お勧めオカルト・精神世界本15選

馬場秀和


『スピリチュアル・ライフスタイル』(ウォレット・ダイヤモンド 三度笠出版)

 テクノロジーの発展によって、確かに人類は豊かになった。しかし、我々はテクノロジーに頼るあまり、人間の心、精神が持つ本来のパワーを忘れてしまったのではないだろうか?

 本書はそのような問題意識に基づき、従来のテクニカル分析に頼るのではなく、スピリチュアリズム(心霊主義)を活用した株式投資法を提唱している。著者によると、霊界から得た情報をどのように利用しようとインサイダー取引には当たらないし、いかなる連邦証券取引法にも違反しないという。

 著者が主催する団体は、実際にこの投資法を活かしたスピリチュアル・カウンセリング・サービス(降霊会)を提供し、全米で大好評を得ている。高額なサービス料にも関わらず、常に二年先まで予約が一杯だそうで、いかに現代社会に生きる人々が切実にスピリチュアルなものを求めているかがうかがえる。

 著者は言う。人生のあらゆる局面において、スピリチュアリズムは有益で、合法的で、利潤を生むと。プール付きの大邸宅に住み、高級車7台に愛人5人、と豪語する著者の「スピリチュアル・ライフ」に憧れる全ての人々、中でも生き方に迷っている若者に対して、人生の指針を与えてくれる本である。


『魂の遍歴』(ヤン・ブンソン 東報書店)

 生まれ変わり、輪廻転生の研究者は多いが、本書の著者ほど数奇な経歴の持ち主は他にはいないだろう。

 19世紀にインドで生まれた著者は、6歳になったとき「前世の記憶」を鮮明に思い出したことから、生まれ変わりに興味を持つようになる。大学卒業後、インド各地における生まれ変わりの事例調査を進めるが、志なかばにして病死。ところが、その後、英国に転生し、生前の記憶をたどってインドを訪れ、自分が残した調査ノートを見つけて帰国。その後、欧州における生まれ変わり事例の調査に取り組む。

 残念ながら著者は戦争中に死亡するが、大学図書館に隠しておいた研究成果は戦火を生き延びる。今度は中国に転生した著者は、英国に赴いて、前世の記憶通りの場所に隠してあった自らの研究資料を取り戻す。そして、北京大学を拠点に、中国における生まれ変わり事例を徹底的に調査し、ついに三世に渡る研究成果をまとめ上げた。それが本書である。

 150年近くの歳月をかけて調査した成果を集大成しただけあって、インド、欧州、中国における生まれ変わり事例200件以上が取り上げられ、徹底的に検証されている。そのボリュームにはひたすら圧倒される。最終的に著者は「生まれ変わりなど存在しない。ただの迷信である」という結論にたどり着くが、安易な否定ではなく、大量の事例調査に基づいて出された結論であるだけに、まさに決定版と言うべき説得力を持っている。


『ソビエト連邦はなかった』(福田降参 得馬書店)

 ソビエト連邦とは、アメリカ帝国による世界支配を正当化するために生み出された虚妄、フィクションだと著者は主張する。いわゆる「冷戦」は、米国の支配力を強めるための口実であり、歴史上どこにも存在しなかったというのだ。一見すると途方もない主張に思えるが、著者が挙げる様々な証拠を読み進めるうちに、疑い深い読者も次第に納得してゆくことだろう。

 例えば、ソビエト連邦が発表したとされる統計情報が、事実とはかけ離れていたこと。あるいは、ソビエト連邦で撮影されたとされる写真には、人物を消すなど、様々な捏造の痕跡が残っていること。ソビエト連邦で発行されていたとされる新聞の内容は明らかに虚構であり、本物とは到底考えられないこと。こうした証拠を一つ一つ積み重ねてゆくことで、ソビエト連邦なるものが砂上の楼閣、幻に過ぎないことが明らかになってゆく。

 著者によると、ソビエト連邦という虚構を支えたのは、ジョセフ・マッカーシー上院議員を委員長とする米国上院政府活動委員会であり、その目的は恐怖による米国民の弾圧であった。その後、CIA(中央情報局)がこのプロジェクトを引き継ぎ、ハリウッドの協力も得て、「ソビエト連邦の存在→共産化の恐怖→軍事介入の口実→米国による世界支配の正当化」という具合にエスカレートしていったものだという。

