沈浮な話(45号)

あの子はネジをもってたよ
いくつもいくつももってたよ
ぞうげでできた
つるりとしたなめらかなネジだったよ
ある日それでも
小さな湖に
ネジをすべての
落っことしちゃったってさ
ねじは二度と浮かんではこない
ねじは二度とは浮かんではこない
それでもそんな朝
太陽がしづむネジたちに
ほほえみかけに湖にもぐったって
ぞうげのネジ達はそんな訳で
羽を生やし パタパタと生やし
あの青空の中へ 広い広い空の胸の内へ
大きく羽ばたいていったんだって
大きく羽ばたいていったんだって
そんな話 ネジ達の。
水撒き(10号)

毎日
自分に水まきしよう
大きくなあれ
強くなあれ
そして
幸せになあれ
ジェイ(9号)

Jそれは
J恐怖のアルファベット
J身の毛もよだつ
J人の生き血の乾きたる
Jカーペットに落ちている
きりん(9号)

エジプト帰りの叔父に
ごちそうになった きりんのステーキ
黄色いまだらはカスタード
茶色いまだらはカラメルソース
ああ もう一度だけ 食べたいな
あの ふかふかの ステーキ

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