学校2
兵庫県神戸市灘区在住の三木 小夜子さん提供

ある日、私は先輩達から学校の怪談話をクラブ活動の合間に教室で聞いていました。
幽霊をみた、幽霊に肩をたたかれたと、先輩達は興奮気味みに話をしてくれます。
でも私自信、そういう経験をした事がないので、実感もなく信じていませんでした。 私は恐いもの見たさから、本当に出るなら一度幽霊を見てみたいと思いました。 先輩は「今日見れるかも」と、私達に遅くまで居残るように命令しました。 私達のクラブでは新入生を部活が終わっても暫く学校に残ってから帰る習わしがあるそうです。 変な習慣だなぁと、思いましたが、先輩には逆らえないため、 新入生の私ともう一人の子と残る事になりました。 私は先輩の話を全く信じていなかったため恐くはないし、もう一人の子も信じてはいない様子でした。
先輩達が帰って数分後、私達も持ち物を片づけて、教室を出ようと何気なく廊下を見た時です。
「まさか……私の幻?」
思わず私は息をのみ、薄暗い廊下に出てみました。
「なんだ見間違いか」そう思い、もう一人の子を呼んでその子も廊下に出てきました。 帰ろうと進行方向を向いたとき、私達の目にうすぼんやりと何かが立っているのがわかりました。 どういうわけか、身体の全体がはっきりとは見えません。まるで、影か、煙の様にも見えます。 もう一人の子にも見えているらしく、ガタガタと震えていました。急に不安になった私は、 足早にその場から立ち去ろうとしました。
「ギャァーッ!」もう一人の子が大声で悲鳴をあげました。 遠くに薄ぼんやりと見えていた人間の姿がだんだんと近づき、はっきりと人の姿に見えてきたのです。 はっきりと見えてきた人の姿は、腰に刀を差し袴姿の侍に見えます。 しかも「カラン、カラン」とゲタらしい音をたてながらどんどん私達の方へ近づき、私に掴みかかろう としたのです。私は自分で精いっぱいで、もう一人の子にまでかまっておれず、一人で逃げようとしま した。しかし、まるで金縛りにでもあったかの様に身体が自由に動きません。 私は、夢中で侍から逃れようとしました。
「何してるの!」遠くの方から先輩の声が聞こえてきました。先輩は廊下でもがいてる私や、 その場に座り込んでいる子の姿がとてもおかしく見えたらしく 「門の前であなた達をいくら待っても来ないから、何やってるんだろ……」 と近づいて来た先輩は悲鳴をあげました。そして侍は、私達に飛びかかってきたのです。私達の悲鳴が 何度も聞こえて来たらしく、先生方が飛んできました。ところが、先生が駆けつけてくれた時には、 侍の姿は消えていました。一体私が見た侍は何だったのでしょうか。

ここの学校が建つ土地の歴史を調べると、 色々な事がわかりました。まず、江戸時代には、罪人の処刑場として使われており、 さらし首にするために首を洗った井戸や、罪人の遺体を埋めた場所として使われていました。 それから、江戸時代後期に入り、処刑場が移され、浄土真宗の寺が建てられたのです。 敷地はかなり広く、墓地が1600ほどあった様ですが、人口が増えたため明治32年に墓地を移動し、 住居を建て、大正10年に学校が建てられました。 このことから罪人か、墓地で眠っていた魂のどちらかではないかと思います。