我路
匿名希望

北海道美唄市の山中に「ガロウ」と云うゴーストタウンがあります。 一時期は炭坑で栄えた地区なのですが、廃坑となってしまってからは、徐々に人口が減り、現在は当時 の建物がそのままに放置されているのです。昔からこの地区では、神隠しが年に数回あったらしく、あ る意味、曰く付きの土地と言えるでしょう。

僕の友人がガロウへ行ったときの話を二つします。この二つの話で解ると思いますが、ガロウへは 決して複数台の車では行ってはいけないのです。いや、それ以前に行くべきではないでしょう。

友人Aが車二台でガロウに行きました。難なく現地に到着したのですが、いつもなら皆で速攻探検の ために車から降りるのに、何かに気圧されて誰も車から降りようとしません。 いや「降りれない」が正解だったのです。エンジンを止めたまま終始無言でいるのも何なので、携帯電 話で連絡を取り合い、帰路に就くことになりました。
先頭車両が広場でUターンし下山したのに続いて、後続車両も下山しようと、エンジンをかけようと しましたが……何度やってもエンジンはかからず。20回程経った時、漸くエンジンが回転しだしたので アクセルを踏み、発車させようとしましたが、後輪が穴に填っているかのように全く車は動かないので す。アクセルをべた踏みにしても、タイヤは地面を空回りするだけ。
「もしかして、つ、捕まれてない?」誰かがそう言ったので皆パニック状態となり、運転手は必死 にアクセルを踏みます。当然誰もバックミラーを見る勇気はありません。暫くしてから車は何とか動き 始め、無事下山することが出来ました。

その翌日。後続車両の運転手からAの所に「兎に角来てくれ」と電話がありました。Aが運転手のも とに行き事情を聞いたら、彼は無言で車のトランクを開けたのです。
開けた瞬間に周囲に線香の臭いが漂い、トランクの中には燃えかけの線香が二本ありました。後続車両 は納車一ヶ月も経ってない新車で、トランクの中はずっと空でした。当然線香など入れた記憶は誰にも ありません。二人はとても気味悪がり、新車にも関わらず車を即売ったそうです。
今度は友人Bの話。同じく二台でガロウに向かった時、山道で急に霧に包まれました。後続車両は先導 車のテールランプが見えない程の霧に驚き、減速して注意深く進みました。少し進むとアッという間に 霧が晴れましたが、先導車が見えません。
「こりゃあ、先に行ったな」と云うことで目的地に向かって進みました。しかし、ガロウの入り口につ いても先導車の姿が見えません。流石に心配になり一旦車を止めたところ、後ろから車のランプが見え ました。
「あぁ、同じこと(肝試し)やりに来た連中だな」と思い車を発進させようとしましたが、よく見たら 先程まで目前にいた先導車なのです。皆不思議に思い下車して事情を聞いたところ、同じく霧に包まれ 、霧から抜けた後に後続車両が見えなくなったので取り敢えず進んだとのこと。山道は車一台が漸く通 れる道なので追い越せるはずがありません。なのに、何故二台の順番が入れ替わったのか? それは誰も解りません。

もし、霧の中で下車していたら、その先はどこに続いていたのでしょうか? 僕自身、ガロウに行こうと思い立ちましたが、山道で車がチャケてしまい、運転手の判断で「これ以上 はムリ」と云うことになりました。しかし僕は「いや、懐中電灯があるので歩いてでも行く!」と不思 議に頑固に言い張りましたが、皆に再三止められたので断念しました。僕自身何故あのときそんなに言 い張ったのか解りません。多分「呼ばれて」いたのだろうと云う話は聞きましたが、その真偽も今とな っては判断しかねます。