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ソフィア・ゾリステン「名曲の花束」

(99.11.18 福岡シンフォニーホール(アクロス福岡)にて)

演 奏:ソフィア・ゾリステン(ブルガリアの弦楽アンサンブル)
指揮者:プラメン・デュロフ
ヴァイオリン・ソロ:ミラ・ゲオルギエヴァ
 以前、夫が福岡シンフォニーホールで行われたクラシックのコンサートに行ったとき、パンフレットの中に、今日のコンサートのチラシが入っていた。「ソフィア・ゾリステン」・・・申し訳ないが、名前は知らなかったが、美しいちらしと、「名曲の花束」という言葉に惹かれ、曲目を見てみると、エルガー「愛の挨拶」という文字が!!! 

 この曲は、私達の結婚披露宴の時に、ヴァイオリンの上手な同僚に、キャンドルサービスの時に是非是非とお願いして、弾いてもらった、とっても思い出深い曲だ。いつか、コンサートホールで聞いてみたいと思っていただけに、今日のコンサートは行けたら行きたいなあと思っていた。
 しかし、行くなら夫と二人で行きたい。でも、娘はどうなるか?シンフォニーホールは確か子連れはだめだったはずだ。で、あきらめることにした。ところが、な、な、なんと、どうしたことか、夫が自分のこづかいの中から私のチケット代まで出してくれて、「行こう!」と言ってくれた。大感激♪ 娘は、いつも快く預かってくれる、夫の親戚にたくし、2重の喜びで、会場に出かけた。

 さて、会場に着くと満員でこのコンサートの魅力をさらに感じた。3階の、舞台に向かって右横の席で、演奏が始まる前に、いつものごとく、パンフレットに目を通し、この「ソフィア・ゾリステン」についてや、ソリストのミラ・ゲオルギエヴァさんの生い立ちを読み、びっくりしていた。というのも、このミラさん、なんと10歳で国際コンクールにて優勝していて、まだ23歳なのだ。そう、私より年下なのだ。う〜ん、こういう舞台に年下が出てくるようになったか・・・

 さて、「ソフィア・ゾリステン」のメンバーが登場した。15人の弦楽アンサンブルで、指揮者と、バイオリン8名、ヴィオラ3名、チェロ2名、コントラバス1名で構成されている。みんな男性だ。ブルガリアのソフィア国立歌劇場管弦楽団のソリスト・クラスの精鋭を集めて組織され、独立して活動しているらしい。

 1曲目は、J.S.バッハの「G線上のアリア」。この曲は、大学の合唱団の友達が結婚した時に、その2次会で伴奏したことがある。とても有名な曲。優雅で、一気に、ヨーロッパの宮廷にでも招かれたような気がした。

 2曲目は、ドヴォルザークの「ユーモレスク」。ドヴォルザークはチェコの出身だが、私たちは新婚旅行でそのチェコとハンガリーを旅したことがある。ハンガリーでもチェコでもそうだったが、どこに行ってもレストランや町のなかで、ヴァイオリンを片手に楽しそうに演奏している人がいた。ハンガリーではジプシー音楽が多かったが、チェコでは、やはりこの「ユーモレスク」を聞くことができた。途中、物悲しく、切なく、哀愁ただようところが、チェコらしい。ヴルタヴァ川(モルダウ川)のそばで夕暮れにたたずむと、この「ユーモレスク」のなんともいえない感傷的なメロディーが、胸にしみこんでくる。思いでの曲だ。聞きながら、うるっときてしまった。

 3曲目はパッヘルベルの「カノン」。これは、まだ働いていた頃、合唱コンクールでよく生徒が歌っていた懐かしい曲だ。こういう数小節のテーマをくり返し変奏しながら演奏される曲は、よくあるが、たいていはなんだか飽きてくる。しかし、この曲は繰り返されても美しい。希望にあふれ、歓喜に満ち、すがすがしい気分になる。

