若者のUFO離れをくい止めるために

馬場秀和


【はじめに】

 若年層のUFO離れが深刻化しています。中学でも高校でも、さらには大学の教養課程においてさえ、UFOに対する興味や関心が低くなり、授業についてゆけない生徒が急増していると言われています。このような状況を放置すると、次の世代には宇宙時代にふさわしい専門知識や技能を有する人材が極端に不足するという最悪の事態にもなりかねません。

 いわゆるUFO離れは「世界的な傾向であり、日本だけが特別というわけではない」と発言した政治家がいました。はたして本当にそうなのでしょうか。UFO先進国である米国と比較してみましょう。

 1987年に実施されたギャロップ世論調査によると、米国における成人の43%が「UFOの存在を信じる」と回答しています。最近はどうでしょうか。2005年に実施されたAP世論調査では34%、2007年の結果によると35%の成人がUFOビリーバーであるという結果が出ています。確かに80年代に比べると減ってはいますが、それでも成人の3人に1人がUFOを信じており、しかもその割合は安定しているということが分かります。これでは到底「UFO離れ」とは言えないでしょう。

 ひるがえって日本ではどうでしょうか。1982年にNHK放送世論調査所が行った全国世論調査によると、UFOの存在を信じている成人はわずか17.7%でした。しかも、その後の世論調査では「UFO」という項目そのものがなくなり、神仏など宗教や占いに関するもの以外の調査項目は全て「その他」にまとめられてしまいました。しかも「その他」を信じている成人の割合は、1993年の調査以降ずっと10%を切っているという有り様です。

 このように、日本におけるUFO離れは極めて深刻であり、危機的な状況にあるといっても決して過言ではありません。適切な対策を講じない限り、将来に大きな禍根を残すことになるのは間違いないでしょう。


<備考>
 UFOは本来「未確認飛行物体」という意味ですから、厳密に言うと「UFOの存在を信じる」という言明はほとんど無意味です。しかし、世論調査の文脈からしても、また世間一般の常識でも、「UFO」という言葉が「異星から地球に来訪している宇宙人の乗物」という意味で使われていることは明らかです。したがって、本稿においても「UFO」という言葉をこの意味で使うことにします。


【私たちの取り組み】

 前述したような危機意識から、民間でも、また行政レベルでも、若年層のUFO離れに歯止めをかけるために様々な活動が行われています。民間レベルの取り組みの例としては、小学生を対象に先進的なUFO教育を行っている「UFO私塾」が有名でしょう。現在までに1都3県16拠点に18教室を展開しており、その活動は教育界やメディアから高い評価を受けています。

 文部科学省は、UFO教育を重点的に推進する高校を指定する「スーパーUFOハイスクール」制度を平成14年度に開始しました。本制度の指定校においては、UFOに重点を置いた教育カリキュラム、研究組織や専門家と連携した特別授業、体験実習や合宿研修、指定校相互の交流会など、様々な取り組みが行われています。

 このような流れの一環として、文部科学省管轄の社団法人「日本円盤振興会」(IIUJ)も、UFOに関する有識者を教育現場に送り込む取り組みを始めました。第一線を退いた大学教員や企業エンジニアが、退職後の社会貢献として教壇に立ち、子供たちのUFOへの夢と好奇心を育むお手伝いをする。それがIIUJ「UFOスペシャリスト」活動です。2007年度には、都内の中学校での特別授業、大学講堂をお借りした公開市民講座を開催し、いずれも好評を博しました。

 この公開市民講座カリキュラムの一つを担当させて頂いたおかげで、私は高校生から大学教養課程までの若者たちと直接話し合い、なぜ彼らがUFOに失望しているのか、どうすればUFOへの熱意を取り戻せるのか、自分なりに真摯に考える機会を得ることが出来ました。そして、その成果を自分の講義に取り込んだのです。そのかいあってか、参加者アンケートでも望外の高評価を頂戴することが出来ました。

