新時代紀行 第2部 「実習TNE」
「実習TNE」は、「入門TNE」の読者を対象に、TNEで遊ぶために必要となる実践的な知識を提供するものです。
1995年12月 馬場秀和
TNEでよく使われるアイテムやルールについて解説します。これだけ知ってお
けば、プレイする上で困ることはないでしょう。
TNEの基本である「スマッシュ&グラブ」型シナリオの作り方、セッションの
進め方について解説します。TNEのレフリーはもちろんのこと、他のRPGのプ
レイにも参考になる情報が満載されていますので、TNEに興味がない方は、ここ
だけでも是非お読み下さい。
TNE製品リスト、購入ガイド。あなたもすぐにTNEを始めることが出来ます。
では、最後までごゆっくりお楽しみ下さい。
さて、せっかくトラベラーをプレイするのですから、「宇宙船はどのようにして
飛ぶのか」ということくらい理解しておくべきですね。
というわけで、まず最初は宇宙船に装備されているシステムのうち「反重力リフ
ター」と「通常ドライブ」を取り上げて解説することにします。
宇宙港(現代の空港と同じような場所)に停泊している宇宙船を想像して下さい。
あなたはそれに乗り込んで、操縦席につきます。眼前には沢山の計器がずらりと
並んでいますが、取り乱さないように。今回の実習では、まだ宇宙港から飛び立つ
予定はありません。肩の力を抜いてリラックスして下さい。
さて、落ち着いたところで「反重力リフター」を作動させてみましょう。
リフターというくらいだから、作動させると宇宙船がふわふわと浮き上がる、と
思うかも知れません。ところが、スイッチを入れても宇宙船はじっと静止したまま
です。
これは重要なポイントなのでよく理解して下さい。反重力リフターには、宇宙船
を動かす力はないのです。(宇宙船に限らず、エアラフトなど他の反重力機器のリ
フターも同様です)
反重力リフターが作動すると、宇宙船に対して働く重力が打ち消されます。つま
り、今まで宇宙船は惑星の重力によって地面に押さえつけられていたのですが、反
重力リフターを作動させた途端に、地表重力から解放されたわけです。
(じゃ、惑星の自転から生ずる遠心力でやっぱりふわふわと浮き上がるはずじゃん、
という突っ込みは止めましょうね。ここでは惑星の自転による影響は無視します)
ここで初等力学の知識を思い出して下さい。
慣性の法則:力が加えられない限り、静止している物体は静止状態を続ける。
運動している物体は等速直線運動を続ける。
宇宙船の今の状態が、ちょうど「静止物体」ということになります。力が加える
までは、じっと静止状態を続けるわけです。
注意しなければならないのは、宇宙船の慣性質量がなくなったわけではない、と
いうことです。反重力リフターを使っても、慣性質量を消すことは出来ません。
それが証拠に、今の状態で宇宙船を誰かが手で押したとしても、船体はびくとも
しません。宇宙船の巨大な質量は消えたわけではないのです。
では宇宙船を動かしてみることにします。「通常ドライブ」を作動させましょう。
通常ドライブの動作原理については後述するとして、今回はともかく「背後に高
温水素プラズマを噴出することで反動を得る」ということだけ知っておいて下さい。
宇宙船の船尾に備えつけられている監視カメラがとらえた映像をスクリーンに写
してみましょう。船尾から背後に突き出している巨大な噴射孔が輝き始めることが
分かります。
通常ドライブの出力を上昇させてゆきます。
噴射孔はごぅごぅと唸りをあげ、光輝くジェットを激しく放射するようになりま
す。たまたま船尾近くで整備を行っていた作業員が、あわてて逃げようとします。
が、間に合いません。高温水素の流れに巻き込まれて、じゅっ、と蒸発してしまい
ました。
このように、通常ドライブを作動させたとき、宇宙船の噴射孔周辺は、実に数千
万度の高温にさらされることになり、非常に危険です。注意して下さい。
宇宙船は滑るように前進を開始します。船首が地表に接触し、その反発で数メー
トル浮き上がりました。そのままぐいぐいと加速して進みます。宇宙港に停泊して
いる他の宇宙船が、次々と左右にはね飛ばされ、横転し、クラッシュしてゆきます。
周囲のあちこちに火柱が立ち始めましたね。
ここでちょっと注意して下さい。他の宇宙船にがんがん衝突しているにも関わら
ず、船内ではちっとも衝撃が感じられません。
これが、リフターと並ぶ大切な反重力テクノロジー、「重力調整器」の効果です。
他の宇宙船に衝突する度に、本来なら宇宙船内に慣性力が働くはずです。これが
衝撃として身体に感じられるわけです。
重力調整器は、この慣性力が発生する度に、それをちょうど打ち消すように船内
の重力場を調整するのです。この結果、宇宙船が急激に加速・減速しても、船内に
は慣性力は生じません。船内の重力場は、常に床方向を向いて安定しています。
つまり、重力調整器があるおかげで、宇宙船がどのように運動しても、船内の乗
員はそれを気にしないで生活できるわけです。宇宙戦闘の最中、嵐の中で舞い飛ぶ
木の葉のように激しい機動を行っても、船内にいる限りまるで地表でじっと静止し
ているのと同じように感じられます。(重力調整器が故障しない限り!)
さて、暴走する宇宙船の前方に、巨大な燃料タンクが現れました。そろそろやば
いので、通常ドライブを停止させましょう。すると、宇宙船はピタリと停止・・・
するかと思うと、意外なことにそうはなりません。
もう一度、初等力学の知識を思い出して下さい。
慣性の法則:力が加えられない限り、静止している物体は静止状態を続ける。
運動している物体は等速直線運動を続ける。
宇宙船の今の状態が、ちょうど「運動物体」ということになります。通常ドライ
ブを止めて、かかる力を消しても、今のままの速さで直線運動を続けるわけです。
では、宇宙船を減速させるにはどうすればいいでしょうか。そう、船体を180
度回転させて、進んでいる方向に通常ドライブを噴射すればいいのです。
ここで、とても大切なポイントがありますので、頭に入れて下さい。それは「宇
宙船を停船させるためには、現在の速度を得るために費やしただけの燃料と時間が
必要である」という点です。
「車は急に止まらない」と言いますが、それでも車の場合、ブレーキをかけるの
に燃料は必要ありません。また、加速にかかるよりもずっと短い時間で減速するこ
とが出来ます。
ところが、宇宙船は違うのです。本当に「急には止まれない」のです。それどこ
ろか、途中で燃料が切れれば永久に止まれなくなります。初心者パイロットが宇宙
旅行から戻ってこない理由の多くがこれです。
この「減速問題」については後に詳しく解説するとして、今回はこれだけは理解
して下さい。さきほど通常ドライブを最大出力で数分間噴射しました。これにより
獲得した速度(というか運動量)をなくすためには、やはり数分間をかけて、反対
方向に最大出力で噴射をしなければならないのです。
ただ、残念ながら、もはやそれだけの時間が残されてないようです。
宇宙船は、燃料タンクに激突します。
ところで、重力調整器が打ち消せる慣性力には限界があります。このような大衝
撃を打ち消すことは無理です。あなたは操縦装置に叩きつけられ、べしゃりと潰れ
ます。
燃料タンクは激しい衝撃でひしゃげて、亀裂が入ります。宇宙船の燃料はガソリ
ンではありません。液体水素です。超高圧で液体となった水素を閉じ込めていたタ
ンクに亀裂が入ったのだからたまりません。タンクは爆発四散します。放出された
大量の水素に、衝突で生じた火花が引火します。
立ち並ぶ多数の燃料タンクが連鎖的に爆発を起こします。今や、宇宙港は巨大な
火球です。衝突現場を中心に衝撃波が同心円を描き、ぐんぐんぐんぐん広がってゆ
きます。
宇宙船整備ドックも、管制塔も、発着ロビーも、宙港街も、全てが衝撃波によっ
て散り散りに引き裂かれ、吹き飛ばされ、燃え上がります。
このように、素人が宇宙船を動かすのは非常に危険なことなのです。
前回は、反重力リフターと通常ドライブについて学びました。ちょっと復習して
おきましょう。
「反重力リフター」の効果は、宇宙船に対して働く惑星重力を打ち消すことです。
地表で反重力リフターを作動させると、宇宙船はまるで無重力空間にいるかのよ
うに振る舞います。ただし「ふわふわ」と浮き上がるわけではないことに注意して
下さい。
無重力空間に置かれた宇宙船は、何もしなければその場でじっと静止しています。
同様に、地表で反重力リフターを作動させても、宇宙船は静止状態のままです。
宇宙船を移動させるためには、反重力リフターだけでなく、何らかの強力なスラ
スター(推進機構)が必要になるのです。
最も普及しているスラスターは、水素プラズマ推進という技術を実用化したもの
で、「通常ドライブ」と呼ばれています。
通常ドライブの原理は、宇宙船に大量に積んである水素を急速に加熱し、プラズ
マ状態にして、背後に連続的に放出するというものです。宇宙船は、水素プラズマ
流の反動により進力を得て、加速されます。
反重力リフター、そして通常ドライブという2つのシステムにより、宇宙船は惑
星地表から軌道まで上昇し、また惑星間を航行することが出来るというわけです。
さて、今回は「ジャンプ・ドライブ」の話をしましょう。
「ジャンプ・ドライブ」は、知られている限り、トラベラー宇宙における唯一の
超光速推進です。宇宙船が、出発する星系内で「ジャンプ空間」へ突入し、ジャン
プ空間に1週間ほど留まり、それから通常空間にジャンプアウトすると、もうそこ
は目的の星系内だというわけです。
恒星間ジャンプを1回行うと、ジャンプした距離とは無関係に、ほぼ1週間の時
間が経過します。
多くの種族が惑星間航行(星系内航行)を実現しましたが、独力で恒星間ジャン
プを実用化した種族は数えるほどしかありません。それらの種族は、「主要種族」
と呼ばれています。
余談ですが、地球人(現在のソロマニ人)が主要種族になれたのは、きわどい偶
然の成せるわざでした。国連宇宙調整局(UNSCA)の探査船が、地球史上始め
ての恒星間ジャンプにより、地球からわずか数光年しか離れてないバーナード星に
到着したとき、すでにそこはヴィラニ人による第1帝国の領土だったのです。
もし、ジャンプ・ドライブの開発があと数年遅れていたとしたら、おそらく地球
は先にジル・シルカ、つまりヴィラニ帝国の接触を受け、ジャンプドライブの研究
を禁止され、「主要種族」と呼ばれる権利を永久に失っていたことでしょう。
21世紀の始めまで長引いた大国間の冷戦が、結果として宇宙開発を進める強力
な推進力として働いたこと、またUNSCAのベースとなった米国航空宇宙局(N
ASA)が一度も重大事故を起こさず、常に潤沢な予算を与えられていたこと。
これらの条件が揃わなかったとしたら、地球人の宇宙進出は大きく遅れ、ヴィラ
ニ帝国に併合されてしまっていたかも知れません。
さて、惑星などの巨大質量の近くでは、ジャンプを行うことが出来ません。
このことをイメージとして理解していただくために、例え話で説明してみましょ
う。
宇宙空間を2次元、つまり平面だと想像して下さい。ついでに、その平面をバス
ケットボールのコートだと思いましょう。このコートに立ったあなたは、今からシ
ュートを決めようとしています。もちろん、このシュートが恒星間ジャンプに相当
するわけです。
ボールが見事にゴールに入れば、ジャンプ成功ということになります。
さて、惑星などの巨大質量は、周囲の空間を歪ませます(この歪みは「重力場」
と呼ばれます)。質量が大きければ大きいほど、空間の歪みも大きくなります。惑
星は完全な球体ではありませんし、その密度も不均一です。さらに、一般に惑星は
自転していますし、他の惑星や恒星からの重力も受けていますから、空間の歪みは
複雑な形になり、常に揺れ動いていることになります。
さきほどの例えに戻るなら、コートの中央に大きな「へこみ」があるようなもの
です。このへこみ、複雑でいびつな形をしており、その上、常に揺れ動いているの
です。
このへこみに立って、ゴールを狙ってみましょう。
足元は、ぐらぐらぐらぐら。身体は右へ左へ前へ後ろへ、ぶんぶん振り回されて
います。これでは、いくらあなたが名シュータでも、シュートは出来ません。
そこで、「へこみ」の中心から一歩、遠ざかります。ここだと、へこみによる床
の歪みも、その変動も少なくなりました。うまく狙えば、シュートを決めることも
出来るような気がします。でも、身体はまだふらふらと揺れ動きます。もしシュー
トの成否に命がかかっているとしたら、あなたは絶対にシュートしないでしょう。
さらに「へこみ」から遠ざかります。もう床の歪みや変動は気になりません。身
体は安定しています。ここからなら、あなたは造作なくシュートを決めることが出
来るでしょう。
以上のように、宇宙船が安全にジャンプを行うためには、惑星からある程度の距
離だけ離れなければならないのです。そして、惑星が大きければ大きいほど(質量
が大きければ大きいほど)、重力場による「歪み」が大きく、したがって安全なジ
ャンプを行うために遠く離れなければならないわけです。
TNEでは、宇宙船と惑星との距離を、ルール上、次の4段階に分類します。
・地表
・軌道上
・直径10倍地点 (惑星の直径の10倍だけ離れている)
・直径100倍地点(惑星の直径の100倍だけ離れている)
直径100倍地点まで到達すれば、安全なジャンプが可能です。それより短い距
離でジャンプした場合、事故が起こる可能性があります。もちろん、惑星に近いほ
ど事故の確率は高くなり、また事故の影響も深刻になってゆきます。
TNEでは、惑星地表にある宇宙船を、ジャンプ空間に突入させる場合、次のよ
うな手順が必要です。
1.宇宙船を、惑星地表から惑星周回軌道まで上昇させる
2.惑星周回軌道から、惑星の直径10倍地点まで航行させる
3.さらに惑星の直径100倍地点まで航行させる
4.宇宙船をジャンプインさせる
この手順を安全に進めるために、複数のPCが協力し、役割を分担して、それぞ
れ得意な技能で判定に挑戦しなければなりません。
例えば、惑星地表から軌道まで宇宙船を上昇させるのは、パイロットの役目です。
優秀なパイロットになるためには、敏捷力が高くなければならないでしょう。
腕利きのパイロットは、器用かつ大胆で、不測の事態に素早く対応でき、たとえ
惑星大気中で嵐に巻き込まれても、宇宙船を自分の手足のように操って危機を脱す
ることが出来なければなりません。
いざというとき頼りになるスマートな奴、というのがパイロットのイメージでし
ょう。
宇宙船を軌道上から惑星の直径10倍地点まで、さらに100倍地点まで航行さ
せるのは、パイロットではなく、航宙士の責任です。なぜなら、燃料を節約しなが
ら、なるべく短い時間で目的地点に到達する軌道を計算して、通常ドライブ制御シ
ステムにデータを入力するのは、航宙士の仕事だからです。
優秀な宙航士になるためには、教養が高くなければならないでしょう。ベテラン
の航宙士は、頭脳明晰で、常に沈着冷静で、コンピュータを楽々と使いこなし、船
員仲間の尊敬を得られる人物でなければなりません。
頭の切れる学者タイプの参謀役、というのが航宙士のイメージでしょう。
そして、宇宙船をジャンプさせるのは、パイロットでもなく、宙航士でもありま
せん。エンジニアです。
エンジニアは、どちらかと言うと、船員仲間よりも自分のジャンプ・ドライブや
通常ドライブの方を愛していることが多いことでしょう。しかし、優秀なエンジニ
アは誰からも尊重されます。
常に機械の機嫌をうかがい、暇があればメンテナンスを続け、修理パーツをため
込み、パイロットが通常ドライブを酷使しているとぶつぶつ文句を言い、航宙士が
ジャンプドライブを酷使しているとぶつぶつ文句を言い、新しい部品と交換したら
エネルギー変換効率が出力安定性が何パーセント上昇したとか下降したとか一喜一
憂する。そういう職人の親方みたいな奴、というのがエンジニアのイメージでしょ
う。
もちろん、宇宙船を飛ばすには、この3人だけでは不足です。
乗客の世話をするスチュワード、船員や乗客の健康や冷凍睡眠の安全に責任を持
つ船医、宇宙戦闘のプロである砲撃手、宇宙船同士や宇宙港との通信を円滑に進め
る通信士、そして宇宙船の運行について最終的な責任と権限を持つ船長。
TNEの大抵のシナリオでは、最初の方で、現地に向かって宇宙船を飛ばすシー
ンが登場します。こういうシーンで機械的にダイスを振るだけではいけません。上
に示したように、それぞれの役割に相応しい(あるいは、わざと外した)キャラク
ターを、多少大げさに演じ、ロールプレイを楽しみましょう。
さて、宇宙船の運行について具体的に解説したいのですが、そのためにはまず何
はともあれTNEにおける行為判定ルールである「タスクシステム」について理解
してもらう必要があります。
そこで、今回はタスクシステムだけを集中的に解説することにします。なお、タ
スクシステムに関する知識は、これ以降の解説(例えば銃器戦闘の解説)を理解す
る上でもキーとなりますから、気合を入れて読んで下さるようお願いします。
TNEでは、キャラクターがとる行動の成否は、全てタスクシステムによって判
定されます。もちろんレフリーはタスク判定について熟知している必要があります。
素早く、かつ的確にタスク判定を行うことこそ、レフリー作業の基本なのです。
さて、そのタスクシステムです。
キャラクターは各種の技能を習得しています。キャラクターがどれくらい技能に
習熟しているかを示す値が「技能レベル」です。また、その技能の基礎になる能力
を、技能の「基礎能力」と呼びます。
例えば、泳ぐという行動を行うとき、技能としては「水泳」を、また能力として
は「体力」を使うわけです。わずかな例外を除き、技能と基礎能力は1対1に対応
します。例えば、水泳の基礎能力は常に体力です。
さて、TNEにおいては、特定の行為に成功するためには、その行為に関する技
能と能力の両方が必要だと考えます。いくら水泳の練習を積んでも基礎体力がない
とうまく泳げない。逆に体力があり余っていても、練習しないとやはり上手に泳ぐ
ことは出来ない。そういうことです。
そこで、行為の成否判定を行うときには、技能と基礎能力を合計した値を使うこ
とになります。この合計を「目標値」と呼びます。
キャラクターシートには、そのキャラクターが習得している技能のリストが書か
れています。個々の技能の背後には、n/mという形で数字が書かれます。
「水泳 2/9」という具合です。
nが技能レベル、mが目標値です。ですから、「水泳 2/9」のキャラクターなら
「水泳」技能を2レベル習得しており、目標値は9というわけです。(ところで、
このキャラクターの体力がいくつか、お分かりですね。そう、7です)
さて、ここまでで準備は整いました。20面ダイスを用意して下さい。ダイスを
振り、目標値以下が出れば成功です。出目が小さい方が成功という、いわゆる「下
方ロール」です。
しかし、これだとどんな状況でも成功率が同じになってしまいます。これは不合
理なことです。
「水泳」の場合だと「プールで25m泳ぐ」という行為と、「戦闘装備を着けた
まま急流に飛び込んで溺れている戦友を救助する」という行為では、成功率が違っ
ていて当然でしょう。
このため、レフリーはPCが行おうとする行為について「難易度」を決定しなけ
ればなりません。難易度には「容易」「標準」「困難」「至難」「不可能」の5段
階があります。
さきほどの例で言うと、プールは「容易」、急流は「至難」くらいでしょう。
この難易度に従って、目標値を何倍か、あるいは何分の1かにします。「容易」
で4倍、「標準」で2倍、「困難」で1倍、「至難」だと半分、「不可能」だと、
1/4です。半分や1/4は端数切り捨てです。
こうして目標値を修正した結果を「最終目標値」と呼びます。
さきほど説明した通り、20面ダイスを振って、最終目標値以下を出すと成功と
いうことになります。ただし、出目が1なら自動的に成功、出目が20なら自動的
に失敗です。
また、20面ダイスの出目より、最終目標値の方が10以上大きいなら(出目が
最終目標値を10以上下回っていたなら)「大成功」です。
大成功だと狙った以上の成果が得られます。いくつかのタスクについては、大成
功したときの効果がルールで決められています。例えば射撃タスクに大成功すると
ダメージが2倍になる、という具合です。ルールで定められてない場合、大成功の
効果はレフリーが状況に合わせて決定して下さい。
逆に出目が最終目標値より10以上大きいなら、もう一度ダイスを振ります。
二度目の出目が最終目標値以下ならただの失敗ですが、二度目の出目が最終目標
値を越えていれば(2回目の判定も失敗すれば)、「大失敗」です。
大失敗すると、タスクに失敗するだけでなく、行動しなかったときより悪い結果
になります。水泳の場合、溺れるだけでなく、装備を流されて無くしてしまうとい
った結果になることでしょう。
ある行為を行うために必要な技能を習得してない場合、基礎能力値を目標値とし
て判定します。ただしこのとき、「技能なし」のペナルティとして難易度が1段階
上がります。このペナルティは結構きついので、出来るだけ技能なしタスクに挑戦
するのは避けた方が無難でしょう。(大失敗の確率も結構あります)
なお、技能レベル0は「技能なし」ではないことに注意して下さい。技能レベル
0を習得していれば、難易度が1段階上昇するペナルティを受けずに済みます。こ
れは重要なことです。
これでTNEのタスクシステムが理解できたことと思います。
行為判定の際に、技能だけでなく対応する能力もレフリーが決定しなければなら
ないメガトラベラーのタスクシステムと比べると、TNEのタスク判定システムは
より単純になっています。
また、成功率に技能レベルと能力が同等に効いてくるということから、能力が技
能レベルに対して1/5しか影響しなかったメガトラベラーと比べて、TNEでは
能力値の重要性が5倍に高まったという見方も出来ます。
さて、タスクシステムを理解したところで、宇宙船を離陸させてからジャンプポ
イントまで飛ばすために、実際のセッションではどのような作業が行われるのか、
順番に見てゆきましょう。
今回の解説では数字や数式が出てきますが、内容的には中学生に理解できる範囲
ですから、どうか投げ出さないでついてきて下さい。
まず、旧トラベラー以来、皆様お馴染みの「偵察艦」を1隻、用意します。
今回の実習で使う偵察艦のデータの一部を示します。
容積:100排水素トン(=1400キロリットル) 全長:35メートル
ジャンプドライブ:2
ジャンプドライブ用燃料タンク容量:210キロリットル
通常ドライブ :2G
通常ドライブ用燃料タンク容量 :500キロリットル
通常ドライブ燃料消費率 :12.5キロリットル/Gh
宇宙船の容量(体積)を計る単位としては、伝統的に「排水素トン」が使われて
います。深く考えずに、1排水素トン=14キロリットルだと覚えて下さい。以降、
容積の単位は全てキロリットルを使うこととし、Klと表示します。
宇宙船が積んでいる燃料は、液体水素です。高圧タンクに詰められているため、
常温で液体となっているのです。
燃料タンクは2つあります。ジャンプドライブ用と、通常ドライブ用です。
前者は、ジャンプエンジンを動かすためだけに使われます。1回のジャンプで、
ジャンプ用の燃料タンクは完全に空になってしまいます。
後者は、主に宇宙船を加速するための噴出材(反動質量)として使われます。
ただし、一部はパワープラント(核融合炉)の燃料となり、電力を供給するため
にも使われます。
宇宙船における単位時間あたりの燃料消費量は加速度に比例しますから、次の関
係が成立します。
燃料消費量(Kl)=燃料消費率(Kl/Gh) ×加速度(G) ×加速継続時間(h)
h は時間(hour)です。
偵察艦の燃費が12.5(Kl/Gh) というのは、1G加速を1時間継続すると、燃料で
ある液体水素が12.5 Kl 消費される、という意味です。
では、この偵察艦が燃料満タンで停止した状態から、最大加速を開始したとして、
通常ドライブ用燃料タンクが空になるまでにかかる時間はいくらでしょう?
