目にみえない敵
東京都在住のHIKOさん提供

僕が中学だったときバレー部に所属し、 いまはそのバレー部のコーチをしています。
ふだんの春休みは学校で練習をしていましたが、その年だけは体育館改修のため春合宿をすることになりました。
場所は千葉の富津というところで3泊4日でした。
その頃僕は現役だったので夜も決められた消灯時間には寝ました。
この時の合宿はこれといって何事ももなく、ただ持っていった2台のビデオカメラが壊れてしまいました。

合宿から帰ってくると8月になり、最後の試合を終えて現役を引退、 バレー部の友人宅でパーティのようなことをしました。
その時は僕らのコーチも来ていて、夜遅くになるとお決まりのように恐い話になりました。
来ていたコーチの中に霊感の強い人がいて、この人は普段もいろんな霊が見えるそうです。 はじめはそのコーチの体験談などを聞いていましたが、ふとした拍子に別のコーチが
「そういえばあの春合宿…」 といったのを皮切りに今思ってもぞっとするくらいの恐い話を聞きました。
まず最初に富津の街に入ったときに街全体が薄茶色に感じたそうです。 そして僕らが泊まった宿でも、廊下をまっすぐ行って角を曲がったところで、 「うわ〜っ」と思ったそうです。 引率の顧問の女の先生の一人も霊感がとても強く、そのコーチと顧問の間では その「人」の性別、年齢、感じた場所など、何から何までぴったり一致したそうです。
それによると40歳くらいの男の人で、角を曲がってすぐそばにある階段のところに その男性が居たそうです。
そのときはなにがあったというわけではなかったので現役にはもちろん他のコーチにも 黙っていたそうです。
合宿ではいつも夜、現役が寝てからコーチミーティングを兼ねて飲み会をします。

2日目の夜、お酒を飲みながら次の日のメニューを決めたりしていました。
バレー関係の話は一通り終わり、お決まりの恐い話が始まると、来ていたコーチの中に 霊などを全く信じていないNさんという人がいました。
OさんやT先生の話を聞いても「俺は信じないよ」などと言って、愚弄していたそうですが、。 外に面する窓の内側に障子があってその一箇所だけが
「パタパタッ、パタパタパタ…」 と鳴り出したそうです。
始めは窓があいていて隙間風が障子を鳴らしているのかと思って コーチの一人、Kさんが障子を開けましたが、窓は全部きちんと閉まっています。 仕方なく障子を閉めて、またしばらくすると同じようにある特定の部分から音がします。
今度はNさんが「風のせいだろ、ちゃんと見ろよ!」といいながら バッと障子を開けましたがやっぱりどこも開いていません。
みんなおかしいな、と思っていましたが、その音もすぐ止まり、誰もあまり気にも留めてはいませんでした。

その後誰かが話の流れで「〜ですよね?Nさん」と問いかけた瞬間、 それまで普通に話を聞いていたNさんがいきないがっくり首を折って眠りだしてしまったんです。 そのときはみんなはあれっ?とおもいながらも、昼間身体動かして疲れているし、酒も入っているしで 特に不思議にも思わずにNさんをほおっておいたのですが、ミーティングがお開きにり、片付けを始めても Nさんは起きなかったので、しかたないので僕らの2つ上の先輩、 Yさんが
「Nさん、片付けはいいですから寝てください」と言って起こすとNさんは 「ん、わかった」とはっきり言って部屋を出て行きました。
そして片付けも終わってみんな寝るために部屋に戻ると、Nさんと同じへやのYさん達が 「Nさんがいない!」と、大騒ぎ。
コーチたちみんなでトイレや他の部屋を探し回ってもNさんは見つかりませんでした。
しかし最後に、女子風呂を見に行きくと、脱衣所の前にスリッパがきれいにそろえてありました。
{誰かいるのか?}
Yさんを先頭にコーチ達が浴場の引き戸をあけるとそこに、 浴槽の中にNさんが服を着たまま、こちらに背を向けるように浸かっていました。
みんなびっくりして「Nさん…?」と呼びかけてみましたが返事がありません。
まさか…と嫌な予感が全員の頭をよぎりましたが、先頭のYさんが近寄って Nさんの様子を見に行きました。
Nさんはスヤスヤただ眠っている様に見え、体をゆすぶって起こしてみました。
するとNさんは 何事もなかったように起きあがり「何やってんスか!!」と声を掛けるとNさんは 「入れって言われた…」と答えたそうです。
そのとき風呂は入浴時間を過ぎており、水と大して変わらない温度まで下がっていたそうです。 おそらくそのまま朝まで放っておいたら死んでいたのかも.....。 とりあえずNさんの服を着替えさせようとした時です。 なにかがプッツリ切れたようにNさんは正気を取り戻し、 「うわっ、こんなトコでなにやってんだ!!」 と自分が何をしたのか全く覚えていない様子。
いったいNさんに何が起こったのでしょうか.....。

合宿最後の3日目の夜、コーチミーティングで、 最終日のメニューや東京に帰る確認をしていたときです。
Oさんは「なにか」が部屋に入ってくるのを感じたそうです。
しかもゾォ〜っとしながら「まずい、これはまずいぞ」とT先生のほうを見ると、 先生はひざを抱えて震えながら下を向いています。
Oさんはこらえきれず「先生…」と声をかけると、
「見られない、見られない」と半ベソ状態。
普段、勝ち気で快活な先生なだけに、こんなことは普通ありえません。
ほかのコーチは気付かずにそのまま話していましたが、 Oさんが「ちょっと待って!!」というと、みんな黙ってしまい、何か気配を感じたように辺りをキョロキョロ。
何も見えないけれど何かが部屋の中をぐるぐる回っている感覚があるけれど、どうすることも出来ず、 ただ「早く部屋から出たい」と思っていると、フッと気配が部屋から出た感覚があり、 大慌てで部屋から立ち去りました。
その夜、全員2階の部屋に入って(6人くらいしか入らない部屋に10人以上で)、 男女関係なく布団1つに二人づつ入っていたそうですが、寝ようとした時も「それ」は同じ部屋に入ってきたそうです。
そのとき他のコーチ達は気のせいとかで片づけて、寝入ったらしいのですが、霊感の強いふたり、 T先生とOさんは眠れずに二人目を合わせて息を殺し、出て行くのを待っていたそうです。
(実際、最終日の朝にコーチや先生がみんな同じ部屋にいたのを僕も見ましたよ。先生方がゾロゾロと同じ部屋から 眠そうな顔して出てきたのを.....)

後日、壊れた自分のビデオカメラを修理に出したときメーカーから電話がかかってきて 「カメラの内部に砂が大量に入っているのが壊れた原因」だったとか。
ビデオは一度も外で出していないのに、何故ビデオに砂が入っていたのでしょうか?
半信半疑に話を聞いていた僕も、説明のつかない事があったのでゾォ〜っと感じました。

ビデオに砂が何故入っていたのか、こちらの霊視でも解りませんでした。
ただ、廊下にいた霊はたちの悪い自縛霊のようで、宿泊施設に来る人間に悪意を持って現れているようです。
しかし、Nさんの生命力の強さに、自分達のところへ引き込む事は出来なかったようですが、 悪意を持っている自縛霊は、憑いてしまっている場合もありますので、御用心を