『未知動物学への招待』レビュー

 オカルト陰謀RPG『コンスピラシィX』は、もともとNew Millennium Entertainment社から出版されたRPGですが、Eden Studios社に売却されました。今後、コンスピラシィX関連製品は、全てEden Studios社から出版されます。
 で、Eden Studios社から出された最初のサプリメントが、CryptZoology(未知動物学への招待)です。今回は、これを簡単にレビューしておきましょう。なお、慣例に従って、コンスピラシィXのことを「コンペケ」と略します。
馬場秀和


 最初のページを開くと、既におなじみになった例のフレーズがあります。

 ・本書に登場するキャラクター、状況、組織、企業は全て架空のものである。
  実在するものとの類似があれば、それは全て何らかの巨大な陰謀である。
  (It's all a big conspiracy anyway)

 懐かしいですね。しかし、今回は、これだけでなく奥付とか、非常に公式で形式
的な部分にも愚かなことが書かれています。例えば、次のような表示が。

 ・Printed in USA (that's what we want you to think)

 どうやら、Eden Studios社は、コンペケの愚かさにさらに磨きをかけようという
方針でいるようです。なかなか良いですね。

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 さて、CryptZoologyですが、割と薄め(128ページ)のサプリメントです。内容
は次のような感じです。

  ・未知動物学に関連した「キャラクター出身組織」を2つ追加
  ・新しく追加された組織の解説
  ・有名どころの未知動物の解説と、コンペケ用データ
  ・未知動物をネタにしたシナリオアイデア集
  ・ごく普通の動物に関するコンペケ用データ


 未知動物学とは何か。

 それは、目撃者がいる(しばしば頻繁に目撃事件が起こる)にもかかわらず、
今のところ標本がない(または 某国国有秘密倉庫にしか保存されてない)
動物を研究対象とする学問です。

 実際には「学問」と呼べるほどきちんとした研究体制があるわけでなく、熱心な
アマチュア達が、いつの日か動物学の研究対象になる(と信じる)未知動物を追っ
ているというのが実態に近いかも知れません。

 未知動物学の対象となっている典型的な動物は、

  ・ネッシー(ネス湖の怪獣)
  ・ビッグフット、イエティ
  ・大海蛇

といった連中です。他にも、未知動物学で人気がある動物としては

  ・モケーレ=ンベベ
  ・オゴポゴ
  ・チュパカブラ
  ・ジャージーデビル

などがあります。これらの動物は(一般の知名度はさほど高くありませんが)未知
動物学の分野ではとても人気があります。

 こういう分野にも流行というものがあって、少し前までは、モケーレ=ンベベが
人気だったのですが(コンゴの密林地帯に今でも恐竜が生息しているという設定の
映画や小説は、全てモケーレ=ンベベがモトネタです)、最近はどうもチュパカブ
ラの人気が急上昇中のようです。今から未知動物学に取り組むなら、チュパカブラ
の専門家を目指すとよいかも知れません。

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 これらの動物は、全く実在しないのかも知れませんし、または明日にでも標本が
採取され、動物学の研究対象となるかも知れません。イリオモテヤマネコやシーラ
カンスのように。

 それに対して、まず実在するとは思えないものの、目撃事件が多いので好奇心を
刺激する動物も、未知動物学の一分野です。そのような動物としては、

  ・フェアリィ(妖精)
  ・モスマン(蛾人間)
  ・フロッグマン(蛙男)

などがあります。ああ、そういえば動物とはいえませんが「宇宙人」なんつーのも
このカテゴリに含まれるかも知れません。あと「天使」とか。

 さらに、通常の動物でありながら、何らかの意味で異常な固体というのも未知動
物学の興味の対象となります。例えば

  ・ファントムキャット(生息域でない場所で目撃される謎の大型猫科動物)
  ・巨大ダコ
  ・クラーケン(巨大イカ)

などが、これに相当します。

 CryptoZoology には、これまで挙げた多数の未知動物に関する解説、データが載
っています。もし日本語版が出版されることがあったら、ぜひ「ヒバゴン」「ツチ
ノコ」「クッシー」といった日本産の未知動物も収録して欲しいと思います。

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 それにしても、なぜコンペケで未知動物学なのか。

 それは、しばしば未知動物が、オカルトや超常現象と関連づけて語られるからで
す。ネッシーと黒魔術、モスマンとUFO、大海蛇とアトランティス大陸。今まで
に「両者に何らかの怪しい関係がある」と主張する本が、いったい何冊書かれたこ
とでしょう。

 あるいは、ラブクラフトの小説を思い出して下さい。その多くが未知動物とオカ
ルトをテーマにしています。

 もちろん、オカルトや超常現象と、陰謀の相性も問題ありません。

 そこで、未知動物をネタに、ちょっとばかりオカルトを入れて、陰謀をからませ
れば、簡単にストーリーを作ることが出来るのです。

 Xファイルでも何度も未知動物がネタとして使われましたし、映画化が予定され
ている「ネアンデルタール」など、「イエティ」「超能力」「秘密結社の陰謀」と
いう、何というかコンペケ3題話みたいなストーリーです。

 こういう話をコンペケでプレイしましょう、というのがCryptoZoology の狙いな
のです。

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 さて、結論ですが、コンペケをプレイする上で特に必要なサプリメントではあり
ません。未知動物学をネタにしたいなら、その手の本を読んだ方が早いでしょう。
ネッシーの能力値や技能レベルが必要になるようなシナリオを作りたい人だけは、
購入する必要があるかも知れません。あと、犬とかワニとかクマといった通常動物
の能力値が必要になるケースは結構あるので、これを目当てに購入するということ
も考えられます。

 なお、CryptoZoology を読んでいる間に、Eden Studios社から次のサプリメント
である"Aegis Handbook"(イージス・ハンドブック)発売のアナウンスがありまし
た。ちゃんと仕事をしてますね。


馬場秀和


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