は、22世紀末の惑星ポセイドン、人類が見いだした新たなるフロンティアへと我々を再び連れ戻してくれる本だ。『ブループラネット』宇宙とは、西部劇とバイオパンクを合わせたようなもので、細部に至るまでよく練られた背景世界だ。

 入植者や巨大企業が、生態系の破壊された地球を見捨てて、一儲けしようとポセイドンに押しかける。一方、最初の入植活動でポセイドンに置き去りにされた植民者の子孫は、この惑星の原住民として彼ら新参者と対立し、自分達の故郷と社会と生活を守り抜こうとする。

 『プレーヤーズ・ガイド』には、『ブループラネット』宇宙の紹介、新しいゲームシステム、刷新されたキャラクター作成ルールなどが含まれている。第1版に比べてクジラ類のキャラクターを作るための情報が増えた。この本があれば、『ブループラネット』をプレイするために必要な情報は全て手に入る。新しい表紙イラストには、ゲームの雰囲気を表すシーンが描かれている。熱帯地方の夕暮れをバックにGEOの士官が立っており、その向こうには武器ハーネスを装着したクジラ類の兵士が海面からジャンプしている。上空を、ジャンプジェットが轟音をたてて飛んでいる。

[ヘビ座ラムダ恒星系第2惑星、ポセイドンへようこそ]

 21世紀。月面、火星、アステロイドベルト(小惑星帯)に植民地を築くことで、人類はその生息域を太陽系内へと拡大していった。2078年、冥王星軌道の彼方にワームホールが発見された。2080年にはアルゴー探検隊がワームホールを通り抜け、そこがヘビ座のラムダ恒星系につながっていることを確認した。ラムダ恒星系の第2惑星であるポセイドンは地球に似た世界であり、複雑な生態系が築かれていたのだ。しかも、奇妙なことに、ポセイドン土着の生命体は、地球の生命と同じDNAを遺伝基盤としていた。2086年には、アテナ計画の名のもとにポセイドンへの入植が行われた。植民者の大半は、海洋世界に適応するための生体改変を受けていた。彼らは、10年後にやってくる補給船を待ちつつ、ポセイドンへの植民と探検を開始した。が、補給船はやってこなかった。

 2090年に、東南アジア地域において、遺伝子操作により人為的に作り出されたウイルスが研究施設から外界に流出するという事故が起こる。このウイルスは、穀物に寄生するカビを攻撃するように設計されていたのに、実際には穀物や牧草を攻撃し始めたのだ。これがブライト(立ち枯れ病)の始まりだった。

 2091年の世界人口は105 億人。そこに襲いかかったブライトは、その後実に30年に渡って地球全域の食料生産をマヒさせたのだった。このため政治機構は完全に崩壊し、バイオジーン社やハノーバー産業といった多国籍企業は、企業州と呼ばれる統括地域を作り、国家に代わって社会的政治的な秩序を保つ力を持っていることを示した。一方、国連は非常事態宣言のもと、ブライトと戦うためGEO(世界環境機構)を発足させ、加盟国に対してその絶対的な権限を認めさせた。2120年には世界人口は48億人にまで減少した。

 そのころポセイドンでは、植民者達が探検を続け、次々に集落を築いていた。彼らには地球がどうなっているのか知る術がなく、2096年にやってくるはずの補給船が現れないことで、ようやく故郷に何か悪いことが起きたことに気づいた。彼らはそれから9年近く補給船を待ち続け、やがて諦めたのだった。

 地球では、誰もが「補給船を送ることが出来なかったために、植民者は全滅してしまっただろう」と考えていた。だが、2165年に、ついに再コンタクトが行われたときには、第一次植民者達の子孫が4万人ほどに増えて、ポセイドンの原住民として暮らしていることが判明した。彼らは、79年もの間、地球からの補給品なしに生き延びていたのだ。2172年には、新たに 500名の新規植民者がポセイドンに送り込まれた。

 そして2186年、ポセイドンの海底からゼノシリケイト物質が発見された。この物質を使えば、より正確かつ効率的な生化学操作が可能になるのだ。こうして、ゴールドラッシュが起こり、新参者と企業資金がポセイドンに押し寄せた。2199年にはポセイドンの人口は200 万人に膨れ上がった。

