RPGnetゲームレビュー



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『アクセス禁止(Access Denied)』

著者:ジェフリー・バーバー(Jeffery Barber)、グレッグベンナージ(Greg Benage)
カテゴリ:ゲーム
出版元:バイオハザードゲームズ社(Biohazard Games)
シリーズ:『ブループラネット(Blue Planet)』
製品番号:BZG 3200
価格:15.95ドル
ページ数:28
ジャンル:サイエンスフィクション、宇宙、スパイ、陰謀、西部劇
レビュー著者:デレック・ガーダー(Derek Guder)、1999年9月8日
レビュー翻訳:馬場秀和
レビュー翻訳者による『ブループラネット』紹介ページ
http://www004.upp.so-net.ne.jp/babahide/bpguide.html



[はじめに]

 数年前、ジェンコン会場でたまたまバイオハザード・ゲームズ社のブースに立ち寄ってからというもの、私は『ブループラネット』の熱心なファンになってしまった。基本ルールブックを即行で購入し、最初から最後まで読み通した。素晴らしい作品だった。それからはサプリメントが出るのを今か今かと待ち続けた。ようやく『アーキペラゴ(群島)』が出版されるやいなや、私は飛びついて、むさぼるように読みふけった。サプリメントの出来も、基本ルールブックと同じくらい優れていた。

 私はさらなる情報を求めて「ブループラネット・メーリングリスト」に参加し、『ブループラネット』のウェブページを頻繁に訪れるようになった。そこで、次に予定されているサプリメントが「GMスクリーンとガイドブック」だということを知って、がっかりした。というのも、私はこの手の「水増し」製品が気に入らないし、そもそも私は「役に立つGMスクリーン」なんて見たことがない。『アクセス禁止』より前に読んだ製品のうち「役に立つGMガイド」なんて、『Werewolf: the Wild West』 の『Frontier Secrets』くらいしかなかったのだ。

 とか何とか不満を持ちつつも、発売日には私はゲームショップに駆けつけ、店主が箱から出したばかりでまだ商品棚に並べてもいない『アクセス禁止』をひっつかんだのだった。そのときの第一印象は、やはり「がっかり」だった。きれいなスクリーンと丈夫な袋が付いているものの、カバーは紙切れだし、価格は何と15ドル95セントという法外なもの。それだけ払って、スクリーンと28ページの冊子が手に入るだけなのだ。いずれにせよ、私はそれを買うしかなかった。何しろ『ブループラネット』は私のお気に入りのゲームだし、バイオハザード・ゲームズ社を支援するためなら何でもしてあげようと思っていたからだ。でも、このことでちょっと「むっ」としたのは確かだ。

 ではレビューに移ろう。

[スクリーン]

 スクリーン自身は美しい出来ばえだ。表面には光沢のあるフルカラーのマップが印刷されており、裏面は白黒のチャート集になっている。マップは素晴らしい。やや小さすぎて細かい部分が読めないものの、出来ばえは驚くべきものであり、他のマップ製品と違ってプロの技というべきレベルに達している。裏面には、スキルリスト、戦闘ルール、武器データ集、ポセイドン地域標準時、その他その他の情報が載っている。私の見たところ、最も役に立つのは「NPC情報」という追加データだろう。これはNPCをその「有能さ」ごとに分類して、各レベルの標準的なスキルや能力値をまとめたものだ。これにより、GMはセッションの最中でもとっさにNPCを作るということが簡単に出来るようになる。

 スクリーンは出来がよく、頑丈な作りなのに、なぜか折り目が変だ。3面スクリーンなのだが、横長すぎる。つまり他のスクリーンが本を立てたような形になるのに対して、このスクリーンだと横に長く、縦に短い(低い)形になる。別に悪いことではないが、どうも気になる。これではプレーヤーの目から色々なものを隠すことが出来ないかも知れない。だが、いずれにせよ私はこのスクリーンをチャート集として使うだけだから問題ないが。

[アクセス禁止]

 これが本製品のキモであり、製品名はこの冊子のタイトルからきている。『ブループラネット』に詳しくない方のために解説しておくと、このゲームの基本ルールやサプリメントには、あちこちのページに灰色のサイドバーが載っていて、「アクセス禁止(Access Denied)」と書かれているのだ。ここには、シナリオのネタや、本文に書かれた表向き情報の裏で実際には何が進行しているのかといった事柄が載っている。本文の設定情報に書かれている「謎」の答えが、同じ本に載っているというのは、嬉しく心休まるやり方だ(ただし、実のところ「答」を読んでもさらに謎が深まるだけなのだが)。実は、この小さな灰色のサイドバーこそ最も面白く、飽きさせない部分なのだ。

