海外の鉄道もの

アムトラック ボストン~ニューヨーク


アメリカ国内には、
日本でいうJRに相当する全国組織の「アムトラック Amtrak」と呼ばれている鉄道網がある。この国の国内移動と言えば飛行機のシェアがダントツなのだが、列車に乗って何泊もかけていく旅行も、結構人気があるようだ。
一方で、私が乗ったようなボストン~ニューヨークといった比較的短距離の路線も利用者が多く、たくさんの列車が走っている。


泊まっていたホテルから地下鉄に乗ってサウス・ステーションに行く。この駅は、アムトラックや、「コミューター・レール」という近郊に向かう電車が発着している駅である。といっても、アムトラックはこういう地域の鉄道路線を寄せ集めて、それを間借りして走っている区間がほとんどで、ボストン近郊でも両者は同じ線路の上を走る。

構内にチケットオフィスがあり、もちろんその窓口でもチケットは買えるが、その外に青い自動券売機もある。この自動券売機は日本でも新幹線の駅で見かける、新幹線特急券の自動券売機と同じような機能の機械である。私もその券売機でクレジットカードで買ったら、ごていねいに名前入りの切符が発券された。見てくれは飛行機の搭乗券のようである。私の買った席の指定のない券は、有効期間が6ヶ月もあるように書いてあった。



ボストン・サウスステーションのチケットオフィス。
入口横にある青い機械が自動券売機。
 



チケットの半券。
飛行機の搭乗券に似ている。
 

またガイドブックには、飛行機のように大きな荷物を預けるサービスがあると書いてあり、チケットオフィスにその窓口もある。ところが、チケットを見せたら、預けてもらえなかった。アムトラックにしては短距離(それでも350kmくらいある)のせいなのか、私が自由席の客だったせいなのかはわからない。いずれにしてもこのでかい荷物を抱えたまま列車に乗り込むはめになった。

駅には回転式の発車案内板があるが、私の乗る列車の発車ホームは表示されていない。ガイドブックには、発車ホームは直前にならないとわからないと書いてある。構内には飲食物を扱うスタンドがいくつもあるので、コーラを買って飲んでいたら、ガラス扉越しに見えるホームのひとつに列車が入線してきて、その入口(ホームは頭端式)に客が集まりつつあった。そこに行き、その客の1人に聞いてみたら、やはりこれは私が乗る列車であった。

やがて乗車が始まる。始まってからあとにその旨の構内放送がある。ものすごくわかりやすい発音のアナウンスであった。

列車はディーゼル機関車+客車8両の編成。先頭のディーゼル機関車は、昔から写真でよくおなじみのデザインであるが、実物を見るのはもちろん初めてである。列車はどういうクラスに分かれているのかよくわからないのだが、少なくとも私のような自由席のチケットを持っている人は真ん中の4,5号車に乗るように、車掌に指示される。で、この4,5号車は始発から結構な乗車率である。他の車両にも客はいるが、すいているところを見ると、始発からの客は4,5号車にかためられているらしい。よくわからないが、グレードが上の車両もあるようだ。



先頭のディーゼル機関車
 



自由席車の車内
 

10:20、ニューヨーク経由ワシントン行き、NortheastDirect 173列車は、定刻通り出発。5分くらいですぐバックベイ・ステーションに停まり、客が乗り込んでくる。実はこの駅は泊まったホテルのすぐ近くにあるのだが、列車に始発から乗りたいがためにわざわざサウス・ステーションに行ったのである。

発車してしばらくすると車掌が検札にやってくる。見たところ車掌は女性が多かった。車掌に切符を渡すと半券が切り取られて返ってくる。そして、なにやら書かれた札が座席上部の荷物棚のところに挟まれる。この札には、この客がどこで降りるかを示してあり、ついでにこの客の検札は済んだということも、例えば席を外した場合でもここに先客がいるという証拠にもなる。降りる駅の手前まで来ると回収される。ちなみに、この区間では自分を含めニューヨークで降りる客がほとんどなので、そういう客用の札はすでに印刷されており、逆にそれ以外の客については手書きの札であった。

列車はしばらく市街地を走っているが、それを抜けると何にもない雑木林の中を走ることが多い。ほとんど複線区間なのだが、突然単線になったりもする。そして、時々郊外電車の駅を通過する。列車はいわばこの区間を走る特急のようなもので、15~30分おきぐらいに町があって駅に停まる。大きな町の駅でも小さな町の駅でも停まるとゾロゾロと客が乗ってくる。ボストンを出発する時点ですでに結構な乗車率であったが、途中駅で乗ってくる客は自分のいる車両にはあまりやってこない。どうやら前の方のあいている車両に乗っているらしい。

車内のワゴンサービスはない。そのかわり、後ろから2両目がカフェサービス・カー、いわゆるビュッフェになっていて、お昼ごろめしを調達しに行く。ボリューム満点のチキン入りラップとサラダが手に入り、席に戻る。この車両の半分は飲食用のスペースになっていたようであった。

ボストンのあるマサチューセッツ州からロートアイランド州を過ぎ、13:25にコネチカット州のニューヘブンに着く。「機関車付け替えのため15分停まります」とのアナウンスがあったので、さっそく見に行く。今まで列車を引っ張ってきたディーゼル機関車が切り離され、かわりに電気機関車が連結される。見た感じボストンからずーっと電化されていたような気がしたが、この時点では工事が完成していなかったようだ。それにしても、作業を見守るギャラリーが意外と多かった。アメリカ人にもこういう作業に興味を持っている人が多いようである。

 

ニューヘブンからは「メトロノース・レールロード」というニューヨークの近郊路線になる。気のせいか人口密度もあがったような気がするし、通過する駅の間隔も電車とすれ違う間隔も短くなる。

いよいよニューヨーク州に入ったあたりから分岐して、アムトラック自営の路線に入ったようである。ブロンクス地区から長いアーチ橋を渡っていったんクイーンズ地区に入る。もう沿線には建物が建ち並び、大都市が近いことを感じさせる。このあたりの路線は複雑で、分岐は多いしヤードはあるし、地上を走っている地下鉄と並行したり、どこをどう走っているかなんてまったくわからない。最後にトンネルに入ってイースト・リバーをくぐり、定刻より12分も早い15:07にマンハッタンのペン・ステーションに到着する。

この列車はさらにワシントンに向かうのだが、乗客のほぼ全員がここで降りる。この駅を境に車内の客が入れ替わるようで、あまり直通させる意味はないような感じである。

到着したペン・ステーションは、ホームが地下2階にあたる場所にある。ここも近郊電車と一緒になった規模の大きな駅なのだが、ホームをあがるとそこは即地下街で、どこからが駅なのかはっきりしない駅である。今回はここに到着した方だからいいけど、逆にここから出発する時はちょっとまごつきそうな気がする。



ニューヨーク
ペン・ステーションに到着

 

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