海外の鉄道もの

寝台特急「赤い矢」号


モスクワとサンクト・ペテルブルグというロシアの2大都市の間には、数多くの列車が走っている。私はこの間を移動するのに、往路は寝台特急を利用した。
乗る列車は数あるペテルブルグ行きの中から、寝台特急「赤い矢」号。シベリア鉄道を走破する「ロシア」号と並ぶロシアの2大看板列車のひとつである。

夜10時すぎ、モスクワの「レニングラード」駅に向かう。基本的にモスクワのような大きな町のターミナル駅には、そこから出る主な行き先の駅名が付いている。例えば東京で言えば、東京駅を「大阪駅」、上野駅を「仙台駅」、新宿駅を「松本駅」と呼ぶようなものである。

駅に着くと、時間がありすぎるので、駅舎の中へ。駅舎の入口に警官がいて、なにやらチェックしているが、たまたま私の前にいた中国人のグループにまぎれこんでどさくさで中に入る。

駅舎内部は体育館くらいある広い空間になっていて、出発を待つ人たちは思い思いに壁づたいに座り込んでいる。探せば待合室もありそうだったが、めんどくさいので私も空間を見つけ、荷物の上に座る。

駅舎のホーム側の出口付近に、大きな電光の掲示板があり、列車名と出発時間、発車ホームが上から発車順に表示されている。見るとペテルブルグ行きの夜行列車だけでかなりの本数がある。発車ホームはそのときにならないとわからないらしく、わかった時点で表示される。発車順にホームが決定するわけではないらしく、上から順に表示されたりされなかったりしている。なんだかなあ。

そのうち私の乗る列車の発車ホームも表示され、11時半、満を持してそのホームへ行く。

ふつう、列車の車体は深緑色なのだが、「赤い矢」号の車体は赤で、車体に「赤い矢」を意味するロシア語が書かれている。

駅のホームは頭端式、そして列車は15両編成で、私の車両は前から3両目なのでかなり歩く。各車両には女性の車掌がいて、扉のところに立っている。寝台番号が書いてあってそれぞれの切符がはさめるようになった大きな布状のものを持っていて、乗るときに回収した切符を丸めてその番号のところにはさむ。切符は降りる30分くらい前に返してくれる。



「赤い矢」号の切符
 



プラットホームの入口
 

の乗った車両は構造的に日本のコンパートメント方式の2段式B寝台によく似ている。4人部屋のコンパートメントが1両に9つある。等級がいくつあるのかわからないが、外国人が乗れるクラスはソフトとハードの2つだけで、この車両はハードクラスである。ソフトクラスは2人部屋らしいが、この列車に連結されているかどうかはわからない。

ロシアでは個室を男女別にすることは基本的にしない。私の部屋も、ネクタイを締めた出張風の2人とおばちゃんと私の4人である。4人入ってしまうとけっこう狭い。

部屋の窓際のテーブルには4人分のカップとミネラルウォーターが置いてある。寝具はあるがセットされていない。また、日本のような各寝台のカーテンもない。部屋や廊下のスピーカーからはロシアの歌謡曲のような音楽がずーっと流れていた。

  

車内の様子
 

23:56、ほぼ定刻通り、静かに発車。発車と同時に車掌が翌日の朝食を配って歩く。深夜なので景色は何も見えないし、30分もすると寝具をセットして寝てしまう。

 

翌日7:15、目がさめる。とりあえず廊下に出ようとしたら、カギがかかっていて、向かいの下段に寝てた人が開け方を教えてくれた。

日本のような専用の洗面台というのがなく、歯を磨いたり顔を洗ったりは、トイレの中の手洗でする。廊下の突き当たりには、あまたの旅行記とかで読んだとおり、給湯器がある。

7時半になって、深夜途絶えていた車内放送が再開される。最初案内放送かと思い、よく聞いてみたら地元のラジオ放送であった。

部屋の全員が起きてから、昨夜配られた朝食を食べる。パン、サラミ、ヨーグルト、コーヒーなど結構量が多かった。コーヒーは給湯器があるからばっちりである。

列車は人気のほとんどない原生林の中を走っている。ときどき集落があり、近距離列車用の駅がある。そんな景色をぼーっと眺めているうちに、いつの間にか町の中に入り、徐行したな、と思ったらそれがペテルブルグ到着であった。



列車全景

 

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