 本稿は、日本円盤振興会(IIUJ)からの依頼により、私が担当した公開市民講座の概要について、一般読者向けに分かりやすく紹介するものです。


【なぜ子供たちはUFOに失望するのか】

 幼子は、誰もが生まれながらにしてビリーバーです。本やTVで得たUFO情報に興奮し、宇宙人に遭遇したときにどうすればいいか頭の中で日々シミュレーションを重ねながら育ってゆきます。しかし、思春期をむかえる頃、ふとしたきっかけで彼らの心中に疑問の念がわいてきます。宇宙人遭遇談は本当なのだろうか、そもそもUFOなんて実在するのだろうか、と。

 これは自然なことであり、UFOについて学んでゆく過程で必ず誰もが抱く疑問です。前述したUFO私塾の濁家先生は、その著書『蘇れ! UFO魂』(学術研究社 知育ライブラリー叢書)の中で、UFOに関して若者が抱く最も基本的な疑問点を3つ挙げておられます。ここで紹介してみましょう。


疑問1
 光よりも速く移動することは出来ないのに、様々なUFOが何光年も離れた星々から地球にやってくるのは無理ではないか。

疑問2
 あれだけ多くのUFO遭遇事件が報告されていながら、今だに確実な証拠が見つからないのはおかしい。

疑問3
 人類より進んだ文明と高度なテクノロジーを持つ宇宙人にしては、UFO搭乗者の言動はあまりにも奇妙で馬鹿馬鹿しい。


 これらの疑問はもっともなものであり、質問されたとき教育者は誠実に答える義務があります。しかしながら、これらにきちんと答えられる教師は、実のところ非常に少ないのだそうです。濁家先生は、こういう質問を受けた教師の多くが、その場しのぎの適当なごまかしで言い逃れる、そのために若者は強い失望感を覚えてUFO嫌いになる、と厳しく糾弾しておられます。

 ここでいう「言い逃れ」とは、おおよそ次のようなものです。


言い逃れ1
「宇宙人の技術は進んでいるので超光速も可能なのだろう」

言い逃れ2
「UFO事件の証拠は政府や軍によって隠蔽されているのだ」

言い逃れ3
「他の星から来た宇宙人の言動を私たちの常識で判断してはいけない」


 これは私の個人的な見解ですが、これらの「言い逃れ」が若者を失望させるのには、単に納得のゆく回答が得られなかったからというだけではなく、もっと根源的な理由があると思うのです。つまり、これらの発言の裏に感じられる、古くさい前世紀のUFO観、それこそが問題なのではないでしょうか。

 例えば「言い逃れ1」について考えてみましょう。光速の限界というのは、アインシュタインが提唱した相対性理論によって広く理解されることになった、最も基本的な自然法則の一つです。技術は自然法則を利用するものであって、自然法則を打ち破るものではありません。もし、進んだ技術によって本当の超光速が可能になると言うのであれば、それは「相対性理論は間違っている」と主張していることになります。ご存じの通り、これは陳腐な「疑似科学」に過ぎません。

 同様に、「言い逃れ2」「言い逃れ3」も、それぞれありふれた「陰謀論」「不可知論」であることは明らかでしょう。

 これら「疑似科学」「陰謀論」「不可知論」という思考方法は、いずれも前世紀におけるUFO観を象徴する悪弊です。多くの教師、特に前世紀に学校教育を受けた方々は、近代的なUFO教育という理念の灯火を掲げながらも、実のところ旧態依然とした古いUFO観を引きずっているのです。若者の心は敏感ですから、教師の言葉から、その根底にある偽善を鋭く見抜きます。

 こうして、若者はUFOに対して「古い」「ダサい」「うさんくさい」というイメージを持ってしまいます。幼い頃の瞳の輝きは曇り、憧れの気持ちは消え失せ、やがてはUFOなんてどうでもいい、どうせ自分には関係ない、といったシニカルな態度を身につけてしまう。これがUFO離れを引き起こす最大の原因ではないか。私はそう考えています。