[キャラクター作成]

 1章には、ゲームシステムや背景世界の紹介があり、続いて新参者によるサバイバルガイドが語られる。

 2章には、キャラクター作成ルールが載っている。第2版のキャラクター作成は、新しく導入されたシナジー・ゲーム・システム(Synergy Game System) に合わせて刷新されており、また第1版よりも洗練されたものとなっている。

 また、新たにパワーレベルの概念が導入された。これはキャラクターがどれくらいプロとしての訓練を受けているかを示すガイドで、「平凡(Everyday)」、「有能(Exceptional)」 、「エリート(Elite)」という3段階のどれかになる。9名のサンプルキャラクターが付いており、2人が「平凡」、5人が「有能」、2人がエリート(GEOマーシャルと、GEOショックトルーパー)である。パワーレベルにより、キャラクターがどのくらいの能力値、生体改変、才能、職能スキルパッケージ、カスタム(任意選択)スキルなどを獲得、選択できるかが決まる。

 まずキャラクターのイメージを固め、次に種族(人類、海棲人、猫人、猿人、宇宙人、イルカ、オルカ)を選択する。第1版で用いられていたスケール付き能力値のルールは廃止され、代わって能力値は正負の整数で表されることになった。人類の平均は0で、例えばイルカの「体格(build)」は6、「器用(dexterity)」は−12になる。能力値の修正方法が2つ提供されている。ポイント割り振り方式とランダム方式である。前者は、キャラクターポイントで能力値を購入するもので、後者はキャラクターポイントを能力値に割り振って、それを目標値にしてダイスで判定し、その結果で能力値を増減させるというものだ。10面ダイスを3つ振って、目標値以下の出目を出したダイスの個数だけ能力値を修正する。

 次に生体改変(バイオモッド)の選択。「平凡」なキャラクターは安価なバイオモッド(安価というのは10,000cs以下ということだ)を1〜3個選択できる。「有能」なキャラクターは、安価なバイオモッド2〜4個に加えて、高価なものも1〜2個を選択できる。「エリート」キャラクターになると、いくつでもバイオモッドを選択できる。第1版と同じく、キャラクターの背景や職業が、バイオモッド選択のガイドになる。

 続いて才能を選択する。パワーレベルに応じて、「優秀」な才能分野、「天才」的な才能分野をいくつか持っている。才能分野は、第1版のスキルグループ(運動、サバイバル、乗物、など)に相当する概念だ。スキル判定の際に、もしそのスキルが属する才能分野について「優秀」な才能を持っていれば、10面ダイスを2個振ることが出来る。「天才」なら3個だ。通常、スキル判定は、能力値とスキルレベルの合計を目標値として10面ダイスを1個振り、目標値以下が出れば成功というものだ。ダイスを振る個数を増やすことで、スキルが低くても、成功率はかなり高くなる。

 さて、スキルパッケージの選択に移る。キャラクターの出身、背景、職業を選択するのだ。出身(地球、火星、ポセイドン原住民、ポセイドン新参者、など)から1つを選ぶと、キャラクターの幼少期が定まる。ハイブリッド(猫人、猿人)およびクジラ類のキャラクターのために、特別な出身が用意されている。さらに2つの背景(植民地、宇宙、ストリート、大学、など)を選択する。これでキャラクターが冒険に出る(ゲームに参加する)までにどのような環境で成長してきたかが決まる。第1版における教育関連のルールは廃止され、全て大学などの背景を選択する方式に変更された。ただ奇妙なことに、第1版にあった特殊な背景(例えば、コスモポリタン、宗教、陰謀など)も廃止されている。これらを選択することで、ユニークなキャラクターを作成できるというのが『ブループラネット』の面白さだったのに、残念だ。それに、第2版では各キャラクターは2つの背景を選択できるわけだから、背景のリストはもっと多いほうがよいはずだと思う。例えばサンプルキャラクター9名が持っている18個の背景を見ると、ルールブックに載っている9つの背景のうち、6つしか使われていない。ただし、第1版のルールブックがあれば、削除されてしまった背景を、第2版向けに変換して使うことは可能だ。数分もあれば変換できるだろう。