通常ドライブ用燃料タンクの容量は、500Kl でしたね。燃費は12.5Kl、最大加速
は2Gです。すると、上の式から
500(Kl) =12.5(Kl)×2(G) ×加速継続時間(h)
となります。簡単ですね。20時間で燃料タンクは空になります。
しかし、忘れないで下さい。減速するためにも燃料が必要なのです。もし最大加
速を20時間も継続して、燃料タンクが空になってしまえば、偵察艦は減速するこ
とが出来ず、そのまま永久に飛び続けるはめになります。
減速に必要な燃料も上の式で算出できます。が、とにかく「燃料タンクの半分が
空になったら、減速を開始すること」という鉄則を忘れないようにして下さい。
さて、偵察艦は、地球のパウロ宇宙港に停泊しているとします。またプレーヤー
のうち3名が、「パイロット」「航宙士」「エンジニア」の役をやるとしましょう。
燃料は満タンです。
まず、パワープラントを始動させ、電力を供給させます。電力が切れている状態
では、どの機器も全く動かないからです。
エンジニアが「宇宙船エンジニアリング」技能で判定します。成功。
始動にかかった時間を判定します・・・60分、つまり1時間かかりました。
偵察艦の船内機器が息を吹き返したように作動してゆきます。ブリッジでは操縦
席のディスプレイに灯がともり、コンピュータのオープニングメッセージが表示さ
れます。
さらに、自動的に反重力リフターが作動して、偵察艦を地上に縛りつけていた地
球重力を中和してゆきます。
次に、通常ドライブ始動です。
エンジニアが、再び「宇宙船エンジニアリング」技能で判定します。成功。
偵察艦の背後にある噴出孔が激しく輝くと共に、船内に振動が走ります。ごぉぉ
というエンジンが吠える音に耳をすませながら、エンジニアは「うむ、エンジンの
調子は良さそうだな」とか何とかつぶやきます。
地球周回軌道まで偵察艦を上昇させましょう。
パイロットが「パイロット(反重力機器)」技能で判定します。成功。
周回軌道まで上昇するのにかかった時間を調べます。惑星コードを見ると、地球
のサイズは「8」です。2G加速で軌道まで上昇(下降)するのに必要な時間は、
宇宙船運行チャートを見ると、27分です。
偵察艦は地表から舞い上がり、大気の中をぐんぐん上昇してゆきます。途中、乱
気流に巻き込まれますが、ベテランパイロットの腕で乗り切ることが出来ました。
レフリーは、遭遇判定を行います。特に遭遇なし。
さて、航宙士の出番です。地球から離れるための運行計画を立てます。
まず、通常エンジンを使って偵察艦を加速します。ただし、燃料が限られている
ため、ある程度の速度に達したところで通常エンジンを止め、後は慣性航行するこ
とになります。
慣性航行速度は、加速度(G) ×加速継続時間(h) で表します。例えば、2Gの加
速度を1時間継続したとき、慣性航行速度は2Ghです。
宇宙船運行チャートでは、惑星のサイズ毎に「慣性航行速度と、軌道から直径1
00倍地点(ジャンプポイント)まで到達するのに必要な時間」の関係が表になっ
ています。
航宙士は、地球、つまりサイズ8の欄を見て考えます。
2G加速を1時間継続して慣性航行に移行すると、慣性航行速度は2Ghであり、
これだとジャンプポイントまで5時間かかることが分かります。燃料消費量は、前
に示した式で算出して25Kl、燃料タンクの1/20です。
時間を節約する案を考えてみます。2G加速を1時間30分継続するなら、慣性
航行速度は3Ghになります。ジャンプポイントまでは、表によると、3時間20
分になります。これが最も時間を節約する案でしょう。
なお、「加速継続時間は、ジャンプポイントまで運行するのに必要な時間の半分
以下でなければならない」というルール上の制限があります。上の案では、加速継
続時間(90分)は、ジャンプポイントまでの時間(210分程)の半分以下です
からOKです。
燃料を節約する案を考えてみます。1G加速を1時間継続するなら、慣性航行速
度は1Gh、表によるとジャンプポイントまで10時間です。燃料消費量は12.5 Kl
つまり燃料タンクの1/40となります。
時間制限はないので、航宙士は燃料を節約する案を採用することにしました。
通常エンジンの出力を半分に落として1G加速とし、加速を1時間継続し、そこ
で通常エンジンを止めて、残り9時間を慣性航行するのです。
まず、地球の直径10倍地点まで到達するための判定を行いましょう。
航宙士が「宇宙船操縦」技能で判定します。成功。
レフリーは、遭遇判定を行います。特に遭遇なし。
次に、直径100倍地点まで到達するための判定です。
航宙士が「宇宙船操縦」技能で判定します。成功。
レフリーは、遭遇判定を行います。特に遭遇なし。
ここでレフリーは、故障判定を行うように指示します。宇宙船などの大型機器に
ついては、通常空間で8時間使用する毎に故障判定が必要なのです。
なるほど、パワープラント始動に1時間、軌道上昇に約30分、直径100倍地
点まで10時間ですから、合計11時間30分。8時間を越えています。
故障判定を行います。結果は「不調」と出ました。レフリーは、不調が発生した
のは通常エンジンだと決めます。通常エンジンが煙を吹き出し始めました。
エンジニアが、罵りながら「メカニック」技能でメンテ判定に挑戦します。成功。
通常エンジンは適切なメンテナンス(保守)を受けていたため、何とか動作を継続
できることが分かります。
しかし、このままだと、次の不調判定のときには、自動的に故障を起こして動作
不能になってしまうことでしょう。
エンジニアは「今すぐ地球に引き返して修理すべきだ」と主張しますが、他の2
名は、「次の星系にジャンプアウトしてから、宇宙港に寄って修理すればよい」と
判断しました。(レフリーは、微笑を浮かべます)
地球から、直径100倍地点まで到達しました。いよいよジャンプです。
まず航宙士がジャンプのための計算を行い、結果をジャンプドライブに入力しま
す。判定は「宇宙船操縦」技能で行います。成功。
ジャンプドライブを作動させます。これはエンジニアの仕事です。
判定は「宇宙船エンジニアリング」で行います。成功。
偵察艦はジャンプ空間に遷移します。何日後にジャンプアウトするか判定しまし
ょう・・・結果は7日となりました。7日後には、次の星系です。
さて、ジャンプした時点におけるデータを記録します。
運行時間は全部で11時間30分。
8時間分は既に故障判定したので、残り3時間30分を運行時間として記録して
おきます。不調判定は8時間おきですから、次の星系にジャンプアウトしてから4
時間30分後に次の不調判定を行います。(そして、それまでに宇宙港で修理を受
けない限り、自動的に故障して動作を停止します)
現在の慣性航行速度は、1Gh。
燃料消費量は12.5Kl、減速して停船するためにも同じだけの燃料が必要です。
現在の燃料積載量は、通常ドライブ用487.5Kl 、ジャンプドライブ用はゼロです。
(前述の通り、1回のジャンプでジャンプドライブ用の燃料は完全に消費されます)
以上で、偵察艦を地表からジャンプポイントまで飛ばして、ジャンプ空間に遷移
させることが出来ました。こうして解説を読むと、とてつもなく面倒な作業のよう
に思えるかも知れませんが、大丈夫。慣れればルーチンワークとなります。
各自、自分の役柄に相応しいセリフを応酬しながら、楽しくやりましょう。そう、
かの「宇宙戦艦ヤマト」の発進シーンなど脳裏に浮かべながら。
宇宙船を運行していると、敵対的な船と遭遇し、戦闘が発生することがあります。
TNEでは、宇宙船の間で起こる戦闘を全て宇宙戦闘と呼びます。
宇宙戦闘と聞くと、映画「スターウォーズ」のような、高速で飛び交う宇宙船の
間に派手に光線が飛び交う、ハイスピードな激戦を思い浮かべる人もいるでしょう。
しかし、TNEにおける宇宙船の戦いは、こういった「スターウォーズ」的な戦
闘とは全く違います。TNEの宇宙戦闘は、ほとんどそのまま「潜水艦戦」だと言
ってよいでしょう。
そこで、今回は宇宙戦闘の解説その1ということで、まずTNEの宇宙戦闘のモ
デルとなっている潜水艦の戦いについて、ごく簡単で通俗的なイメージを提供する
こととしましょう。
映画「Uボート」、小説「レッドオクトーバを追え」、コミック「沈黙の艦隊」
など、潜水艦の戦闘を描いた作品をご覧になれば、潜水艦戦がどのようなものかご
理解いただけるものと思います。
光の届かない深い暗黒の海中で潜水艦同士が戦うとき、両艦はお互いに敵艦をソ
ナーで探知しようと試みます。逆に、自艦の居場所は探知されないよう、音を消し
ます。
スクリューは停止され、艦内での音をたてる作業は全て中止です。
潜水艦は、海中にぶら下がったまま、ひっそりと死んだように動きを止めます。
このまま、何分も何十分も探知が続きます。ソナー員は敵艦が漏らすどんなわず
かな音をもキャッチすべく、全神経を耳に集中しています。コンピュータは入力さ
れる音声信号を高速に解析し、音紋データベースと比較して正体を解析しようとし
ます。
他の乗組員は額に汗をかきながら、ただ黙って神経にやすりをかけられるような
激しい緊張にずっと耐え続けなければなりません。
潜水艦戦が他の戦いと全く異なるのは、この点です。戦闘時間の大半は、この敵
艦探知に費やされるのです。実に「静かな」戦いです。
地上戦や空戦では、いや艦隊戦でも、戦闘が始まれば「地獄の釜が開いた」よう
な有り様となり、戦闘員は頭の中が燃え上がるような空白となったまま、何も考え
ず、訓練通りに行動してゆきます。
ところが、潜水艦戦は違うのです。戦闘中、大半の乗組員は何もすることがあり
ません。
彼らにはたっぷり考え、想像する時間があります。例えば、自分たちが狭い鉄の
棺桶に閉じ込められており、周囲から何千気圧もの水圧が押しつぶそうとしている
こと、浮上力を失えば深い暗黒の海底に沈んで二度と太陽を見ることが出来ないこ
と、そして、そうなっても酸素が尽きるまで何週間か生きていかなければならない
こと、などです。
この状態で、やがて確実にやってくる「その瞬間」を待ち続けなければならない
のです。極限的にタフな神経を持ってないと耐えられないことでしょう。
やがて、遅かれ早かれ、一方の潜水艦のソナー員が叫びます。「敵艦探知!」
魚雷発射孔が開かれます。その音は他方の潜水艦のソナー員の耳に雷鳴のように
激しく響きわたります。
攻撃の対象とされた潜水艦はスクリューをフル回転させ、急速に回頭を始めます。
発射された誘導魚雷から逃れることは困難です。鉄の棺桶に閉じ込められたまま
暗黒の深淵に沈むのが嫌なら、魚雷の誘導システムを狂わせるか、命中前に迎撃し
爆破するしか手はありません。
発射された魚雷は泡の尾を引きながらまっすぐ敵艦に向かって進んでゆきます。
やがて、立て続けに生じた爆発音が海水を揺るがせます。
爆発によって生じた気泡のため、ソナーが一時的に使えなくなります。果して、
ターゲットは破壊されたのでしょうか。それを確認するすべは今はありません。
気泡が収まったところで、アクティブソナーを使います。アクティブソナーとは、
音波を海中に放射して、その反射波により敵艦を探知する装置です。
探知用の音波を放射することを通称「PING(ピン)を撃つ」といい、放射用
の機器は「ピンガー」と呼ばれます。
全くの余談ですが、ある種のコンピュータネットワークにおいて、リモート機器
の生死を監視するコマンドがPINGと呼ばれ、そのコマンド投入によって発射さ
れるパケットが「ECHO(エコー:反射波)」と呼ばれるのは、潜水艦用語をも
じったのだ、という話を聞いたことがあります。
アクティブソナーは「敵船がいれば、かなり確実に探知できる」という大きなメ
リットを持っていますが、逆にそれを使うことにより、敵艦は自動的にこちらを探
知できるという問題を抱えています。
アクティブソナーが敵艦を探知しました。ということは、敵艦もこちらを探知し
たということです。今や、両艦は互いの存在と位置をはっきり確認し、魚雷発射孔
を開きました。スクリューが激しく回転します。後は、魚雷の命中精度と対魚雷防
御システムの優劣が勝敗を分けることでしょう・・・。
というわけで、TNEにおける宇宙船の戦闘もだいたいこんな感じに進みます。
最初に「宇宙戦闘における1ターンは30分」というルールを読むと、何ともは
やスローな戦闘だなと驚くかも知れません。
しかし、それは「スターウォーズ」を想像するからです。潜水艦戦だということ
を理解すれば、「30分のほとんどは敵艦探知に費やされ、実際に砲撃が行われる
のはほんの数秒だけ」ということを納得いただけるものと思います。
実際のプレイでは、まずレフリーが敵船の位置や数、相対距離や接近速度、敵艦
の操船(マニューバ)、アクティブセンサーの使用有無などを決定し、紙に書いて
テーブル上に伏せて置きます。それから、PC達が知りうるであろう情報だけを教
えます。
プレーヤー達は宇宙船の行動、つまり操船、回避機動、アクティブセンサの使用
有無などを決定します。それから紙は表にされ、互いに「探知判定」を行います。
探知に成功した側は「砲撃判定」に挑戦できます。「迎撃」が可能な場合、砲撃を
受けた側が「迎撃判定」を行います。
砲撃が命中した場合、宇宙船に対するダメージを決定します。ダメージは、宇宙
船のヒットポイントが下がる、といったものではなく、機器の損傷や性能の低下と
いう形で現れます。
例えば、「通常エンジンの出力が半分になった」「コンピュータがシステムダウ
ンを起こした。回復に30分かかる」「電磁遮蔽システム損傷。敵船にとって探知
判定の難易度が1段階下がる」「エンジン室で爆発。エンジニアが重傷」といった
具合です。
(砲撃を受けた後、艦長が「損害状況を報告せよ」とか叫ぶと、部下が「第三艦橋
大破、波動エンジン出力低下」などと言う、あれですね)
前回は、TNEの宇宙戦闘が「潜水艦戦」をモデルにしているということを解説
しました。今回から、具体的なケーススタディを通して、TNEの宇宙戦闘につい
て説明してゆきます。
以前に100トン級の偵察艦を飛ばす場合を例にして、宇宙船の運行を解説しま
したね。覚えていますか?