 公開市民講座の事前準備のために、私は多くの若者と会話しました。その経験は上のような考えを強く裏付けてくれるものでした。彼らが嫌っているのは、UFOではなく、旧弊で偽善的な大人たちなのです。


【講座概要】

 上のような理解にもとづき、私は自分が受け持つ公開市民講座の目標を「前述した3つの基本的な疑問点に対して明快な回答を示す」ことに絞りました。特に、「疑似科学」「陰謀論」「不可知論」に逃げない、場当たり的な仮説を持ち込まない、極端な論理の飛躍をしない、これらを心がけると共に、そのことを最初にはっきり宣言してから講座を始めました。

 結果として、これが若い聴講者の心をつかむことになったのだろうと思います。

 では、講座の内容について少々詳しく説明しましょう。

 まず、参加申し込み者には、天文年鑑(またはそれに相当する電子データ)を持参するよう、あらかじめお願いしておきました。またノートパソコンなど電子機器の持ち込みは自由。会場は大学講堂であり、無線LAN環境が整備されているため、インターネットへのアクセスも可としました。ただし、講義中に携帯電話など音の出る電子機器の電源は必ず切るよう義務づけました。

 さて、私の講座は、まず前述の3つの基本的な疑問点を挙げて、これらがUFOを信じる上で最大の障害となっていること、逆に言えばこれらに対して納得ゆく回答が得られさえすれば、迷わずUFOを信じることが出来るはずだ、という話から始まります。若者を中心とした聴講者たちは、ここで大きく頷いてくれました。いかに若者たちが、古くさい言い逃れではなく、納得のゆく回答を切実に求めているかがよく分かります。彼らも、出来ることならUFOを信じたいのです。

 次に講座は「EPRパラドックス」の話に進みます。ここは少しばかり専門的な話題で申し訳ないのですが、結論を理解することなら誰にでも出来ますので安心して下さい。ちなみに、実際の講座では、大きなスクリーンに解説のための図表やアニメーションを表示しながら進めました。

 さて、EPRパラドックスとは、アインシュタイン、ポドルスキー、ローゼンらの共同論文で提起された量子論の矛盾を突こうとする思考実験を示します。後に量子暗号や量子テレポーテーションといった一連の技術につながることとなった“超光速現象”です。あらかじめ言っておきますが、この現象は実際に起こることが実験的に確かめられており、詭弁の類ではありません。

 保存則の制限により互いに量子状態が独立に決まらない、「エンタングルメント」(量子絡み合い)と呼ばれる状態にある一対の素粒子、例えばスピンの総和が0になるように調整された2つの電子を考えます。次に、充分な時間をかけて両者を引き離します。例えば何光年も離れているという状態にします。ここで、一つの素粒子の非局在的パラメタを測定します。例えば一つの電子についてスピンを計測して確定させるわけです。そうすると、他方の電子についても量子状態が確定するのです。もちろん保存則を満たすように。これを「確率波の収束」と呼びます。

 これは、一方の電子に対して行った計測(観測)が、何光年も離れた別の電子の量子状態に直接影響を及ぼしたということであり、相互作用が超光速で伝わったことになります。アインシュタインらの論文は、このような“超光速現象”が生ずるのは、思考実験の前提となる量子論が間違っている証拠だ、という主旨で書かれました。さきほど申し上げた通り、現在ではこの“超光速現象”は実際に生じることが確認されており、しかも相対性理論とは矛盾しない、ということで決着がついています。

 なぜ相対性理論と矛盾しないのでしょうか。それは、この現象を利用して「有意な情報」を送ることが出来ないためです。相対性理論が禁じているのは“超光速”それ自体ではなく「有意な情報が光速を超えて伝わること」なのです。逆に言うと、有意な情報さえ伝えなければ、光速を超えても相対性理論には違反しないのです。

