きもだめし1
大阪府大阪市 東田 昌司くん提供

神戸の某墓地をご存知ですか?
ここには結構有名なミステリースポットがあります。
墓地には綺麗に整備された道路や公園などがあり、 墓石も普通の墓地と変わらず比較的新しいものばかりです。 しかし奥へ進むと今まで見て来た整備された場所とは打って変わってかなり古い墓石が、 しかも倒れているものや割れているものばかりが放置され、道も砂利道のままで舗装されていません。 察しがいい人は判ったと思いますが、 そこは誰も来なくなってしまった墓石を無造作に捨てている無縁墓地なのです。
大学の同好会で、明日から夏休みに入るので霊の研究にどこかにいいミステリースポットは ないかかと探していましたが、本当の所は女の子を怖がらせて抱き付いてもらいたいだけの 軽薄な企みでした。
私はそれを知っていましたが、自分も女の子に抱き付かれるのを期待して 「あそこの霊園、結構有名みたいだよ」と提案しました。 なかなか場所が決まっていなかったので、皆は私の意見にすぐ乗って来て、 翌日から泊り込みで行く事になりました。 
次の朝、私は女の子が抱き付いてくれる事を期待して心弾ませながら迎えの車を待っていました。 暫くすると後輩の女の子を載せた車が来て、早速墓地に向けて出発しました。
大坂から神戸に車を進ませ、午前11時には墓地に付きました。 勝手に墓地の中には入れないので、墓地の事務局に寄って 「静かな所で星の観察がしたい」と言い訳を作り、 墓地の公園で一泊させてもらう許可をもらいました。
そして墓地の中を見回って肝試しのコースを決めたのです。
コースは公園から奥へ進んで無縁墓地をぐるっと一周して帰ってくる、 往復二時間ほどの長い長いコースででした。
夜になって夕食をさっさと済ませた私達は、早速肝試しをすることにしました。 メンバーは八人いたので二人ずつ行くつもりだったのですが、女の子達に反対され、 結局四人ずつ行くことになりました。
先に出発する四人のうち二人の男達はニヤニヤして、私たちに目で合図を送ってきました。 「うまくやれよ」と私は目で合図を送り、彼らは出発して行きました。 私は焦る気持ちを押さえ、約束の30分後に出発しました。
墓地のなかはシーンと静まり、車の通る音さえ聞こえませんでした。 不気味に静まり返った中、懐中電灯の光だけを頼りに進んで行くのです。 そんな中、不意に女の子が手にしがみ付いてきました。 「思惑通りだ」と内心ドキドキしていましたが、自分たちの足音が良く響き 真っ暗な墓地に我々しか居ないんだと思うと段々恐くなってきました。 それでも「俺がいるから大丈夫だよ」と女の子に強がって見せ、自分は頼りになるよ、 とアピールしたのですが、本当の所はもし足音以外のものが聞こえたらどうしよう、 とビクビクしてもいました。
「あれ?」
女の子の一人が前を指差しました。前方に明かりが見えてきたのです。 私たちの前のグループに追いついてしまったと思って「おーい!」と声をかけました。すると
「うるさい!静かにしろ!」
と、知らない声が返ってきたのです。私たちは顔を見合わせ 「きっと見回りに来てる誰かがいるんだ」と言って、また進んでいきました。
すると悲鳴が聞こえ、暫くすると血相を変えた前に出発したメンバー三人が走って来ました。 私たちに走りよって来て、私たちの手を取りその場から逃げようとします。 「どうしたんだ?」と豆鉄砲を食らったような顔をしていましたが、一人足らない事に気付きました。 辺りを見回しましたが人影はまったく見えません。 もう一人の友人O君も気付いたらしく「Kちゃんは?」と訊いていましたが「早く早く」 と言って私達を引っ張って、私達の言葉なんて耳に入らない様でした。その時は何もわからないまま、 怖さも手伝って走って公園の入り口まで戻りました。
先に出発してたメンバーになにがあったのか尋ねましたが、 ガタガタと身を震わせて話の出来る状態では無い事は判りましたが、 Kちゃんの事が気になっていたのでH君の両手を掴み、身体を揺らして尋ねました。 すると目を私に向けて話をし始めましたのです。
「公園から奥の無縁墓地へ付いたとき、恐々墓石にライトを当てて見ると、 おばぁさんが墓石の上に座ってたんだ。それで・・・。」
と言いかけた時       
「おばぁさんだけじゃないよ、若い男の人もいた。 その人とKちゃんが目が合った様に見えたら、横に居たFくんにいきなり首を締め始めたの。」
と私達にすがる様にしてSちゃんが答えました。
F君はかなり興奮して手や首を見せてくれました。手には水脹れの様に手の後が出来ており、 首にも同じ様な後が残っていました。どんな理由であれ、 Kちゃんを放って置く訳にはいきません。私も恐かったのですが、みんなで探しに行こうと言うと、 三人は嫌々、そして残る三人もビクビクしながら付いて来ました。
ゆっくりと肝試しのコースを見て回り、Kちゃんを探しました。 そしてとうとう無縁墓地まで来てしまいました。勇気を出して墓地を見回すと、 墓石へ凭れ掛かって倒れているKちゃんを見つけました。皆で近づき起こそうとすると、 いきなり暴れ始めたのです。四人の男が押さえようとしても跳ね飛ばされるほど凄い勢いでした。 最後は女の子も加わって力一杯私たちで押さえつけ、可哀相だけれどベルトで手と足を縛り、 公園まで抱きかかえるようにして連れてきました。
公園に戻るまで彼女はもがいたり罵声を浴びせたりと大変でしたが、 しばらくして疲れたのかおとなしくなり、そのまま眠ってしまいました。 ふと空を見上げると辺りは明るくなり始めていました。 長居は無用と公園まで持って来ていた車に乗り込み、墓地を後にしました。
Kちゃんは家に着くまでぐっすりと眠っていましたが「家に付いたよ」 と手と足のベルトを取ってやると、目の焦点がフラフラとし、 ボーッとした顔で家の中に入っていきました。少し心配ではありましたが、 家に帰ったらまた元に戻るだろうと考え、私達も帰りました。
後日、Kちゃんが病院へ入院したことを聞きました。なんでも気がふれて、 普通に生活が出来なくなったそうです。もしかしたら、 肝試しの時におかしくなったままなのかもしれません。 肝試しなんてし無ければよかった。と後悔しています。 そうすればKちゃんはあんなことにならなかったかもしれないと、悔やまれてなりません。

これは安易に肝試しをして最悪な結果を招いたようですね。 墓地で肝試しをするなんてもってのほかです。 しかも、無縁墓地まで行くなんて……。 Kちゃんには無縁墓地で人々に忘れられ、悲しみと 憎しみのこもった霊に取り付かれたのではないでしょうか。 この場合病院で治療を受けてもなにも解決しません。 信頼のおける霊能者にお払いをしてもらうと良いかと思います。 一度試してみてはいかがでしょうか。