今回は、あの偵察艦がジャンプアウトしたところから始めることにしましょう。
TNEでは、ジャンプの前後で宇宙船の運動量は保存されます。つまり、宇宙船
はジャンプインしたときの航行速度を保ったままジャンプアウトするわけです。
ジャンプインしたときにつけた記録メモを見てみましょう。「現在の慣性航行速
度は1Gh」と書かれています。ですから、ジャンプアウトしたとき、偵察艦の速
度は1Ghです。(1Ghとは、1G加速度を1時間継続したときに得られる速度
です)
1回のジャンプで、ジャンプドライブ用の燃料タンクは空になってしまいます。
再びジャンプするためには燃料補給が必要です。(燃料は水素です)
航宙士が軌道を計算し、偵察艦をまっすぐガスジャイアント(ガス巨星:木星の
ように、ほとんど水素で出来た巨大な気体惑星。宇宙船の燃料補給に使われる)に
向けます。判定に成功しました。
レフリーが遭遇判定を行います。遭遇なし。
偵察艦はガスジァイアントの軌道10倍地点まで航行します。
レフリーが遭遇判定。・・・遭遇発生!
レフリーは素早く遭遇相手を決定します。遭遇表で何度かダイスを振った結果、
相手は海賊船と決まります。宇宙船データ集をさっさとめくって、適切と思われる
データを見つけます・・・コブラ級200トン海賊船!!
ここから宇宙戦闘ルールに入ります。
宇宙戦闘では、30分を1戦闘ターンとして扱います。
プレーヤー達が不安そうな顔で見つめるなか、レフリーはスクリーンの影でこそ
こそとダイスを振り続けます。
まず距離・・・「20距離単位」と出ました。
宇宙戦闘では、0.1 光秒(光が0.1 秒に進む距離)を1距離単位とします。光の
速度は、秒速30万Kmですから、1距離単位は3万キロメートルに相当します。
海賊船と偵察艦との距離である「20距離単位」というのは、60万Kmという
ことです。地球の直径が約1万Km強ですから、宇宙戦闘がどれくらいの距離で行
われるものか想像できるでしょう。敵船を目視することなど全く不可能です。
海賊船の速度ベクトルを決定します。ダイスを何回か振って「ガスジャイアント
から6速度単位で離脱中」と出ました。宇宙戦闘においては、1戦闘ターン(30
分)に宇宙船が進む距離単位数で速度を表します。1戦闘ターンに1距離単位進む
速度が1速度単位です。
さて、ここで問題です。1速度単位は、時速何キロメートルでしょうか?
また、1速度単位は何Ghに相当しますか?
1ターンで1距離単位進むということは、30分で3万Km進むということです。
ですから、時速6万Kmということになります。
また、1Ghを実際の速度に換算してみましょう。1Gは9.8 メートル/秒秒で
すから、この割合で1時間(=3600秒)加速したときの速度は、9.8 ×3600=秒速
35キロメートルになります。3600倍して時速に換算すると、時速12万Kmとな
りますね。
これはちょうど上で算出した時速(6万Km)の2倍です。つまり
1Gh=2速度単位=12万Km/時
ということになります。
PC達が乗っている偵察艦は1Ghの速度でガスジャイアントに向けて航行中で
した。これを宇宙戦闘データとして表すと「2速度単位でガスジャイアントに接近
中」ということになります。
実は、ここで示した単位換算が可能なのは、けっこう驚くべきことです。
なぜなら、地球の重力加速度(G)をベースに算出した「Gh」と、光速をベー
スに定義した「速度単位」とが、1対2というきれいな整数比になる物理的・数学
的な必然性はないからです。
ちなみに、ここらの知識は、宇宙戦闘を解決するためには全く不要です。
実際のところレフリーは、ただ数回ダイスを振って、表を見て「海賊船は速度6、
偵察艦は速度2で、互いに接近中」という結果を得ただけです。
私が言いたいのは、TNEの宇宙戦闘ルールで使われる単位系は、きちんと定量
的に定義されており、必要なら物理単位(SI単位系)に換算することが出来る、
ということなのです。
ハードSFのファンなら、こういった「定量性」を大切にする態度にきっと好感
を持つことでしょう。
話は変わりますが、以前、雑誌で「メガトラベラーの宇宙戦闘は現代の感覚から
するとスロー過ぎるので、1ターンを20分でなく5秒にして処理している人もい
る」といった記事を読んだことがあります。
少なくともTNEでは、こういうことをしないで下さい。
なぜなら、まず第一に、TNEの宇宙戦闘ルールが再現しようとしている戦闘は
「スターウォーズ」の疑似空戦ではないからです。(これは前回に強調した通りで
す)
「スロー過ぎる」と感じるのは、ルールが再現しようと狙っている対象を誤って
解釈しているのです。ちなみに、TNEの空戦ルールは1ターン=5秒です。ちゃ
んと再現対象にふさわしい時間単位を採用しているのです。
そして、もっと重要な理由は、TNEの宇宙戦闘ルールで使われる単位系は定量
的にきっちり定義されているため、勝手に時間単位だけ変えると正しく機能しなく
なるということです。
さて、さきほど「海賊船は速度6で、偵察艦は速度2で、互いに接近中」という
ことになりましたが、すると両船は速度8で接近中ということになるのでしょうか。
また、最初に距離20離れていたので、このまま進むと3ターン目に両船は衝突す
ることになるのでしょうか。
いえ。必ずしもそうは言えません。両船の軌道が完全に一致している(つまり互
いに向かって一直線に突進している)ならそうなりますが、両船の軌道がずれてい
る場合は、そうはなりません。
レフリーはダイスを振って軌道のずれを調べます。結果は「45度、両船の最接
近距離は、10距離単位」となりました。
ここで想像してみて下さい。
まず平面上に2本の直線を完全に一致させて置きます。それから直線上の1点を
決め、その点を中心にして一方の直線だけを平面内で45度回転させて下さい。さ
らに次にどちらか一方の直線を、他方と45度の角度を保ったまま(さらに平面と
平行に)持ち上げます。
2本の直線は、幾何学でいうところの「ねじれの位置」関係になります。一方の
直線が海賊船の軌道を、他方の直線が偵察艦の軌道を表していることは言うまでも
ないでしょう。
この直線上を、お互いに接近する方向に2隻の宇宙船が進んでいると考えて下さ
い。一方の速度は6、他方は2です。両船が互いに対して接近する速度(相対接近
速度と呼びます)は8ではありません。また、両船が衝突することは決してなく、
どこかで最接近した後に離れてゆくことも理解できることでしょう。
両船が最接近したときの距離が10距離単位だというわけです。
相対接近速度を算出しましょう。表を見て暗算するだけで済みます。この場合、
両船の相対接近速度は、4となりました。
最後に、海賊船はPC達が乗っている偵察艦を攻撃するつもりですから、不意打
ちに成功したかどうか判定が必要です。レフリーがこっそり判定します。成功。
以上の処理を終えたレフリーは(慣れたレフリーなら1分で全て済ませることが
できます)、「コンピュータが次のように報告してきた」などと言ってプレーヤー
に次のように宣言します。
「2時の方角から未確認艦船接近中。トランスポンダ(船籍識別信号)応答なし。
距離20。相対接近速度4。現状のままだと75分後に最接近。最接近距離10」
船長役のプレーヤーは、次のように応えます。
「総員戦闘配置! センサ員、アクティブEMS作動。通信士、相手艦船への通信
チャネル確保を試みよ。砲撃手、レーザー砲塔にスタンバっておけ」
レフリーがルール通り「総員戦闘配置」判定を要求します。船長が「リーダーシ
ップ」技能で挑戦。失敗。
「残念だが、船長のリーダーシップ不足だな。乗組員の規律は低い。みんな持ち場
を離れて怠けていたんだろうな。素早い戦闘配置は取れなかった。ぐずぐずと戦闘
配置についたときには、すでに敵船は攻撃を試みている」
いよいよ宇宙戦闘が開始されます。
「2時の方角から未確認艦船接近中。距離20、相対接近速度4。現状のままだと
75分後に最接近。最接近距離10」
宇宙船の通常ドライブが噴き出す水素プラズマ流は、周囲の宇宙空間に比べて非
常に高温であるため、大量の赤外線を放射しています。
パッシブ(受動)EMSは、他の宇宙船が放射する赤外線を検知するセンサです。
(なお、赤外線以外にも各種の電磁波をとらえる機能がついています)
海賊船の上部甲板に取り付けられた赤外線センサが、船首方向から船尾方向まで
高速に180度スキャン(走査)を行います。戦闘中、海賊船は推進軸を中心に回
転しますから、これにより全方向スキャンが可能になるのです。
赤外線センサが捕らえたデータはそのままコンピュータに入力され、データ処理
された上、複雑なグラフとして出力されます。ベテランのセンサ員なら、このグラ
フを見るだけで、敵船がどこにいるか正確な位置をつかむことが出来るのです。
海賊船のパッシブEMS有効半径は4です。これは、敵船までの距離が4以内な
らセンサ員が難易度「標準」のセンサ判定に成功すれば敵船を探知できるというこ
とを意味します。
距離が2倍になる毎に難易度が1段階づつ上がってゆきます。ですから、距離8
以内で難易度「困難」、距離16以内で「至難」、距離32以内で「不可能」です。
現在、偵察艦までの距離は20ですから、まず基本的な難易度は「不可能」扱い
となります。
しかし、宇宙船の大きさによる難易度修正というルールがあります。偵察艦の大
きさだと、難易度が1段階下がります。ですから、難易度は「至難」です。
レフリーは海賊船のセンサ員として判定を行います。残念ながら失敗しました。
こうして最初の戦闘ターンが終了します。
最初の戦闘ターンにおいて、両船の相対距離は20、相対接近速度は4でした。
ですから、次の戦闘ターン開始時には、両船の相対距離は16となります。
レフリーが宣言します。
「第2戦闘ターン開始。敵船との相対距離16、相対接近速度4」
それから、メモ用紙に海賊船の行動を記入し、机の上に伏せて置きます。
プレーヤーは偵察艦の行動を相談して決めなければなりません。
まだ偵察艦は一度も敵船探知に成功してないので、敵船の詳しいデータは分かり
ません。分かっているのは、向こうに攻撃の意図があり、相対距離20で探知に失
敗したということだけです。ただし、今や相対距離は16になっています。
「とりあえず戦闘しても何のメリットもないから、全速で逃げ出そう」と船長が主
張します。
「敵船がアクティブEMSを使うかも知れないので、こちらは逃げながらもパッシ
ブEMSによる探知を試みましょう。うまく探知できれば先制攻撃できるし、探知
できなくても別に損はないし」とセンサ員のPCが提案します。
アクティブ(能動)EMSの原理は、広帯域の強力な電磁波を放射し、その反射
波を検出することにより、敵船の正確な位置をつかむというものです。基本的に現
在のレーダーと同じです。全方位をくまなくスキャンするやり方は、ハッシブEM
Sのときと同じです。
アクティブEMSは電磁波を放射するので、もし相手がパッシブEMS(赤外線
だけでなく、その他の電磁波を探知する機能も持っています)による探知を試みれ
ば、判定の難易度が下がるのです。
プレーヤー達の相談がまとまり、偵察艦の行動が決まりました。
「操船に−2、回避機動なし。パッシブEMSのみ作動」
宇宙戦闘においては、1戦闘ターン(すなわち30分)の間に宇宙船の通常ドラ
イブが生み出した推力を、操船と回避機動に振り分けます。
操船とは、宇宙船の相対速度を変化させることです。そして、回避機動とは、船
体に複雑なスピンを与えることで、敵の探知や攻撃を難しくすることです。
偵察艦の通常ドライブは、2G加速のパワーを持っています。2G加速を30分
続けたときに得られる速度変化量は、2G×0.5 時間=1Ghとなります。これが
偵察艦の通常ドライブが1戦闘ターンに生み出す推力です。
これを操船と回避機動に振り分けるのですが、今回は「回避機動なし」というこ
とで、1Ghを全て操船に費やすことにします。
前回の解説で説明した換算式を思い出して下さい。
1Gh=2速度単位=12万Km/時
ですから、この戦闘ターンに得られた1Gh分の速度変化を全て操船に費やすこ
とで、相対接近速度を2速度単位だけ変化させることが出来るのです。
「操船に−2」というのは、この相対接近速度を−2だけ変化させるということ
を宣言しているわけです。現在、海賊船との相対接近速度は4ですから、これを2
まで減らそうというのです。
さて、PC側の行動が決まったところで、レフリーはメモ用紙を表にします。
「操船に+2、回避機動に1。パッシブEMSのみ作動」と書かれていました。
ここでプレーヤーにも分かるのですが、海賊船は3G加速が可能な通常ドライブ
を装備していました。1戦闘ターンに生み出せる推力は、3速度単位分の速度変化
を起こすことが出来ます。
操船に+2ということは、相対接近速度を2だけ増やそうとしていることになり
ます。さらに、残った1速度単位を回避機動に費やすわけです。
ここでレフリーは回避機動判定に挑戦します。1速度単位の推力を費やしている
ので、難易度が下がって「至難」となります。判定結果は失敗。費やした推力は、
無駄になってしまいました。
もしも遠くから2隻の宇宙船の行動を見ていたなら、こういう感じになります。
前回の戦闘ターンでお互いに対して船首を向けあって突進していた2隻ですが、
偵察艦は船体をぐるりと180度回転させ、船尾を海賊船に向けて、必死でブレー
キをかけて接近速度を減らそうとしています。
一方、海賊船はそうはさせじとばかり偵察艦に船首を向けて加速します。この結
果、両船の相対接近速度は変化しません。
さあ、探知です。まず偵察艦の方から判定してみましょう。
偵察艦のパッシブEMSの有効半径は5。つまり距離5以内で「標準」、10以
内で「困難」、20以内で「至難」です。現在の相対距離は16でした。基本難易
度は「至難」となります。
ここまではプレーヤーにも分かります。敵船の大きさはまだ分かりませんが、お
そらく大きさによる修正で難易度が1段階くらいは下がると想像できます。
(実際、その通りです)
そこで、プレーヤーは難易度が「困難」くらいだろうと予想しながらダイスを振
ります。けっこう良い目が出ました。難易度「困難」なら成功です。
しかし、レフリーは「探知失敗」と宣言しました。プレーヤーは驚愕します。こ
の目で失敗ということは、難易度は「至難」あるいはそれ以上だということです!
