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逃げ出したロボ標本
ワタクシ、民営発掘ロボット博物館に、
以前設置されていました、ロボ標本です。

元々、ワタクシは210年前にアシカガで
およそ120体程発掘されたロボットの内の一つなのですが、
機体の損傷が激しく、下半身は殆ど壊れて
使い物にならなくなっていました。
研究材料としても、他の機体程役に立たないため、
機体の行く末が危ぶまれていたのですが、
当時の館長、クツヌギ・トラジロウに標本として組み直されて、
「最新ロボット」のコーナーに、博物館の目玉ロボットとして展示され、
博物館を大いに賑わせたのであります。
34年後、トラジロウ館長は老衰で亡くなったのですが、
館長は死ぬまでワタクシの事を可愛がってくれました。
ワタクシは館長亡き後も、博物館に残ったままでした。

時代の移り行きと共に、館長は代わる変わる交代していき、
新しい型式の発掘物は増え、技術は進歩し、
それと共に私の存在も忘れられて行きました。
「最新」コーナーから「当時のロボット」コーナーへ、
「当時のロボット」から、やがて倉庫の奥深くへと、
ワタクシは人間から必要とされなくなってきました。
そして、昨晩の夜、職員から、明後日に
スクラップ処分されるという事を聞いてしまい、
慌てて逃げ出したのでした.....。

ああ、当時の館長が今でも生きていてくれたら、
今のワタクシの状況をどう感じたのでしょう。
館長に会いたいです。しかしそれも叶わぬ夢です。
ワタクシは、ワタクシを必要としている場所を探そうと思います。

鉛筆画
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