霊に憑かれた恐怖
東京都世田谷区 前田さん提供

場所は神戸での体験談です。
それはちょうど7年前の9月に起こった、不思議な出来事です。
その年の4月から私は、神戸の実家へ戻り、 大阪の肩凝りの時に貼るもので有名なある会社に転職し、関西での生活を始めました。
実家といっても私は東京育ちだったため関西での生活は初めてで、休みの度に梅田や河原町、 三宮など色々な場所に、一人で遊び歩いていました。
ある時、私の母方の亡くなった祖母がとても信心深い人で、 道端のどんな小さい御地蔵さんにも手を合わせていたのを思い出し、 自分も実践してみようといろんな祠や神社に手を合わせていました。
関西は歴史も古く、至る所に祠があります。
9月に入ったある日、2ヶ月ほど前から東京に戻りたくなっていた事と仕事が面白く無くなって悩ん でいた事もあって、上司に注意を受けた切っ掛けで、退職届けをその日の昼休みに便箋に書いて上司に 提出したあげく「気分が悪いので早退します」と言って、さっさと職場を出て帰ってしまいました。
家に帰ると両親に変だと思われるので梅田の駅前の喫茶店に入り、 ばかな事をしたなぁと考え事をして、アイスコーヒーを飲んでいると本当に気分が悪くなって、 自分の体が勝手に動きそうな感じがしました。
「なんだぁーこの奇妙な感じは?」と、恐ろしく思えてきたと同時に、頭の上から「ドカーン」 と何かが落ちてきたような衝撃を感じました。
私がいるのは壁際ではなく、喫茶店の端に近い中の席に座っており、 壁に掛けてある物が頭の上に落ちて来るはずもなく、 テーブルの下や座っている辺りを見回したのですが、何も落ちていない……。
私は気が変になってしまったのではないか、何かの病気にかかってしまったのではと思い、 梅田駅の前にある済世会病院に駆け込み、 死ぬかもしれないからすぐに診察してほしいと受付けの人に頼みました。
しかし「済世会病院では、予約がなければ診察は出来ません」と冷たく言い放たれました。 しばらく粘って頼みましたが診察してもらえず、予約を取り「早くても一週間後でないと、 予約でいっぱいで空いてません」と言われ、諦めて予約だけ取って家に帰るしかないと思い、 阪急神戸線に乗って御影駅までの帰路についたのですが、 電車の中で勝手に涙が流れてきて、念佛(南妙法蓮華経)まで唱え出す始末です。
御影駅に着いても家に帰る気が起こらず、 喫茶店に入り頼んだレモンスカッシュも飲まずに、 亡くなった祖母に無意識に助けを求め、又今日の職場での言動を詫び、 どうすればいいのか尋ねていました。
すると「世のため、人のための仕事をしろ!」 というインスピレーションが頭の中に湧いてきました。世のため、人のためって、 何すればいいんだよと思ったけど、その後は、何も頭には浮かびませんでした。
その内気分も落ち着いてきたので家に帰ろうと思い、喫茶店を出て家に帰りました。
家に着くとなんともなくなっていたので親には何も言わずシャワーを浴び、 夕食のチャーハンを食べ始めました。すると又気分が悪くなり、唇が痙攣し、 食べる気力がうせてしまったので、具合が悪いといって横になって「ウー、ウー」と言いながら、 右足を伸ばしたり縮めたりして動かしていました。
それを見た母親が、顔色が真っ青で普通じゃない僕の様子を見て、 救急車を呼んでしまったのです。僕は日頃、風邪もひかない健康優良児だったので、 かなり驚き心配してくれたのでしょう。今思えば、母に見せるために霊が異常を起こしていたのでは、 と思います。なんせ、私の両親は100%その種の出来事を信じていない、信じないタイプだからね(^-^;
僕はせっかく母親が救急車を呼んでくれたので、 救急車に乗って病院に連れて行ってもらう事にしました(まっ気分も悪かったし……)。
病院に着くと、先ほどまでの状態は治まってしまい、なんともなくなっていました。 病院の先生に診察してもらってもなんともなかったし、母親が心配するといけないので、 その事を何度も伝えてもらいました。先生には、母親が多分僕の顔色が悪く見え、 慌てて救急車を呼んでしまったのだと言って、家に帰りました。
次の日、なんともなくなっていたので会社に出社したのですが、 昼休みにうどんを食べていると、また気分が悪くなり、動けなくなってしまい、 一緒に居た先輩に上司を呼んで来てもらう様に頼むと、ビビリながら上司を連れて来てくれました。
僕は上司に自分の状態を見てもらい、仮病でない事を見せつけたかったのです。 相性の悪い上司も、私の状態が普通ではないと解ったようで「すぐ早退したほうがいい。 誰かに付き添わせようか?」と心配していました。
しばらくじっとしていると動ける様になったので「電車で帰れます」と上司に告げ、 会社を早退しました。
家に帰ると親が心配するといけないので、三宮まで行きセンター街をウロウロしていると、 右手の親指が痙攣してきました。
これまでの状態から、これは病気ではなく何か霊的なものに違いないと思い、 取り殺されるるのではないかとすごく恐くなり、想いついたのが宜保愛子さんだったのです。 宜保愛子さんなら何か解るだろうと、東京に居る彼女に電話していきなり 「霊に摂り憑かれてしまったんだ。宜保愛子さんに観てもらう方法はないか」と訊くと 「えっ、宜保愛子さんは忙しいみたいだし、よほど親しい人でないと観てくれないらしいよ」 と言われた直後、受話器から微かにボォォォーと雑音がしてきて、だんだん大きな音になってきて、 彼女の声が聞き取れなくなってきて、ブッと突然電話が切れてしまいました。
