枕元に立つ父
兵庫県西宮市に住む沼田 茂さん提供
場所は三重県の個人宅

数年前、父が死にました。死因は交通事故、路駐の為、反対車線にふくらんだ、 ダンプに跳ねられるというあっけないものでした。
その時はもう、父と母が離婚して15年ほど経っており、複雑な思いがありました。 母にすれば、浮気されたり、借金があったりで、父には結構「人生を台無しにされた」 という被害者意識が強くても仕方ありません。 父の悪口を聞く度に私は嫌な気分になったものです。

在る日、ベットで横になっていると、頭の中に意識が入ってきました。
「家族…仲良くしろ…」そんな感じの事を一方的に語りかけてきます。
「あなたはお父さんなのか?」という問いには答えてくれません。 なんせ、体中が熱を持ったように熱く、その語りかけてくる意識に注意を向けるのが精一杯です。 肉体というのがじぶんから無くなってしまい、ゼリー状の自分が意識の炎にあぶられているような感触です。 内容は、弁解めいたものが多く、私が母に伝える事を前提に喋りかけてきました。
「あの時こうしたのは、こういうつもりで・・・悪気はなかった・・・云々」 2、3回こういうのが続きましたが、母に話したら「嘘をつくな」と馬鹿にされそうだったので、 言わずに過ごしてました。それでも母が「何か最近家の中に人の気配するよね」と言うので、 思いきって話してみることにしました。 聞く前は馬鹿にした態度だった母も話しをきくうちに真面目な顔つきにかわりました。 「そう…、『何故私の所には来てくれないんですか?』って言ってちょうだい。」
その晩、部屋の扉がすうーっと開いて(回して開けるドアです普通押しても開かない) 例の感覚がしたので、母の伝言を伝えました。父は「いろいろ事情があるんだよ…」といっていました。 その時、私は自堕落な学生だったので「もしかして、私が暇人だから…とか?」と問いかけたら、 返事がありませんでした。もしかして図星?その時も一方的に母に言いたいことだけ言って去っていき ました。時間帯は二時ちょうどとか、夜中のキリのいい時間帯だったように思います。 すっかり私を通して二人が会話するというのが定着しました。 私が生まれる前の事なんかもあって訳わからなかったですが…
「どうして、もっと愛してくれなかったんだ!」とか
「だったら浮気なんてしないで下さい!」など、およそ子供に聞かせるには恥ずかしい話題も 仲介役そっちのけでやっておりました。 私もその当時は体がフラフラで全部の会話を覚えてはいませんが、中でも母の 「今あなたは幸せですか」という問いに
「そんなこと聞いている場合じゃないだろう! 自分のこと心配しろ!」とのコメントが変でした。死んだ人間に「今、幸せ?」はタブーなのか… この、父が出てきた事によって、いろんな事を知りました。 父の両親のことや、二人(父と母)の思い出深いことなど…母にとってはあまり都合のよくない 話題にもなりましたが、お互い掘り下げて話す良い機会だったと思います。 『母子家庭だから喧嘩したらシャレにならない』というのもあって、表面的だった母との関係がより 深くなれたように思いました。 在る日、こたつで母と向かい合って食事をとっていると、若い父(30代位じゃないかな)が 「さよなら・・・」 というような身振りをして食卓の上を通り過ぎて行きました。 (紺地に白線のストライプのスーツを着てさっそうと去って行きました。私の知っている父は 『太ったおっちゃん』で別人とも思える位やせておりました。うーん、格好つけめ…) 母はこの時見えなかったのですが「今お父さん、通ったね…」と言いました。 気配でそう感じたようです。 それから、再び父が家に来ることは無くなりました。 近所で、若い男性が我家を出入りするのが目撃されています。 それは、別にいいんだけど…「あそこの離婚した奥さん、若い男性連れこんでいる」とか言うのは 止めて欲しい・・・かといって「あれは、父の霊です」とも言えないし…

あたなのお父様は、事故で自分が亡くなった事をきちっと御自身理解して おられるようです。しかし、どうしてもあなたがた家族に伝えておきたい、言っておかねばと、あなたの 前に出てこられたようです。
なぜあなたに?それはお母様よりあなたの方が霊的に波動が合って、前に出てきやすかった事と、 あなたに知ってほしいという気持ちが一致したものと思われます。 そして、あなたがたに伝えたかった事を伝え終わり、お父様が行くべき場所に行かれたのではないでしょうか。 生きていた時、どういうお父様だったのかは解りませんが、お母様とあなたの事をとても 大切に思っておられたようですね。でなければこんな風には現れないと思います。良いお父様ですね。