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九州交響楽団 水上コンサート
IN CANAL CITY -Vol.2-

(99.10.3 キャナルシティ サンプラザ特設ステージにて)

 天気予報では雨だったが、幸運にも晴れ、心地よい秋風の中、会場へと向かった。夫が仕事のため、娘付きでいささか不安はあったものの、事前の調査(?)で1時間くらいだと聞いていたので、なんとかなるだろうと考えた。ただ、子どもというのは何をしてくれるかわからない。万全を期すべく、ちょうど会場の向かいにあったケンタッキーで、娘の好物のポテトとアップルジュースを買い与えて、それを持ったまま約15kgの娘を抱きかかえた。なにせ、15分前という、ぎりぎりの時間についたのがそもそも間違いだったが、予想以上の人人人・・・上を見上げても各階の手すり越しに見ようという人達がうじょうじょ。改めて、このコンサートの魅力を感じた。
 キャナルシティ(ショッピング+アミューズメント施設がある)には、先日ダイエー優勝の時に飛び込んだ人もいるという川(池というべきか)がある。キャナルシティという建物と、向かいにあるグランドハイアットというホテルとの間で、ゆるやかな曲線を描いている人工の川(?)だ。普段は水が定期的にはね上がり、音と目とで楽しめるのだが、今回その川の上にステージを作っていた。そして、観客のために、前方から椅子を用意してあったのだが、そのいすの後ろにたくさんの人が立って、今か今かと演奏を待っていた。中には、私と同じように子どもを抱っこして待っている人もいたり、赤ちゃんをベビーカーに乗せたまま待っている人もいた。福岡の人々がこんなに音楽に関心をもっていることに、改めてうれしく思った。

 さて、もくもくとポテトを食べている娘を見て安心した私は、とにかく早く始まって早く終ることだけを望んでいた。娘が何事もしでかさないうちに・・・。ようやく司会のお姉さんが出てきて、指揮者 榊原 栄氏の紹介があった。どこかで見たことのある顔だなあと思いつつ、演奏が始まった。九州交響楽団とは、この4月に一緒に演奏した仲間(といっても私は200人の合唱団の中の一人にすぎないが^^;)なので、親しみを感じた。

 1曲目は「スターウォーズ メインテーマ(J.ウィリアムス作曲)」。よく知られた曲から始めるのはありがちなパターンだ。しかし、生のオーケストラというのは、やっぱりいい!! 音楽の風が、空気が流れてくる。演奏している人達の思いがメロディーに乗って、私の耳から心の中にすう〜っと入っていくようだ。ジョン・ウィリアムスといえば、あの有名なE.T.の音楽も作った人だ。所々に似たフレーズがあって、懐かしくなった。
 2曲目は「雷鳴と稲妻(J.シュトラウスU世作曲)」。これもよく聞く曲だ。娘はポテトを食べながら音楽にのっていた。まだまだもつな。おっ! 私の前に立っていたご夫婦が帰られた。よしっ。大阪魂の見せ所。すかさず娘をしっかり抱いたまま空いた空間に入りこんだ。
続いて3曲目「美しく青きドナウ(J.シュトラウスU世作曲)」。ここで、予想していた事Part1.が起こってしまった。「おしっこ〜」。後ろ髪をひかれながらも、ここでもらされてはたまらないので、すぐ近くにあったトイレに直行。ありがたいことに、音楽はトイレの中まで聞こえてくる。曲を口ずさみながらも娘をトイレに座らせるが、「・・・でない〜。さっきおうちでしてきたもん。」そんなことはわかっとるわい。はあ〜、これだからいやだ。仕方なく手だけ洗って、さっきの場所に戻って見るが、私がいた場所はすでに、うめつくされていた。これも予想していた事Part2.だ。そこで、どこなら見えるか、ふと上を見上げてみると、キャナルシティとグランドハイアットを結ぶ通路があり、そこならステージの左上方から見ることにはなるが、今いるところよりはましだ。急ごう!そう判断した私は、急きょ娘を抱えて、エスカレーターに飛び乗り、無事その場所へたどりついた。

 通路の手すりにはすでにずらーっと人はいたもののその後ろからなら、見える。私の前のおばさまがのりにのってらしゃってて、時折振る首をよけながら、見ることができた。そこで先程から流れていた4曲目「踊るポルカ(アンダーソン作曲)」が終った。この曲は題名のクイズになっていて、小さなお客さまが当てられていた。正解を答えると、なんと今、このキャナルシティの中にある福岡シティ劇場で公演中の「コーラスライン」のチケットをペアでもらっていた。観客の間から「お〜〜〜っ」というどよめきが起こった。
 続いて、5曲目「こわれた時計(アンダーソン作曲)」。この曲は、私が小学校時代、毎日給食の時間に流れていた。だから、メロディーが流れてくると、あっ配膳しなきゃという気になってしまう。懐かしい曲だ。これもクイズで、またまた小さなお客さまがあてられていた。そして、正解。今度は話題の新作「壁抜け男」のペアのチケットをもらっていた。いいなあ〜〜〜〜。私が思っていたら、私の前のおばさまも「まあ〜いいわああ〜」とつぶやいていた(みんな考えることは一緒なのね)。