 大戦後の世界史を一変させる大胆な仮説であり、「歴史」とは事実ではなく解釈なのだ、という言葉を改めて思い起こさせる。賛否はともかくとして、現在の世界が置かれている状況を理解する上で読んでおくべき一冊。


『白鯨の暗号』(ブレナン・マッコイ 慎重社)

 著者は、世界的ベストセラー『聖書の暗号』(バイブルコード=Bコード)に挑戦し、メルヴィルの『白鯨』からBコードで隠された予言を発見したオーストラリアの数学者。彼の業績をまとめたものが本書だ。

 やや専門的な議論も含まれているが、そこは読みとばしても構わない。それより、著者が発見した数々の事実には驚かされる。『白鯨』だけではなく、『戦争と平和』『失われた時を求めて』『ペリーローダン』などの小説にも、Bコードによる予言が隠されていたという。

 ノストラダムスの『百詩篇集』にBコードで隠された予言が大量に含まれていることを見つけ、この詩集が実は予言書であることを発見する第8章が何といっても白眉だが、『ヴォイニッチ写本』が全てBコードで書かれていることが判明する第5章も興味深い。

 なお、著者のウェブサイト(http://www.mobydickcode.com) では、グーグルやアマゾンの書籍全文検索を利用することで、見つけたい予言の内容を入力すると、その予言が隠されている書籍を見つけ出してくれる「Bコード検索エンジン」が公開されている。(2006年6月現在、英文のみ対応)


『2012年、戦慄の大破局』(エド・ヨーイドン インストール出版)

 繁栄の頂点で忽然と姿を消してしまったマヤ文明。それが我々に残してくれたものの一つに、有名な「マヤ歴」がある。高度な天文学の知識を駆使して作られたマヤ歴だが、それは2012年12月22日で終わっているのである。はたしてこの日、何が起こるのだろうか?

 サン・マイクロシステムズ社に勤務するコンピュータ技術者である著者は、マヤ歴をベースに作られたソフトウェアは、このとき一斉に誤動作を起こす可能性があると警告する。2012年12月23日、コンピュータの計時カウンタがオールゼロにリセットされる。ソフトウェアはそれをマヤ歴元年、すなわち紀元前3114年8月11日だと解釈するだろう。結果は壊滅的なことになりかねない。

 航空機の墜落、原子炉の暴走、オンラインシステム停止、世界恐慌、核ミサイルの誤発射など、起こり得る最悪の事態を考えると、今から真剣に対策を講じなければならないと著者は言う。すでに6年後に迫ったマヤカレンダー・クライシス。我々はそれを無事に乗り切ることが出来るのだろうか。


『ピラミッドの神秘』(ボブ・ヴォーパル MMR出版)

 ギザの大ピラミッドの高さの二乗を底辺の三乗で割って、3517.211をかけると、エディンバラにある中華料理店の数に極めて近い値になるという。あるいは、カイロ博物館の正面に掲げられているピラミッドマップと、実際のピラミッド群の配置は、ほとんど完全に一致する。ピラミッドを配置した古代エジプト人は、5000年も後に作成されるマップの内容を、いかにして知り得たのであろうか。

 このようなピラミッドに関わる様々な謎と神秘を集大成した本書は、またピラミッド建設者の背後に存在したに違いない高度な文明についての思索の書でもある。

 いわゆる“正当派”のエジプト考古学者に対する辛辣な批判も読みどころ。「現在の技術なら、クフ王のピラミッドを解体し、再建造することも可能」と主張する彼らに対し、著者は徹底的に反論する。そのようなプロジェクトは、現代の最先端の政治力学を駆使しても許可を得ることは不可能だと。自らの主張を、実際の現地調査で明らかにするくだりは圧巻。


『オーパーツが明かす超古代文明の真実』(クラリス・ドンナ 学術研究社)

 中米コスタリカのジャングルで発見された謎の石球群。重量数トンにもおよぶ多数の石球を、誰が何の目的で作り、石切り場から遠く離れたジャングルまで運んで、しかもただ転がしておいたのか。これがオーパーツとして名高い『コスタリカの石球』である。

 考古学者である著者は、この謎を追求するうちに天啓を得る。これらの石球が伝えているメッセージはただ一つ、すなわち「ロックンロール!!」。誰も俺たちを止められないぜ、ヘイヘイヘイ! オルウェズロォーック!! 古代人が石球(ロック)を作り、転がした(ロール)のは、それが純粋に“ロック&ロールな生き様”だったからだ。

