マンション
館長提供

大学に進学が決まり、兼ねてからの念願でもあった一人暮らしを出来る事になりました。 まず住む所を探そうと、不動産会社を色々あたりましたが、 なかなか思う様な物件が見つかりませんでした。 それでも根気良く探して漸く古い1LDKのマンションでしたが、部屋がわりに広く、 家賃も相場よりかなり低めなのにひかれて入居する事にしました。
引越しの日、友人五人が引越しの手伝いに来てくれたので、 荷物の整理に思ったほど時間はかからず、夕方には部屋が片付いていました。 夕飯には少し早いけれども友人が手伝ってくれた感謝と引越し祝を兼ねて夕食を食べました。 お酒を飲み、ワイワイ騒いでいたのですが、夜も更け、家が近い三人は 「そろそろ帰るね」と言って帰って行きました。残った二人は終電の時間を忘れていたために、 電車が無くなり、泊まる事になりました。気が合う友人が泊ってくれる事になったので、 嬉しく思いました。実は、一人暮らしにあこがれて引越しをしてきましたが、 独りでやって行けるのだろうか、一人になるの寂しいなぁと思っていたのです。 今日一日でも誰かが居てくれるだけで心強く思えるのです。
私達はまたお酒を飲み、ワイワイと騒いでいたのですが、いつのまにか眠ってしまいました。
明け方に、足元でゴソゴソと誰かがしてるのに気付き、目が覚めました。友達がまだ起きて、 ゴソゴソしてるのだと思い、起き様としましたが、身体が自由に動きません。
これが金縛りかと思い、恐くなって友達に助けを求めましたが、声がでません。 目だけを足元へ動かし、何の音か確かめようと目を凝らしてみました。黒い影が揺ら揺らと揺れ、 その影がゆっくりと端っこに寝ている友人の上に覆いかぶさる様に見えました。 恐くて恐くてたまらず、力いっばい叫びました。「ギャー」と言う声に吃驚して、 友人の一人が目を覚ましてくれました。
「変な夢でも見たの?」と、眠そうに言われましたが、もう一人の友人が真っ青になって 「ここは俺の部屋だ。なんでここに居るのだ、とっとと出て行け」と凄い形相の男に言われたと、 震えながら訴えました。私も黒い影を見たといったら、こんな所居られないと、 三人して家を飛び出しました。
そして、空が明るくなるまでファミレスに居ましたが、恐かったのですが、 もう一度部屋に戻り、中の様子を伺いました。 引越しした時には無かったはずの染みが壁に浮き出ていました。 壁紙は新しいのに張り替えていたはずなのに……。私達は不動産会社の開くのを待って、 行きました。
マンションで起こった出来事や、クロスの染みの事を話しました。しかし信じてもらえず 「変な事を言うのはやめてください」と、反対におこられてしましました。しかし、 近くに居た中年の会社の人が、私達の前に来て、あそこは四年前に、自殺した男が居ると、 教えてくれました。それからは新しく入居した人が一週間もしないうちに引っ越して、 なかなか借りてが付かなかったので、家賃を下げ、借りてを付くのを待っていたそうです。
私は、そんな事聞いてないと激怒し、あんな所に住む気にはなれなかったので、 マンションをその場で解約し、実家に戻りました。
もう二度と私は、独り暮らしをしようとは思いません。 少し長くなりましたが、私が体験した話でした。