 この理解はとても重要です。このように本質を理解すれば、例えば量子テレポーテーションにおいて量子状態が“超光速”で転送されることも不思議ではなくなります。転送された量子状態は元からあった量子状態と重ね合わされてしまい、これを分離する(転送された量子状態を取り出す)ために必要な情報は別の手段、もちろん光速以下でしか伝わらない通常の通信手段で伝送しなければなりません。ですから、量子テレポーテーションにより量子状態が“超光速”で転移しても、それは「有意な情報が光速を超えて伝わった」ことにはならない、従って相対性理論に違反しない、というわけです。

 余談ですが、この「EPRパラドックス」を指して、超光速現象が見つかった、相対性理論が破綻した、さらにはテレパシーの原理である、などと主張する疑似科学本があります。しかし、これらは相対性理論(から導き出される光速の限界)の意味を正しく理解していないために陥る誤謬に過ぎません。

 さて、ここまでの話をきちんと理解すれば、「有意情報」さえ伝えない限り、UFOが光速を超えても何ら相対性理論に違反しないことはお分かりのことでしょう。

 ですから、「疑問1」に対しては次のように回答することが出来ます。


疑問1
 光よりも速く移動することは出来ないのに、様々なUFOが何光年も離れた星々から地球にやってくるのは無理ではないか。

回答1
 「有意情報」を伝えない限り、UFOが光速を超えても相対性理論には違反しない。UFOは、この制限を守りながら地球にやってくると考えられる。


 では、とある惑星XからUFOが発進したと想像してみましょう。そして、UFO発進の瞬間に発生し、惑星Xを中心として光速で広がってゆく球体を想像してみて下さい。この仮想的な球体を、そのUFOに関する「ディスクロージャ・スフィア(情報公開領域)」と呼びます。UFOが光速以下で移動する限り、決してディスクロージャ・スフィアから外に出ることはありませんから、UFO搭乗員は有意情報を誰にでも自由に伝えることが出来ます。

 ではUFOが超光速で飛行したらどうなるでしょうか。ディスクロージャ・スフィアの外に出てしまいます。ここでは、有意情報を誰かに伝えることは出来ません。もしそんなことをすれば、相対性理論に違反してしまうからです。

 惑星Xが、地球から、例えば100光年離れているとしましょう。理論上、UFOは惑星Xから地球へ瞬時に到着することも出来ます。ただし、その場合でも、ディスクロージャ・スフィアは出発時点から惑星Xを中心に光速で広がりますから、地球がディスクロージャ・スフィアに突入するのは、UFOが地球に到着してから100年後です。つまり、UFOの搭乗員は、地球到着後100年間は有意情報を地球人に伝えることが出来ない、もしも伝えたら相対性理論に違反してしまう、ということになります。

 これで多くのことが理解できます。せっかく遠い星から地球にやってきた宇宙人がこそこそ逃げ隠れしているのも、たまたま遭遇事件が発生しても証拠が一切残らないのも、そして目撃談から検証可能な情報が得られないのも。いずれも宇宙人の責任ではありません。全ては相対性理論の制限によるものなのです。

 もちろん100年が経過すれば、地球がディスクロージャ・スフィアに入り、有意情報は“解禁”されます。ですが、それだけの歳月が過ぎ去った後では、どんな証拠も証言も失われているでしょう。残っていたとしても、いずれにせよ検証不能に違いありません。結局、確実な証拠は手に入らないということになります。

 こうして、「疑問2」に対しては、次のように回答することが出来ます。


疑問2
 あれだけ多くのUFO遭遇事件が報告されていながら、今だに確実な証拠が見つからないのはおかしい。

回答2
 超光速で地球を来訪したUFOは、ディスクロージャ・スフィアから外に出てしまっている。この状態で、もしも確実な証拠が残れば、それは有意情報が超光速で伝わったことになり、相対性理論に違反してしまう。UFO遭遇事件の証拠が見つからないのは、まさに相対性理論による制限が守られているためなのである。


