海外の鉄道もの

平壌の市内交通 平壌の地下鉄を中心に。


平成13年の冬、私は現体制のうちに一度は行っておきたかった北朝鮮を訪れた。滞在中、板門店に行った1日をのぞけば、平壌市内を行ったり来たりしていた。(詳しくは、「旅行記もの」参照)

平壌市内の公共交通としては、地下鉄路面電車トロリーバスがある。路線バスもあるようだ。これだけ見れば、他の国の都市とあまり変わらない。



平壌市内の路面電車
 



平壌市内のトロリーバス
 



平壌市内の路線バス
 

ただ、これだけ揃っているのはこの国では首都平壌だけなのではないだろうか。まあ、私もこの国には4日間しか滞在しなかったし、平壌以外で行った町は板門店の近くの開城(ケソン)市だけだったので、はっきりしたことは言えない。

ちなみにその開城市内は、公共の乗り物なんて何にもないように見えた。この国の一般庶民は車を持っていない(といか、住居と職場を近くして、持たなくていいような政策を国がとっているようだ)ので、人々はひたすら歩いていた。自転車すらほとんど見かけなかった。



開城市内。こんな感じなんです。


さて、この国では国民に対して徹底した情報管制が敷かれているようで、その一環で外国人が気軽に国民と接することを避けている。つまりどういう事かというと、我々外国人は1人勝手に街を歩けない。
また、逆に外国人に見てほしくないところを隠すようなこともあるのではないかと思う。
よって、外出するときは必ず現地のガイドがつく。ヘタに歩けば通報されてしまい、ガイドさんにも迷惑がかかる。
ということは、こういった公共の乗り物にも自由に乗れないと言うことである。

そういうわけで、路面電車やトロリーバスには乗ることはできず、ただ眺めるだけであった。
これらの路線は結構市内各地で見られた。なにしろ、マイカーを持っていない国民性で、どの乗り物もいつも混んでいた。停留所にも長い列ができていることが多かった。


一方、
唯一乗ることができたのが地下鉄である。まあ、観光で平壌を訪れた人は、別に興味がない人でも乗るように仕組まれているようだ。とにかくこの国では、現地に着いてからの行程は現地の旅行会社の言われるがまま、国の監視下なのである。
まあ、私の場合にはかなりリクエストも聞いてくれたけど。

いずれにしても、平壌の地下鉄に乗れるというのは、楽しみにしていたことであった。

 

平壌の地下鉄には路線が2つある。ふつう、どんな町の地下鉄でも、駅名といえば、地名とか、通りの名前が付くものだが、平壌では「統一」とか「凱旋」とか「革新」とか「勝利」とか、スローガンが駅名になっている。なんなんだろうね、これは。



平壌地下鉄路線案内図(駅にあった)
 

で、私が向かった、というか連れて行ってもらったのは「復興」という駅。2つあるうちの片方の路線の起点駅である。
改札は自動改札。改札機は入口のみで出口は何もなく外へ直行。切符とかそう言うものはなく、改札機に10チョン玉(0.1ウォン)を入れると通れるようになっている。日本円でいえば5円ちょっとというところである。(1北朝鮮ウォン≒56円。韓国ウォンとはまるでレートが違う)
私のような観光客は、ガイドさんが一言係員に言っただけでフリーパス。



改札口
 



改札口からホームへエスカレーター
 

改札機の先に長ーいエスカレーターがある。そしてホームは装飾とかものすごく凝っている。改札からここまでの感じは、以前行ったことのあるロシアの地下鉄に非常によく似ている。



プラットホーム
装飾とかがすごいこと。
 



ホームの壁画。
この国らしいですね。
 

電車は第3条軌式で、2両のユニットを2つつなげた4両編成。結構頻繁な間隔で運転していた。ワンマン運転で、共産国にしてはきれいな、というか居住性の良い車両である。車内の照明もそんなに暗くない。ただ、車両の両端に金親子の写真が並んでいるところは、さすがにこのお国柄である。ちなみに車内放送はなかった。

ちなみに、路線は日本とは逆で右側通行である。しかし、上の写真を見るとわかるように、一番後ろの車両のヘッドライトもついている。駅間で電車が接近しすぎないように目印にしているのであろうか。駅に信号はあったようだが、ATSのような安全装置の存在が不明なため、何とも言えない。

「復興」から1駅乗って、「栄光」という駅で降りる。この「復興」と「栄光」の間が、外国人が唯一、それもガイドと一緒でのみ乗れる区間である。というか、北朝鮮の国民が使っている通貨を外国人は手にできないので、勝手に乗ることが物理的に不可能なのである。


ちなみに、地下鉄を含めこういう市内交通は、朝5時半くらいから夜11時くらいまで運転されているようだ。



おまけ:偶然見かけた資材運搬用車両

 

★余 談★

平壌市内には、「鉄道博物館」と「市電博物館」がある(前を通った)。まさかそういうものがあるとは思わなかったので、事前に見学のリクエストをすることができなかった。
何しろこの国の場合、そういう博物館にふらっと立ち寄ることができず、前もって予約が必要なようなのである。
よって、万が一また行く機会があれば、何よりも優先してこの2箇所をリクエストしようと思っている。

 

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