 さて娘はどうしたか。ポテトもジュースもおなかに入れてしまった娘は、少しづつ飽きてきていた。私は必死で、「ほらみてごらん」「たくさんがっきがあるねえ」などと声をかけ、なんとか興味をもたせようとしていた。
 次の曲「歌劇『エウゲニ・オネーギン』より『ポロネーズ』(チャイコフスキー作曲)」では、娘は指揮の真似をしたりして少し落ち着いたかのようにみえたが、あまりに重たいので、時々下におろすと、そのたびに私から去ろうとする。違うところへ行こうとするのだ。こんな人ごみの中で離れられては捜すのも大変だし、何よりも、あと少しで劇団四季のメンバーがでてくるので、なにがなんでもここを離れてはいけなかった。そこで、いやがる娘をしっかり抱いて、音楽に合わせて揺らしたりして、場をもたせた。
 さあ、四季のメンバーが出てくるまであと1曲だ。オーケストラだけの最後の曲は私の大好きな曲「交響詩『モルダウ』(スメタナ作曲)」だった。これを聞くと、新婚旅行で行ったチェコの風景を思い出す。最後の日の夜、ホテルへ帰るバスの中で、添乗員さんがかけてくれたこの「モルダウ」を聞きながら、モルダウ川の夜景を見つつ、チェコに別れを告げたのであった。しみじみと聞いていたが、娘は時々指揮のまねをするものの、やはり動きたくて仕方がない様子。でも、ここで負けてはいけない。「もうすぐ、おにいちゃんおねえちゃんがおどってくれるよ。」と声をかけつづけた。

 ようやく終り、よし、と思ったら、司会の方が「ここで特別企画があります。先日優勝したダイエーの応援歌を、ぜひ九響のみなさんに演奏していただきましょう。」といって、あの応援歌がはじまった。観客はわ〜〜っと声を上げ、手拍子などしていたが、私にとってはもう、そんなことどうでもよかった。早く四季が出てきて早く聞き終え、この場を去らなければ・・・という思いだけだった。でも、丁寧にも応援歌は間奏付きの3番まであった。上品な応援歌に仕上がっていたが、やっとそれも終り、はあと思った瞬間、ダイエーホークスの球団長さんが出てこられて、お話が。。(T.T)そしてそして、やっと「それでは、劇団四季の皆さんをお迎えいたします」という声とともに、九響は「コーラスライン」のナンバーをメドレーで演奏し始めた。その間に、先程まで私がいた場所あたりに係の人がロープを引き始め、通路を確保していた。どうやら、そこを通って出てくるらしい。しまった。あの場所にいとけばよかった。でも、仕方がない。それにしても、このメドレーがまた長く、いつになったらメンバーが出てくるのか、随分待たされたような気がした。

 そしていよいよ、通路をさっそうと通りぬけてくる金色の人々。そう、四季のメンバー19人の登場でした。「ONE」を軽い振り付けと共に歌ってくれた。娘も、こればかりは真剣に見入っていた。私は耳元で「大きくなったらこんなことするんだよ」とささやいた。顔が見られないのが残念だが、その場だけ輝いているようで、わくわくしていた。歌が終ったところでインタビューが入った。その時、なんと私の前にいたオバさまが、用事があったらしく、「どうぞ」と帰って行ったのだ。やったー!!一番前だ。娘を手すりの下の部分に立たせ、最後の曲「愛した日々に悔いはない」を待っていた。
 ところが、そんな時に限って娘が手すりの上によじ登ろうとする。何度言ってもきかないので、思わず叩いて手すりから下ろした。すると、うわ〜〜〜〜〜〜〜ん(T.T)。。。予想していた事Part3.だ。周りの人もびっくりしてこちらを振り向く。娘の声はあまりにも大きいので、他の方の迷惑になる。しぶしぶその場を離れざるをえなかった。これだから子どもは嫌いだ。「あと、1曲だからがまんして。ね。」と言って、とうとう「キティちゃんのお店でなんか買ってあげるから」と言ってしまった。でも、こんな緊急自体はそうでもしないと乗りきれない。娘もなんとか泣き止み、先程の場所に戻って見るが、案の定、別の人が入りこんでいた。最後の曲「愛した日々に悔いはない」も始まり、いまさら入りこむわけにも行かないので、考えた末、顔を見るのはあきらめて、「通路」に行こうと思った。そう。四季のメンバーがステージに上がるときに通ってきた通路だ。急いで行くと、係の人がちょうど規制しようとしていたところだった。何気ない風に、その通せんぼしている人の後ろにぺたっとくっついた。もちろん横から見えるように。
 歌が終り、拍手とともに、四季の人々は私と娘の目の前をにこやかに笑いかけながら、さ〜っと通り過ぎて行った。ま、いろいろあったが、これで私も満足満足。このあと、キティちゃんのお店に言ったのはいうまでもない。

 1時間半のコンサートだったが、とても楽しい時を過ごせた。こういう企画をもっとやってもらえると、お金のない私にとっては、うれしいな・・・