プレーヤーは知りませんが、海賊船には電磁マスカーが装備されているのです。
これは、宇宙船が放射する赤外線やその他の電磁波を遮蔽し、敵のセンサに探知
されにくくする技術です。
今度は海賊船の番です。レフリーは「偵察艦は通常エンジンの噴射孔を敵に向け
ているので、探知の難易度が3段階下がる」と宣言します。船長役のプレーヤーは
「しまった」と叫びますが、これは後の祭りというやつです。
偵察艦は相対接近速度を減らそうとしていました。ということは、通常エンジン
の噴射孔を敵船に向けて減速しているということを意味します。
前述した通り、噴射孔からは大量の赤外線が放射されているのです。それを敵に
向けるというのは、暗闇でサーチライトを点灯するようなものなのです。
難易度が3段階も下がって「容易」になったため、探知判定は簡単に成功します。
今や海賊船は獲物が100トン級の偵察艦であること、そしてその正確な位置をつ
かみました。
偵察艦の船長が大きな判断ミスをしたことは明らかです。TNEの宇宙戦闘では、
逃げようとする敵船を探知するときは、難易度が3段階も下がるのです。これを忘
れて、安直に逃げを図ったことが裏目に出たのです。
敵から逃げようとすれば、敵にとって探知の難易度が3段階も下がるということ
は、「敵船との距離がうんと離れているときにしか逃げることが出来ない」という
ことです。言い換えれば「ある程度の距離まで近づいてしまったら、もう逃げよう
とせず、腹をくくって戦闘した方が生き残れる可能性が高い」というわけです。
いずれにせよ、海賊船のレーザー砲が火を(光を?)噴きます。
以上が、TNEにおける宇宙戦闘の様子です。この後も、砲撃判定、命中した場
合にはダメージ判定が続くのですが、これはまたいつか別の機会に説明することに
しましょう。
ここまでの解説で、宇宙戦闘がどのようなものか、雰囲気は分かっていただけた
ものと思います。
いったん戦闘状態に入ってしまったが最後、相手を攻撃不能にするまで逃げ出す
ことも出来ず、何時間もお互いに探知を繰り返し、ときどき砲撃が行われる。そう
いう戦いが宇宙戦闘なのです。潜水艦戦がモデルだと言った意味が理解できたでし
ょう。
今回から、TNEの個人戦闘ルールについて、特に銃撃戦を中心に解説してゆき
ます。
TNEには「レーザー銃器」といった未来的な兵器も登場しますが、やはり最も
よく使われるのが、現代と同じく火薬により弾丸または砲弾を射出するタイプの銃
器です。
これはなぜかというと、このタイプのオーソドックスな銃器は、比較的テクノロ
ジーレベルの低い世界でも製造できるため、修理部品や弾薬がどこででも手に入る
からです。
また、レーザーのようなハイテク部品を必要とする武器に比べて、火薬を使う銃
器の方が信頼性が高いというのも理由の一つです。
というわけで、「遮蔽物に隠れつつ、ピストルやライフルを撃ち合う」というの
がTNEにおける基本的な戦闘スタイルになります。
TNEの戦闘ルールは、銃器の特性をかなりよく再現するように工夫されていま
す。銃器には非常に多くの細かいデータが与えられ、しかもその多くがルール上の
意味を持っているのです。
ですから、TNEの銃撃戦ルールを理解するためには、デザイナーが再現しよう
と狙っている「様々な銃器の実際の特性」について理解しておく必要があります。
そうでないと、細かいルールの存在意義がよく理解できないことでしょう。
逆に、銃器の実際の特性を押さえておけば、個々のルールを読んだときに「そう
か。このルールは、この手の銃器のこういう特性を再現しようとしているんだな」
とすぐに分かり、ルールを理解する上でも覚える上でもきっと役に立つに違いあり
ません。
というわけで、今回から銃器について解説してゆきます。まず今回はピストルに
ついて。
ピストルは、大きく「レボルバー」と「オートピストル(自動拳銃)」に分類で
きます。
レボルバーの特徴は、非常に低いテックレベルでも製造できることです。レボル
バーの製造が可能なテックレベルは4〜5ですから、地球でいうと今世紀初頭くら
いに相当します。
もう一つの特徴は、構造がシンプルであるため、極めて信頼性が高い(事実上、
故障しない)ということです。
あと、もちろん場所によりますが、レボルバーは発射できる弾数が少ないことか
ら護身用銃器として認められる(つまり所持していても違法にならない)ことがあ
るというのも、シナリオによっては重要なポイントになります。
さらに、これは特徴といってよいかどうか分かりませんが、「かっこいい」とい
うささやかながら、RPGという観点からは見逃せないポイントがあります。つま
りレボルバーは「絵」になるのです。
西部劇には必ずレボルバーが登場しますし、ダーティハリーも海賊コブラもレボ
ルバーにこだわります。
レボルバーには、ダブルアクションとシングルアクションの2種類があります。
ダブルアクションというのは、引き金(トリガー)を1回引くだけで、撃鉄(ハ
ンマー)を引き起こす動作と、そのハンマーを落として弾丸を発射する動作をやっ
てしまう方式です。トリガーを何度も引くだけで、連続して射撃が可能です。
これに対し、シングルアクションは、トリガーを引くとハンマーを落として弾丸
を発射できますが、続いて射撃したければハンマーを手で起こさなければなりませ
ん。
ところで、普通にピストルと言えば、オートピストルを指します。
レボルバーに比べてオートピストルの方が優れている点は、とにかく連続して撃
てる弾数(装弾数)が多いということでしょう。
オートピストルでは、弾倉(マガジン)と呼ばれる容器に弾薬を10〜20発く
らい詰め、それを握り(グリップ)の中に装着します。そして、弾丸を発射したと
きの反動により次の弾薬が自動的に装填されます。
このため、オートピストルは10発から20発くらいの連続射撃が可能です。
また、再装填についても、レボルバーは弾薬を1つ1つ手でこめなければなりま
せんが、オートピストルなら空になった弾倉を抜いて(リリースして)、新しい弾
倉をカチンと装着するだけで済みます。
このように、オートピストルはレボルバーより扱いが簡単ですが、その精巧なメ
カニズムゆえに信頼性はやや低く(割とよく故障する)、また製造可能なテックレ
ベルも6以上と少し高くなっています。
テックレベルが高くなると、より小さな弾丸で大きなダメージを与えることが可
能になります。そこで、一般にテックレベルの上昇に伴ってオートピストルの口径
は小さくなり、有効射程はだんだん短くなり、代わりに弾倉への装填数が多くなっ
てゆくという傾向が見られます。要するにオートピストルは、たくさん弾を撃つた
めの小型銃器なのです。
TNEに登場する特殊な(架空の)ピストルとして、スナッブピストルというの
があります。これは宇宙船内における戦闘用にデザインされたピストルで、やはり
スナッブレボルバーとスナッブオートピストルに分かれます。
スナッブピストルに共通する特長は、射程距離が異様に短い(4m〜5m)こと
です。これは、狭い宇宙船内で射程の長い銃器を撃つと、天井や壁に反射した弾丸、
いわゆる跳弾が非常に危険になるためです。
前回は、ピストルについて解説しました。ピストルは比較的簡単に手に入り、持
ち運びも隠蔽も容易で、誰にでも撃てるという、非常に便利な銃器です。
(まさにこの事実が、銃規制を困難にしています)
TNEでは、どんなPCでもピストルくらい撃てることが必要となります。それ
こそ、学者だろうと会計士だろうと建築家だろうと、いざというとき自分の身を自
分で守るくらいのことが出来ないと、他のPCの足手まといになってしまうことで
しょう。
そこで、TNEの戦闘ルール勉強の手始めとして、まずはピストルが撃てるよう
になることを目指して実習開始です。
まず実習用のピストルですが、ここにテックレベル6の「9mm オートピストル」
を用意してあります。全長24Cm、重さはだいたい1Kg。イラストを見ると、
誰がどうみてもヘッケラー&コック社の代表的な大型拳銃であるP9S以外の何物
でもありません。たまたまP9Sをお持ちの方は、実際に射撃してみて下さい。
さて、ピストルを撃つ前に、自分のPCがどれくらいの腕前を持っているか確認
します。キャラクターシートを調べて、「ピストル」技能の目標値を見つけましょ
う。
「ピストル」技能を持ってなければ「ライフル」技能でも、少しレベルは下がりま
すが、ピストルを撃つことが出来ます。
ピストル技能の目標値を見つけたら、次にPCの筋力をチェックします。ここで
は筋力6だとします。
次にピストルのデータを見ます。Short Range というのが「有効射程」をメート
ルで示したものです。データは弾薬の種類毎に書かれていますが、今は普通にテッ
クレベル6の弾丸(Ball)を撃つことにします。すると、有効射程は13mです。
さあ、実習です。
誰か気にいらない人に協力してもらいましょう。その人を、5mくらい離れたと
ころに立たせます。そして、隠し持っていたピストルを抜いて、1発撃ってみます。
どんっ。
TNEにおける射撃の命中判定は非常に簡単です。ピストル技能で難易度「困難」
の判定を行うだけです。
そうそう、射撃に関しては、d20を振って1が出れば自動的に命中です。その
代わり、17以上が出れば有無を言わさず外れになります。
TNEでは、撃たれる側は「回避」といったことが出来ませんから、あなたが判
定に成功すれば、原則として(姿勢や遮蔽といった要素を無視するなら)命中です。
命中しましたか?
はい、命中しました。ダメージが敏捷力を越えたため、相手はもんどりうって倒
れます。おや、まだ生きていますね。そう。頭にでも命中しない限り、ピストルの
銃弾1発くらい当たっても人は死なないのです。
この「ダメージが比較的小さい」というのが、ピストルの欠点の1つです。よく
覚えておきましょう。なお、ダメージについては別の機会に説明します。
次の戦闘ターン、相手は血まみれになりながら起き上がろうとします。この際、
とどめをさしておきましょう。トリガーを何度も引いてみて下さい。
ばんっ、ばんっ、ばんっ、ばんっ、ばんっ。
ほら、トリガーを何度も連続的に引くのは困難でしょう。
ここで「発射方式」について説明します。銃器データでROF と書かれているのが
発射方式(Round of Fire) です。ピストルを見ると、SAと表示されていますね。
これはセミオートの略です。前回に説明した通り、弾丸を発射するときの反動を利
用して、自動的に次弾を装填する方式です。
セミオートの銃器は、1回の射撃行動で5回までトリガーを引けます。なお普通
の人は1戦闘ターン(5秒)に1回しか行動できません。
さて、あなたは連続して5発撃ちましたが、さっきより命中率が劇的に下がって
いることに気づいたはずです。何発も撃つと、反動で銃口が跳ね上がろうとするか
らです。命中させるためには腕の力で反動を押さえ込まなければなりません。
TNEでは、この「反動」が非常に重要です。ダメージの大きい銃器は、一般に
反動も大きく、そのため筋力がないと撃てないのです。
なお、射撃技能の基礎能力も筋力ですから、要するに筋力さえあれば、敏捷力が
低くても銃器を撃つのに困ることはありません。ここがメガトラベラーとは全く異
なりますから注意して下さい。
さて、ピストルのデータでRecoilと書かれているところを見つけます。これが反
動値です。反動値には、SSとBurst という2つの欄があります。SSは単射、Burst
は連射を意味します。ピストルは単射(1回トリガーを引くと、1発だけ弾丸が発
射される)モードしかありませんから、SSの欄にしかデータがありません。
さて、このピストルの反動は3でした。つまり、1回トリガー(引き金)を引く
毎に、3の反動が発生するということになります。
あなたは5回トリガーを引きましたから、発生した反動総量は3×5=15とな
ります。これを筋力で押さえ込もうとします。筋力は6でしたね。すると6だけ押
さえ込むのに成功しますが、残り9の反動が銃口をはね上げてしまいます。
この射撃行動で振るダイスの目が、全てこの「筋力で押さえ込めなかった反動」
分大きくなります。つまり命中しにくくなります。この場合、ダイスの目が全て9
も大きくなるのですから、1の目が出ない限り命中しなくなってしまいます。
なお、気をつけて下さい。1発毎に反動の効果を計算するのではありません。
まず、1回の射撃行動で何回トリガーを引くかをダイスを振る前に決め、反動値
にその回数を掛け算して反動総量を算出し、そこから筋力を引き、残った反動をそ
の射撃行動で振るダイス全てに等しく適用するのです。
もし反動による修正がないとすれば、とにかく可能な限りたくさん撃てばそれだ
けダメージの期待値が上がってゆきます。「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」という
わけです。
しかし、TNEの射撃ルールでは、上に述べたように反動による修正があるので、
たくさん撃てば1発あたりの命中率が下がってしまいます。このため、1回の射撃
行動で何回トリガーを引くかをよく考えなければなりません。
今回の例では、2回トリガーを引くとすると反動総量は6、全て筋力で押さえ込
めるので、修正はありません。3回トリガーを引くなら、反動総量は9、修正は3
になります。4回だと修正が6なので、ちょっと命中させるのは困難でしょう。
修正なしで2発撃つか、3の修正で3発撃つか。どちらを選ぶか迷うところです。
というわけで、ともあれ5発とも外れてしまいました。相手は立ち上がり、悲鳴
を上げながら逃げてゆきます。必死です。だが、銃弾をくらっているのでふらふら
よろめいています。
TNEでは、1戦闘ターンの間に早足で20m移動できることになっていますが、
相手はよろめいているので、1戦闘ターンに10mしか移動できないことにします。
最初、相手はあなたから5m離れていましたから、次の戦闘ターンになってあな
たの手番がきたときには、相手は15m離れていることになります。
なお、今回は射撃の実習なので、あなたは移動しないで下さい。
このピストルの有効射程は13mでした。15mも離れるともう弾は届かないの
でしょうか。いえ、弾は有効射程の8倍まで届きます。ただし、距離が有効射程の
1倍、2倍、4倍を越える毎に、難易度が1段階上昇するのです。
この場合、有効射程は13mですから、13mまでは難易度「困難」、それを越
えると難易度は「至難」になります。次に難易度が上昇するのは、有効射程の2倍
である26mを越えたときです。現在、相手までの距離は15m。したがって、難
易度は「至難」です。
どうせ「至難」なら当たりそうにないから、1の目が出る(自動命中でしたね)
のを期待して5回トリガーを引いてしまいましょうか。ちょっと待った。弾倉の残
り装弾数を考えてみましょう。
データのMagazineという欄を見ます。これは雑誌ではなくて弾倉という意味です。
弾倉のところに、11と書いてあります。つまり、このピストルの弾倉には11
発の弾薬を詰めることが出来るというわけです。
TNEでは、射撃する度に、残り装弾数をきちんと管理することになっています。
もちろん、残り装弾数が0になれば、弾切れです。再装填するまで撃てません。
あなたは既に6発撃っていますから、残り装弾数は5発です。よし、5発撃てま
すね。撃ちますか?
おや、「よく狙って撃つ」というのですか。よろしい。
TNEでは、照準を付けた射撃を「狙い撃ち」と呼びます。狙い撃ちを行うため
には1戦闘ターンを照準に費やさなければなりません。したがって、この戦闘ター
ン、あなたはピストルを構え、必死に逃げる相手に狙いを付けて終わりです。
次の戦闘ターン。相手はそれこそ死にもの狂いで逃げています。さらに10mの
距離をかせぎました。あなたとの距離は、現在25m。有効射程の2倍(26m)
に惜しくも届きません。難易度は「至難」のままです。
が、前回の戦闘ターンで照準を付けていたので、ここで射撃すると、最初の1発
だけ「狙い撃ち」になります。狙い撃ちすると難易度が1段階下がります。この場
合、難易度は「困難」になるわけです。
あなたは2回トリガーを引くことにしました。1回目の射撃は難易度「困難」、
2回目の射撃は難易度「至難」です。反動総量は6なので、筋力6で押さえ込めま
す。
だんっ、だんっ。
2発とも命中です。
25m先を必死で走っていた相手は、銃声と共に地面に倒れ、動かなくなります。
弾倉には、まだ3発の弾薬が残っています。もったいないので、倒れた相手のと
ころまで走りよって、頭に3発ぶち込んで息の根を止めておきましょう。
ばすっ、ばすっ、ばすっ。
これで弾倉が空になりました。
リリースボタンを押すと、グリップ(握り)の下から弾倉が抜けて落ちます。新
しい弾倉をカチッと手応えがあるまで挿入しましょう。これで再装填できました。
弾倉の再装填には1戦闘ターンかかります。
以上で、ピストルの射撃実習を終わります。ちゃんと出来ましたか。うまくゆか
ない人は、いろんな人に協力してもらって、何度も練習してみましょう。
前回の解説で、ピストルの撃ち方については理解できたことと思います。
ピストルの最大のメリットは、その簡便性にありました。が、そのために殺傷兵
器としては限界があります。特に野外戦闘では、ピストルにはほとんど出番があり
ません。(サイドアームとして、念のために腰にぶら下げておくくらいです)
今回は、ライフルの射撃実習であります。
ピストルと比べてライフルにはメリットが2つあります。
すなわち、有効射程、ダメージ、貫通力、・・・いかん3つだ。
ええと、ピストルと比べてライフルにはメリットが3つあります。すなわち有効
射程、ダメージ、貫通力、装弾数、・・・しまった4つだ。
ともあれ、TNEの射撃戦闘、特に野外戦闘においては、ライフルの4つのメリ
ット、すなわち有効射程、ダメージ、貫通力、装弾数、連射機能を充分に活用する
ことが重要です・・・ええい5つだ。ちくしょう。
今日は、皆様のために特別に7mm ACRと呼ばれるライフルを用意しました。
これはリフォーメーション・コーリションの制式小銃で、TNEでは最も多用さ
れるライフルです。これを使いこなすことこそ、TNEの射撃戦闘の基本です。
ACRは全長1m、重量6Kgくらいです。かなりの大きさですね。ピストルの
ように隠し持ったり、一人で何丁も持ったりすることは出来ません。
このACRを持って、野外に出てみましょう。ここは山の中です。一見、誰もい
ないようですが、実はあらかじめスタッフにお願いして隠れてもらっているのです。
「すいませーん、立ち上がって下さーい>隠れている人」
立ち上がりました。
ずどんっ。
「ぎゃあっ」
はい、命中しましたね。しかも、一発で気絶してしまいました。
距離は100mくらいあります。ピストルなら、弾が届くか届かないかという距
離ですが、ACRに電子スコープを装着すれば、何と有効射程に入ってしまいます。
また、ピストルなら1発くらい命中しても気絶までゆきませんが、ライフルなら、
ダイスの目にもよりますが、1発でNPCを気絶させるくらいのダメージを与える
ことが出来るのです。なお、別の機会に解説しますが、PCはライフルで撃たれた
くらいでは(頭や胸を直撃しない限り)平気ですから、ご安心を。
このように、ライフルは非常に有効射程が長く、かつダメージが大きいのです。
これが、野外戦闘で主にライフルが使われる理由です。
次の場所に移動しましょう。同じ山の中ですが、今度は低い灌木が並んでいます。
灌木の背後に、スタッフが隠れています。さあ、ライフルを構えて下さい。
「すいませーん、立ち上がって下さーい>隠れている人」
しーん。
立ち上がりませんね。どうやら「隠れる」ということを学んだ模様です。
灌木の辺りに適当に撃ちこんで、まぐれ当たりを狙いましょうか。いえ、駄目で
す。TNEの戦闘ルールでは、目標が見えてないと単射は決して命中しません。
こういうときは、ACRの射撃モードを「連射」にセットして下さい。なおモー
ド切り換えには1戦闘ターン必要です。
さあ、トリガーを何回か引いてみましょう。
だだだだだっ。だだだだだっ、だだだだだっ。
銃弾の嵐を受けた灌木が、ざわざわと激しく揺れます。
「ぐわっ」
はい、命中しました。隠れていても無駄でしたね。
連射モードでは、1回トリガーを引くだけで、何発もの弾丸が発射されるのです。
連射は、特定のターゲットに対して射撃するというより、むしろその周辺に多数
の銃弾をばら蒔くというイメージの射撃です。
ルール的には、連射によって「デンジャーゾーン」と呼ばれる弾幕が作り出され
ます。デンジャーゾーン内の全てのキャラクターは、「巻き添え命中」や「巻き込
まれ命中」の対象になります。詳しくは別の機会に解説しますのでお楽しみに。
今回、ターゲットが灌木に隠れて目視できなかったにも関わらず、銃弾が命中し
たのは、このデンジャーゾーンによる「巻き添え命中」を食らったのです。
このように連射が可能ということもあって、ライフルの弾倉には、一般にピスト
ルの何倍もの弾薬をつめることが出来るようになっています。これにより弾をばら
蒔く、弾幕を張る、といった戦術が使えるわけです。
さあ、次の場所です。今度は複雑な地形です。スタッフが隠れられる場所はいく
らでもあります。木立、灌木、溝、そこにある廃車の陰に隠れているかも知れませ
ん。
さしもの連射もここでは役に立ちません。見える全ての場所に連射していてはい
くら何でも弾薬がなくなってしまいます。それに、もし廃車や岩といった固い遮蔽
物の陰に隠れているとすると、ライフルの銃弾では貫通できません。
さあ、どうしますか。お手上げですか?
ヒントを教えてあげましょう。
映画「エイリアン2」で、エイリアンの巣に入ったヒロインが、そこら中の卵を
ボカスカ破壊するのに使った武器(火炎放射器ではない)。または、映画「ターミ
ネーター2」で、最後に敵を倒すのに使った武器。
グレネードランチャー!
