1975.09 後立山連峰

9月 2日(火),3日(水) 晴れ  新宿(23:45〜07:06)八方〜黒菱平(09:10〜09:40)八方池山荘(10:10〜16:55)唐松山荘

 厳しかった東北での夏合宿も終わり,いよいよ待ちに待った後立山だ。桜井も来る事になっていたのだが,家の事情で急遽来られなくなった。「残念でした,松場君」。山田さん,保さん,柿本に見送られて新宿を出発。朝晴れていたので,白馬の駅からは白馬三山が白く高く望まれた。リフトで1700mの黒菱平まで一気に登ると,早くもガスってくる。

 石の敷き詰められた歩き辛い道をのんびりと進む。八方山を少し過ぎたあたりに大きな雪田があって,冷たく美味しそうな水が流れていたので大休止をとる。急な登りを終え森林限界を越えると丸山に着く。すると前方に不帰東面の岩場が望まれる。何か凄い迫力だ。谷川岳の一の倉沢の岩壁何かとは全く違った趣きだ。唐松小屋に着いたのは5時少し前。のんびりと歩こうと言っていたのだが,いくらなんでも,のんびりしすぎかなあ。

9月 4日(木) 曇り後晴れ  唐松小屋(08:05〜10:35)五竜小屋(11:55〜13:00)五竜岳(13:30〜14:00)五竜岳.G4コル

 朝はガスっていた。最初から少々危なっかしい道に,金屋君少しビビリ気味。雷鳥を3羽見掛ける。予定を大幅に遅れて五竜山荘に到着し昼食をとる。さてこれからどうしよう。確実にテントを張れる場所はここか,キレット小屋にしかない。ここで泊まったら後が苦しいし,このペースではキレット小屋まで辿り着けそうにはない。全員で検討した結果取り敢えずは五竜岳を越えて,適当な場所でサイトする事にする。

 あっけなく五竜岳を越え,30分程下ったところにテントを張る(サイト指定地では無いけどね)。目の前にキレットを隔てた鹿島槍ヶ岳を望む贅沢この上ないサイト地だ。ちょっと危なっかしかったが,信州側を少し降りた所に残雪があったので,水には苦労しなかった。4時頃急に雷がなり始める。モロに何も無い稜線上に居るのは怖かったので,西側のハイマツの斜面に避難。5時半頃に雷も止んだのでテントに戻る。

9月 5日(金) 晴れ時々曇り,夕方雷雨  五竜岳.G4コル(07:30〜11:20)キレット小屋(12:35〜15:30)鹿島槍ヶ岳南峰(15:45〜16:45)布引山南方1km地点

 ウワッ,晴れてる。目の前の鹿島槍ヶ岳がとてもきれいだ。双耳峰とは良く言ったものだ。やはりアルプスの朝は気持ちがいい。遠くには富士山,八ヶ岳,南アルプスの山々が望まれる。すぐそばに見える立山,剣岳には9月だと言うのに,かなりの残雪が残っている。9時近くになると信州側から,早くもガスのお出ましだ。キレット小屋までは大して危険な個所は無いのだが,なかなかペースが上がらない。小屋で昼食をとった後,鹿島へ向かう。八峰キレットにはクサリや鉄ハシゴが取り付けられており,特に問題無く通過する。しかしここからの登りはかなり手強い。昨日に続いてまた遠くで雷鳴が聞こえている。

 鹿島槍ヶ岳の北峰を過ぎ,吊尾根の途中の残雪を使って氷あづきを食べる。今日のサイト地には水場が無いので,ここの雪をビニール袋に入れて持っていく。南峰には高山君の熱いメッセージを書いた旗を残してくる。雷が近付いてきている様なので早々に頂上を発つ。サイト地に着くと同時に物凄い雷雨に襲われる。平地で聞く雷の音とは全くの別物で,山の中での雷は物凄い。上から聞こえるのではなく,横や下から聞こえてくる。我々を包む空気全体が震えているのが判る。テントの中で怖い時間を過ごす。今から思えば何でテントから出なかったんだろうか。

9月 6日(土) 晴れ後曇り  布引山南方1.0km地点(10:10〜10:32)冷池小屋(10:32〜13:00)種池小屋(13:35〜棒小屋乗越

 昨日の雷雨でズブヌレになったテントを乾かしたりしてのんびりと出発。針ノ木岳までの予定を諦め今日は種池までだ。昨日の雷雨が嘘の様ないい天気。爺ヶ岳から針ノ木への稜線が良く見渡せる。そしてさらにその後方には槍ヶ岳も顔をのぞかせる。右には剣,立山を見ながらの気持ちのいい道だ。昨日までの岩ばかりの道とは打って変わって,広い尾根の道。種池小屋付近なんか,まるでおとぎの国の様な雰囲気で,とてもいい所だ。種池小屋では1本300円の缶ジュースを高山のおごりで飲む。サイト指定地になっている棒小屋乗越でサイト。水場が無いため,水は小屋にて購入。

9月 7日(日) 曇り後雨  棒小屋乗越(11:00〜11:15)種池小屋(11:25〜14:30)扇沢〜信濃大町

 霧に包まれたサイト地のまわりには,ハクサンフウロの花が咲き乱れている。何か去り難い気持ちだったが,11時に出発する。こんな時間になってしまったので,もう下から上がってくる登山者とすれ違う。どうやらガスが掛かっているのは山の上の方だけらしく,降りるにしたがって針ノ木の雪渓や扇沢のバスターミナルが見え始めてくる。途中で紅茶を沸かして飲んだりしながら,ゆっくりと下山。雨も降り出してしまったが,ほどなく扇沢に到着しタクシーにて大町に出る。天気に恵まれたとは言い難いし,針ノ木まで歩けなかったし,雷で怖い思いをさせられたが,とても楽しく印象深い山行だった。

同行者(松場,高山,金屋)