尾瀬の誕生

起と火山活動
従来の有力な説では、次の通りです。
 至仏山から景鶴山にかけて、秩父古生層と呼ばれる約5億年前の古い地層が見られます。尾瀬でもっとも古い地層で、至仏山や景鶴山は隆起によってできた山と言われます。
 火山活動が繰り返され、溶岩流で川がせき止められ大きな湖ができます。燧ヶ岳などの噴火による溶岩流が只見川をせき止めて、現在の尾瀬沼や尾瀬ヶ原の元になる湖をつくったと言われます。
 せき止められ湖に周りから土砂が流入したり、植物が進入したりします。
 徐々に浅くなった湖に、ヨシ、スゲ、ミズゴケなどが腐敗しないまま堆積して泥炭化していき、湿原が形成されていきます。
※なお、1972年にボーリング調査が行われた結果、地下81mまでの場所では、ここに湖があったという証拠が得られませんでした。このため、尾瀬ヶ原の成立については不明です。尾瀬沼については、約1万年前に、火山の燧ケ岳が誕生し、火山活動による溶岩などによって、盆地の東半分がせき止められ、これにより尾瀬沼が成立したと考えられています。
湿 原の形成 目次
 火山の噴火などでせき止められた川は湖となって窪地に水を満々とたたえています。湖の周りには、土砂が流入して、その付近にはヨシやスゲなどの草が生えています。
  土砂の流入と、ヨシやスゲなどの草が堆積して泥炭化が進み、その上にさらにミズゴケなどの植物が生育します。
  泥炭層が厚くなり、水はけの悪い、酸性の層にはミズゴケしか生育せず、ミズゴケの泥炭ができます。
  この段階では、沼沢化が進み、低層の湿原が出現します。
 泥炭層はレンズ状に盛り上がって、高層湿原へ移行していきます。
層湿原と低層湿原 目次
低層湿原  河川の下流域や合流地点、川が湖沼に流入する地点、途中で淀んだところなどに植物などが堆積してできる湿原。
  ヨシ、スゲ、ミズバショウ、ミツガシワ、サワギキョウなどが生育する。
  低層の意味は、堆積物がまだ浅い状態で未発達の湿原だから。
中層湿原   低層湿原から堆積が進んで高層化する。その過程で高層化しそこなった中
層湿原も尾瀬には多く存在する。
  トキソウタテヤマリンドウ、ミズギク、ニッコウキスゲなどが生育。
高層湿原   いよいよ高層化して高層湿原となったもの。ミズゴケが繁殖する条件がない
と高層化しにくい。
  ミズゴケは夏の気温があまり高くなく、雨量の多いことが必要。本州の中部
以北に多く、それも日本海側に多い。
  ミズゴケ、ツルコケモモ、ナガバノモウセンゴケ、ヒメシャクナゲなどが生育する。
瀬の特異な景観 目次
 尾瀬には、その特異な地質から、池塘に浮かぶ浮島や川沿いにしか生育しない拠水林など、独特な自然景観が形成されています。
  湿原の特異な景観としては、特に竜宮に特徴が見られます。
竜 宮   中田代の竜宮小屋付近に竜宮と呼ばれる地点があります。湿原の下を川が流れていて、川がある場所で消えて別の地点から突然現れて流れています。
 何年か昔テレビの番組で潜水夫が地下でつながるこの竜宮の穴の中に潜ったことがありました。結局途中で狭くなってて通れなかったんですが、つながっていることは確かなことが分かったというようなことを言っていた記憶があります。
カルスト
Karst

 

 では、なぜこのような地形が生まれるのでしょうか。
 山口県の秋芳洞で有名なカルストは、雨水の溶解作用によって石灰岩が溶解化してトンネル化したものです。
 高層湿原は湖沼に植物が堆積してそれが泥炭化して形成されていきます。
 この生成の過程で、堆積状態が一様でないため、上部のみが塞がれてしまうことがあります。さらにそこが沢水の流れ路になっているとトンネル化し、流水は一方から入って、他方から出るようになります。トンネル化した状態が似ているため、これを尾瀬ではカルストといい、竜宮と呼んでいます。
池塘と浮島

 池塘は湿原の窪地に水がたまり、水ごけ泥炭層が発達して、水の周りに厚く積もって形成します。
 浅いところではミツガシワなどが見られ、深くなるにつれて、ヒツジグサや オゼコウホネが主になり、ほぼ1.5m以上になると藻以外は生育しません。
 なお、この池底堆積物が厚くなり、湿原化する場合もあります。浮島は火山灰の上などに乗った泥炭層が、風などで岸から切り離されて 浮き上がり、池を浮遊します。
拠水林

 湿原を歩いていると、樹林のベルト状になった地域があります。湿原や湿原を流れる川は、草の堆積してできた泥炭層のため、土砂が少なく養分が少ないので樹木は育ちません。
 でも、川の中には、上流から運ばれた土砂が積もって土壌ができ、そこに樹林が育ちます。これが拠水林と呼ばれるものです。

※なお、これらの出典はいろいろな尾瀬関連の図書、ガイドブックです。