 職業についても、パワーレベルに基づいて3〜5個を選択できる。提供されている職業は16個。それぞれが「新任(novice)」、「専門(specialist)」、「熟練((expert)」という3つのスキルパッケージを持っている。例えば「新任」スキルパッケージには、スキルポイントに換算して15から20ポイントくらいのスキルが含まれている。「専門」パッケージには25〜30ポイント、「熟練」パッケージには40〜55ポイントくらいのスキルが含まれる。いくつかの職業については、複数の「熟練」スキルパッケージが含まれることも多い。例えば「犯罪者」という職業には、「強盗」「詐欺師」「ギャング」「ちんぴら」といった熟練パッケージが含まれているわけだ。クジラ類のために、クジラ類専門の職業も提供されている。スキルパッケージを選択したら、最後にスキルポイント(これもパワーレベルによってどれだけ与えられるかが決まる)を使って任意のスキルを購入して、キャラクター作成は完了だ。

 第2版のキャラクター作成システムは、例えば能力値など、第1版よりも改善されているところもある。ただし、第1版と同じく、全体構成には不満が残る。というのも、キャラクターを作成するために、読者は1章のあちこちをいったりきたり飛び飛びのページを読まなければならないのだ。さらに、キャラクター作成手順にも問題がある。例えば出身や背景、職業を選択する前にバイオモッドを選べ、というのは無茶だと思う。同様に、章立てにも感心しない。キャラクターの職業(民間パイロット、GEO警官、賞金稼ぎ、など)は3章に載っていて、そこには生活水準やリソース、バイオモッド、お勧めスキルパッケージといったキャラクター作成に必要な情報が満載されている。これはキャラクター作成の章、あるいはその前に書いてあるべきだ。

[シナジー・ゲーム・システム]

 4章はシナジー・ゲーム・システムを説明している。既に説明したように、スキル判定は1個または複数個の10面ダイスを振って、「スキルレベル+能力値」以下を出せば成功というものだ。能力値は、状況に応じて最も適切なものを使う。なお、能力値判定は、「5+能力値」を目標値にして、ダイス2個で判定する。

 戦闘においては、イニシアチブは「反射(Reflex)」能力値判定で決まる。そして、この判定にどれだけ成功したかによって行動順番が指定される。達成値(目標値−ダイス出目)が3以上だと、2回行動が可能だ。また攻撃のダメージ値を目標にダイス3個で判定した結果によりダメージが決まる。判定に成功したダイスの個数により、負傷の重さ(軽傷、重傷、致命傷)が決まるわけだ。

[未来史]

 5章と6章は、ポセイドンで生き延びるために必要なハードウェア(アイテム)とバイオモッドの説明だ。5章(42ページ)は、22世紀におけるテクノロジーについて詳しく解説している。電子工学、医療技術、潜水艦、武器、などなど。第1版に載っていた情報に加えて、リモート(遠隔操縦型デバイス)とロボットに関する設定が増えている。6章(16ページ)にはバイオテックとサイバネティクス関連の情報が載っている。

 7章(22ページ)から、ポセイドン植民構想「アテナ計画」、ブライト、太陽系内の各植民地、ポセイドンとの再コンタクト、ロング・ジョン・ラッシュといった歴史がつづられる。8章(34ページ)は、ポセイドン、原住民集落、GEO、巨大企業、新参者、クジラ類についての解説。特にクジラ類のページには、新しい情報が追加されていて、GMにとっても、クジラ類のキャラクターを担当するプレーヤーにとっても、有益だろう。9章には、2010年から2199年までの未来史年表が載っている。

 最後の数ページは、キャラクターシート(2ページ)と索引(1ページ)である。シナリオや、他の設定情報は、バイオハザード・ゲームズ社のウェブサイトで読むことが出来る。

 イラストおよびレイアウトに関するコメントは、『モデレーターズ・ガイド』のレビューに書くことにしよう。

完成度:4(よく出来ている)
内容 :5(最高!)


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