仕事の都合で滋賀県の彦根市に行った時の話をしましょう。
大阪からJRの普通に間違って乗ってしまったので、2時間もかかり、
自分のどんくささに腹を立て、憂鬱な気分のまま、ある会社へ行きました。
仕事は順調に進み、夜10時には仕事も終わり、会社を出ようとした時です。
「ガサゴソ、ガサゴソ」と何かが動く音がしました。会社に猫なんて入って来ないだろうし、
ネズミかなんかだろうと思い、他の社員の人と部屋を出ようとしました。ところが、
「あれ?戸が開かない」
「えぇ!鍵かかってないよ!どれ」
そういって、戸をガタガタさせましたが、一向に開く気配がありません。
「もしかして……」
「なに?」
「なんでもない……」
なんなんだ、この人?
今日はついてない日だなぁ。なんてため息をつきながら、社員の人をみました。
彼は何かを考え、怖がっている様子でじっと床をながめては、
部屋をキョロキョロと見回していました
変な人だなぁと、思っているとまた、
「ガサゴソ、ガサゴソ」と音がしました。
もーなに!戸が開かず、変な社員と一緒だし、頭にきていました。するとどこから現れたのか、
手首だけの手が床をはっているのが目に入りました。
霊を見るのは慣れていたので、またかぁー!と思い、
無視して部屋の戸をガタガタさせていました。社員の人はまだ手首には気が付いていないのか、
じっとどこかを見ているようでした。
するといきなり凄い声で社員が悲鳴をあげて、近くの机に飛び乗りました。
そしてヒィヒィ言って、手首を指さしています。
「はぁあ……」私はため息をつき、冷たいけれど無視していましたが、あまりうるさいので、
「もー!うるさい!」と大声で怒鳴りました。
すると手首はスゥッと消えていき、社員の人もびっくりして私を見ました。
「一体なんなの!」と社員の人に詰め寄り、話を強制的にさせました。
今から6年前、この会社から投身自殺がありました。その時電線の上に落ち、
胴体や手足が電線で切れてしまい、目を覆いたくなるほど無残に路上でバラバラになっていました。
警察が来て遺体を拾い、遺体の破片をつなぎ合わせていましたが、
右手の手首がないと探していました。警察の手伝いで我々も散々探し回ったのですが、
出てこなかったのです。
それから夜、会社に残って仕事をしていると、手首の目撃者が現れました。
それも何人も何人も。そのうち残業したがる社員がいなくなり、皆早く帰る様になりました。
今日はそれほど遅くないので、出るとは思わなかった。なんて言うんです。
私はこんな会社に出張させられ、機嫌が悪くなって帰ったのは言うまでもありません。 |