【南湖ギタークラブに参加して一年目の人の感想】
ベートーベンが弦楽四重奏曲の第一番を生み出したのが1799年。川辺に沈み行く、ミレーの絵画オフェ−リアが思い浮かぶ、「ロミオとジュリエット」の最終場面を頭に描きながら作曲したのが今から200年前。それから100年経って、夏目漱石は小説「草枕」の最後の章で、走り行く電車の窓越しの男女の別れの場面に「憐れ」を感じ、「それだ!それが出れば画になりますよ」と物語を締めくくった。おそらくこの時の漱石の頭の中にも、ベートーベンと同じような心象風景が重なっていたのではないだろうか。
 演奏についても似た様なことを感じることがしばしば有る。いくら素人の腕前であっても頭の中だけは、あるいは気持ちの上だけでも、「一瞬のひらめき」に対する一流の感動はあるものである。
 さて今年は1999年。通り雨のように過ぎ去った日本経済の高度成長のあとには、構造不況と金融不安だけが残ったと新聞では騒がれている。統率力無き社会と出口無き年金問題が選挙演説で取り上げられる中、ゴジラやガメラ映画を待ち望む時代である。ウルトラセブンの最終回において、「地球はわれわれ人類自らの手で守り抜かなければならないのだ!ウルトラセブンではない。」と語る、ウルトラ警備隊長の言葉を思い出していただきたい。 
 わずか6弦の奏でる音の世界。ペダルも無ければ弓も無いので、ぽつぽつと途切れる音が響くだけ。小さな音量は、マイクが無くとも、聴き手の耳を研ぎ澄ますことによって聞こえない音までが伝わってくる。演奏の強弱表現は耳で感じるよりも、目で演奏者の顔色や指先を見たほうが判りやすいかもしれない。南湖公民館におけるコンサートとは、そんな手の見えるコンサートであるといえる。
 引越しの荷物を片付けていたら、家具を運んだあと、最後にギターだけが残っていた。ガランとした部屋の中で響く音は気持ちの良いものであった。
 繁栄という進化の過程で一つのサイクルを終了しつつある成熟社会において、「ノスタルジア」なる言葉こそ、次なる時代の幕開けかも知れない。


   【南湖ギタークラブ10周年にあたって】

 ギター好きのやさしい仲間に支えられて10年を迎えました。苦しくも楽しい練習を重ね、アンサンブルの魅力は尽きません。アンサンブルは音楽を通じてのコミニュケーションです。これがある限り南湖ギタークラブは不滅です。人との出会い、音楽との出会いを大切にこれからも頑張って行きたいです。
 さて、生まれも育ちも公民館です。ギター活動に限らず、この十年振り返って、何か忘れ物をしている様な気がしてなりません。尊敬する家庭医が、「世の中、飛行機が飛ぶようになって少しづつずれてきた。人間は歩く早さで生活したほうが良い。」と云ってたのを思い出しました。「在るがままで満足せよ」、これも一つの"幸せの容"です。そうか!、ゆっくりと歩く早さで音楽を聴く一時が足りなかったのかも。
 ギタークラブは、より美しい音を求めて活動を続けますが、メンバーにも変化の波がパシャパシャと押し寄せ、寄る年波?には何とやらで、、、。
 さてさて、美しい音で、ゆったりと聴く、一瞬の音楽が奏でられますかどうか。乞う、ご期待!