 古代メソポタミアのジグラト、マチュ・ピチュ遺跡、ティアワナコ、カルナック列石など、世界各地に残されている巨大遺跡は、なぜ全て岩(ロック)で作られているのか。それは、「ロックは偉大だぜ」「ロックは不滅だぜ」という熱いシャウトを後世に伝えるためだと著者は悟る。こうして、ロックを中心とした考古学の再構築を目指す著者の旅が始まった。

 『ピリ・レイスの地図』を初めとする様々な古代地図が示している“南極大陸”は、実はロックコンサート会場の拡大図。つまり古代地図の大半は、コンサートのチラシだったのだ。『アンティキティラ島の機械』はチケット予約に使われ、中南米に点在する台形ピラミッドはロックコンサート舞台。実際マヤのパレンケ遺跡のピラミッドには“奈落”や“せり出し”が作られており、さらに内部に保管された石板には、エルヴィス・プレスリーのレリーフが描かれていた。

 そもそも古代エジプトにおいて聖甲虫として崇められた“スカラベ”とは、ビートルズのことである。ハトホル神殿の壁画に描かれた電球はスポットライト。しばしば壁画に現れる空中光体は、UFOではなくミラーボール。イースター島のモアイはオスカー像。水晶ドクロや黄金ジェット機のペンダントは、ヘヴィメタのコンサート会場で売っていた土産物なのである。

 インドの古代叙事詩『マハーバーラタ』には、ウッドストック・フェスティバルの熱狂が克明に描写されているし、モヘンジョダロ遺跡の近くにはそのときの野外大型コンサートの跡と思われる場所が残されている。

 オーパーツと言うとすぐに「失われた超古代文明」やら「異星人が古代人に文明を伝えた」などと飛躍した主張を持ち出してくる類書に比べて、著者の説は極めて自然で無理がなく、説得力がある。また、ロック史観による考古学の再構築を唱える著者は、「石器時代」「青銅器時代」「鉄器時代」という従来の時代区分を、それぞれ「ストーンズ」「メタリカ」「アイアン・メイデン」と改称することを提案しているが、深く頷けるものがある。


『ストーンサークル黙示録』(ジョン・マッキントッシュ かもねぎ出版)

 有名なソールズベリーのストーンヘンジをはじめとして、英国では大小さまざまなストーンサークルが発見されている。それらは古代人の聖地、あるいは宗教的儀式の場であったと言われているが、他にも、天文台説、カレンダー説、魔方陣説、さらには周辺で頻繁にUFOが目撃されることから、異星人関与説まで、様々な異説が唱えられている。

 BBC放送のディレクターである著者は、ドキュメンタリー番組のためにストーンサークルの謎を追求してゆき、ついにその真相にたどり着く。何と、全てはたった二人の老人が、長年に渡って行ってきたイタズラに過ぎなかったのである。

 サークルメーカーと呼ばれる彼らと会見し、実際にストーンサークルを人手で作成する過程をフィルムに納めることに成功した著者は、さらにそのストーンサークルを自称“専門家”に見せて、本物の古代遺跡だと断言するシーンまで撮影し、それら全てを放送する。こうしてストーンサークルという神話は、息の根を絶たれてしまったのである。

 日本のオカルト番組などでは今だに「ストーンヘンジは古代遺跡」などと説明しているが、本場である英国では、ごく一握りの変人を除いて、もはや誰もストーンサークルを信じている者はいないことを、我々はきちんと知っておくべきだろう。


『UFOはプラズマだった!』(大月享受 日系BP社)

 UFOといえばプラズマ、それが数年前までの常識だった。未確認飛行物体の問題で悩んでいる人には、とりあえずプラズマ説を勧めておくのが最も無難な選択だった。まさに題名のとおり「UFOはプラズマだった」のである。

 しかし、その後の液晶の追い上げは激しく、今や両者の境界は極めて曖昧になってきている。「夜間目撃なら現在でもプラズマが主流」「アダムスキー級の大型UFOなら、やっぱりプラズマ」と言われているが、今後どうなるかは分からない。