 さきほど示した惑星Xの例では、地球に到着したUFO搭乗員は、地球到着後100年間は有意情報を秘匿し続けなければなりませんでした。たまたま地球人と遭遇してしまっても、「自然法則の制限により有意情報を伝えることは出来ない」という情報を含め、一切の有意情報を漏らすことは許されないというわけです。これは非常に厳しい制限です。

 有意情報を漏らさない効果的な方法は、それをランダムノイズの中に隠してしまうことです。つまり無意味で出鱈目な言動を振りまいて、いくら真面目に調べてもそこに何ら意味を見いだせないようにすることです。

 こう考えてみれば、今や「疑問3」への回答も簡単に分かるでしょう。


疑問3
 人類より進んだ文明と高度なテクノロジーを持つ宇宙人にしては、UFO搭乗者の言動はあまりにも奇妙で馬鹿馬鹿しい。

回答3
 彼らはディスクロージャ・スフィアの外にいるため、有意情報を一切漏らしてはならない。このため、地球人と遭遇したときには、あえて奇妙で馬鹿馬鹿しい、無意味な言動でその場をしのぐ。いわばランダムノイズを流すことで有意情報の漏洩を防いでいるのだ。


 このように、「ディスクロージャ・スフィア(情報公開領域)」という考えを使うことで、3つの疑問に対してきちんと回答することが出来ました。

 ここで強調しておきたいのですが、ディスクロージャ・スフィアは、相対性理論による制限(有意情報が光速を超えて伝わってはならない)を視覚的にイメージさせるための説明概念であり、何ら新しい仮説を持ち込んだわけではないということです。それなのに、この概念をテコのように、あるいは補助線のように使うことで、ごく自然な推察により、それぞれ独立した3つの疑問に対して、首尾一貫した回答が導き出されたのです。

 これが、現代のUFO論が、すぐ「疑似科学」「陰謀論」「不可知論」を持ち出してくる前世紀的なUFO論とは決定的に違う点なのです。お分かりでしょうか。


【練習問題】

 では、「ディスクロージャ・スフィア(情報公開領域)」の考え方を応用して、次の課題を考えてみましょう。


課題1
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 惑星ウンモから地球を来訪した宇宙人ユミットたちが、スペインやフランスを中心に多くの科学者やジャーナリストに長期に渡って何千通もの手紙を出したという「ウンモ事件」。

 ユミットたちは、地球に到着してから手紙によるコンタクトを開始するまで、何と15年間も山中に潜伏して調査を行っていたとされています。しかし15年間というのはあまりにも長すぎるのではないか、なぜそんなに長期に渡って潜伏しなければならないのか、懐疑派はそのように指摘しています。

 ユミットたちの手紙は信用するとして、彼らがなぜそんなに長く待ったのか、推察してみましょう。
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課題2
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 1947年に米国ニューメキシコ州ロズウェルにUFOが墜落したという有名な「ロズウェル事件」。最初に報道されたときは、すぐに誤報だったとして騒ぎは終息しました。「墜落した円盤の残骸や宇宙人の遺体が回収された」という話が出てきたのは、70年代の終わりになってからです。

 なぜ、事件が起きてから30年以上も経過してから急に新証言が続々と出てきたのか、それまで誰も話題にしなかったのは不自然ではないか、懐疑派はそのように指摘しています。

 では、客観的な事実だけを元にして、ロズウェルに墜落したUFOがどの星からやってきたか推察してみましょう。
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 実際の講座では、ここで時間をとって聴講者に自分でじっくり考えてもらいました。読者の皆さんも、ここで読むのを中断して、しばらく考えてみて下さい。

