水子霊
大分県別府市在住 風子さん提供
場所大分県個人宅にて

私は若気の至りから、子供を二度降ろした事があります。
一度目は高校一年の時。十六才だった私は、援助交際で子供が出来てしまったショック でどうしようもなくなり、両親に子供が出来た事を告白して学校にバレない様に長崎まで行って、 産婦人科で子供を降ろしました。
子供を降ろした事に関しては、全く罪悪感はありませんでしたが 「もし学校にバレたらどうしよう!」とか「これで親に頭が上がらなくなったなぁ!」 と自分勝手な事ばかり心配してました。
二度目の中絶は大学1回生の時。
私は一度目の失敗に懲りずまだ援助交際をしてました。 それによって誰の子が解からない子をまた妊娠してしまい、大学で付き合っていた彼に 「貴方の子よ」と嘘を付いて中絶費を出してもらいました。彼は子供を産む様に言ってくれましたが、 誰の子だか解からなくなっていたのでそんな事はできるはずがありません。 彼には私が援助交際をしてた事なんて、全然知らないのでこんな事言える訳なかったんです。
ですから私は彼の言葉を受け入れる事が出来ずに中絶をしてしまいました。
勝手に中絶をし中絶費だけを彼に請求したので、彼は私に何も言わずにお金30万だけ渡し、 私の元を去ってしまいました。
こんな身勝手な私に彼も愛想をつかしてしまったのです。
「それからは絶対にこんな事はやめよう!」
「二度も中絶をしたんだから、絶対に子供は産まない」と心に誓い、 これまでの態度を改めました。

