私が小学校6年の時、神戸の鈴蘭台にいた頃の話です。
その頃、新しく引越した家は小さく、とても古い家でした。家の中や外壁に手を加え、
見た感じは新築同様に見えるぐらい改装し、綺麗な家になりました。
家に引越しして暫くはなにも起こらず、曲がりなりにも平和で楽しい生活でした。
ある日私が学校から帰宅し宿題をしていると、
眠気に襲われ我慢できなくなってベットで昼寝をしてました。
ウトウトしていると人に見られてる気配を感じ、恐くなって目を覚ましました。
ボンヤリと全身が真っ黒な人が、私の側でジーっと見つめています。
私は寝ぼけていたので祖父だと思い、またスヤスヤと寝入ってしまいました。
その日の夜、なぜだかわからないが自分の部屋で寝るのがとても恐く、
ベットで寝ようとしましたがますます恐くなり、両親のいる部屋に布団を持って、
寝ている両親の横で、勝手に眠りました。
次の日の夜、前の日に感じた恐怖感が、まったく感じられず、自分の部屋で眠る事が出来、
私の勘違いだったんだと思いました。
暫くはなにもない日が過ぎて行きました。
忘れもしない、中学1年の春、5月15日の夜に異変が起こりました。また恐怖感が私を襲い、
目の前に真っ黒い人が現れました。顔も真っ黒でその人の表情が見えず、
ただ私の前に立っているだけなのです。顔が分からないのに、
その人に見つめられている感覚があります。とても冷たく、冷ややかな感じ……。
私は恐くなって両親の部屋へ逃げたかったのですが、怖さで体が硬直し、動けずにいると、
見たこともない中高年の男の人が何処からか現れ、その男を追い払ってくれました。
そして私に微笑みかけ、何も言わずにスウッと目の前で消えていきました。
私はパニック状態になり、凄い声で大声で叫び、その場に倒れました。
目を覚ますと両親が心配そうに「恐い夢でもみた?」と聞いてきましたが、
なにも話す気になれず、放心状態でボーッとしたままでいると「やっぱり恐い夢を見たのね。
もう大丈夫だから、寝なさい」といって、私が寝入るまで、側にいてくれました。
6月に入ると、また引越しをしました。これであの悪夢とさよなら出来ると、
安堵していました。
8月1日、また夜に異変が起こりました。新しい家の二階で寝ていると、
火の玉がベットの上をユラユラと出現し、黒い人が現れたのです。家に憑いてたのではなく、
私に憑いてるのだと確信しました。
しかしなぜ現れるのか、その時は全く覚えがなくただ恐怖感を感じ、どうする事もできませんでした。
その日はすぐに消えましたが、変な夢を8月9日まで見ました。その夢のおかげで、真っ黒い人が誰で、
なにをしに来たか解かりました。
夢は真っ白い所から始まり、家族全員と祖父母が出てきます。
そこには何もなくただ真っ白いだけで、
いつも真っ黒い人が3人出てきて私達を捕まえようと追いかけるのです。
毎日少しずつ私達の逃げる方向や追いかけて来る方向は違いますが、
私達は必死で黒い人から逃げようとする行為は変らず、夢を見続け、
起きると全身ドッと疲れ、汗でビショビショになっていました。
8月9日、いつもと同じ夢で私達は黒い人から必死になって、逃げていましたが、
なんだかその日の夢は少し違っていました。知らない男の人が出てきて、私達を黒い人から守ろうと、
黒い人の行くてを祖父と阻み「早く逃げなさい!早く!」と言って、
私達を逃がそうとしてくれるのです。両親や兄弟、祖母は逃げて行き、私は祖父の事が心配になって、
後ろを振り向いた瞬間、黒い人がいつの間にか持っている、先の尖った物で、祖父の胸を刺しました。
画面は変わり、とてつもなく長い上り坂の前に、私や家族が立っていました。
しばらくその場に立っていましたが、みんなで坂を上り始めました。坂を登って行くと店があり、
パン屋、洋服屋、着物屋、肉屋など、たくさんの店が並んで建っています。
家族は洋服やパン屋に入って行ったりしていますが、祖父だけがそんな店には見向きもせず、
坂をどんどん登って行きます。私はそんな祖父を心配し「まだみんな来てないから、
ここで待ってよ!ねっ!」と話かけましが、なにも言わず、振り向きもせず、
ただ頂上を目指して歩いています。
そんな祖父がすごく気になり、私も置いてかれない様に、小走りに祖父の後を追いました。
店は、白装束だけを取り扱っている店、花屋、墓石屋などが立ち並び、
なぜか私の心に不安をよぎらせます。そんな店も無くなり、だんだん霧が出てきました。
坂を登るほど霧は濃くなって行き、後ろを振り替えると、家族が花屋に入って行くのが見えました。
「おじいちゃま!」私が祖父を呼び止めようとすると、真っ白な空間から、木で作られた、
二人ほどしか乗れないぼの小さな船が、私と祖父の前に寄って来ました。
その船には、知らない、いいえどこかで会った事のある男が乗っていました。
その男はやさしく微笑みかけ、祖父はその船に乗ってしまいました。
「おじいちゃま、私も行く」と言うと「お母さんが心配するから、帰りなさい」そう言い残し、
船は出てしまいました。
私は悲しくなり、母にそのことを言わなければと、振り返った瞬間、どこからか電話の音がし、
目が覚めました。
時計を見ると、午前6時になっており、母の声が階段から聞こえました。
「あぁーおじいちゃま死んだんだ」なんとなくそう思っていると、母が悲しそうな顔をして
「おじいちゃまが今亡くなったって……」目に涙を浮かべ、服を着替えるように促しました。
服を着替えながら私は、いままでの事をやっと悟りました。黒い人は命を狙って来ていた事、
知らないおじさんは前に私を黒い人から助けてくれた人、そして祖父を黒い人から守り、
迎えに来た……。
もし私があの船に乗っていたら、私も死んでいた……。
それからは、私の前に黒い人は現れなくなりました。
祖父が死に一年目のお盆、祖父と祖父を迎えに来た男が、夢に現れました。
ふたり仲良く笑いながら私の家に来て、私がお茶を出し、なにかを会話した夢。
これで私の見た夢はおしまいです。 |