そう、正解です。
グレネード、すなわち「榴弾」は、点火してから一定時間後に爆発を起こし、そ
のすさまじい爆風(衝撃波)と、高速で飛び散る破片によって、一定範囲内にいる
相手を殺傷する強力な弾です。爆発地点のそばにいたNPCは、衝撃と破片によっ
て引き裂かれ、ずたずたの肉塊になってしまいます。
手で投げるグレネード、いわゆるハンドグレネード(手榴弾)というのもありま
すが、これだと遠くまで届きません。TNEでは、キャラクターの筋力に依存しま
すが、だいたい30〜40m程度が限界です。ピストル並ですね。
そこで、火薬の爆発力でグレネードを発射し、遠方まで届かせるために専用に作
られた銃器が、グレネードランチャーというわけです。
残念ながら、今グレネードランチャーは手元にありません。しかし、お持ちのラ
イフルをよく見て下さい。そう、それが「RAMグレネードアダプタ」と呼ばれる
ライフル装備です。
RAMグレネード(Rocket Assisted Munition grenade)というのは、ロケット推
進を使ったグレネードです。形もロケットに似ています。
これを発射すると、ぽんっ、という感じで飛び出し、それから、空中でロケット
が点火し、グレネードは自力で飛んでゆきます。なにしろ自力でロケット推進する
わけですから、射程距離は500mにも達します。ライフルの銃弾よりずっと遠く
まで届くわけですね。
ライフルにRAMグレネードアダプタを装着すると、このRAMグレネードをラ
イフルから発射することが出来るのです。
さっそく撃ってみましょう。
ぽんっ、ひゅるるるるーーっ。
どかんっ。
激しい爆発が生じました。もっとやってみましょう。
ひゅるるるるーーっっ、ひゅるるるるーーっっ、ひゅるるるるーーーっっ。
どかんっ、どかんっ、どかんっ。
「うわあああぁっ」
はい、見事しとめましたね。遮蔽物に隠れていれば安全と思っていたようですが、
そうは問屋が下ろしません。
グレネードは、多数の敵、特に遮蔽物に隠れている敵を一掃するのに非常に効果
的なのです。よく覚えておきましょう。
あ、まだ息があるようです。
ライフルにバヨネット(銃剣)を装着して下さい。突撃!
敵のそばに走りよって、素早く刺し殺してしまいましょう。
ぐさっ。
TNEの戦闘ルールでは、距離が近い場合、射撃より刀剣戦闘の方が有利になっ
ています。これがライフルに銃剣を装着する理由です。
以上見てきたように、ライフルには色々なメリットがある上、モード切換や装着
物によって様々な状況で最適な攻撃を行うことが出来るのです。野外戦闘における
ライフルの重要性がお分かりでしょうか。
ライフルは「PCの最良の友」と呼ばれます。皆様も、ぜひライフルを使いこな
して、快適でおシャレな生活をエンジェイしましょう。ではまた。
前回までに、ピストルとライフルという代表的な銃器について解説しました。
両者の特徴をもう一度まとめてみましょう。
・ピストル:扱いが簡単、携帯と隠蔽が容易、合法的に所有できることがある。
屋内での戦闘に向いている。主に護身用に使われる。
・ライフル:殺傷力が高い、有効射程距離が長い、装弾数が多い、モード(単射、
連射)やアクセサリ(スコープ、グレネードアダプタ、銃剣など)を
使い分けることで、様々な状況で最適な攻撃を行うことが出来る。
屋外での戦闘に向いている。戦場で広く使われる。
さて、世の中にはライフルとピストル以外に、数多くの種類の銃器が存在します。
これは、実戦においてライフルやピストルではうまく対処できないケースが色々
とあり、それぞれのケースについて最適な特性を持った銃器が求められているから
に他なりません。
銃器を選ぶときに「カッコいいから」という観点だけで選んだり、あるいは単に
ダメージ値の大きさだけで選ぶという人がときどきいます。プレイするRPGが、
銃器に関してひどく簡単なルールしか規定してないとすれば、こういう選び方でも
問題ないかも知れません。
しかし、TNEは違います。TNEの射撃ルールは、このような各種銃器の特性
を比較的忠実に再現する(シミュレートする)ことを狙ってデザインされています。
そこで、TNEで銃器を選ぶときには、ただ漫然と選ぶのではなく、銃器の特性
を念頭において、予想される戦闘状況で最も効果的な銃器を手にすべきなのです。
(というか、そうしないとTNEの面白さを充分に味わえません)
というわけで、今回はまず「屋内で、多数の敵を相手に短時間でケリを付けなけ
ればならない」というケースを取り上げて、この状況で最適な銃器は何かという点
について考えてみましょう。
さて、屋内、つまり近距離で、PCより人数で勝っている敵をなるべく短時間に
倒す必要があるという状況は、TNEのシナリオでは割と頻発します。
「ビルに突入して、立てこもっているテロリスト共を掃討して人質を救出する」
とか、「多数のボディガードをなぎ倒して政府要人を射殺し、逃走用の車に飛び込
んで逃げる」というのが代表的なミッションでしょう。
いずれもPC達は少人数で多数の敵に立ち向かうわけですから、「反撃を受ける
前に、できれば1戦闘ターンで敵の大多数にダメージを与え、戦闘能力を奪う(ま
たは戦闘能力を半減させる)」というテクニックが要求されるのです。
もし、こういう状況でピストルやライフルを使ったらどういうことになるでしょ
うか。不意打ちに成功すれば、最初の戦闘ターンでPCの人数分くらいの敵を倒せ
るかも知れません。しかし、次の戦闘ターンには、残りのテロリストやボディガー
ドから反撃を受け、恐らくPC達は苦戦を強いられることでしょう。
これに対し、何らかの手段で最初の戦闘ターンにPCの数倍の人数の敵にダメー
ジをたたき込むことが出来れば、次の戦闘ターンでの反撃は激減し、PC達はより
少ないダメージで目的を達し、素早く撤退することが出来ることでしょう。
というわけで、こういう場合には、射程距離は短くてもよいから、あるいは1発
1発のダメージは大きくなくてもいいから、とにかく1戦闘ターンに多数の弾丸を
発射して、弾幕を張ることが出来る銃器が欲しいわけです。
これが、サブマシンガン(短機関銃)の存在理由です。
サブマシンガンを一言で表現すれば「連射モード付き大型オートピストル」とい
うことになるでしょう。実際、サブマシンガンの全長も重量も、肩当を折り畳んだ
状態だとピストルの2倍程度しかなく、鞄に詰めたりして簡単に持ち運びできます。
ピストルと違うのは、装弾数が30発くらいあり、連射モードが付いていること
です。トリガーを引くと、自動的に弾丸をばら蒔いてくれます。敵の前に飛び出し
てシャワーのように弾丸をばら蒔いて、1戦闘ターンで多数の相手を殺傷する。
これがサブマシンガンの使い方です。
サブマシンガンの欠点は、ライフルと比べて射程距離が短いこと、そして、これ
が最も重大な問題なのですが、連射能力の割に装弾数が少ないことです。
さきほど、サブマシンガンの装弾数は30発程度だと言いました。(実際のサブ
マシンガンもこのくらいです)
TNEのルールでは、サブマシンガンは1戦闘ターンに最大25発の弾丸を発射
することが出来ます。ということは、サブマシンガンを連射すると、何と1〜2戦
闘ターンで弾倉が空になってしまうということになります。
ですから、サブマシンガンは本当にヒット・アンド・アウェイ型の襲撃用銃器で
す。多数の敵に弾丸を雨あられと浴びせたら、すばやく撤退して逃げるなり再装填
するなり武器を持ち替えるなりしなければなりません。
次に、同じように屋内戦ですが、今度は「1人の敵を一撃で確実に葬りたい」と
いうシチュエーションを考えてみます。
さきほどサブマシンガンを説明したときに出した例で「多数のボディガードをな
ぎ倒して政府要人を射殺し、逃走用の車に飛び込んで逃げる」というのがありまし
たが、ここで「政府要人を射殺」するのに使う銃器としては何が最適でしょうか。
サブマシンガンはダメージが大きくないので不適切です。
さきほど、ボディガードに対してサブマシンガンで立ち向かったのは、とにかく
少しでもダメージを与えて一時的に反撃能力を奪うことだけが目的だったからです。
しかし、サブマシンガンで撃たれたくらいでは、頭や胸などの急所を直撃しない限
り人間なかなか死ぬものではありません。サブマシンガンで政府要人を射撃しても、
病院に担ぎ込まれて一命を取り留めてしまうかも知れません。
これでは、せっかくの襲撃が無駄になってしまいます。
実は、至近距離で最大のダメージを与える小火器は、ショットガン(散弾銃)な
のです。
ショットガンの「散弾」1発は、ごく小さな鉄球を集めたものです。
発射されると、散弾は銃口から円錐形に(ラッパのように、コーン状に)広がっ
てゆきます。ちょうど、無数の微小な弾丸から構成される「雲」が発射されたよう
なものだと思って下さい。
このように「雲」が襲いかかるわけですから、ターゲットが素早く移動していて
も、あるいはごく小さなターゲットであっても、命中させられます。つまり、猛獣
や鳥を撃つのに適しているわけです。
これが、ショットガンが猟銃として使われる理由です。
ただし、このように散弾が「雲」となるのは、ある程度の距離を進んでからの話
です。至近距離で発射された散弾は、まだ充分に拡散しないうちに命中してしまい
ます。つまり、無数の小球が1つの人体に対して叩きこまれることになります。
ここで、大きな粘土の固まりに向かってライフルを発射したと想像してみて下さ
い。確かにライフルの弾丸は大きな運動量を持っていますが、その衝撃力は1つの
方向に集中しています。ですから、弾丸は粘土を突き抜けてしまいます。粘土には、
ぽっかりと穴があくでしょう。が、穴から外れた部分は無傷で残ります。
これに対して、同じ粘土の固まりに向かって至近距離から散弾を発射してみます。
表面の、比較的広い面積に対して無数の小球が命中します。小球は粘土を貫通せ
ず、その運動量による衝撃を粘土に全て与えてしまいます。しかも、その運動量は
1つの方向に集中しておらず、バラバラな方向に広がろうとする衝撃となります。
結果として、粘土の固まりは、まるで内部で爆発が生じたように引きちぎられ飛び
散ってしまいます。
こうして、命中箇所だけでなく、粘土のほとんど全体に渡ってダメージが与えら
れます。
これが、至近距離で散弾が人体に命中したときに生ずる現象です。ショットガン
の直撃をくらった人体は、場合によっては文字通り消し飛んでしまうのです。
これで、さきほど「至近距離で最大のダメージを与える小火器は、ショットガン
だ」と言った理由がお分かりのことと思います。
TNEの射撃ルールでは、近距離で命中した散弾は、ピストルの10倍近く、ラ
イフルと比べてさえ2倍以上のダメージを与えることになっているのです。
このように、ショットガンは、「至近距離で1人の相手にすさまじいダメージを
与える」というのと「少し離れたところから、雲のように多数の相手を包みこんで
各ターゲットに比較的小さなダメージを与える」という2つの使い方が可能なわけ
です。後者の伝統的な使い方として、ハンティングの他に、暴徒鎮圧用として重宝
されてきたという歴史があります。
ショットガンの他の特徴としては、猟銃として使われることから、治安度がかな
り高い世界でも、合法的に所有できるという点が挙げられます。
例えば、ピストルの所持が禁止されているこの日本でも、免許さえあればショッ
トガンを合法的に所有することが出来るのです。
もう1つの特徴は、テックレベルが低い世界でも製造できることです。
レボルバーがテックレベル5でないと製造できないのに対して、ショットガンは
何とテックレベル4で製造できます。西部劇に必ずダブル・バレル・ショットガン
(2連発散弾銃)が登場するのは、こういうわけです。
もちろんショットガンにも欠点はあります。
最大の欠点は、とにかく射程距離が短いこと。いったん拡散した散弾は、空気抵
抗のためにすぐにスピードが落ちて、地面に落下してしまうのです。
TNEでは、ピストルやライフルで発射された弾丸は有効射程の8倍まで届くの
ですが、散弾は有効射程の2倍までしか届かないことになっています。
それと、散弾には貫通力が全くないことも欠点の1つでしょう。このため、防具
を着ている相手に致命的なダメージを与えることは出来ません。
というわけで、政府要人を2人のPCで確実に暗殺したければ、1人がサブマシ
ンガンでボディガードを倒しつつ、もう1人がターゲットにショットガンの散弾を
何発か撃ち込む、というのが最適でしょう。
おそらく1戦闘ターンで襲撃と暗殺は完了し、次の戦闘ターンからは逃走に専念
することが出来るはずです。
サブマシンガンとショットガンについては理解できましたか?
いざ実戦というときになって慌てないように、不快な知人に協力してもらうなど
して、普段から射撃訓練をしておくことが大切です。
さて、今回は具体的なケースを通じてTNEの連射ルールについて学んでゆくこ
とにします。まず、ピストルを解説する回に説明した、単射に関するルールを確認
しておいて下さい。よろしいですか。では始めましょう。
あなたはバス停に立ってバスを待っています。あなたの前に3人が、あなたの後
ろに同じように3人が、それぞれ並んでいるとしましょう。
バスがやってきました。停車して、ドアが開きます。ここで、あなたはアタッシ
ュケースを開いてサブマシンガンを取り出し、弾倉をセットします。
第1戦闘ターン。あなたは、サブマシンガンを腰の近くに低く構え、銃口を列の
先頭に立っている男に向けて、トリガーを引きます。たたたたっ。
さあ、何が起こるでしょうか?
まずサブマシンガンを撃つ技能についてですが、サブマシンガンは特殊でして、
「ライフル」技能ででも、「ピストル」技能ででも撃てるのです。ちょっとお得な
感じですね。
ここでは、ライフル技能を使うことにしましょう。あなたの「ライフル」技能を
4レベル、筋力を8とします。目標値は12となります。
次にサブマシンガンのデータを調べます。
現在、リフォーメーション・コーリションの主力サブマシンガンは、テックレベ
ル9の「7.6mm SMG」に移行しています。が、ここは古めかしい「9mm SMG」
を使うことにしましょう。こいつはテックレベル5から生産でき、入手や保守に困
ることがないので個人的にお勧めです。
「9mm SMG」のデータを見ると、ROFの欄に5と書かれています。これは、
1回トリガーを引くと銃弾が5個発射されるという意味です。サブマシンガンの場
合、1戦闘ラウンドに5回までトリガーを引くことが出来ます。
ただし、例によって「反動」という問題がありますから、単純に引けるだけ沢山
トリガーを引けばよいというものではありません。もうお分かりですね。
「9mm SMG」の連射時の反動は、Recoilという項目のBrstという欄に書かれて
います。連射時の反動ということですね。連射時の反動は3とあります。
さて、連射ルールです。
連射が単射と決定的に違うのは、命中判定の難易度が「不可能」固定だというこ
とです。距離も反動も何も関係なく、とにかく特定の弾丸1発について命中したか
どうかは、全て難易度「不可能」で判定するのです。
では距離は反動は何に影響するのかというと、「命中判定の対象となる」弾丸の
個数に影響するのです。
整理してみます。単射だと
・発射した全ての弾丸が命中判定の対象となる
・命中判定の難易度は、距離や反動によって下がってゆく
のに対して、連射だと
・命中判定の対象となる弾丸の個数が、距離や反動によって下がってゆく
・命中判定の難易度は、固定であり、決して下がらない
ということになります。お分かりでしょうか。
「命中判定の対象となる」弾丸の個数は次のようにして決定します。
まずトリガーを引く回数を決めます。その回数に、反動値をかけて反動総力を算
出します。これが筋力をどれだけ越えているかを見ます。その値だけ「トリガーを
1回引く毎に銃口から発射される弾丸の個数」を減らします。残った弾丸が、命中
判定の対象となります。
実際にやってみましょう。
まずトリガーを2回引くとします。1回の反動値は3でした。すると反動総量は
6。筋力は8でしたから、筋力で押さえ込むことが出来ます。つまり、トリガーを
引く度に発射される5個の弾丸全てが命中判定の対象となるというわけです。2回
トリガーを引くと、5×2=10個の弾丸についてそれぞれ命中判定ということに
なります。
トリガーを3回引くとします。反動総量は9。筋力を1だけ越えます。反動によ
り銃口が跳ね上がり、トリガーを引く度に発射される5個の弾丸のうち1個がとん
でもない方向に飛んでいってしまうというわけです。そこで、命中判定対象となる
のはトリガー1回当たり4個。トリガー3回で、4×3=12個の弾丸について命
中判定です。
命中判定の難易度は固定ですから、要するに命中判定の対象となる弾丸が多けれ
ば多いほど沢山のターゲットにダメージを与えられるわけで、この場合はトリガー
を3回引くのが最適だということはすぐに分かるでしょう。
というわけで、トリガーを3回引いて、弾丸が5×3=15個発射され、そのう
ち4×3=12個が命中判定の対象となります。なお、弾薬はもちろん15発消費
しますからちゃんと記録して下さい。弾倉30発は半分になってしまいます。
さて、判定です。20面ダイスを弾丸に見立てて、「たたたたたっ」とか叫びな
がら12個を巻き散らしましょう。
余談ですが、TNEの戦闘で何が気持ちいいといって、やはり連射時に20面ダ
イスを「ざっ」とまき散らす快感が最高ですね。TNEをプレイするときは、20
面ダイスを20個くらいは用意しておきましょう。
転がった12個のダイスを調べます。2個が命中しました。これは、銃口を向け
られていたターゲット、すなわち列の先頭の男に命中します。
次に「巻き添え命中」の判定です。12個のダイスのうち2個は既に命中しまし
たから、次に残った10個をもう一度振って、他の人が巻き添えを食らったかどう
か判定するのです。
10個のd20を「たあっ」とか叫びながら蒔きます。2個が命中です。これを
先頭の男に近い順に各人1発づつ命中させてゆきます。これが「巻き添え命中」で
す。巻き添え命中は、1人につき1発づつだということに注意して下さい。
さて、1戦闘ターンの射撃で、あなたの前に立っていた3名が倒れました。命中
判定対象となったダイス12個のうち、2個が命中、さらに2個が巻き添え命中し、
残ったダイスは8個。そのうち半分の4個を保存しておきます。なぜ? 後で分か
りますよ。
あなたの手番が終わりました。次に他の人の手番です。まず、あなたの後ろに並
んでいた3人が悲鳴を上げながら逃げ出します。人間は、1戦闘ターンで、這うと
2m、歩いて10m、早足で20m、全力疾走すると30m進むことが出来ます。
ですから、この戦闘ターン全力疾走して、30m離れることが出来ます。
また、バスの降車口から男が飛び出してきました。その瞬間、サブマシンガンの