----------------------------------【曲目紹介】----------------------------------------
【ドナ・ドナ・ドーナ】
ユダヤ人作家のミュージカルの主題歌であったが、ベトナム戦争への反戦運動が高まるアメリカで、ジョーン・バエズによって全米ヒットした。
【夜空ノムコウ】
キムタクがギターを弾く、SMAPの曲。スガシカオの作詞、「あれからぼくたちは、何かを信じてこれたかなぁ、、、」が印象的。パソコンで無理やり編曲のため、演奏者のアドリブに注目。題して、「デジタルとアナログの戦い」
【コンドルは飛んで行く】
ケーニャ呼ばれる縦笛をメロディーとしたフォルクロ−レの曲。サイモンとガーファンクルのアレンジでも有名。リズムセクションに注目。
【花 まつり】
原題は、「ウマウアカ渓谷の人」という意味。シャンソンの曲として日本に流れ着いた時に、この名前になった。いったい、春だったのか、秋だったのか?
【BELIEVE】
テレビを観てたら、すばらしい曲なので、NHKに手紙を出して楽譜を送ってもらった。全世界の子供達に、明るい未来が来ます様にとの願いを込めて弾きます。
【目覚めよと我に呼ばわる物見らの声】
原曲を演奏者が訳すと、「寝耳に水」(Sleeper's Awake)となる歌曲で、バッハのカンタータの中で最も美しいとされる一曲。山登りで頂上に立った時に脳裏に流れる一曲。
【荒城の月】
大分県、竹田市の狭い山道を車で行くと、広い野原、岡城址に着き抜ける。 23歳の若さで亡くなった作曲家の21歳時の曲。今年、生誕100歳を迎える。 
【ダニューグ河の漣】
ドナウ河が少しなまって(聞き間違って)、ダニューグ河になったのかも。宗教、商業そして軍事目的に流れて行った河の歴史を思い浮かべてみたい。
【人の気も知らないで】
シャンソンが流行っていた当時(かなり昔)から、じっくりと、ゆっくりと時間をかけて自分一人でアレンジしてきた曲を本日ついに、発表します。
【愛の賛歌・珍島物語・追憶】
"If you love me" のタイトルで、越路吹雪やナナ・ムスクリが歌う。やたらと鼻のデカイ、ギリシア人:バーバラストライザンドの映画の主題歌。何故か天童よしみがその後にくる。
【第3の男・エンターティナー】
南湖ギター合奏団では、演奏者は、第3パートの担当である。
そして、私は、ソロのフィナーレを飾る、エンターティナーでもある。
【ビア樽ポルカ】
自動車のBMWや発電機等のシーメンスの本社が有るミュンヘンで、毎年十月にその年のビールの収穫を祝うお祭りがある。体育館のように広いレストランで飲むビールは、この曲のような雰囲気がある。
【白い恋人たち】
北海道旅行のお土産として、石屋製菓の「白い恋人」の方が有名になってしまったけど、元々は札幌五輪の頃の曲である。演奏は、ポールモーリア楽団のような滑らかな音がでないために、「白い変人」とよく間違われる。
【砂漠のバラ】
バスパートの、「ポコポコ」と言う、ピチカート音がラクダの足音を、スラーの音の"ゆらぎ"がイスラムの響きを連想させる。
【いい日旅立ち】
山口百恵のヒット曲で、中学校の卒業式でよく歌われる。確か、初めはJRの(当時は日本国有鉄道)コマーシャル曲だったのでは?
【二つののギター】
R.ストラウスのオペラ、「カプリッチョ」のテーマともなっている、「音が先か、詩が先か?」の謎と同じように、ロシア民謡には不思議な生立ちが在る。 この曲は、「そうか、私の出番(パート)であったか。」と出遅れる事が多い。
【ラ・クンパルシータ】
この曲のリズムである、タンゴについて簡潔に説明するなら、「句読点の有る音楽」と言える。16分音符が均等に弾けず、「よたった」感じが聴き所。
【伊勢崎町ブルース】
演歌でありながら、それでいてしつこくない。青江美奈の妖艶な歌声が有名。
【夏の思い出】
5月終わりの水芭蕉に7月のニッコウキスゲと、池塘に咲く白から黄色への季節の移り変わりを音色の変化に出すことができれば良いのだが、、、、。
【知床旅情】
ウトロ温泉から船で岬へ行くと、トッカリ(アザラシ・トド、英語では"海のライオン")や超・長い昆布がある。「ひかりごけ」の話はやめておこう。
【見上げてごらん夜の星を】
バリ島旅行の帰りに、東京から大阪行きの日航機で墜落してしまった坂本九さんの歌で記憶に残る。辻堂海岸で夜空を見るときに思い出す曲である。