 本書は、プラズマ説に関わった人々へのインタビューを中心に、急激に変化するUFO界の動向を俯瞰する試み。「墜落」「着陸」「拉致」の三点セットが特徴だった“アナログ地上派”時代の終焉が迫る今、次世代UFOについて考える上で必読の書である。


『シェイクスピアとイノベーションの法則』(府内逝男 P2P研究所)

 シェイクスピア作とされている戯曲を実際に書いたのは誰か。これについては諸説あるものの、現在では「猿を集めてタイプライターを打たせたら勝手に出来た」というのが一応の定説となっている。著者はこの定説に沿いつつも、シェイクスピア作品が完成したのは、ただ猿を集めたからではなく、100匹目の猿がタイプライターを発明したおかげだと指摘する。

 この挿話は、全てのイノベーションに共通する重要な法則を示している。すなわち「とにかく猿を100匹集めれば何とかなる」ということだ。この美しいルールこそ、あらゆるビジネスに共通する“イノベーションの法則”なのである。

 勝ち組・負け組を無情に選別する競争社会の中で、ついつい猿のことを忘れがちなビジネスマンに、元気と猿を与えてくれる本。


『フリーエネルギーと自由な社会』(リッチー・スチールマン リスキー出版)

 真空エネルギー、常温核融合、テスラコイル、Nマシンなど、次々と実用化され普及が進むフリーエネルギー。しかし、その背後にある思想は充分に理解されているとは言えない。フリーエネルギーの“フリー”とは、“無料”という意味ではなく、“自由”すなわち制約を受けないという意味なのである。

 本書は、永久機関「EMAcsモーター」の開発者にして、フリーエネルギー財団(FEF)の創立者でもある著者が、これまで執筆してきた評論や講演録をまとめたもの。「入力されたエネルギーを超える仕事をしてはならない」「単一熱源だけで仕事をしてはならない」などエネルギーの使用に関する熱力学的制約を厳しく批判し、これらは石油輸出国機構および石油メジャーが、自らの権益を守るために押しつけた不当な制約だと主張する。その上で、エネルギーは本来、誰もが自由に生成、蓄積、変換、使用できるものでなければならないと説く。フリーエネルギー問題のバイブルとも言うべき名著。

 なお、日本語翻訳版では、資源開放(オープンソース)運動との確執について語った講演録(2002年)が補遺として追加されている。


『グーグル・アースで見る世界(4)』(グーグル・アース研究会 竹輪書房)

 ネットで世界中を俯瞰できる画期的な衛星写真サービス「グーグル・アース」。世界中のファンが集めた“地球の見どころ”を収録する本シリーズの第4巻には、世界各地で新たに発見された不思議な地形や光景が収録されている。

 美しいカラー写真で見ることが出来るのは、銀色の未確認飛行物体、空飛ぶ自動車、こっそり浮上していたアトランティス大陸、エリア51に描かれた謎の図形、カリブ海に開いた巨大な穴、タスマニア島の人面山など。

 また、いわゆる『ナスカの地上絵』は、実は全大陸にまたがって描かれた全長32,000キロメートルにおよぶ超巨大4コマ漫画のごく一部(スクリーントーン)に過ぎないこと、イタリア半島が長靴に見えること、ムー大陸が人知れず沈没していたこと、池袋駅の東武と西武は東西逆であること、などグーグル・アースのおかげで見つかった新事実についても、詳しい解説が載っている。

 豪華本なので高価なのが欠点だが、息を呑む美しさで迫る見開き写真の迫力は、何物にも代え難い魅力である。


『ESP2.0の衝撃』(トム・オクライリー インパルス)

 「ネットと超能力の融合が切り開く新しいビジネスチャンス」などと昨今さかんに喧伝されているESP2.0だが、その本質をきちんと理解している人は意外と少ない。

 本書は、ともすれば「将来こういうことが出来るようになる」と騒ぎがちな類書とは一線を画し、既に広く普及している実例を中心とした一般向け解説書。超能力とIT技術の一体化が生み出すESP2.0は決して新しい概念ではなく、すでに我々はESP2.0の世界に生きているのだということを、改めて自覚させてくれる。

 記憶媒体に手を触れただけで、会ったこともない他人の住所や電話番号などの個人情報をすらすらと流出させる「サイコメトリー」、キーロガーなどのスパイウェアを仕込むだけで、遠隔地にいる他人の活動を読み取る「リモートビューイング」、キーボードを打つだけで掲示板やブログを炎上させる「パイロキネシス」。オンラインRPGにおいてクリック一発で他のプレーヤーキャラクターを抹殺する「PK」。これらは、全てESP2.0の実例なのである。

