おやつの前に サンプル


「あ、やば、ゼノ、も……っ」
 出そうだと訴え、座った足の間に伏せるゼノの頭に触れる。聞こえていないのか離そうとしないゼノを物理的に引き剥がすべく手に力を込めるも、狙い澄ましたように強く吸い付かれ逆に引き寄せる形になった。やばい、と思った時には手遅れで、力を抜くこともできず先端を口蓋に押し付けるようにして無遠慮に放ってしまう。
「は……っ、は……ご、ごめん、ゼノっ」
「……ん、ふふ、あやまらなくて、ん、いいのに。俺が飲みたかったんだから」
 一瞬の空白の後聞こえてきたのは噎せ咳き込む音ではなく、ごくりと飲み込む音。我に返り慌ててゼノの頭から手を外して謝るも、うっとりと微笑み返された。遅まきながら解放された性器に唇を寄せられたままなので、吐息の熱さを直接感じて腹の奥がぞくりとする。
 幸いにして熱情に直結することはなかったが、このままでは危ないと脳内で警告音が鳴った。ゼノを己の性器から引きはがさなくてはと。
「ゼノ」
 呼びかけ、顎に手をかけて上向かせたゼノの唇を塞ぐ。舌先に感じるのは自身の放った精と混ざったゼノの唾液だとわかっているので反射的に眉を顰めてしまうが、気にするほどではない。直接ソレだけを舐めるのは嫌でも、半ば以上がゼノの体液ならば些末な事。ゼノに触れることを厭う理由にはならない。
 座ったまま伏せていた状態から頭だけを上げるおかしな体勢にさせてしまったのに、文句も抗議もなく。カナタの脚のすぐ横に手をついて支えることで、無理のない体勢にしているゼノが愛しすぎて堪らない。
 引き離すために塞いだ唇だが、すぐに目的が貪ることに変わる。絡めた舌を撫で引き出し甘噛みして、溢れる唾液を飲み干してもまだ足りないくらい、ゼノが欲しい。
「まって、カナタ」
「嫌?」
「ちがくて。その、カナタの……飲んだのに、カナタこそ、嫌じゃ、ない?」
 だけど、他でもないゼノがむずかるように首を振った。何か訴えたい様子を感じ取って、絡めとった舌を解放する。ほんとは離したくないと主張するつもりで、口元に舌を這わせるのは止めない。
 犬がじゃれるのに似た行為に戸惑いをみせながらも留めはせず、ゼノが尋ねてきたのはそんな可愛らしい一言。ああもうどうしよう。今すぐにでもゼノを満たしたい。気持ちに反して達したばかりの性器は力なく、ゼノの手に握られているけれど。
「嫌ならそもそもキスしないよ」
「んぁ、なら、よか、ん、ちょ、もう」
 言葉を返すために唇を解放するも、離れてしまうのが嫌で替わりに指を触れさせた。応じながら指先で唇を撫で前歯をくすぐり、舌を捉えて弄ぶ。気持ち良さげに表情を蕩けさせたゼノをもっと貪りたくて、言い終わるが早いか指を引き抜き再び口で塞いだ。
 見方によってはゼノの反応を不要とする行為を咎めるでもなく受け入れ、邪魔されながらも言葉を紡ごうとして、結局笑ってキスを優先してくれる。先の問いかけ自体もカナタを気遣うものだった。ゼノの余裕のあらわれだと思ってしまうのは、ただのやっかみだろうか。
「そもそも、ゼノだってオレが舐めた後キスしても嫌がらないじゃん」
「カナタだから。ん、カナタとキスするほうが、うれしいから」
「ん。オレも同じ。オレの舐める羽目になっても、ゼノとキスしたい」
 ゼノの余裕を見せつけられたようで、悔しさから軽く反論してみる。離した唇が物足りなくて頬に口付けると、くすぐったそうに笑いながら告げられた。カナタと似た理由が嬉しくて愛しくて、ぎゅっとゼノの頭を抱きしめる。
 目の前で嬉しそうに笑うゼノが、もっともっと愛しくて堪らない。
「同じだね。ね、じゃあ、もっかい。キスしよ」
「うん……何度でも」
 可愛くねだり差し出された舌を絡めとってから、ゼノの吐息ひとつ逃したくなくて唇をも塞ぐ。体を支えるためにかゼノの手が肩に触れ、背中に向かって撫ぜられる。全身に甘い波が緩く伝わって、お返しと片手を胸に這わせた。ゼノが性器を咥える前に散々弄り尖らせた乳首に触れると、絡ませあった舌が反応して少し縮こまる。
 ちらりと見上げてはくるものの止められないので、捉えた尖りを指先で弄ぶ。刺激が過ぎたのか、キスから逃れるようにゼノが頭を振った。
「はッ、ん、カナタ、そこはも、いい、から」
「でもゼノ、ここ気持ちいいでしょ」
 逃がしたくなくて強く絡めても、唾液で濡れてぬめる舌には容易く逃れられてしまった。不満を隠さず顔を顰め、両脇に手を差し入れてゼノの体を引き上げる。目の前にさらけ出された乳首に吸い付くと、高い声で喘いだ。
 指でしたと同じに、舌先でも尖った先を舐め押し潰し弄ぶ。そうすると気持ち良さそうに頭を抱えられるのが好きだ。縋られているとも、もっととねだられているとも受け取れる上に、抑えがちな喘ぎが降ってきて熱情を助長して、堪らなく興奮する。
「そうだけど、も、カナタので満たして、ほしっ、から」
「でもオレ、ゼノにイカされちゃってまだ無理だし?」
「それは、ごめん。でも、俺も、もう」
 気持ち良さそうに喘ぎながらも訴えられ、胸から顔を離す。求められるのが嬉しくて、でもちょっと意地悪もしたくて言い返すと、ほっと息を吐き出したゼノが、見上げたカナタに謝りながらも求めてきた。
 一度達して落ち着いたカナタと対照的に、ゼノの性器はまだ先走りを零しながら震えている。限界まで勃ちあがっているだろうそれを、ゼノは触ろうとしない。口にしたとおり満たされて達したいからだろう。
 カナタもそれに倣うが、ちょっと面白くない。中の準備をしていたら、突然「俺もしたい」とカナタの性器を咥えたのはゼノのクセに。途中で、せめて寸前でも離してくれれば良かったのに。早く繋がりたかったのは、カナタだって同じだ。




+この続きは本にてお楽しみください+


頒布はこちらから(pictSPACE店舗へリンク)



こめんと。
最初に書いたがっつりカナゼノえっちです。
前半はえっちで、後半は事後いちゃ。
よろしくどうぞ!