RPGnetゲームレビュー



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『ブループラネット(Blue Planet)』

著者:ジェフリー・バーバー(Jeffery Barber)、グレッグベンナージ(Greg Benage)、ジョン・スネッド(John Snead)、ジェイソン・ウェルナー(Jason Werner)
カテゴリ:ゲーム
出版元:バイオハザードゲームズ社(Biohazard Games)
価格:27.95ドル
ページ数:342ページ
ジャンル:サイエンスフィクション
レビュー著者:マーク・ストレッカー(Mark Strecker)、1999年3月15日
レビュー翻訳:馬場秀和
レビュー翻訳者による『ブループラネット』紹介ページ
http://www004.upp.so-net.ne.jp/babahide/bpguide.html



 70年代に、まだ私が小学生だった頃、こう言われたことをはっきり覚えている。「今のまま人類が石油を消費し続けたら、今世紀中に石油資源は枯渇してしまうことだろう」「今のまま人類が熱帯雨林の伐採を続けたら、今世紀中に熱帯雨林は消滅してしまうだろう」

 ふふん。誰が言ったにせよ、もっとちゃんと統計を調べておくべきだったな。今世紀も終わろうとしている現在、石油価格は市場最安値だし、熱帯雨林も残っている。いったい、あの暗黒の未来像を予言したのは誰だったんだ?

 もちろん、環境保護主義者に決まっている。そりゃ環境保護は良いことかも知れないが、事実として環境保護主義者は、他人を脅して自分達の望む方向に世の中を動かすために情報を操作したか、とんでもない計算違いをしでかしたか、どちらかに違いないのだ。

 今でも環境保護主義者は環境破壊による大災害を予言し続けているが、この恐ろしい説だけをネタにしたロールプレイングゲームを想像してみよう。これで、『ブループラネット』がどういうものかよく分かるに違いない。このゲームの背景世界は西暦2199年で、環境災害により地球はほとんど破壊されている。天然資源は枯渇し、人口問題は深刻化し、地球には人類が生き延びるために必要なものがもう何も残されてない。

 まさに人類の命運も尽きたかと思われたとき、冥王星の外側でワームホールが発見される。このワームホールは、人類の生息が可能で、まだ知的種族が存在しないらしい新しい惑星へと通じていたのだ。しかもそこには、あらゆる種類の天然資源が手づかずのまま眠っていた。ほとんど完全に海洋で覆われているためポセイドンと名付けられたその惑星は、宇宙から見ると美しく青い星であるため、しばしば「ブループラネット」と呼ばれることになったのだった。

 人類は急いで初期植民者たちを送り込んだ。もちろん後から第二次植民者と補給品を送る計画だったのだ。ところが、ほどなく地球は恐ろしい新種の環境災害であるブライト(立ち枯れ病)に襲われ、初期植民者たちは見捨てられた。やがて事態が改善してから、第二次植民者がはるばるポセイドンまでやってきてみると、初期植民者たちは地球の世話にならずに生き延びてきたことが判明した。そして新参者たちは抗老化鉱石を発見する。この物質を応用すると、人間の寿命を延ばしたり、他にも何やかや素晴らしい効用があるのだ。(『デューン 砂の惑星』にあるスパイスみたいなものだ)

 この未来史にせよ何にせよ、もっと詳しい設定が知りたければ、いくらでも細かい情報を並べ立てることが出来る。実際、基本ルールブックはまさにそれをやっている。全体のうち246 ページは、背景となる惑星と住民、それにテクノロジーの解説だ。その後にルールシステムの説明に入る。ルールは簡単で、ひねくれた部分はなく、すぐに理解できる。後は10面ダイスを2つ用意すれば、ゲームを始める準備は完了だ。『ブループラネット』のルールシステムは目新しくはないけれど、誰がそんなことを気にするだろう。良い背景世界がなければ、いくらルールシステムが革新的であっても意味がない。

 キャラクター作成ルールも、目新しくはないが、優れたシステムだ。最初に種族を選ぶ。これで能力値を含むテンプレートが決まる。能力値が気に入らなければ好きなように修正できるけど、ある能力値を増加させるときには、他の能力値を同じだけ減少させなければならない。大抵のプレーヤーは、たぶん遺伝子操作によって生体改造された人類を選ぶと思うけど、もちろん原種の人類とか、遺伝子操作されたイルカやオルカを選ぶことも出来る。(イルカやオルカが選べるというのは本当だ。個人的にはどちらもやりたくないけど)

 嬉しいことに、キャラクター作成の際には、キャラクターの背景設定を決めることになる。これは常に良いロールプレイの助けになる。事実、このゲームでは能力値やスキルを成長させるための経験点は、素晴らしいロールプレイをしたときしか与えられない。

 さて、私はこのゲームの詳しい背景世界設定だけでなく、レイアウトや出来ばえも気に入っている。誤植はほとんどないし、イラストやページの見栄えも悪くない。ルールシステムも合格点を付けることが出来るし、キャラクター作成ルールは実に素晴らしい。でも、私は自分ではこれをプレイする気はないのだ。自分で購入したにも関わらず。(いや、本当はゲーム雑誌の定期購読申し込みの特典ということで無料で貰ったんだけどさ)

 なぜかと言うと、私は全体的なコンセプトが気に食わないのだ。私にとっては、『ブループラネット』の背景世界は納得できないものだし、熱狂的な環境保護主義者のお説教を思い出させるところが嫌だ。(念のために言っておくが、私は環境保護主義者の主張には大筋で賛成なのだが、奴らが目的を達するために他人を脅迫するやり方、しばしば見せる狂信的な態度が嫌いなのだ)

 私が『ブループラネット』の背景世界に納得できないというのは、ここで設定されているような世界規模の環境災害といったものはあり得ないと考えているためだ。だから最初に70年代のあの暗い予言を引用したのだ。70年代の環境保護主義者たちの予言は外れた。現在の予言が当たると思えるだろうか。それに、このゲームの勧善懲悪なところも気に入らない。工業化を進める企業は悪の帝国で、自然の中で生活し企業と戦っている者は正義の味方。私はいちロールプレイング・ゲーマーとして、そんな単純な善悪対立の図式で描かれる世界に魅力を感じない。

 とは言え、確かにゲームコンセプトは気に入らないものの、私はこのゲームを非常に高く評価している。これは間違いなく素晴らしい作品であり、たまたまあなたが環境保護主義者であるか、このゲームのコンセプトに抵抗がないのであれば、絶対に買いだ。実際、ここ数年に見たSF−RPGのうちで『ブループラネット』は最高レベルの作品だと思う。

完成度:4(よく出来ている)
内容 :4(粋でもうしぶんない)


この記事は米国RPGnetの許可に基づき翻訳されたものです。日本語訳については当サイト管理者ben*at*land.linkclub.or.jpまたは翻訳者まで。記事の内容については本人へ英語で連絡してください。

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