 記述は具体的かつ的確であり、文系理系を問わず、ESP2.0の本質を把握したい読者にとって最適な一冊。


『“迷信語”言い換え辞典』(文部科学省 日本印刷局)

 「国民の健全な科学精神の育成をめざす上で、迷信を助長するような言葉、いわゆる“迷信語”を、より適切な現代語に言い換えることが急務」(前文より)という主旨で、文部科学省が音頭をとって用語審議会にまとめさせた言い換え辞典。次のような言い換えがリストアップされている。

  「金しばり」      --->「多重債務」
  「虫の知らせ」     --->「バグレポート」
  「コックリさん」    --->「睡眠障害」
  「自動書記」      --->「出会い系メール」
  「テーブル・ターニング」--->「ちゃぶ台返し」

 ただし、このように言葉を言い換えることで本当に迷信が廃れるのか、むしろ伝統的な文化を破壊するだけではないのか、という懸念を覚える。

 また、明らかな誤訳や無理解が散見されることも気になる。例えば、「ダウジング」は、そもそも「ダウンサイジング」の短縮形ではないし、ましてや「ダウジングロッド」を「スカイフィッシュ」と言い換えるのは疑問である。それに「パラサイコロジー」を「ニート、引きこもり研究」と言い換えるのも変で、おそらく「パラサイトロジー」と誤読したのではないだろうか。

 他にも「騒霊」を「ポータルサイト」と言い換えたりするに至っては、明らかに何かの勘違いであろう。審議に参加した委員には、本当にオカルト関係の知識があったのか疑問を持たざるを得ない。

 文部科学省としては「広く国民の審査を仰ぎ、不断の改善を続けてゆく」そうなので、オカルト好きの方々は、文部科学省ホームページにある「ご意見箱」にどしどしコメントを投稿するとよいだろう。


『スピリットライド -地球を操る憑依宇宙人の謎-』(神矛益ヲ 功段社)

 最後に「Spファイル友の会」のメンバでもある神矛益ヲさんの著書を推薦しておこう。

 アマゾンのレビューやmixiのコミュニティ等では“神智学モドキの支離滅裂な精神世界系トンデモ本”などと酷評されることが多いが、それは皮相的で浅はかな読み方というものである。確かに飛躍が激しい難解な文章は、本書の読解を著しく困難にしているが、いったんこれが人気コミック『仮面ライダーSPIRITS』(村枝賢一)の小説版になっていることに気づきさえすれば、後は比較的容易に読み解くことが出来るだろう。

 1908年6月30日、シベリアで起こったツングースカ大爆発と共にやってきた“彼ら”。地球に干渉することで、世界各地で様々な超常現象を引き起こし、人類を恐怖に陥れてきた“彼ら”に対して、新たに覚醒したニューエイジの仮面ライダー「スピリットライダー」が敢然と立ち向かう。腰のフォトンベルトが輝くとき、「アセンション!!」の叫びと共に変身するスピリットライダー。いわゆる昭和仮面ライダーシリーズの基本に忠実な設定でありながら、やはりシビれるほどかっこいい。

 後半になって、“彼ら”は地球を侵略しているのではなく、実は「事故によって我々の世界の物理法則に幽閉されることになってしまい、なんらかの救済を求めて人間の意識の奥底にある集合的無意識にアクセスしている」ということが判明してからは、ストーリー展開にも一段と深みが増してくる。既に人類と意識の奥深い場所で繋がっている“彼ら”と戦うことが果たして正しいのか、それは我々の文化や精神の根幹を攻撃することではないのか、と苦悩するスピリットライダーの姿。ここから、「オカルトに対する懐疑主義者の迷い」の暗喩を読み取ることは容易である。

 実際に起きた(とされている)オカルト事件を次々に取り込んで展開してゆく壮大な物語が、最後にたどり着く境地とは何か。それは読者各位が自分の眼で確認してほしい。オカルト信奉者、神智学研究者、懐疑主義者、不思議好き、そして昭和仮面ライダーシリーズのファン、全ての方々に一読をお勧めする。



超常同人誌『Spファイル』3号に掲載(2006年8月)
馬場秀和


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