弾丸が襲いかかります。あなたの手番ではないにも関わらず、です。
これが、連射における「巻き込まれ命中」の判定です。
連射を行った場合、「デンジャーゾーン」と呼ばれる弾幕が発生するのですが、
この「デンジャーゾーン」は、発生してから1戦闘ターン、つまり次の戦闘ターン
になってあなたの手番がやってくるまで、ずっと存在し続けるのです。
そして、この「デンジャーゾーン」に踏み込んだキャラクターについては、踏み
込んだ瞬間に「巻き込まれ命中」の判定を行います。
さっき、「巻き添え命中」が終わったときに、残ったダイスの半分、このケース
では4個のダイスを保存しておきましたが、これを「巻き込まれ命中」判定に使用
するのです。
なぜこういうルールがあるかというと、「弾幕を張って敵の移動を阻止する」と
いう戦術を可能にするためなのです。例えば機関銃で弾幕を張って、敵小隊を遮蔽
物の背後に釘付けにするとか、敵兵が塹壕から飛び出すのを阻止する、といったシ
チュエーションを再現したいわけです。
もしこのルールがなく、いくら連射しても射手の手番にしか命中判定を行わない
とすると、例えば機関銃をバリバリ撃っているのに、その前を平然と歩いて横切る
ことが出来ることになってしまいます。これは非常に不自然ですね。
今回のケースでは、「バスの降車口から飛び出した男は、サブマシンガンの弾丸
が飛び交っている中を命がけで横切って逃げようとした」というシチュエーション
を「巻き込まれ命中」判定によって再現しているわけです。
というわけで、4個のダイスを振ります。1個命中しました。バスから飛び出し
てきた勇敢な男は、もんどりうって地面に叩きつけられます。はい、残念でした。
第2戦闘ターン。あなたはサブマシンガンを捨てて、素早くショットガンを構え
ます。武器の取り替えに1戦闘ターンかかりますから、これで行動は終了です。
背後を逃げてゆく3名は、さらに30m進んで、合計60m離れました。
第3戦闘ターン、あなたは背後を振り向いて、ショットガンを構えます。
・前回までのあらすじ
舞台は、とあるバス停。ちょうどバスが到着したところから戦闘ターン開始です。
あなたは第1戦闘ターンでマシンガンを掃射し、自分より前に並んでいる3名を
首尾よく片づけました。ところがその隙に、背後に並んでいた3名が逃走します。
第2戦闘ターンであなたはサブマシンガンを捨ててショットガンに持ち替え。3人
はその間に全力疾走で60mも離れてしまいます。
第3戦闘ターン、あなたは背後を振り向いて、ショットガンを構えます・・・。
ここでショットガン(散弾銃)のデータを見てみましょう。
テックレベルが高くなるにつれて、どんどん洗練されたショットガンが製造され
るようになってゆきますが、今回の実習ではわざと低いテックレベルの銃器を使用
しましょう。
余談になりますが、充分な理由もなくやたらとテックレベルの高いハイテク銃器
を持ちたがるのは、あまり感心できない傾向です。一般に銃器がハイテクになれば
なるほど故障率が高まり、修理部品の調達やメンテナンスが可能な惑星が少なくな
るからです。
それに、あなたがどこかの惑星に潜入して密かに非合法活動(諜報、破壊工作、
暗殺、その他)に従事するのであれば、銃器は現地調達が原則となります。その場
合、その惑星で製造できるテックレベルの銃器を使いこなさなければなりません。
つまり、テックレベルの低い銃器ほど使う機会が多いわけです。
今回の実習で使用するのは、テックレベル4の「18mmポンプ式ショットガン」で
す。テッレベル4というと、地球で言えば19世紀末に相当します。ずいぶんロー
テクな銃器ですね。しかし、これでも充分に役立ってくれますよ。
発射方式(ROF) の欄には、PAと書かれています。これはポンプ式のことです。
銃の後方にある通常のグリップとは別に、銃の前方に大きな握りが付いているの
が特色です。発射後にこの握りをぐいっと引いてガシャリとスライドさせると、空
薬莢が排出されると共に、新しい弾薬が装填されるという仕組みです。これがポン
プ機構です。
ポンプ式ショットガンは、1戦闘ターンに3回までトリガーを引くことが出来ま
す。セミオート(1戦闘ターンに5回までトリガーを引ける)と違って、トリガー
を引く度に手動でポンプ機構を動かさなければならないので、射撃可能回数が少な
くなっているのです。
その他のデータを見ると、反動値は4、有効射程は40m、弾倉には7発が入る
ことが分かります。
なお、弾倉のデータは「7」ではなく「7i」となっています。iというのは、
弾薬1発1発を個別に手でこめなければならないということを意味しています。
もし弾倉が「7」なら、7発の弾薬が詰まった取り外し可能な弾倉をカシャっと
装着すれば装填OKです。再装填は1戦闘ターンで終了します。
これに対し、「7i」ということは、同じように弾倉には7発まで弾薬が入るも
のの、弾倉は取り外しが出来ず、1発づつ手で弾薬を入れてゆかなければならない
ということになります。手で弾薬をこめる場合、1戦闘ターンに3発までしか再装
填できません。
散弾のデータを見てみましょう。短距離(Short) と中・遠距離(Medium-Long) の
2つのデータが別々に載っていることに気づきますね。なぜでしょうか。
以前に解説したことを思い出して下さい。散弾は、発射された直後はまだ拡散し
ておらず、ある程度の距離を進んだところでは多数の小球に分かれて「雲」のよう
に拡散するのでした。
TNEの散弾ルールでは、この特性を再現するために簡単かつ効果的なアイデア
が採用されています。つまり、有効射程距離内(近距離)では単射ルールを、それ
以降(中距離、遠距離)では連射ルールを、それぞれ適用するのです。
すでに単射ルールも連射ルールも解説済ですから、今やあなたは散弾を処理する
ことが出来るわけです。さっそくやってみましょう。
第3戦闘ターン。あなたはショットガンを構え、先頭を走る男に向けて2発撃ち
ます。ショットガンはライフル技能で撃ちます。
有効射程は40m。つまり40mまでは近距離、80mまでは中距離となります。
今回の場合、ターゲットまでの距離は60mなので、中距離です。ですから、連射
ルールにより解決することになります。よろしいですか。
散弾の場合、中距離では基本的に7個の弾丸が命中判定の対象となります。反動
値は4。2回トリガーを引いたので反動総量は4×2=8。
筋力は8でしたね。つまり反動は筋力で押さえ込むことが出来ますから、修正な
しです。結局、1回の発射あたり7個全てが命中判定の対象となります。
2回発射してますから、7×2=14個の弾丸について命中判定することになり
ます。
さあ、20面ダイスを14個用意して、ざざっと振りましょう。難易度は「不可
能」固定でした。おっと、1個しか命中してません。とりあえず、これを先頭の男
に当てます。
残り13個のダイスをもう一度振ります。「巻き添え命中」判定です。今度は2
個命中です。残りの2名に1個づつ当てます。
全員がバタバタと倒れます。これで後ろに並んでいた3名も片づきました。ショ
ットガンにはまだ弾薬が残っています。
第4戦闘ターン。あなたはバスの前方、降車口のステップに足をかけて、運転手
にショットガンを向けます。運転手が慌てて両手を上げたところで、2発撃ちます。
距離は2m。もちろん短距離です。つまり単射のルールが適用されます。筋力は
8でライフル技能は4、目標値は12です。難易度は「困難」、反動による修正は
ありません。
20面ダイスを2つ転がします。2つとも命中しました。近距離での散弾1発の
ダメージは実に9d6。合計して18d6のダメージです。
6面ダイスを18個握って、やっ、とばら蒔きます。合計は65でした。
ダメージとその効果については別の機会に解説する予定ですが、ここでは短距離
における散弾の威力を示すため、ごく簡単に説明してみましょう。
NPCの耐久力は20です。受けたダメージが耐久力以内なら「軽傷」、耐久力
を越えると「重傷」となります。耐久力の2倍を越えると死亡です。
死亡したNPCは食べることが出来ます。ルール上は、体重の30%を食料とし
て回収できることになっています。TNEでは「飢餓」や「栄養不足」がルール化
されているので、遺体から食料がどれだけ手に入るかは重要な問題となるのです。
ところが、ダメージが耐久力の3倍を越えるとオーバーキルとなり「肉片がばら
ばらに飛び散ってしまい、食料にならなくなる」と定められています。
今回の場合、ダメージは65ですから、3倍を越えています。すなわち運転手の
身体は飛び散ってしまったわけです。このように、近距離で命中した散弾は、わず
か2発で人体を完全に破壊してしまうほどの威力を持っています。
今回の場合これは大した問題ではありません。しかし、食料を求めて相手を射殺
するときには、このことを念頭に置いて適切なダメージを狙うように気をつけるこ
とが肝心です。
さて、次の戦闘ターンです。まだバスの乗客が残っています。
バスは満員状態なので、もし1人1人射殺していたら何ターンもかかってしまう
ことでしょう。そこでグレネード(榴弾)の出番です。
あなたはポケットからハンドグレネード(手榴弾)を取り出して、ピンを抜き、
レバーを開放します。
頭の中で「ワン・ハンドレッド、ツー・ハンドレッド、スリー・ハンドレッド」
と唱えてからバスの中に転がし、身をひるがえしてバスの外へ。
直後に爆発が生じます。
ぐおーんっっ
ハンドグレネードの安全ピンを外してレバーを開放すると、数秒後に内部に詰ま
っている爆薬に点火し、爆発が生じます。不幸にも周囲にいた人は、この爆発によ
り生じた爆風(衝撃波)で引き裂かれ、次に高速で飛び散る破片によってずたずた
に切り裂かれるわけです。
ハンドグレネードは特定のターゲットに命中させる必要はなく、爆発地点の周囲
にいる敵に対し無差別にダメージを与えることが出来ます。また、室内や戦車の中
など閉鎖空間で爆発したときは、ダメージが倍増します。
このため、建物を掃討するときにハンドグレネードは欠かせません。敵がいるか
も知れない部屋に踏み込むときは、まず窓かドアの隙間からハンドグレネードを投
げ込んで室内で爆発させ、しかる後にサブマシンガンを構えて飛び込むようにしま
しょう。
ハンドグレネードの欠点は、何と言っても「手投げ」なので到達距離が短いこと
です。
この欠点をカバーするためには、榴弾を遠方まで投射できる武器、レネードラン
チャー、迫撃砲、ロケットランチャーといったものが必要です。これらについては
いずれ解説します。
TNEでは、榴弾によるダメージを決定するために「爆風」による効果と「破片」
による効果をそれぞれ別々に処理します。特に「破片」については、身体のどの部
位にいくつの破片が刺さったか具体的に判定します。
銃器の特性を再現することに関して、TNEのルールが本気だということがよく
分かりますね。
さて、手榴弾のデータですが、やはりローテク方針を貫いて、テックレベル4の
ハンドグレネードを使うことにしましょう。「C:2、B:5」と書いてあります。
Cは衝撃波によるダメージを示します。C:2というのは、ダメージが2d6と
いうことです。ただし、今回はバスの中で爆発したので、ダメージは2倍の4d6
になります。
乗客1人1人について4d6を振り、ダメージを与えてゆきます。平均は14で
すから、だいたい皆が「軽傷」で済むはずです。もしダメージが衝撃波によるもの
だけならば。
一方、Bは破片が飛び散る有効半径を示します。破片は有効半径の2倍まで届き
ますが、有効半径より外だと命中する破片の平均数が減ってしまうのです。
今回はバス全体が有効半径内に入ります。乗客1人1人について1d10を振り
ます。7以上なら破片は命中しません。4から6だと1つ命中、3以下だと1d6
個命中です。
命中した破片1つにつき、2d6のダメージを与えてゆきます。だいたいバスの
乗客のうち半分くらいが重傷になりました。頭に破片が刺さった人はお亡くなりで
す。爆発の衝撃でバスの燃料タンクに亀裂が入り、ガソリンが漏れ始めます。
以上で今回の実習は終了です。
どうです。あなた1人で、ごく軽量な小火器だけを使って、わずか5戦闘ターン
(25秒)で、実に数十人もの死傷者を出すことが出来ましたね。
ピストルやライフルで単射するだけでは、とてもこれだけの効率は達成できない
ことでしょう。「連射」「散弾」「手榴弾」といったルールをうまく使いこなして
こそ、これだけ短時間でこれだけ大量の殺傷が可能になったのです。このことを忘
れないで下さい。
ところで、現場を離れる前に、バスからあなたの足元まで流れてきたガソリンに
火を放って下さい。後始末はきちんとつけましょう。では次回をお楽しみに。
今までに解説した銃器は、基本的には全て同じ原理で動作します。
一方向にだけ口が開いた狭い筒状の空間に弾丸と火薬を装填し、衝撃により火薬
に点火。火薬は小さな爆発を起こし、急激な気体の膨張圧により弾丸が加速され、
銃口から発射されるのです。
しかし、TNEに登場する銃器が全て火薬式というわけではありません。
今回は、火薬式でない銃器のうち、テクノロジーレベルが高い、いわゆる「ハイ
テク銃器」について解説します。
さて、最初に登場するハイテク銃器は「ガウス(磁気)銃器」です。ガウス銃器
の基本原理を理解するために、ちょっとした実験をやってみましょう。
まず水面に1円玉を浮かべます。(もちろん1円玉の比重は水より大きいので、
そのままでは浮きません。1円玉を水平に持って、水面にそっと載せるように置く
と、表面張力のおかげで浮くのです)
この1円玉の上に強力な磁石を持ってゆきます。1円玉は磁力に反応しません。
そこで、磁石をさっと水平に動かします。するとどうでしょう。1円玉は、水面上
を磁石と同じ方向に、つつっと動きます。
1円玉は、磁力に直接引かれたわけでも、風に流されたわけでもありません。こ
れは電磁誘導が引き起こす現象なのです。
簡単に説明しておくと、まず磁石が移動したことで、磁場が変動します。磁場の
変動が電界を発生させ、1円玉(電導体です)に「うず電流」と呼ばれる誘導電流
が流れます。(フレミング右手の法則)
この誘導電流に対して磁場が作用した結果、1円玉を動かす力が働くのです。
(フレミング左手の法則)
フレミングの両手をこねくり回すのが嫌いな方は、要するに「変動する磁場に置
かれた電導体には、それを動かそうとする力が働く」とだけ覚えて下さい。
ガウス銃器が発射する「弾丸」は、電導体で出来た細い針(ニードル)です。
銃身には強力な電磁石が内蔵されており、トリガーを引くと強烈な変動磁場を作
り出します。この変動磁場が、装填されたニードルを加速し、撃ち出すのです。こ
のため、ガウス銃器はニードルガンと呼ばれることもあります。
ガウス銃器の特徴は、火薬の爆発を利用しないため、射撃のときに音や光が発生
しないということです。これは隠密性が要求される射撃の場合には非常に重要です。
例えば、闇夜に密かに敵のキャンプに接近し、襲撃をかけるとします。このとき
火薬式の銃器を使用して歩哨を倒すとすると、発射音が響きわたり、また銃口から
吹き出す炎がこちらの居場所を敵に教えてくれるでしょう。
これに対して、ガウス銃器を使用すると、音も光もなく歩哨が倒れるわけです。
うまくすれば、敵は手遅れになるまで襲撃に気づかないかも知れません。気づいた
としても、どこから銃撃されたのか分からず、パニックに陥ることでしょう。
他にも、ニードルは弾丸よりずっと軽く細いので、ガウス銃器には反動が少なく
装填数が多い、といったメリットもあります。
次はレーザー銃器です。
レーザー発振により、コヒーレント光と呼ばれる完全に位相がそろった、自然界
には存在しない特殊な光が放射されます。これがいわゆるレーザービームです。
レーザービームの特徴は、拡散しないということです。レーザーを細いビームに
して放射すると、拡散しないでどこまでもまっすぐ進んでゆきます。これはつまり
発射地点で注入したエネルギーが(大気による減衰を別にすると)そのまま遠隔地
まで伝わるということです。また、細いビームにすることで、極めて小さな断面積
に高エネルギーを集中できるということになります。
レーザービームが持つこのような驚くべき特性により、精密測定、医療、材料加
工、通信などあらゆる分野への応用が可能になります。それに、そう、レーザーが
発見されたときに誰もが最初に考えたであろう応用、つまり「殺人光線銃」さえ可
能になります。これが、レーザー銃器です。
TNEに登場するレーザー銃器は、電源、大容量キャパシタ、レーザー発振部、
制御回路から構成される電子機器です。
レーザー銃器の「電源」としては、テクノロジーレベルが低いうちはランドセル
のように背中に背負う「バックパック」式のバッテリーが使われます。このバック
パックと銃器を、太い電源ケーブルで接続するわけです。
テクノロジーレベルが上がると、ちょうど通常銃器の弾倉のように銃に装着でき
るタイプのバッテリーが登場します。
レーザー銃器の撃ち方ですが、まずトリガーを半分くらい引きます。
トリガーを半分引いたところで、電源から大容量キャパシタに対して充電が行わ
れます。このとき、ごく少量の電力を使って弱出力レーザーが連続放射されます。
これはガイドレーザーです。目標の表面にガイドレーザー光が当たって赤く光りま
すから、銃の向きを調節して、この光点を命中させたい場所に移動させて下さい。
このようにして照準をつけます。
照準が定まったところで、トリガーをいっぱいに引きます。大容量キャパシタに
充電された電力がレーザー発振部に瞬間的に流れ込み、強力な大出力レーザービー
ムを発生させます。発生したレーザーは目標に向かって真っ直ぐ進み、目標に命中
して、そこを急激に加熱します。
この結果、命中部分について高温による破壊または損傷が引き起こされます。
レーザー銃器の最大の特徴は、反動がないということです。
このため、レーザー銃器を撃つのに必要なのは筋力ではなく敏捷です。具体的に
言うと、レーザー銃器やプラズマ銃器を撃つための技能は「エネルギー銃器」です
が、レーザー銃器を撃つときは基礎能力として敏捷を使い、後述するプラズマ銃器
を撃つときは(反動があるので)通常通り筋力を基礎能力として使うのです。
同じ技能で場合によって基礎能力が変わるのは、この技能だけです。
筋力は低いが敏捷が高いという人は、レーザー銃器を愛用することでしょう。
また、TNEでは負傷して重傷になると筋力が半分になってしまうのですが、負
傷してもなぜか(ルール上は)敏捷が下がらないので、「重傷を負ったらレーザー
銃器」という考え方もあります。
レーザー銃器のもう1つの特徴は、バッテリーから供給される電力を「弾薬」と
して使うので、「装填数」が極めて多いということです。実際、一度バッテリーを
充電すると、100発とか200発とか平気で撃つことが出来ます。再装填が嫌い
な人はレーザー銃器を使うとよいかも知れません。
