8月 5日(木)〜6日(金) くもり時々晴れ 立川(00:29〜05:08)信濃大町(05:35〜09:25)室堂(09:35〜12:05)別山乗越(12:50〜14:05)剣山荘
夜行列車で山に行くなんて何時以来だろうか。昔は中央線の夜行列車と言うと,新宿23時55分発の普通列車か,急行のアルプス号と決まっていたのだが,最近は「JR快速ムーンライト信州81号」しかない。この列車,名前はお洒落だけど,車両自体は昔の特急列車だった。新宿から乗ったY岡君,立川からの私,八王子で乗ってきたS木さんの3人で,ビールを飲みながら信濃大町に向かう。久し振りだから熟睡できないかと思ったが,お酒の効果か,気が付いたら松本を過ぎていて夜が明けていた。列車からは後立山連峰方面が望まれるが,直前に日本を横断した台風11号の影響か,厚く雲が覆っている。
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信濃大町から室堂へは「黒部立山アルペン.ルート」を使うが,かなり混んでいた。また土日に較べて便数が少なく,乗り継ぎに時間が掛かる。やっと着いた室堂は曇ってはいるが見通しは良い。でも立山を始め山の上はガスが掛かっている。気温は16度だそうだが,湿気が多いせいか蒸し暑く感じる。明日の晩に泊まる予定の「みくりが池温泉」を通り地獄谷に向かう。遊歩道にまで湯気が噴出していて,一瞬サウナの中を通過した様な感じになる。一旦雷鳥沢に下るが,明日は最後にここを登らなくてはいけないかと思うと,ちょっとウンザリさせられる。別山乗越への登りは高山植物の多い気持ちのいい道で,黄色のシナノキンバイ,薄紫色のハクサンフウロが綺麗だ。 剣御前小屋の建つ別山乗越から目の前に聳える剣岳の雄姿を期待していたのだが,残念ながらガスに覆われて見えなかった。それでも時々急峻な岩場を覗かせている。小屋の前では残雪で冷やされたビールやジュースが売られていた。「お勧めは何?」と小屋の人に聞いたら,すかさず「当然,生ビールです。」との答えに一瞬気持ちが揺らいだが,まだ先は長い。一缶300円也のリンゴジュースを買って,カップラーメンを食べて剣山荘に向かう。剣沢小屋経由の道ではなく,剣御前の山腹をトラバースするルートを取る。適度に雪が残っていて,2ヵ所ほど残雪を横切る。途中チングルマの群落が見事だった。 |
剣山荘で受付を済ませると,待ってましたとばかりにビールを飲む。最近の山小屋はどこもそうなのかも知れないが,喫茶室などがあり,ビールやお酒はもちろんの事,簡単な食事何かも出来るようになっていて嬉しい限りだ。ちょっと早かったが,小屋の前で飲み始める。山々に囲まれた中で飲むお酒は特に気持ちがいい。二晩分に持ってきた日本酒と焼酎のほとんどを飲んでしまう。剣山荘はかなり混みあっていたが,何とか一人一つの布団は確保できた。
8月 7日(土) 晴れ後くもり時々雨 剣山荘(04:45〜06:17)前剣(06:17〜08:10)剣岳(08:30〜11:15)剣山荘(11:50〜13:30)別山乗越(13:50〜15:40)みくりが池温泉
朝3時半頃に目を覚ますと,早い人はもう出発の準備を始めていた。一面の星空が今日の好天を予想させ,気分は自然とハイになってくる。小屋に頼んだお弁当を食べ,周りが明るくなるのを待って小屋を出る。剣岳まではサブザックでのピストンなので,ザックは私とY岡君が交替で背負う。30分程で稜線に出て一服剣の頂上に立つと,目の前に前剣が望まれる。黒部側も富山側も鋭く切れ落ち,鋭い岩をまとった姿は,まるで登山者を威嚇している様だ。ぱっと見ただけでは,何処をどうやって登ればいいのか判らない。どこから落っこちても,一気に何百メートルも下にまっ逆さまに転落してしまいそうで,ちょっと怖い。右側には鹿島槍ヶ岳や五龍岳が望まれ,その間から太陽が顔を出す。
