エンジェルさん
千葉県東金市 早坂さん提供

私が高校生の頃、エンジェルさんと言う遊びが流行っていました。エンジェルさんを呼び出して、 占いをしたり、質問をしたりする遊びです。私達は良く、放課後になると教室の後ろの方でやっていま した。事件が起きた日もいつものように、質問したり、占ってもらったりしていると、クラスメイトの 知弥子が私達に近づいて来ました。
「ねぇ、あなた達、もしかしてコックリさんしてるんじゃない?」 「違うよ、エンジェルさんだよ。」と答えると
「エンジェルさんもコックリさんと同じでしょ。コックリさんをエンジェルさんって、名前変えた だけじゃない。そんな事してたら、いつか恐い目に合うよ。」と言ってサッサと行ってしまいました。
「なんなの?あの子……。自分がやりたいけど、誘ってもらえなかったので、ひがんでいるんだぁ !」と言って、続けました。この時、誰もこの後に起きる事件を、知っていたら、止めていたかもしれ ません。
夕方、暗くなってきたので、そろそろ帰る事にして「エンジェルさん、エンジェルさん帰ってくだ さい」と何度か繰り返しました。いつもなら、社に行って帰ってくれるのですが、今日に限って、NOと 言って帰ってくれません。途中で止めるとたたりが有ると言われているので、根気よく「帰ってくださ い」とお願いしました。すると、社に入ったかと思うと、いきなり社から出てきて、紙の上をぐるぐる と回り始めました。
私は気味悪く思いながら、指を離されない様に、必死になって指に力を入れました。指に汗をかい てきて、離れそうになった時、いきなりパタっと動きが止まりました。その時に、動きに付いて行けな かった由佳は、指を放していました。
そして、すごい勢いで「ち・や・こ・に・く・い、ゆ・か・も」と動き、止まってしまいました 。由佳はその言葉を見るなり、泣きそうな顔をして、教室を出ていってしまいました。
私達は顔を見合わせてゾーッとし、そのままエンジェルさんを終わらせたくなったので、まったく 動かなくなった十円玉を指の力で社に入れ、十円玉を紙に包み込んでごみ箱に捨てました。嫌な気持ち で帰り仕度をし「あんなの、遊びだから、気にしないって……。もー由佳ったらー」と言いながら廊下 に出ました。薄暗くなった廊下を進み、階段を降りようとした時です。階段の下に、先に帰ったはずの 由佳が座っていました。
「由佳、何してるの?」「もう帰ったのかと思ったよ」「ほんと、エンジェルさんの事気にしない 、気にしない」と、由佳に近づきました。由佳は、私達の言葉が耳に入らなかったのか、一人ブツブツ と呟いていました。
「由佳?」と肩を叩いた友達が、ビクッとしたかと思うと、変な顔をして、由佳から離れました。 どうしたんだろうと、思って、由佳と友達の肩を叩こうとすると、由佳が立ち上がって、私達の方に 振り向きました。
「あっ!」私は、息を飲みました。由佳の顔なのですが、もう一つ顔が重なって見えるのです。 しかもその顔は悲痛に歪んでいるような顔で、憎んでいるような目をして、私達を睨みつけています。
恐くなった私達は、いっせいに走って、家へ夢中で帰りました。
家に帰ってからも、由佳の事は気にはなっていましたが、明日になったら元に戻っているだろう と、良い方に考え、いつものように振る舞う事にしました。家族と食事をしながらテレビの事や芸能人 の話をし、私はすっかり今日の出来事を忘れていました。夕食が終わり、私は部屋に戻って本を読み始 めました。
暫く本に熱中して読んでいると、母が「お友達から電話よ」と、電話を持って来ました。 今ごろなんだろうと受話器を取ると「み、美鈴、びっくりしないで聞いてね」と、 理沙からの電話です。
「由佳が、由佳が……知弥子殺したって、由佳から電話が……」と言って、泣いている声が聞こえ ました。何を言ってんだと思いましたが、今日の放課後、由佳がおかしくなった事を思い出しました。
「由佳、今何処にいるって?」「そんな事分からないよー」と、理沙は電話の向こうでパニックに なっていました。私もどうしようと焦りましたが「とりあえず、知弥子の家に行ってみない?」 「うん、じゃあ真理子にも電話して私の所で待ち合わせしよう」と、電話を切りました。
二十分後、理沙の家に私と母がつきました。夜は危ないからどうしても付いていくと母は付いて 来たのです。理沙の方も真理子の所もやはり母親同伴で、知弥子の家へと向かいました。
知弥子の家の前まで来ると、パトカーが四台も止まっていて、たくさんの人だかりになっていま した。何があったのか、近くにいた人に聞いたのですが、わかりません。中に入ろうとすると、母に 止められて、仕方なく帰りました。
次の日、朝早くに、担任から電話が入り、知弥子と、由佳が死んだ事をきかされました。
……すみませんこれ以上は書けません。自分から投書しておいて……ごめんなさい

エンジェルさんや、キューピットさんなど、さまざまな呼び方が 付いている様ですが、結局は、コックリさんと同じで、低級霊や、自縛霊など、そんなつもりが無くっ ても、呼び出してしまうのです。気軽な気持ちで、遊べるのですが、これは、とても危険な遊びなの で、決してやってはいけません。ここに投書してくれた美鈴さんは、悲しい気持ちを押さえて、皆さん に教えてくれたのです。皆さんも、後悔しない様にしてくださいね。
友達が一度に二人も亡くなったのですから、ここまで書いて投書してくださっただけで、 ありがたいと思います。お二人のご冥福をお祈りいたします。