 なお、恣意的な仮説を持ち込めば、何だって主張することは出来ます。しかし、そんな前世紀的なUFO論を振りかざすのは止めましょう。「疑似科学」「陰謀論」「不可知論」に逃げない、場当たり的な仮説を持ち込まない、極端な論理の飛躍をしない。これは、そういう思考法を身につけるための練習だと思って、真面目に取り組んで下さい。


【模範回答】

 問題文を読んだとき、多くの方は「そんなこと分かるはずがない」と感じただろうと思います。あるいは「回答するためには、自分勝手な論理でこじつける必要がある」と。そんなことはありません。それは、古いUFO感にとらわれているから、そう感じるというだけのことです。

 では模範回答を示します。


 まず課題1ですが、これは「ディスクロージャ・スフィア(情報公開領域)」をきちんと理解していれば簡単でしょう。

 ユミットたちのUFOは、彼らの故郷である惑星ウンモを出発してから短期間で地球に到着し、1950年3月28日に南フランスのデイニュの郊外に着陸したとされています。

 惑星ウンモの主星である恒星イマンマは、太陽系から14.6光年も離れています。ちなみに恒星イマンマは、地球の天文学では乙女座の方向にある恒星「Wolf424」として知られており、距離もほぼ一致します。

 ユミットたちのUFOは超光速で移動してきましたから、地球に到着した時点で彼らはディスクロージャ・スフィアの外にいます。ですから、手紙だろうと何だろうと、有意情報を地球人に漏らすことは出来ないわけです。

 前述の通り、彼らが出発したのは地球時間で1950年でした。そこから我々の太陽系までの距離は約15光年ですから、地球にいるユミットたちがディスクロージャ・スフィアに突入するのは出発の15年後、すなわち1965年ということになります。ユミットたちが最初の公式な手紙(有意情報)をフェルナンド・セスマ氏に送ったのは、まさに1965年のこととされています。つまり、有意情報の公開が解禁されたら、すぐにコンタクトを開始したわけです。

 これでユミットたちの長すぎる沈黙の理由が明らかになりました。彼らは好き好んで15年間も潜伏したわけではありません。相対性理論の制限により、地球到着後15年間は有意情報を漏らすことが出来なかったのです。

 そして、ディスクロージャ・スフィアに入った途端、さっそくコンタクトを開始したことから見て、彼らも情報公開が解禁される日を心待ちにしていたのでしょう。あれだけ大量の手紙をせっせと書いたのも、15年間も沈黙を強いられたことで積もり積もった欲求不満を解消するための「せきを切ったようなおしゃべり」だと思えば納得できます。


 次に課題2。これは少し難しいかも知れませんが、やはりディスクロージャ・スフィアがキーとなります。

 まずロズウェルにUFOが墜落したのは1947年。残骸の回収に関わったジェシー・マーセル少佐にUFO研究家のスタントン・フリードマン氏がインタビューを行い、「円盤と異星人の遺体を極秘裏に回収した」という証言(有意情報)を引き出したのが1978年。つまり31年も経過してからのことです。

 なぜマーセル少佐や、あるいはその後に続々と証言をした目撃者たちは、31年間も沈黙していたのでしょうか。もうこれはお分かりのことと思います。そう、彼らはディスクロージャ・スフィアの外にいたため、有意情報を漏らすことが出来なかったのです。だとすると、UFOが地球に到着してから31年後の1978年に、地球がディスクロージャ・スフィアに入ったということになります。

 そういうわけで、ロズウェルに墜落したUFOの出発地である星系から地球までの距離は、約31光年であると推測することが出来るのです。厳密に言えば31光年というのは上限であり、UFOの速度が遅ければ、もっと近い可能性もあります。ですが、ここでは、UFOは充分に速かった、出発してから1年以内に地球に到着した、と仮定します。それほど無茶な仮定ではないでしょう。