 4曲目はボッケリーニの「メヌエット」。数年前(ということに^^;)教育実習に行った時に、母校で朝の登校時間に流れていた。優雅になったもんだなあと思いながら、朝を迎えたものだ。上品な優しい曲だ。この曲を聴きながら、整然と片付いた部屋で、アンティークな椅子に腰掛けて、ゆったりと紅茶でも飲んでみたいなあ〜〜〜(絶対無理だなあ)。

 さて、ここでソリスト、ミラ・ゲオルギエヴァさんが登場。男性ばかりのなかに、女性が登場すると、やはり華やかな感じになる。
 5曲目はクライスラーの「愛の喜び」。ヴァイオリンと言えばこの曲というくらい、有名な曲だ。まさしく、ウィンナ・ワルツといった感じで、貴族の気高さといったようなイメージがわく。
 ソリスト・・・素晴らしい!! あざやかな弓さばき(というのだろうか!?)で、胸が高鳴るとはこういうことを言うのだなというくらい、興奮してしまった。

 6曲目はマスネの「タイスの瞑想曲」だ。初めてこの曲を聴いたのは、中学の頃、住んでいた市で音楽祭があり、私はコーラス部として舞台にたったのだが、その後のステージで、あの有名な辻久子さんがこの曲を演奏された。こんなに美しい切ない曲があったのかと、衝撃的だった。
 それから、ピアノの楽譜を買い、何度も弾いて楽しんだが、やはりヴァイオリンの音色には勝てない。また、聞きたいと思っていたところ、職場で前述のヴァイオリン専門だった同僚に出会い、この曲も私の結婚披露宴で、弾いてもらった。私は、ウェディングドレスを着たまま、伴奏させてもらった。とても幸せなひとときだった。
 人それぞれ感情の込め方が違うから、おもしろい。ミラさんの演奏はじっくりじっくりという弾き方だった。(表現できないわ^^;)

 7曲目はサラサーテの「カルメン幻想曲」。これは、ただただびっくりだった。すごい!!すごすぎる〜!!と思った。かなり難しい曲に違いない。有名な歌劇「カルメン」の中の旋律が所々出てくるが、それよりもその壮絶な演奏に、恐れをなしてしまった・・・ミラさんはすごい人なんだなあ・・・感嘆のため息があちこちから聞こえてきた。

 さて、ここで休憩。この時に私と夫は同じことを考えていた。それは、入場した時にロビーで会場限定発売のCDが売られていたのだ。今日のコンサートの中の曲がほとんど入っているということだった。休憩に入るや否や、よし、買いに行こう!と、いそいそと売り場へ向かった。同じことを考えている人がたくさん駆け寄っていた。

 席について、再びパンフを読むと、ミラさんは、かの有名なジュリアード音楽院を卒業されたばかりだということがわかった。私も昔憧れたものだ。大人になったら、ジュリアード音楽院に入りたい・・・なんて無知だったんだろうか。。。

 第2部が始まった。8曲目はモーツァルトのセレナード第13番ト長調 K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」〜第1楽章だった。モーツァルトが生きていた頃も、こんな風に演奏されたのかなあなんて思いながら、心地よく聞いた。小学六年の音楽の教科書に出てきたような気がする。でも、テスト前になかなかこの曲名が覚えられなくって、「あ、い〜ね、暗いね、ナハ!とムジーク」などと覚えていたのを思い出した。モーツァルトに失礼だわ。。。

 9曲目はシューベルトの「アヴェ・マリア」。シューベルトらしい旋律で、優しいあたたかい愛で包み込んでくれそうな曲だ。映画「サウンド・オブ・ミュージック」でマリア先生が十字架に向かってひざまづいているシーンを思い出した。弦楽器の美しいハーモニーが祈りを届けてくれるような気がする。

 10曲目はチャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」。私はこの曲があまり好きでなかった。小学生の頃、「クラシック名曲集」という楽譜を買ってその中に載っていたのだが、実際に聞いたことがなかったので、テンポもつかめず、拍子がころころ変わることが好きになれなかった。
 ところが、今回聞いて、こんなにいい曲だったのかと初めて知った。ロシアの風土を思い出させるような曲調で、ゆったりと流れるメロディーに、心を打たれた。

