HAND2
館長提供

仕事の都合で滋賀県の彦根市に行った時の話をしましょう。
大阪からJRの普通に間違って乗ってしまったので、2時間もかかり、 自分のどんくささに腹を立て、憂鬱な気分のまま、ある会社へ行きました。 仕事は順調に進み、夜10時には仕事も終わり、会社を出ようとした時です。
「ガサゴソ、ガサゴソ」と何かが動く音がしました。会社に猫なんて入って来ないだろうし、 ネズミかなんかだろうと思い、他の社員の人と部屋を出ようとしました。ところが、
「あれ?戸が開かない」
「えぇ!鍵かかってないよ!どれ」
そういって、戸をガタガタさせましたが、一向に開く気配がありません。
「もしかして……」
「なに?」
「なんでもない……」
なんなんだ、この人?
今日はついてない日だなぁ。なんてため息をつきながら、社員の人をみました。 彼は何かを考え、怖がっている様子でじっと床をながめては、 部屋をキョロキョロと見回していました
変な人だなぁと、思っているとまた、
「ガサゴソ、ガサゴソ」と音がしました。
もーなに!戸が開かず、変な社員と一緒だし、頭にきていました。するとどこから現れたのか、 手首だけの手が床をはっているのが目に入りました。
霊を見るのは慣れていたので、またかぁー!と思い、 無視して部屋の戸をガタガタさせていました。社員の人はまだ手首には気が付いていないのか、 じっとどこかを見ているようでした。
するといきなり凄い声で社員が悲鳴をあげて、近くの机に飛び乗りました。 そしてヒィヒィ言って、手首を指さしています。
「はぁあ……」私はため息をつき、冷たいけれど無視していましたが、あまりうるさいので、
「もー!うるさい!」と大声で怒鳴りました。
すると手首はスゥッと消えていき、社員の人もびっくりして私を見ました。
「一体なんなの!」と社員の人に詰め寄り、話を強制的にさせました。
今から6年前、この会社から投身自殺がありました。その時電線の上に落ち、 胴体や手足が電線で切れてしまい、目を覆いたくなるほど無残に路上でバラバラになっていました。
警察が来て遺体を拾い、遺体の破片をつなぎ合わせていましたが、 右手の手首がないと探していました。警察の手伝いで我々も散々探し回ったのですが、 出てこなかったのです。
それから夜、会社に残って仕事をしていると、手首の目撃者が現れました。 それも何人も何人も。そのうち残業したがる社員がいなくなり、皆早く帰る様になりました。
今日はそれほど遅くないので、出るとは思わなかった。なんて言うんです。
私はこんな会社に出張させられ、機嫌が悪くなって帰ったのは言うまでもありません。