海外の鉄道もの

京義線(平壌~新義州)北朝鮮国内での名称「平義線」



「平壌-新義州」のサボ


北朝鮮を旅行した折り、往路は飛行機で中国から平壌入りしたが、復路は列車で中国に出国した。

平壌からは、新義州から国境の鴨緑江を渡って中国の丹東へ抜ける国際列車が週に4本走っている。この他のルートの列車もあるらしいのだが、資料がないのでわからない。
いずれにしても、私を含め一行4人(ビザの関係で、個人旅行者を束ねたような集団)は、新義州経由の列車に乗った。

この「京義線」という名称、元はと言えばソウルから平壌経由で新義州を結ぶ路線のことで、戦前・戦中までは日本からヨーロッパ方面への重要なルートのひとつであった。その後の朝鮮半島の南北分断で、この路線も38度線前後で分断せざるを得なくなった。

ちなみに、「京義線」はソウルを中心とした言い方なので、もちろん北朝鮮国内ではそう呼ばれていない。
平壌~新義州間は「
平義線」、そして平壌から南方向に伸びている路線は「平釜線」と呼んでいる。釜山の「釜」をとっているのであろう。

現在、韓国側の「京義線」と言えば、ソウルから出ている短いローカル線である。でも、乗ろうと思えばわりと簡単に乗ることが可能である。
しかし北朝鮮側の「平義線」は、もちろんそうは行かない。そういう意味で、貴重な体験であった。

 

★  ★  ★

 



平壌駅


ホテルをチェックアウトし、まっすぐ駅に向かう。

そして、駅の正面玄関ではなく、その横の方から中に入る。ここは外国人と要人用の待合室になっているようである。

9:40ごろ、ホームへ行く。駅全体がどういう構造になっているのかわからないのだが、駅舎の裏が幅数十メートルもあるような広いプラットホームになっていて、そこに列車が停まっている。ホーム全体が大きな屋根に覆われていて、照明がついていないので、非常に暗い。



平壌駅のプラットホーム
 

その列車の編成は、先頭が電気機関車で、その後ろに荷物車1両、北京行きの中国の車両2両、モスクワ行きのロシアの車両2両、食堂車1両、新義州止まりの国内列車8両という編成。
先頭の電気機関車は撮影不可であった。



私たちが乗ったロシア車両
 



中国の車両のサボ
 

一行4人が乗る車両はロシアの車両であった。2人用の個室が2つである。でも切符は4人分で1枚。といっても、普通料金券+1等料金券+座席指定券の3枚綴りである。外国人はこのような1等車両にしか乗せないようだ。



室内の様子
 

ちなみに、これは完全に意外であったが、北朝鮮の鉄道は電化率が非常に高い。各所で見た鉄道線はそのほとんどが電化されていた。韓国の電化率が低いのとは対照的である。

この国に到着してから今まで案内してくれたガイドさんとはここでお別れである。ということは、今まではガイドさんがいたからある程度のことは許されていたが、これから日本人だけのグループになるとそういう保証はどこにもない。そんなことをガイドさんにも言われた。
気をつけてほしいのは、
人にカメラを向けないこと駅を撮らないこと、の2点であった。

 

定刻10:10、平壌駅を発車。

平壌を出発して、しばらくすると市街地から抜ける。ほとんどの区間が単線である。まあ、新義州まで数えるほどしか列車とすれ違わなかったから、単線で十分なんだろう。

そしてときどき駅を通過する。平壌駅もそうであったが、どの駅も駅舎には必ず金日成の写真が飾ってある。

11:43、最初の停車駅新安州(シンアンジュ)着。停車といっても客扱いするのはうしろについている国内列車だけで、私たちの乗っている国際列車は「運転停車」扱いである。
駅の出口、というか跨線橋が前の方にあるので、目の前を列車に乗り降りする乗客たちが大勢行き来する。兵隊さんも多い。この乗り降りの多さを見ると、かなり国内列車は混雑してるらしい。

駅舎も駅名標も目の前にあるし、被写体としては非常にいいのだが、こんな写真を撮った日にゃあ、間違いなくフィルム没収であろう。歯がゆくてしょうがない。

  

まわりに人がいないのを十分確認の上、撮った写真。
かなりのドキドキものだった。
(新安州とは別の駅)


5分停車後発車。12時頃、となりの車両の食堂車へ行く。 食堂車との連結部分は幌が思いっきりはずれていて、けっこう怖い。
4人掛けのテーブルがひとつだけあいていて、そこに座る。この車両は
北朝鮮の車両で、暖房なし照明なし。窓ガラスが割れていて、かなり冷え込んでいるし、トンネルに入ると真の暗闇になる。もちろん金親子の写真もばっちり並んでいる。
すでに予約されていた食事は、朝鮮と中華の折衷のような感じで、なかなかうまかった。メニューがあるのかどうか知らないけど、まわりのテーブルではみんな違うものを食べていた。

ここから先、列車は3つの駅に停車した。景色といえば、駅の周辺を除けば板門店に行ったときと同じように、農村地帯がほとんど。線路から見える道には、いつも誰かしらどこかからどこかへ歩いていた。途中雨が雪になり、雪景色になったところもあるが、そのうち雨もやんで晴れ間も出てきた。



沿線の景色。こんな感じのところが多かった。


それにしても、電気機関車に牽引されている割にはスピードはゆっくりであった。
平壌から新義州までの距離は約225km。表定速度は停車時間を除いても47km/hくらいで、いかにも遅い。

15:19、定刻より約10分遅れで新義州(シンウィジュ)着。これから長い時間をかけて出国審査が始まるのであった。

 

【資料編】

★平壌発新義州行き 第5列車

平壌10:10 → 11:43新安州(シンアンジュ)11:48 → 12:48定州(チョンジュ)13:00 →

13:43宣川(ソンチョン)13:47 → 14:29塩州(ヨムジュ)14:33 → 15:19新義州(シンウィジュ)

この時刻は乗車当日の実時間。時刻表がないので、定刻はわからない。
ちなみに、新義州着の定刻だけは明らかになっていて、
15:10である。

なお新義州から、国際列車の部分は中国国鉄 K28列車となり、中国へ出国。

 










おまけ

翌朝丹東駅に停まっていた平壌行きの車両。
北朝鮮の車両です!

 

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