また、レーザービームは弾丸と違って空気抵抗や重力の影響を受けないので、射
程距離が非常に長いということも特徴です。ただし、レーザーによるダメージは、
大気の影響を強く受けることに注意して下さい。大気が濃いと、距離を進むにつれ
てレーザービームが減衰してしまい、目標に大きなダメージを与えられません。
さらに、レーザーは他の銃器とは大きく異なった貫通特性を持っています。金属
性やセラミック性の防具に対しては、レーザーは全く無力です。通常の弾丸なら、
防具を貫通しなくても運動量により少しはダメージが入るのですが、レーザーには
運動量がないのでダメージは全く入りません。
ところが、逆にそれ以外の防具は、レーザーに対して全く無力なのです。例えば、
通常の弾丸は防弾チョッキを貫通できませんが、レーザーは防弾チョッキを何の抵
抗もなく貫通します。
レーザーは、防具の種類によって、全く貫通しないか、完全に貫通するか、2つ
に1つという極端な貫通特性を持っているのです。レーザー銃器を使うときは、こ
の点によく注意して下さい。装甲車に対してレーザー銃器を使うのは全くの無駄で
す。(なお、宇宙船のメインウエポンとして使用されるような極大出力レーザー砲
になると、高熱で装甲すら溶かしてしまうので、貫通力が生じます)
最後に、まとめて「高エネルギー銃器」と呼ばれている、プラズマ銃器やフュー
ジョン銃器について解説しておきましょう。
物質には、固体・液体・気体という3つの状態があり、温度や圧力の条件でどの
状態をとるかが決まります。一般に、同じ圧力下なら、温度が上昇するにつれ固体
から液体、気体という順番に状態が変化してゆきます。
3つの状態は、物体を構成する分子間の結合状態により特徴づけられるのです。
固体は、分子が結合している状態です。液体はゆるやかな結合状態、気体になると
分子がばらばらになって飛び回っています。
さらに温度を上昇させてゆくと、やがて分子が崩壊し、さらに原子すら溶けてし
まいます。熱エネルギーのために原子核から電子が引きはがされ、遊離するのです。
これが、物質の第4状態である「プラズマ」です。
電離状態であるため、プラズマは色々と通常状態の物質とは異なった奇妙な特性
を持ちます。ときには火の玉やUFOになったり、ミステリーサークルを作ったり
するという話すらありますが、私はよく知りません。
さて、このような高温プラズマを加速してターゲットにぶつけることが出来れば、
ターゲットに対して恐ろしいダメージを与えることが出来ます。何しろ命中箇所は
数千万度という想像を絶する高温にさらされるのです。防具はおろか、装甲ですら
溶けてしまうことでしょう。これが、プラズマ銃器の基本アイデアです。
プラズマ銃器では、水素原子を含む特殊な化学物質と、特製の(おそらく超伝導
を応用した)磁気コイルをセットにした「弾薬筒」を使います。水素原子が「弾丸」
に、化学物質が「火薬」に、磁気コイルが「薬莢」に相当すると思って下さい。
プラズマ銃器の構造は、現在各国で研究されている「磁場封じ込め型の核融合炉」
にそっくりです。核融合炉では、まず水素を加熱して高温プラズマを発生させ、こ
れが拡散しないように強力な磁場で「封じ込め」ます。この状態でどんどん加熱し
てゆくと、やがて核融合が始まるというわけです。
プラズマ銃器に詰める「弾薬筒」は、「使い捨ての超小型核融合炉」だと思って
下さい。銃身には、レーザーと冷却機構が備わっています。
プラズマ銃器を撃つときは、レーザー銃器と同じく、半分ほどトリガーを引きま
す。すると、これまたレーザー銃器と同じくガイドレーザーが放射されますから、
同じように照準を付けます。
レーザー銃器の場合、ガイドレーザーは照準を付ける役目しか果していませんで
したが、プラズマ銃器の場合、ガイドレーザーは「通過した部分の大気をイオン化
する」という大切な役目を果たします。イオン化した大気は電導性を帯びます。つ
まり、銃口から目標まで一直線に、細い電導性の「避雷針」が作られたようなもの
です。
次にトリガーを一杯に引くと、特殊な化学物質である「火薬」が、銃身に仕込ま
れたレーザーで「点火」されます。激烈な化学反応が起って、瞬間的に数千万度の
高温が発生し、水素が高温プラズマとなります。同時に、「薬莢」である磁気コイ
ルが磁場を発生させ、高温プラズマが拡散しないように封じ込めます。この磁場は
ボトルの形をしているので、ここでは「磁場ボトル」と呼びましょう。
もちろん、この「磁場封じ込め」状態は極めて短時間しか続きません。次の瞬間
には磁気コイルは蒸発してしまいます。が、蒸発する一瞬前に、磁気コイルは磁場
の形状を変化させ、銃口方向に向かって磁場ボトルの口を開くのです。
封じ込められていた高温プラズマは、シャンペンの栓を抜いたときのように、開
いた磁気ボトルの口から激しく噴出します。このとき、雷のように凄まじい衝撃音
と電光が発生します。そして、雷が避雷針に落ちて地面に向かうのと同じように、
高温プラズマは、大気中にガイドレーザーが穿ってくれた電導性の「避雷針」を通
って真っ直ぐ進み、ターゲットに命中するのです。
なお、プラズマには質量がありますから、レーザー銃器と違ってプラズマ銃器に
は反動があります。従って、プラズマ銃器を撃つときは、「エネルギー銃器」技能
の基礎能力として筋力を使用するのです。
発射後のプラズマ銃器は、非常に高温になります。銃身が溶けるのを防ぐため、
冷却機構がフル稼働します。
プラズマ銃器には、必ず液体窒素のボンベが付属しています。このボンベと銃身
がチューブで接続されており、発射する度に液体窒素による急速冷却が行われるの
です。従って、雷のような激しい音と光を放った後、プラズマ銃器はしゅうしゅう
と音を立てて白い蒸気(蒸発した窒素)を吐き出し続けるわけです。
冷却機構により銃身が溶けるのを防ぐことが出来ますが、それでも発射後のプラ
ズマ銃器は高温になります。素手で持っていれば大火傷することでしょう。そこで
プラズマ銃器を撃つときは、必ず何らかの防護服(例えば、装甲強化宇宙服である
「バトルドレス」など)を装着しなければなりません。
また、この冷却に数秒かかるため、プラズマ銃器は1戦闘ターンに1発しか発射
出来ません。
プラズマ銃器のテックレベルが上昇してゆくと、磁気コイルが改良され、発射時
の高温プラズマの温度を上げることが可能になります。(従ってダメージも増えて
ゆきます)
数千万度から、さらに1億度を越えるところまでゆくと、高温プラズマは核融合
を起こします。つまり、水素原子核同士が融合して、そのとき質量の一部がエネル
ギーに変換されるのです。これは、恒星(太陽)がエネルギーを発生させている基
本原理でもあります。
水素の原子核同士は電気的に反発するので、通常は核融合が生ずるくらい近くま
で原子核同士が近づくことはないのですが、あまりにも温度が高くなると反発が押
さえ込まれてしまうわけですね。
核融合により発生したエネルギーは、さらに高温プラズマの温度を上昇させます。
このように、水素プラズマが自分自身の内部で生ずる核融合により温度を維持で
きるようになり、さらに進んで水素を加熱するために投入したエネルギーより大き
なエネルギーを放出するところまでゆき、その状態を安定して続させることができ
れば、実用核融合炉のでき上がりというわけです。
プラズマ銃器のうち、発射時の高温プラズマの温度が、核融合の「発火」点まで
達しているものを、「フュージョン銃器」と呼びます。フュージョンとは「融合」
のことです。
プラズマ銃器が「小さな雷を発射して敵を打ち倒す」ような銃器だとすると、フ
ュージョン銃器は「小さな太陽を発射して敵を焼き尽くす」ような銃器だと言える
でしょう。
フュージョン銃器の特性はプラズマ銃器と同じですが、ただ発射されるプラズマ
の温度が桁違いなので、ダメージ(及び貫通力)がもの凄く大きくなります。
以上でハイテク銃器の紹介を終わります。
ハイテク銃器は火薬式の銃器に比べて色々とメリットがありますが、その反面で
メンテナンスや補給の点で扱いにくく、撃つために特殊な技能が必要といったデメ
リットもあります。こういった点をよく理解した上で、チャンスがあればハイテク
銃器を使って大きな戦果を上げて下さい。
TNEに登場するキャラクターは、全て「イニシアチブ」と呼ばれる値を持って
います。
イニシアチブは、伝統的ファンタジーRPGにおける「レベル」の概念にちょっ
と似ています。キャラクターは、戦闘を経験する度に「経験点」を獲得し、経験点
が一定量蓄積されるとイニシアチブ値が上昇するのです。
しかし、イニシアチブが「レベル」に似ているのはここまでです。
伝統的ファンタジーRPGでは、まず確実に「レベル」が高い方が強いキャラク
ターなのですが、TNEではイニシアチブが高い方が戦闘に強いとは限りません。
極端な話、イニシアチブが高いキャラクターが、戦闘関連の技能を全く持ってな
い、というケースだってあり得るのです。
これはなぜかと言うと、イニシアチブは戦闘に関する「場慣れ」を示す値であり、
強さを表しているわけではないからです。
それが証拠に、TNEではイニシアチブの上昇に使われる「経験点」は、命がけ
の実戦を「経験」するだけで得られます。倒した敵の数どころか、勝敗すら関係あ
りません。実戦を経験することだけが重要であり、そのキャラクターが戦闘におい
て「逃げ隠れ」するだけでも経験点を獲得できるのです。(もっとも、うまく戦っ
た場合には、レフリーの判断で多少のボーナスをつけてもよいとされていますが)
「レベル」の概念に慣れた人は困惑するかも知れません。強さに関係なく、実戦
にどのくらい「慣れて」いるかを示す値、そんなものが何の役に立つのか?
そこで、TNEの戦闘ルールでイニシアチブがどのように使われているかを解説
しましょう。
1.戦闘時の行動順番
TNEの戦闘ルールでは、各キャラクターはイニシアチブ値の大きい順に行動で
きます。もし能力や技能が全く同じ2人のPCが銃で決闘するとすれば、イニシア
チブの大きい方が有利です。先に撃てるからです。
あるいは、密かにビルに潜入したPCが、パトロール中の警備員とばったり出く
わしてしまったとしましょう。このとき警備員が警笛を鳴らすのと、PCがサイレ
ンサー付きの銃を撃つのと、どちらが先に行われるかが重要なのはお分かりでしょ
う。
他のRPGでは「敏捷」といった能力値で行動順番を決めるものが多いようです。
これはつまり「一般に、敏捷な奴は素早く行動できる」「戦闘も例外ではない」
という発想から来ているわけです。
これに対し、TNEでは「一般に、敏捷な奴は素早く行動できる」というのは認
めるのですが、「戦闘は例外である」と考えます。
TNEでは「戦闘時に、素早く、ためらいなく行動できるかどうかは、他の行動
と違って、敏捷さではなく、どれだけ実戦経験があるかで決まる」と考えるのです。
実戦経験がない人にとっては、銃の射線に身をさらす、あるいは標的ではなく生
きている人間に向かって銃を発射する、というのは非常に恐ろしいことです。どん
なにその人が敏捷でも、あるいは射的場で練習して銃の技能を磨いていたとしても、
実戦経験がなければ、戦闘が始まった途端に身がすくみ、頭が空白になり、手足が
動かなくなるものです。
これに対して、何度も修羅場をくぐり抜けてきた人は、たとえ普段はのろまでも、
あるいは銃など一度も撃ったことがなくても、戦闘が始まった途端に自動的に反応
し行動できるのです。(そうでなければ、生き残ってはいないでしょう)
こういった発想から、TNEでは、どんなに敏捷でもイニシアチブが低いと(つ
まり実戦経験が少ないと)、戦闘中は恐ろしさのためためらいが生じて行動が遅れ
るものとして処理するわけです。
余談ですが、日本語版「ダークコンスピラシィ」では、1戦闘ターンにキャラク
ターはイニシアチブ値に等しい回数だけ行動できます。つまり、イニシアチブが4
のキャラクターは、イニシアチブが1のキャラクターが1回行動している間に、4
回行動できるわけで、これでは戦闘時にイニシアチブが低いキャラクターの出番は
なくなってしまいます。
TNEでは、さすがにこういうアンバランスは修正され、イニシアチブが1でも
4でも、行動順番が違うだけで、行動回数は同じ1回になっています。(ただし、
イニシアチブが6になると2回行動できます)
イニシアチブが同じなら、敏捷が大きい順に行動してゆきます。
銃器を使用しているときは、敏捷から「銃器のサイズ」を引いて比べます。これ
は、つまり、大きな銃器は扱いにくいということを再現しようとしているのです。
他の条件が全く同じなら、ライフルよりピストルの方が先に撃てるわけです。
なお、ルールに明記されていませんが、格闘武器はサイズ0として扱うのだと思
われます。このため、射撃より武装格闘の方がたいてい先に行動できます。例えば、
至近距離なら、ライフルより銃剣を使った方が有利になることがあるというわけで
す。
2.パニック判定
実戦経験が少ないと、戦闘時の行動順番が遅れるだけでなく、パニックを起こす
ことがあります。不意撃ちを受けたときなど、予期してない状態でいきなり戦闘に
巻き込まれた場合、あるいは戦局が突然変化した場合など、レフリーの判断で「パ
ニック判定」を行います。
パニック判定は簡単です。判定の対象となるキャラクター毎に、1d6を振り、
それがイニシアチブを越えるとパニックです。すぐにお判りの通り、イニシアチブ
が6のキャラクターは、決してパニックを起こしません。逆に、イニシアチブが1
のキャラクターは、6回のうち5回はパニックを起こします。
パニックを起こした場合、1d6の出目からイニシアチブを引いた値に等しい戦
闘ターン数だけ、行動不能になります。例えば、イニシアチブが3で、ダイスの出
目が5なら、2戦闘ターン行動不能ということになります。
行動不能な戦闘ターンのうち、最初の戦闘ターンは本当に行動不能です。キャラ
クターはショックで棒立ち(硬直)になっているわけです。攻撃者にとっては良い
的ですね。次の戦闘ターンもパニックが続いているなら、キャラクターはあわてて
伏せます。(このルールのおかげで助かったPCは多いことでしょう)
パニックに関するルールが存在することで、TNEでは「不意打ち」が非常に効
果的になっています。敵の数が多くても、不意打ちに成功すればパニック判定です。
失敗した敵は行動不能でしかも棒立ちですから、最初の1〜2戦闘ターンは反撃を
さほど恐れずバリバリ攻撃できるのです。ここで大多数の敵を倒してしまえれば、
残りの戦闘ターンが随分と楽になります。
3.負傷とリタイヤ
詳しくは別の機会に説明しますが、TNEではキャラクターの負傷段階を「軽傷」
「重傷」「致命傷」に分類しています。(なお、PCには特別に「かすり傷」とい
う負傷段階もあります。詳しくは後述)
TNEでは、負傷段階によってイニシアチブが下がってゆきます。そして、イニ
シアチブが0以下になると、そのキャラクターは戦闘行動がとれなくなります。
つまり、戦闘に関する限り、そのキャラクターはリタイヤ(脱落)するわけです。
これは、戦闘をスピーディに解決する上でも、またキャラクターを殺したくない
場合にも、非常に役立つルールです。
例えば、PC達が多数のNPCと戦うとして、PC達が優勢になったとしましょ
う。TNEでは、一端PC側が優勢になると、NPC側の逆転は加勢でも来ない限
りまず無理です。ですから、この時点で実質的に「勝負あった」わけです。
ところが、もしNPCが生きている限り戦えるとすれば、PC達は反撃を封じて
身の安全を確保するため、全ての敵に完全にとどめをさすまで殺戮を続けることで
しょう。これは無用に戦闘が長引く原因となります。
ところが、TNEではイニシアチブが0に下がれば戦闘行動は出来ないとルール
で定められていますから、息の根を止めなくても敵を無力化できることになります。
敵がみんな負傷してイニシアチブが0になった時点で、戦闘を切り上げてよいとい
うわけです。
逆にNPC側が圧倒的優勢になったときには、PC全員が負傷してイニシアチブ
が0になった時点で戦闘を止めれば、PCを全滅させずに済みます。
レフリーの立場になって考えてみて下さい。もしリタイヤがなく、生きている限
り戦闘が可能だとしたら、PC達を殺さずに捕虜にするのがどんなに困難になるか。
勝ち目がなくなっても戦闘を止めない、愚かなプレーヤーはどこにでもいます。
せっかく優しいレフリーが命だけは助けてやろうと思っているのに、PC達が抵抗
を止めないので、やむを得ず全滅させてしまう・・・実によくあることです。
リタイヤがあるお蔭で、こういう場合に、PCを無力化し、命だけは助けて捕虜
にする、といった展開が可能になるのです。
次に、イニシアチブ値の目安について説明します。
TNEでは、NPCをその戦闘能力によって大きく4つ(一般人を含めると5つ)
に分類しているのですが、この分類名も一緒に書いておきます。
・イニシアチブ=1 : 一般人
戦闘経験がほとんど、あるいは全くない民間人です。
TNEのシナリオに登場するNPCのうち、PCの直接的な敵ではない人々、つ
まり商人・役人・船長・タクシードライバー・学者・農民・労働者・貴族・学生、
そして単なる通行人Aさんは、たいてい戦闘に関する限り「一般人」扱いです。
彼らは戦闘とは無縁の生活を送っており、どちらかと言えばPC達より人間とし
てまっとうであることが多いでしょう。
NPCは、ほんの少しでもダメージが入ると、いきなり「軽傷」になり、イニシ
アチブが1つ下がります。ということは、一般人のNPCは、ナイフで刺されただ
けで、戦闘からリタイヤすることになります。
「いくら何でも、そりゃ軟弱すぎる」と思う方は、ちょっと想像してみて下さい。
あなたが机に向かっているときに、暴漢が部屋に乱入してきて、あなたの手を机
の上に押さえつけて、ナイフを取り出し、ぐさりっ、と手の平を刺し貫いて、机に
縫い止めてしまったとします。激痛と共に、どくどくと血が吹き出します。
さあ、あなたは反撃できるでしょうか。ナイフのダメージはわずかなものです。
少なくとも命にかかわるほどのことはありません。ですから、反対側の手で素早く
ナイフを引き抜いて、それを暴漢の首筋につきたてればよいのです。
確かに理屈では可能ですが、実際にはたぶん無理でしょう。正直言って、私なら、
痛みとショックで泣きわめく以外の行動が取れるとは思えません。
あるいは、商店街を歩いているとき、いきなり銃撃されたとしましょう。幸い、
初弾は外れ、隣を歩いていた不運な人が血を流しながら倒れました。さあ、あなた
なら、とっさに遮蔽物の陰に隠れることが出来るでしょうか。
たぶん、私なら、死の危険にさらされているということを実感として受け止める
のに何秒も費やしたあげく、へなへなと腰をぬかしてしゃがみこむのが精一杯では
ないかと思います。
これが一般人です。
軟弱と言われようが何だろうが、ちょっとダメージが入れば、あるいは死の危険