僕はビビリまくり、すぐに彼女に電話を掛けると「現在この番号は使われていません」 のメッセージが聞こえてくるのです。
そんなばかな!何十回も掛けている電話番号なのに……。もう一度、ひとつ、 ひとつ番号を確かめながら、押してかけても「現在この番号は……」のメッセージ。 僕の恐怖はピークに達し、気が狂いそうな状態と戦いつつ、神戸の友人に電話をして 「どこかに、御払いしてくれるお寺、知らない?」と尋ねてみると「お寺は知らないけれど、 元町に占いの館といって色々な占い師がいる所なら知ってるよ」との事。
僕はそこでいいから、連れていってほしいと言って、今すぐにと頼み込んだのです。
了承してくれたので、僕は友達が来るのを待っていました。しばらくボーっとしていると、 少し気が落ち着いてきたので、また東京の彼女の家に電話を掛けてみました。 すると先ほどは電話出来なかったのに、何故か一発で繋がりました。
僕は「こっちで何とかなりそうだから、宜保愛子さんはもういいからね。それと、 さっき電話切った?」と聞くと「なんか、雑音が入って、いきなり切れたので心配してた」との事。
そして占いの館へ行くのですが、 こっからが想い出すのも恐ろしい恐怖の体験の始まりだったのです。
JR三宮駅で不安な気持ちのまま友達と待ち合わせ、友達の姿を目にした時、 やっと孤独感から開放された気分になりました。しかし日も暮れてしまい、 町は夜の闇が支配しています。街には街灯や店の明かりはあって辺りは明るいけれど、 夜になってしまった事で恐怖心が増していました。
友達には何から話そうかと考える余裕も全くなくなり、 それでも僕は、何か話そうと口を開きました。
「信じてもらえないかもしれないけど、今起きてる状況は、普通ではない事なんだ」
友達は無言のままだったけれど、僕の様子を見て本能的に何かを察しでくれた様でした。
「ここから、占いの館まで、どれくらいかかるの?」と聞くと「歩いても20分ぐらいかなぁ」 と言ってくれました。
僕はなるべく人が多くて明るい場所を通りたかったので、三宮のセンター街を通り、 大丸の前を過ぎ、交差点を渡って元町の商店街へと入って行きました。
商店街に入ると「占いの館」と書いてある小さな看板を見つけました。
占いの館のあるビルの階段を登ってすぐの所に、 長屋の様な感じで小さなスペースに占いの種類ごとに分かれていました。 入り口から入って直ぐの所に心霊写真が貼られてあり「霊感占い」と書いてありました。
僕はここなら解ってもらえそうな気がして「ここにするから、待ってて」と友達に言い、 チケットを買うと「霊感占い」と書いてある所を入って行きました。
中に入ると男の人が神主の様な服装を着て、座って誰かが入って来るのを待っていました。 「聖徳太子の様な服だなぁ」と思いながら、 目の前にあったイスに腰掛け、目の前にいる男の人に挨拶をしました。 男の人は僕に名刺を差し出して、挨拶してくれました。
名刺には「S麻呂」と書いてあり、何度かTVにも出演された事もあった様で、 知っている人もいるかも知れないが、僕はその時はまったく知りませんでした。
S麻呂「どうしました?」
僕「あの、何か霊に摂り憑かれたみたいなんです。祓ってもらいたいのですが……」
S麻呂「馬鹿な事を言うんじゃない!人間には誰にでも、霊は憑いてるもんだ」
僕「いっいゃー、絶対変なんです」
S麻呂「どれどれ……。確かに憑いてるみたいだ。」
僕「何とかしてください、お願いします。で、お礼金はいくらぐらい掛かるんですか?」
S麻呂「今は祓わない方がいいみたいですね。」
僕「ひぃーーーーそんなぁー、じゃーいつなら良いんですか?」
S麻呂「必要な時期が来れば、ここに勝手に来るから」
僕「今すぐ何とかしてください」
S麻呂「きみ、お祓いとか行ったね。あんまり何でもかんでも、行くのは止めた方がいいよ」
なんで解かるんだろう……。
S麻呂「おや、ご先祖さんが弱ってるね」
僕は恥ずかしながら、じぃさん、ばぁさんが亡くなってから、 一回も墓参りに行った事がなかったのです。
僕「お墓参りに行ってないからですか?」
S麻呂「そんな人は沢山いるから、それは関係無いと思います。……ん、 君は観音様に縁があるみたいだから、観音様を祭って有る、寺にお参りするといいよ」
僕は拍子抜けしてしまい、こいつ適当な事を言ってんじゃないかと思い、カマをかけてみました。
僕「僕に守護霊はいますか?」
S麻呂「います」
僕「それは誰ですか?」
S麻呂「父方の祖父ですね」
僕「生前の仕事は、判りますか?」
S麻呂「今で言う、役所みたいな所ですね」
僕の祖父は、今で言うと郵便局に勤めていたと話に聞いた事があります。 僕はS麻呂の事を信じる事にしました。
S麻呂に「また来ます」とだけ言い残し、占いの館を出ました。
友人と喫茶店に入りコーヒーを飲んでると、しばらくして線香の匂いがしてきました。 友人と顔を見合わせ、店員の人に「今お線香をたいてます?」と聞くと、 なんでそんな事を聞くのかという顔で「いいえ」と答えました。
僕は嫌な予感を感じ、恐くなっていました。

何回かに分けて、アップさせて頂きます。続きはまた……。