何箇所かのクサリ場があったものの,見た目ほどではなく前剣の頂上に立つ。すると今までガスに隠れていた剣岳の本峰が見え始めてくる。下りの途中,平蔵の門と呼ばれるスパッと切れ落ちたところで,先行パーティの若い女性一人が,足がすくんでしまったのか突然固まってしまう。やはり下を見てしまうとかなりの高度感があるので,無理もないか。いくつものクサリ場を過ぎ,いわゆる「カニのタテバイ」に到着する。かなりの待ち時間を覚悟していたが,10人程が待っている程度だった。ホールドもスタンスもしっかりしており,特に問題なく通過。この上は岩のザクザクした道を辿り,2998mの頂上に到着。振り返ると立山と,遠く薬師岳が望まれたが,他はガスに隠れてあまり眺望は良くなかった。
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下りに入るとまず「カニのヨコバイ」に出る。左にトラバースする際の最初の一歩が,足を掛ける所がなく戸惑う。結局ここが一番怖かっただろうか。この後もクサリやハシゴが連続し緊張を強いられる。登っている時にはあまり気が付かなかったが,登りと下りのルートが別れている所が多く,すれ違いに面倒な思いをする事は少なかった。トリカブトの花がやたらと目に付く。思ったよりもかなり時間が掛かったが,無事に剣山荘に戻ってくる。小屋のスタッフが「お疲れさまー」と迎えてくれる。とても感じのいい小屋だった。 ここで昼食のカップラーメンと思っていたが,突然雨が降り出してきたため,行動食に切り替えて小屋を出る。剣沢小屋経由で別山乗越に戻ろうかとも思ったが,少しでも行程を短縮するために,昨日の道を戻る。途中雪田から流れ出る水を飲んだが,冷たくてとても美味しい。雨は降ったり止んだりだったが大した事は無かった。でも後の方で雷の音がしているのが不気味。早くみくりが池温泉に入りたい。別山乗越に到着すると,室堂方面からガスとともに風が吹き付けてきて寒い。でも後はほとんど下りだけなので,一缶500円のビールを小屋で買って乾杯。昨日登った雷鳥沢への道を下り,雷鳥沢キャンプ場から遊歩道を通って,みくりが池温泉へ。気持ちのいいお風呂を浴びた後は,小屋の前のベンチで再び宴会。 |
8月 8日(日) 晴れ みくりが池温泉(07:40〜08:00)室堂(08:30〜11:30)信濃大町(14:02〜17:20)立川
サッカーのアジアカップ決勝戦の結果が気掛かりだったが,中国に3−1で勝って優勝との事で一安心。今日はもう帰るだけだが,天気は一番いい。朝小屋の周りを歩くと,景色が雄大で気持ちがいい。目の前に圧倒的に大きな立山三山,そして左の端には昨日登った剣岳もちょこっと見え,さらに大日岳が大らかな山容で広がっている。来月にはもう紅葉が始まるとの事だったが,こういう所で何日間かのんびりできたらいいだろうなあ。室堂まで戻り,黒部ダムを経て信濃大町へ。途中,黒部平で外に出てみると,立山三山や,後立山の五龍岳,鹿島槍ヶ岳,針の木岳が見事だ。黒部ダムあたりまでくると,観光客でごった返していた。 今回初めて剣岳に登ったが,やはりいい山だった。でも一般ルートとはいえ,かなり危険な場所もあるので,行くには十分な注意が必要だろう。それにしても存在感のある山だ。一番期待していたのは,別山乗越あたりから剣岳の全容を見る事だったが,天候の関係でそれは叶わなかった。でもガスの間から時折見えた剣岳は,充分見応えがあったし,登り応えのある山だった。また雷鳥沢から別山乗越を経て剣沢に至るコースも,高山植物や雪が多く,印象的なコースだった。 |
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