それから約4年。私はある会社に就職し、とても素敵な男性に出会い、結婚しました。
人と言うのはとても身勝手で、私は幸せにドップリ浸かって「子供を降ろした事、 子供は絶対作らない」と自分で誓った事を忘れてしまい、今の主人の子供が出来、 手放しで喜んでいました。
主人も子供が欲しいとよく口に出して言っていたので、私が妊娠した事をとても喜んでいました。
まだ3ヶ月で子供がお腹の中で動くはずがないのに、私のお腹をさすり、耳を当てたりして 「あっ、動いた」なんて言っては嬉しそうに喜んでいました。
しかし、その幸せも長くは続きませんでした。
私や主人に異変が起こり始めたんです。
事の起こりは、私が妊娠4ヶ月に入った頃でした。 いつも主人は幸せそうに私のお腹をさすっている時です。
「これなんだ?」と、主人が私のお腹をさすっていて言いました。
「何もないでしょ?」と、私がお腹を触ってみた時です。何かボコッとした物があるのです。
「何これ?」私もビックリしました。なんか骨みたいな固い物が……。
「きっと赤ちゃんがお腹を蹴ってるんだよ!」と主人は嬉しそうに言い 「いやぁ〜、元気な子だなぁ〜」と言って耳を当てたり、 手でボコッと出てる場所をさすったりして喜んでいました。
そんな主人を見ていて「赤ちゃんって、4ヶ月や5ヶ月でお腹蹴ったりしない……」 なんて言えませんでした。
私は主人が会社へ行ってる時にでも、母親と一緒に病院へ行こうと思い、 その時はちょっと気になりながらも床につきました。
次の日、主人が会社へ出勤した後に、母親に連絡して来てもらいました。
「おかあさん忙しいのにごめんね。ちょっとここがおかしいの……」と、 私は昨日ボコッとなっていた当たりをさすって見せました。
「なにかしらねぇ〜?」
私達はちょっと心配になって病院に行ってみました。
病院の待合室には妊娠中の妊婦さんでゴッタがえしていました。 診察してもらうのに待ちそうだなぁ〜なんてちょっとブルーになりながらも、 2時間ほど待ち、やっと診察してもらえました。
診察室に入って診察し、超音波で子供がどうなっているのかを見てもらいました。
「お子さん三人共元気そうにしてますよ。」
「えっ!!三人???」
「三人って三つ子って事ですか?」
「そうですよ。あれ?知らなかったんですか?」そう言って先生がカルテを見て
「あれぇ〜?おかしいですねぇ〜。」と近くにいた看護婦を呼んで、 カルテが間違ってるのではと聞いていました。
「ちょっとお待ちくださいね」そう言って先生と看護婦さんは診察室を出て行ってしまいました。 私と母は診察室に残され、不安な気持ちになりました。
しばらくしてすぐ、先生と看護婦が来て「この前の診察の時の超音波写真持ってますか? こちらでも保管していたつもりなんですが、他の患者さんのがまじってしまったみたいで」
なんて言うんです。まっ、たまにはそんな事もあるでしょうね。 きっと・・・なんてあまり深く考えずに、 今まいで撮ってもらった超音波写真を手帳から出して先生に渡しました。
「……」
先生は私の超音波写真をしばらく見つめ、また看護婦さんと診察室を出て行きました。
「いったい何なのよ!すごく気になるじゃない!」そう私は心の中で叫びました。
看護婦さんが一人で戻って来て、別の部屋に来るように言われました。一体何なの? と不安になりながらも、 案内された部屋へ入ると、今さっきまで見てもらってた先生と、他に2人の先生が居られ、 なんかすごい大きな装置が置いてありました。
「ここに横になってください。もう一度エコーで見てみましょう」
私は診察台に横になって、ゼリーのような物をお腹に塗られて、 テレビの画面にお腹の中の様子が写し出されました。
「あれ?」
先生がビックリした顔で言いました。 「今さっきは3人胎児が居たのに、おかしいなぁ〜?」と首を傾げてます。
「へその緒を見間違えたのでは?」と他の先生が言われていましたが、 診察室で見た時に写真も撮っていたので、それを他の先生に見せていました。 「どういうことだ?」そこには紛れも無く3人の胎児の心臓と輪郭がはっきり写し出されていたのです。
「きっと何かを見間違えたんでしょう。心配なさる事は無いですよ。 お子さんは元気に育ってらっしゃいます。ボコッとした感覚は、 妊娠中にはよくある事ですからご心配なく」
さっきので散々人を心配させといて、しかも再検査までしてしかも先生ずらりと勢揃いまでして、 言われたコメントはこれだけ。こんなんじゃ、不安になるに決まってるだろ!
そう心の中で思いながら、なにもなかった事を少し安堵しました。
家に帰ってきた私と母は、散々病院の悪口をたたき、 すっきりしたところで母は帰って行きました。するとしばらくしてものすごいお中の激痛が走り、 その場にしゃがみ込みました。
「痛い!」誰かにお腹の中を殴られてる感覚がしました。
まだお腹を蹴ったり出来るはず無いのになんで! そんな事を思いながら自分の意識がなくなっていくのが解かりました。
意識が無くなったんだけれど、なんか不思議な体験をしたんです。
暗い狭い部屋に一人で寝ていました。しかし次の瞬間、 いきなり誰かに何かでひっぱり出されそうになり、必死で抵抗しようとしたのですが、 結局どこか明るい場所に出されました。しかもすごい傷みが全身に走り、 いままで経験の無い痛みで気絶しました。
どれくらい時間が経ったのか、主人が帰って来ており、私がソファーでうたた寝をし、 魘されているのを心配して揺り起こそうとしていました。
「今のは一体?」私はハッと気が付き、主人に今経験した事を話ました。しかし主人は 「寝ぼけてるの?」と私のいってる事にみみを傾けてくれませんでした。
私も少し考えてから「やっぱり夢?なのよねぇ。なんかすごいリアルな夢だったわ」 と、思う事にしました。実際に自分自身本当に起こった事とは考えられない出来事でした……。
それから暫くは何事も起きなかったのですが、また変な事が起きました。
夜の一時に息苦しくなって、主人と同時に目を覚ますんです。 きっと蒸し暑いせいで目が覚めるのだと、主人も私も思っていました。
しかし、赤ちゃんの泣き声がするんです。しかも近所には子供もいないのに。
だから、猫が泣いてるか、テレビで赤ちゃんが出てる番組でもしてるのかと思っていたのですが、 毎日毎日同じ時間に赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる。 どう考えても毎日テレビで夜中に赤ちゃんが出てる番組なんかするはずないし、 猫の泣き声にしても時間が正確すぎるし……。
私は泣き声の主を探してみようと思い立ち、 主人と夜中に子供の泣き声のする方を辿ってみました。
すると……。

続きはまた……。