友達の家から自宅へ帰ってくる途中に「天理トンネル」がいります。ここは別に心霊スポットではないと思うし、噂でも聞いた事がありません。それがお盆の時期が少し過ぎた日に、トンネルの前に若い男の人が手をあげて立っているのを見ました。タクシーを拾うつもりかなと思っていましたが、ここは夜中ほとんど車は通りません。なんとなく気の毒に思って車をその男の人のわきまでバックさせ、声を掛けてみました。
「こんな時間にここで車待ってても、来ないけどお急ぎですか?」
声を掛けても返事がありません。気持ち悪いやっちゃなぁー、と思って車を走らせようとすると
「天理市内まで乗せていただけませんか?」と話掛けて来た。
「天理市内は遠回りになるし、通らないから大和郡山市内なら」と言うと頭を立てに振って、車の助手席に乗り込んできた。
なんかむっちゃくちゃ陰気な顔して前をじっと見つめているので、気味が悪かったし顔色もすごく悪かったので、気分が悪いから病院でも行くんだろぅなんて勝手に思いながら運転していた。
それが、彼が車に乗り込んで来た時からなんかしらんけど、むっちゃゾォ〜っとするほど車の中が寒くなってきた。夏の暑い日でクーラーガンガンに付けてないとやってられへんくらいなのに・・・・・。俺は車のクーラーを消して窓を開けると、ムッとするぐらいなま温かい暑い風が車の中に流れ込んで来る。変やなぁ〜?きっとクーラーガンガンに付けてたから、体の芯まで冷えたんやなと思って暫く窓を開けっ放しにしていた。すると彼が
「あの〜乗せてもらっててこんな事を言うのはなんですが、とても寒いので窓を締めて頂けませんか?」と言う。こんなに暑いのに寒いのか?不思議と言うよりやっぱりこいつ変だと思った。窓を閉めているより、窓を開けて居る方が温かい風が入って来るのに・・・・・。やっぱり病気なんかな?
そんな事を思いながら窓を締め、早く市内に出たいと急いで車を走らせた。
やはり車を締めると寒い・・・・・。
クーラーはとっくに消してるのに・・・。
窓を開けて少しは体は暖まったはずなんだが・・・・・。
隣に座ってる奴もブルブル震えてる・・・・・。
あぁぁ〜早く着かへんかなぁ〜(><)
俺は段々イライラしてきて、車の運転が雑になっていた。するとまた隣に座っている奴が
「この辺ですよ。危ないから気を付けないと・・・」
そんなん言われんでも解ってるって!心でそぅ思いながらも
「そうですね。」なんて心にも無い事を言っちまった。それが隣に座っている奴には解ったのか
「ここまじで危ないからゆっくり行っとけよ俺・・・・・」その後の声が聞こえんかった。
「なんやって?」俺が聞き返しても返事してくれへん。全く変な奴を乗せちまったと今ごろ後悔していると
「あっ!」奴が大きな声をあげるからびっくりして急ブレイキを掛けた。
「なんじゃい!びっくりしたやんけぇ!」と奴の方を見たら誰もおらへん。
あれ?
おっかしいなぁ?
車の外に出て行ったんか?
こんな所で?
まだ市内に行くには遠いぞ?
そない思って奴を探しに車の外に出た。車の中に居る時は気が付かなかったけど、なんやらここで事故があったようだ。
道路にスリップした後とガードレールが凹んだ所がある。やなとこで降りよったなぁ〜と思ってると、何処からかタイヤがなんなかに擦れながら回っている音とタイヤが焦げてるみたいな匂いが立ち込めてきた。
?????
恐る恐る辺りを見て回っていると・・・・・
「事故!」そこには一台のバイクがガードレールの凹んでる部分から落ちたらしく、崖の途中で止まっていた。しかも今事故に合ったみたいだ。俺はびっくりして携帯で警察に電話をした。
電話してからも落ちてる奴が気になって何度も声を掛けたりしてたけど、返事は戻ってこない。
「警察は何しとんねん!」とイライラするばかり。
電話して15分ほどして漸く救急車が来た。
でもガケの下だから救助には行けない・・・・・。
そんな事言ってたら下の奴死んだらどぅすんねん!
俺はイライラと人が事故したのを見て怖くなっていた。
はよ助けたらな・・・・・。
気持ちだけがせく・・・。
5分ほどしてレスキュー隊みたいなのが来て、漸く人が道路まで上がって来た。救急隊が慌ただしくしていたが
「即死だったようです」と俺に告げた。
俺は目の前で人が事故で死んだのを初めて見たから、頭の中はパニック状態。
しかも目の前でタンカーに乗せられて行く奴の姿をパニックになった頭でボーっと見ていてハッと気が付いた。
「奴だ!」俺の車に乗せていた・・・・・。
どういう事だ?
パニックが錯乱状態になって、俺は救急車に乗せられてしまって、安定剤を投与され、別に何処もおかしくないのに、奴の横に寝かされて近くの病院へ運ばれた。
少しずつ落ち着いてき、頭の中で整理していても理解出来ない。
一体なんだったんだ?
翌日、彼が死亡した事故の記事が、新聞の三面記事に小さく載っていた。
事故を起こした人が、早く見つけてほしくて出て来たのではありませんか?
しかも貴方の運転が事故につながるかもしれないと、注意もしてくれ、とても心の優しい人だったようですね。
彼のご冥福をお祈りいたします。 |