早速次の日の朝・・・私が学校に向かって走っていると、後ろにツレの車が見えまし た。すると突然後ろからひやかしめいたパッシングとともに私の車を追い越して、前 に止まりました。
「いきなり今朝も女連れかい！」と笑いながら近寄るツレから笑い が消えました。
「お前・・・さっきの子は？どこで下ろした！？」・・・
「誰も乗って ないが・・・。」
「いや、絶対おったぞ。髪の長い子が・・・。」そこで私が追い 討ちをかけるように、
「お前な、俺の車フルスモークやぞ。後ろから見てみぃ〜女ど ころか中に何があるか、人がおるかどうかも見えへんやろ。前から見ても運転席すら 真っ暗で誰が運転してるかわからんような車のになんで、後ろから女ってわかるんや？」

そう、違法ではあるが私の車はフロントガラスを除いてセルの下敷き並の厚さの真っ黒 なスモークを貼っていて前から見ても中は真っ暗で見えず、それが後ろから見えるわけ がないのです。
「ほな、俺が見たんなんやねん？」・・・
「俺が聞きたいわ（笑）。」 なぜか見る人見る人運転しているのは私の車だから私だとわかるんですが、普通は顔は わからないはずです。なのになぜかその女だけは皆一様に髪の長いかわいい子ときちん と見えてるのです。
この車にどんなドラマがあるのかは確認していません。調べようと思えば車検証に記載 されてあった人の住所に行けばわかったのかもしれません。実際近くまで行きましたが やはりやめました。知ったからと言ってどうなるものでもないですから・・・。
そんな話があって数ヵ月後の夜私は自宅で菖蒲湯の風呂に入っていました。そして髪を 泡だらけにして下をうつむいているとき、女の声が聞こえました。
「もう帰るね・・・。」 確かにそう聞こえました。慌てて泡を流して目をあけてびっくりしました。風呂に浮か べてあった菖蒲が一本残らず私の周りに散らばっていたのです・・・。別れの挨拶かな などと一人納得をして何事も無かったかのように風呂につかりました。
父や親戚のお姉さんからは「最近あの子見ないね。」と言われるので「ああ、ふられたよ。」 笑って答えたものでした。