 「アクセス禁止」冊子には、28個の新作情報が載っている。その大半はブループラネット・メーリングリストで提案されたものだ。嫌いな情報はないものの、全ての情報が凄いというわけでもない。また、ルールブックでは各章ごとにその章の内容に相応しい「アクセス禁止」情報が載っていて、本文と合わせて読むと興奮するという仕掛けだったが、こうして「アクセス禁止」情報だけをずらずら並べると、ちょっと興をそがれる感じがするのも否めない。

 だが、これらの情報が役に立つことは間違いない。読み終えたとき、私の心にはまたもや「ブループラネットをやりたいっ」という気持ちが沸き起こったのだが、悲しいことに、ボストンにはSFを愛するロールプレーヤーは一人もいないようなのだ。

 「アクセス禁止」情報には、全く新しいネタもあるが、今までのネタを拡張したり補足したりするものも含まれている。この混ぜ具合は絶妙だ。いくつかのネタは信じがたいほど(そして思わずニヤリとしてしまうほど)ずるがしこく狡猾に出来ている。これらを実際に使ったら、それはそれは楽しいことになるだろう。短いシナリオネタは、どれをとってみても、ごく簡単な手間でキャンペーン化することが出来るはずだ。確かにネタの1つ1つについて詳しく書かれているわけではないが、必要十分なだけの情報は与えられているので、GMが細かい設定を考えるのは難しい作業ではない。

[キャラクター作成まとめ]

 シナリオネタが13ページ続いた後に、ごく短い(2ページの)キャラクター作成手順まとめが付いている。私は『ブループラネット』をプレイしたことがないので、これが実際どのくらい役に立つのかは分からない。けれど、GMしかルールブックを持っておらず、プレーヤー達がテーブルの周りに集まってからルールブックを取り合うようなグループにとってはかなり役に立つのだろう。

[ブループラネット索引(拡張版)]

 基本ルールブックに載っている索引と、ここで追加された7ページもの包括的な索引を見ると、どうやらバイオハザード・ゲームズ社の方々は索引が大好きなようだ。たぶん、索引というものが全く付いてないホワイトウルフ社の製品に我慢ならないタイプに違いない。私はこのブループラネット索引(拡張版)を作成するに当たってつぎ込まれたであろう努力には敬服するものの、本当にこんなものが必要なのかどうかは疑問だと思う。確かに『ブループラネット』の背景世界は複雑かつ詳細なので、立派な索引が必要なのだという気もするが、しかし、どうなんだろうねえ。

[チャート集とデータ]

 この製品にはいくつかのチャート集が付いており、その有用性は様々である。例えば「都市データ」リストは、主要な都市と、いくつか小さな集落を取り上げて、数値データを示している。「乗物の最大到達距離、速度、燃料持続時間チャート」は、その名の通りのものである。乗物を比較するのに便利だろう。ただ、最大到達距離というのは片道なのか往復なのか悩んでしまう。「都市間距離チャート」は興味深く、また有用な情報だ。前述した都市データリストに挙げられた全ての都市や集落について、その間の距離を表にしたものであり、乗物データと組み合わせると任意の2都市間の移動時間が算出できるというわけだ。最後に4ページの命中部位表と痛打表が付いている。これは凄いものではない。基本ルールブックに載っているものを参照し易いようにコピーしただけだ。私は命中部位のルールが好きではないのだが、それを別にすればこのチャートは実用的なものだと言える。

[まとめ]

 『ブループラネット』が好きで、スクリーンとチャート集が欲しい人にはお勧めだ。また、分厚いルールブックを前にどうやってシナリオを作ればよいのか悩んでいる人にも、この製品が役に立つだろう。シナリオ作成は自分でやらなければならないが、これだけの「アクセス禁止」情報があれば実に多くのシナリオが用意できるはずだ。

完成度:4(粋でもうしぶんない)
内容 :5(すばらしい!)


この記事は米国RPGnetの許可に基づき翻訳されたものです。日本語訳については当サイト管理者ben*at*land.linkclub.or.jpまたは翻訳者まで。記事の内容については本人へ英語で連絡してください。

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