 では、天文年鑑あるいはそのデータを検索して、地球から31光年の距離にある星系を探してみましょう。

 実際の講座では、ここで聴講者たちがページをめくる音、キーを叩く音で講堂が満たされました。しばらく待っていると、あちこちで「あっ」という驚きの声、「ほ〜」という納得の声が、さざ波のように広がってゆきます。

 ある程度の聴講者が答えを見つけたところで、スクリーンに「スターマップ」を表示します。そう、米国における初のエイリアン・アブダクション(異星人による誘拐)事件としてよく知られている「ヒル夫妻誘拐事件」において、ヒル夫人がUFO搭乗員から見せられたという有名なマップです。余談ですが、これがスクリーンに表示された途端、会場からなぜか拍手がわき起こりました。

 詳細はご存じでしょうから省きますが、スターマップの分析により、ヒル夫妻を誘拐した宇宙人は「レティクル座ゼータ星系(ゼータ・レティキュリ)」から来たとされています。現在では、グレイあるいはレティキュリアンなど様々なタイプの宇宙人がこの星系からやってくるとされており、UFO関係ではおそらく最も有名な恒星系なのではないでしょうか。

 そのレティクル座ゼータ星系ですが、地球からの平均距離は、まさにどんぴしゃり、31光年です。正確には、ゼータ星系には地球から32.6光年離れた恒星と29.7光年離れた恒星の2つが含まれており、平均距離が31光年になるのです。

 レティクル座ゼータ星系は、距離が一致するだけでなく、ロズウェル事件とは全く関係ない別の事件でまさに宇宙人の故郷とされていることから、ロズウェルに墜落したUFOもこの星系からやってきたと推察しても、極端な論理の飛躍とは言えないでしょう。つまり、確実な事実とごく自然な推察だけで「ロズウェル事件で遺体が回収された宇宙人と、ヒル夫妻を誘拐した宇宙人は、同じ種族であるか、少なくとも関係が深いと考えることが出来る」と言えるのです。


 いかがでしょうか。自然法則に関する正しい理解と客観的な事実に基づき、きちんとした論理を積み重ねれば、UFOに関して驚くほど多くの結論を導き出すことが出来るのです。ご自分で練習問題を考えることで、それを実感して頂けたなら幸いです。


【おわりに】

 市民講座の事後アンケートでは、多くの聴講者から「UFOや宇宙人はオカルトだと思っていたが、ちゃんと科学的考察の対象になるということが分かった」「こういう授業を学校でもやってほしい」「UFOに対する印象が変わった。ワクワクするような新鮮な驚きを感じた」「今日からUFOを信じることにした」といったコメントが寄せられました。ささやかながら、若者のUFO離れを食い止める取り組みとして有意義だったのではないか、そう自負しています。

 学校にはまだまだ前世紀的なUFO観に染まった教師も多いでしょう。退屈な授業ばかりかも知れません。しかし、UFOに幻滅するのはちょっと待って下さい。古くさいのは、教師や教育カリキュラムであって、UFOではないのです。そのことを、ぜひ若い読者の方々に理解して頂きたいと思います。


 本稿は『IIUJ月報』(2008.04.24号)に掲載されたレポートを一般向けに書き直したものです。転載を快く許諾して下さった日本円盤振興会出版部に感謝いたします。また、諸般の事情から原稿の書き直しが遅れたため、担当の神矛さんにはずいぶんご迷惑をおかけしてしまいました。この場を借りてお詫びすると共に、氏の忍耐力と寛容さに対して心からお礼申し上げます。

 IIUJ「UFOスペシャリスト」活動、および公開市民講座については、日本円盤振興会ウェブページをご覧下さい。今後のスケジュール確認、参加申し込みも、このページからお願いします。

日本円盤振興会ウェブページ
『IIUJホームページ』(http://www.iiuj.or.jp/)



超常同人誌『Spファイル』6号に掲載(2008年8月)
馬場秀和


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