 さて、11曲目。いよいよ待ちに待ったエルガーの「愛の挨拶」だ。ソリストも登場し、会場も拍手でわいた。懐かしい前奏とともに、美しいメロディーが流れる・・・
 高校1年の時に、音楽の教育実習の先生がヴァイオリン専門で、最後の授業でこの曲を弾いてくださった。初めて聞くその曲が、「なんて愛らしい曲なんだろう」と忘れられなく、曲名だけは絶対に覚えておこうと頭にいれた。
 楽器屋に行くたびにピアノ楽譜がないか探したが、見つからず、いつの日か出会えることを楽しみにしていた。そこに、何度も出てくるが、ヴァイオリン専門の同僚との出会い。また、ちょうどその頃結婚が決まり、披露宴の音楽は好きな曲をちりばめようと思った。そこで、まず1番最初に決めたのが、キャンドルサービスの時にこの曲をということだった。楽譜も楽器店に注文し、手に入った時は大感激だった!!
 結果は大成功だった。ただ、当日は専属のピアニストに伴奏をお願いすることになっていたので、どうしても一度伴奏をしたかった私は、式の3日前に同僚にお願いして、弾いてもらい、念願の伴奏をすることができた。
 ミラさんの演奏は、情熱的で、私がそれまでに聞いた「愛の挨拶」とは随分違っていた。また、ピアノ伴奏ではなく、すべてを弦楽器で演奏されることが、新鮮だった。披露宴の時のこと、新婚当時を思い出して、うるうるっときてしまった。(涙もろいので^^;)

 12曲目はショパンの「ノクターン第20番 嬰ハ短調」。ショパンの曲を弦楽器で演奏するということにピンとこなかったが、またピアノとは違った、不思議な感覚で楽しめた。ミラさんは、感情の込め方が素晴らしく伝わってきて、こちらまでのってしまう。

 13曲目はサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。パンフを読んでびっくりした。というのは、ツィゴイネルワイゼンとは、ドイツ語で「ジプシーの歌」という意味だそうだ。ハンガリー・ジプシーの音楽を素材にして作られたというのだ。
 実はハンガリーでも何度か聞いたことがあり、ぴったりくるなあと思っていたのだった。改めて聞いてみて、すぐにハンガリーの風景がよみがえってきた。ドナウ川の美しい夜景と、ライティングされた鎖橋(チェーン・ブリッジ)。もう一度行きたい国なのだ。
 第1部の「カルメン幻想曲」同様の、ミラさんの鮮やかな演奏に、ただただ私達聴衆は大きな拍手をおくるばかりだった。そして、彼女は退場してしまった。

 男性ばかりに戻り、ちょっと淋しいが14曲目、山田耕筰の
「赤とんぼ」皆さん、どういう思いで、この日本の曲を演奏されているのだろうか。何を感じてらっしゃるのだろうか。一度聞いてみたものだ。この曲は本当に名曲だと思う。忘れてしまった遠い昔の日本の風景を、思い出させてくれる。「ソフィア・ゾリステン」の方々がとても丁寧に演奏されているのがわかった。

 15曲目、最後の曲はJ.S.バッハの「幻想曲BWV.542」。大曲という感じがしたが、なによりも驚いたのは、途中オルガンのような音色がしたことである。どこかでオルガンを弾いているのかと思った。ネットで知り合ったプロの方に聞いてみると、ヴィヴラートをかけずに皆の音程を正しく調整して演奏すると、そういう音が出るらしいのだ(なるさん、ありがとうございます)。今、これを書きながらパンフを読み直すと(たった今、気付きました^^;)、「弦楽器の特殊奏法(ノン・ヴィヴラートとハーモニックス)でオルガンそのものの響きを作り出す」と記述されていた。初めて知った、とても不思議な感覚だった。

 こうして終わったのだが、拍手は当然なりやまない。アンコールが行われた。
 アンコール演奏1曲目はブリテン「イタリア風アリア」。2曲目はゴレミノフの「ブルガリアン・ダンス」だった。
 久々にクラシックを楽しむことができ、心の洗濯ができたようだ。思いでの曲が盛り沢山で、初心を思い出させてくれたコンサートだった。