に直面しただけで、ショックで戦意を喪失するのが自然な人間の姿なのです。
・イニシアチブ=2 : 初心者(Novice)
戦闘経験があるものの、正規の戦闘訓練を受けたことはない、という人です。
チンピラ、犯罪者、革命家といった人々に相当します。
戦闘が得意でないPC、雑魚級のNPCがイニシアチブ=2となります。
NPCの場合、イニシアチブが2なら負傷しても戦闘を続けられるので、一般人
に比べると格段に強くなります。雑魚とはいえ、数が多ければ、あるいは武器が優
秀なら、PCも苦戦することでしょう。
・イニシアチブ=3 : 経験者(Experienced)
戦闘訓練を受け、何度か実戦を経験した、という人です。
新兵、警官、ガードマン、ボディガード、シークレットサービスといった人々に
相当します。
平均的なPC、兵士級のNPCがイニシアチブ=3となります。
TNEのシナリオで、PC達が戦う相手として最もよく出てくるのは、歩哨、基
地を警備する兵士、ビルのガードマン、暗黒外のボスに付いている用心棒、といっ
た連中ですが、彼らがイニシアチブ=3の「経験者」です。
イニシアチブが3だと、だいたい能力や技能も平均的なPCと同じなので、武器
がPCと同じなら、攻撃力も同じだと思って下さい。油断してはいけません。
・イニシアチブ=4 : ベテラン(Veteran)
戦闘のプロです。戦いや暴力を生業として生きている連中です。
軍人、暗殺者、テロリスト、破壊工作員、ハンターといった人々に相当します。
戦闘員として活躍するPC、リーダー級のNPCがイニシアチブ=4です。
イニシアチブが4に達すると、負傷して「重傷」になってもイニチアチブが0に
下がらないため、ぐんと強敵になります。1対1で戦った場合、運が悪ければPC
が負けます。
TNEのシナリオに登場させる敵としては、「経験者」をPCの人数の2倍程度、
彼らを統率する1人または2人の「ベテラン」、というのが良いバランスとなりま
す。武器が同じだとして、これで攻撃力はNPC側が圧倒的にまさってますから、
最初のうちPC達はかなり苦戦するはずです。
(しかし、よほど運が悪くない限り、PC側は最終的には勝利できるでしょう)
・イニシアチブ=5 : エリート(Elite)
凄腕の戦士です。仲間からも恐れられていたりする連中です。映画でいうなら、
「ランボー」というところでしょうか。
特殊部隊、海兵隊、ゲリラ部隊、傭兵といった人々に相当します。
PCがイニシアチブ=5に達するのは困難です。キャンペーンを数年くらい続け
るか、またはキャラクター作成のときにダイス一発勝負のギャンブルに賭けて成功
するか、とにかく尋常の手段ではイニシアチブを5には出来ません。
NPCの場合、ボス級になります。小隊を指揮していることもあるでしょうが、
このくらいのNPCだと、行動を共にする仲間もおらず、一匹狼のように戦うとい
うのが「らしい」かも知れません。
・イニシアチブ=6 : 戦闘マシーン
もはや人間の域を越えています。どんなときにも決してパニックを起こさず、戦
闘時には通常の2倍の行動がとれます。映画でいうなら「ターミネーター」という
ところでしょうか。まさに戦闘マシーンです。
キャラクター作成のときにギャンブルに挑戦して、運が良ければイニシアチブが
6のPCを作成することも可能です。が、そんなPCをやっても面白くないでしょ
うから、レフリーの判断で却下してかまいません。
NPCの場合、レフリーがどうしても望むなら、何らかの薬物、サイボーグ手術、
その他の方法で強化したイニシアチブ=6の超戦士を出してもよいでしょう。
が、一般には「戦闘ロボット」がイニシアチブ=6の強敵としてよく登場します。
厚い装甲に身を固め、レーザーライフルとマシンガンを装備したイニシアチブ6
の戦闘ロボットを数体も出せば、PC達に「勝てないときは逃げる」という大切な
教訓をたたき込んであげることが可能です。
トラベラーは、伝統的に「PCが普通のNPCと比べて特に強くない」という、
わりと珍しいRPGです。
旧トラベラーのPCは、データ的にもルール的にも普通のNPCと何の差もあり
ません。これはけっこう驚くべきことでして、例えば「酒場でちんぴら数人にから
まれて喧嘩になった」というお約束なシーンがあったとして、PCが本気で戦って
も人数で劣っているなら負けてしまうのです。というわけで、PCは「野郎、覚え
てやがれっ」とか捨てぜりふを吐きながら逃げ出すはめになります。
そんなRPGが他にあるでしょうか。旧トラベラーが戦闘指向でないのは明らか
です。
メガトラベラーのPCも同じです。ただ、メガトラベラーの場合、戦術ポイント
というルールにより攻撃力を強化することが出来ました。普通のNPCは戦術ポイ
ントを持ってませんから、PC有利と言えるでしょう。それでも、PCが普通人に
比べてそんなに強いわけではなく、メガトラベラーも戦闘指向とは言えません。
で、TNEですが、何とこの作品、トラベラーの長年の伝統を打ち破って「PC
が普通のNPCより強い」という画期的な特徴を持っています。(デザイナーが変
わったせいでしょう)
と言うと、PC達が「雑魚敵をバッタバッタなぎ倒す」といったヒーローみたい
な活躍が出来るのかと思う方がいらっしゃるかも知れません。が、とんでもない、
トラベラーにそんなことを期待してはいけません。
TNEにおけるPCの強さは、ひたすら「打たれ強い」という方向に向いていま
す。PCは、簡単にはくたばりませんが、たとえ雑魚敵が相手でも決して楽勝する
ことは出来ないようになっています。特に、戦闘開始直後には、ほとんど必ずPC
側が苦戦するようにルールが出来ているのです。
さて、この点について解説するための準備として、まず「PCの強さ」という点
について少し一般的に考えてみます。
まず、戦闘を極端に単純にモデル化するなら、「攻撃力」によりお互いにダメー
ジを与えあい、先にダメージ蓄積量が「耐久力」を越えた方が負け、ということに
なるでしょう。
ここで「攻撃力」とは、時間単位(例えば1戦闘ターン)に平均してどれくらい
のダメージを相手に与えることが出来るかの目安と考えて下さい。これに対して、
「耐久力」とは、ダメージがどれくらい蓄積すると無力化(気絶/死亡)されるか
を示す目安だとします。
さて、一般的なRPGでは、PCは普通のNPCに比べて「攻撃力」の点で圧倒
的にまさっているようです。
ルール上は、PCは普通のNPCより筋力が高いのでもともと攻撃力が高いとか、
武器をうまく使えるので武器による攻撃力の強化が可能だとか、「魔法」のように
普通のNPCには使えない手段で攻撃できる、といった設定により攻撃力を高めて
います。
設定というより、PCの攻撃力が高くなるよう作為的にルールが出来ているRP
Gもあります。PCはダイスを振り足せるとか、ヒーローポイントでダイスの出目
を増やせるとか、攻撃に失敗しても監督に文句をつけてリテイクしてもらうとか、
しょせん酔っぱらいのやることだから〜とか言って特殊効果でカバーしちゃうとか、
まあ中には一般的とは言えないRPGも含まれていますが、何にせよPCは普通の
NPCより攻撃力の点で圧倒的にまさっているというのが一般的なRPGの傾向だ
と思われます。
ここで、このような傾向のRPGにおいて、PC達が自分達より人数が多いNP
Cのグループと戦闘するケースを考えてみましょう。「雑魚敵がわらわらと現れた」
という状況ですね。
PCの攻撃力は普通のNPCに比べて圧倒的に高く、人数の差をもってしても、
打ち消せません。つまりPC側の方が全体として攻撃力が高くなります。ゆえに、
時間の経過と共に、PCよりNPCの方に多くダメージが入ってゆきます。
すると、PCに大したダメージが入らないうちに、NPCの受けたダメージが、
耐久力を越えるのです。「PC達は雑魚敵をばったばったとなぎ倒した」というわ
けです。
これが、一般的なRPGにおいて、PC達がヒーロー的に活躍できる理由です。
ところが、TNEでは、PCの攻撃力は普通のNPCと何ら差はありません。
PCが普通のNPCよりまさっている点は「耐久力」だけです。PCが普通のN
PCより攻撃力も耐久力も両方まさっているRPGは多いのですが、攻撃力が同じ
で耐久力だけがまさっているというのはかなり珍しい特徴ではないでしょうか。
この特徴が戦闘にどのように影響するか見てみましょう。さきほどと同じ例につ
いて考えます。「雑魚敵がわらわらと現れた」というケースです。
PCもNPCも攻撃力は同じですから、時間の経過と共に、PCの方に多くのダ
メージが入ってゆきます。(NPCの方が人数が多いからです)
ですから、戦闘開始後しばらくは「NPCに大したダメージが入らないうちに、
PCにどんどんダメージが入ってゆく」ように見えます。PC苦戦す、ですね。
しかし、PCは耐久力が高いため、なかなかダメージが致死量に達しません。そ
こで、ある程度の時間が経過すると、NPC側のダメージが耐久力を越えてしまい、
ばたばた倒れてゆくわけです。イメージとしては「最初はPCが苦戦したが、やが
て辛くも逆転した」ということになります。
このように、TNEにおける戦闘では、たいていPC側が最初のうち苦戦し、最
後には傷だらけになりながらも何とか生きのびた、という結果になるのです。
おそらく、デザイナーの狙いは「PCは、生かさず殺さず」でしょう。
ところで、TNEではPCの耐久力が高いといっても、単純に数値が大きいわけ
ではありません。TNEでは、NPCの耐久力は20に固定されていますが、PC
の耐久力が100くらいあるかと言うと、実はそういうものではなく、数値として
は同じ20程度なのです。
TNEでは、典型的なライフル弾1発のダメージが5d6です。ダメージの期待
値は18くらい。運が悪ければ1発命中しただけでダメージが20を越えます。
ですから、耐久力が20しかないNPCにとって、ライフル弾は非常に恐ろしい
わけです。ライフルの射線に身をさらす勇気はなかなか出ないでしょう。
ここで、もしPCの耐久力が100あったら「なーに、ライフル弾の2発や3発、
当たっても軽傷さ」というわけで、少なくとも無傷のうちは平気で射線に身をさら
すことが出来るでしょう。
「PCは生かさず殺さず」という信念からすると、こんな暴挙を許してはなりま
せんね。
ところが、PCの耐久力はやはり20程度ですから、NPCと同じくライフル弾
は恐ろしいわけです。ライフルの射線に身をさらす勇気はなかなか出ないでしょう。
さて、ライフル弾が2発命中したとします。2発のダメージ合計の期待値は35
です。NPCの場合、ダメージ合計はほとんど確実に20を越えるため、重傷は避
けられません。運が悪いと、ダメージが40(耐久力の2倍)を越え、死亡します。
ところが、PCは違います。PCには、耐久力が複数あるのです。具体的には、
身体を「頭」「胸」「胴」「右腕」「左腕」「右足」「左足」という7つの部位に
分け、それぞれの部位について耐久力が与えられているのです。
弾がどの部位に命中したかは、基本的には弾ごとにダイスでランダムに決定しま
す。ダメージは部位ごとに蓄積してゆき、最も怪我が重い部位の負傷状態が全体の
負傷状態となります。
このルールにより、PCにライフル弾が2発命中したときの結果は、NPCとは
大きく異なってきます。
まず最初の1発について命中箇所をダイスで決定します。例えば「左腕」だった
としましょう。左腕の耐久力はNPCと同じく20だとして、ダメージの期待値は
18なので、辛くも軽傷で済むと期待できます。
次に2発目の命中箇所を決定するべくダイスを振ります。もし、同じ左腕に命中
すれば、結果はNPCと同じです。しかし、再び左腕に命中する確率は10%しか
ありません。たいていは、別の部位、例えば「右足」に命中します。
右足の耐久力も20だとして、やはり軽傷で済むと期待できます。
左腕と右足、それぞれが「軽傷」になりました。この場合、全体としても軽傷と
いうことになります。
さあ、お分かりでしょう。NPCは1つしか耐久力を持っていません。ですから
与えられるダメージは全て合計され、この耐久力と比べられてしまいます。ライフ
ル弾2発が命中すれば、よくて重傷、下手をすると即死です。
これに対して、PCは7つの部位それぞれについて耐久力を持っています。です
から、ライフル弾2発が命中しても、たいていは軽傷で済みます。
ただし、運悪く同じ部位に続けて命中した場合は重傷になるでしょう。さらに、
まさにそのとき、たまたまダメージが大きければ、死亡するかも知れません。
(その確率は非常に低いものですが)
これが「PCは生かさず殺さず」の秘訣です。
ライフル弾1発で軽傷、下手をすると重傷になるので、とてもヒーロー的な活躍
など期待できません。(生かさず)
しかし、その割にライフル弾を何発か食らっても、簡単には致命傷まで到達しな
いのです。(殺さず)
実はPCは滅多なことでは死なないにも係わらず、プレーヤーはつい「運が悪い
と1発で重傷、もし同じ部位に何発も食らったら死亡・・・」とか考えてしまうた
め、戦闘の恐怖は拭えません。どうしても心理的に危険を過大評価してしまうよう
に出来ているのです。
実際にTNEをプレイしてみると分かりますが、TNEでは「お気楽」な戦闘は
出来ません。たとえ相手が雑魚敵でも、「運が悪ければ頓死もありうる・・・」と
考えてしまうためです。
さらに、TNEのルールでは「戦闘開始直後、PC苦戦す」という展開をより確
実なものにするため、邪悪な工夫をしています。
例えば「かすり傷」ルールです。これは、PCが戦闘で始めてダメージを受けた
とき、そのダメージが耐久力の半分に満たない軽微なものであっても、痛みとショ
ックのために硬直して、行動権を1回失うというものです。
この「かすり傷」ルールは、NPCには適用されません。従って、戦闘開始直後
にNPC側が圧倒的有利になります。例えば、最初の戦闘ターンで、連射や手榴弾
など手段は何でもいいからとにかPC側の全員にダメージを入れることが出来れば、
次の戦闘ターンでPC側は全く無力になります。NPCは、同じくらいダメージを
受けていても、行動不能にはなりません。撃ちたい放題ですね。
というわけで、PCは必ず苦戦するのですが、何とか生き残ることは出来ます。
で、ここからがトラベラーらしいのですが、生き残ればめでたしめでたしという
わけではなくて、それからが大変なのです。
まず負傷した部位について「細菌感染」の判定を行います。判定に1つでも失敗
すると(全身傷だらけだと、かなりの確率で1つくらい失敗します)、そこの部位
が細菌感染して、傷が回復しないばかりか傷口が腐ってゆきます。どんどん傷が重
くなるわけです。
細菌感染しなかったとしても、TNEでは傷の回復は容易ではありません。傷を
直す魔法も、奇跡のような薬草もないのです。旧トラベラーやメガトラベラーでは
「医療用スロードラッグ」という薬物があって、これを投与すると負傷からの回復
速度が劇的に上がったものですが、これさえTNEでは削除されています。
つまり、TNEでは傷の回復は時間にまかせるしかないのです。治療などによっ
てその時間をやや短縮させることは可能ですが、食料や安全が不足していると回復
期間が延びるというルールがあり、たいていのシナリオではどちらも不足している
ので、結果的にはどんなに頑張っても1週間やそこらは負傷が直らないと思って下
さい。
ちょっと想像してみて下さい。最初の戦闘でPC全員が負傷し、何人かは細菌感
染して傷口が腐りかけているパーティが、ジャングルの中を敵に見つからないよう
に逃げ回っているというシチュエーションを。
食料も安全も不足していて、傷はなかなか回復しません。それなのにレフリーは
無慈悲にも4時間(1ピリオド)毎に「遭遇判定」を続けるのです。
遭遇判定で「敵のパトロール部隊と遭遇!」となれば、また戦闘です。
「異星生物との遭遇。相手は肉食動物。攻撃!」となっても、また戦闘です。
「原住民と接触。相手は友好的に見える」となっても油断は禁物です。武器を隠
し持っていて、別れ際に背後から撃ってくるかも知れません。たとえ本当に友好的
な相手だったとしても、後から敵の部隊にPC達のことを報告するでしょう。保身
を考えるなら、とりあえず皆殺しにすべきではないでしょうか。また戦闘です。
このように、負傷は回復することなく、どんどん溜まってゆきます。食料は尽き、
睡眠不足による疲労効果はどんどん溜まってゆき、全員が異星の気圧や重力による
不適応症で衰弱してゆきます。細菌感染したPCは昏睡状態になります。PC達が
運べる荷物の重量には制限があるので、荷物を捨てるか仲間を捨てるか判断しなけ
ればなりません・・・。
というように、TNEでは、PCが打たれ強いため、どんな苦境にあっても全滅
しないで耐え忍んでくれます。これこそ、人間の真の強さというものではないでし
ょうか。
TNEにおいて、レフリーがPCをいじめていじめていじめ抜いた末にぎりぎり
で助けて、またすぐ次の苦境にたたき落とすのも、これ全て、プレーヤーに人間の
本当の強さというものを実感してもらうため、心を鬼にしてやっていることです。
なんとありがたいことでしょう。人間、感謝の心を忘れてはなりませんね。
さて、今までは主に銃器を撃つ側に立って解説してきたのですが、そろそろ逆の
立場、すなわち銃器で撃たれる側の話をしましょう。
以前に、典型的なライフル弾のダメージは5d6だと説明しました。
TNEでは、このような場合「ライフル弾のダメージ値は5である」という言い
方をします。ダメージ値nの弾丸は、n個の6面ダイスを振ってその出目の合計に
等しいだけの、すなわちnD6のダメージを与えるのです。
以降の説明を読むときは、「ダメージ」と「ダメージ値」の区別をきちんと理解
して、混乱しないようにして下さい。
さて、射撃手がライフルの命中判定に成功したとしましょう。ここで、あわてて
ダメージを決定してはいけません。その前に色々と判断すべきことがあるのです。
具体的には、姿勢、遮蔽、防具について判断が必要です。
まず、姿勢について。
既に説明した通り、TNEでは人体を「頭」「胸」「胴」「右腕」「左腕」「右
足」「左足」の7つの部位に分けて考えます。そして、弾丸が命中したときは、必
ずどの部位に命中したのかを決定します。これはNPCも同じです。また、銃撃戦
だけでなく格闘戦でも同じです。
攻撃がどの部位に命中したのかをダイスで決定するために「命中部位決定表」と
いう表を使います。これは、ダイスの出目がいくつなら、どの部位に命中したこと
になるか、を示す表だと思って下さい。
注目すべきことに、撃たれたキャラクターの「姿勢」、「攻撃方向」、「攻撃手
段」の組み合わせ毎に別々の命中部位決定表が適用されます。あるいは、表は同じ
でも振るダイスの種類を変えます。
これは、姿勢や攻撃方向、あるいは攻撃方法によって、命中しそうな部位とそう
でない部位が変化することを表現するためです。
例えば、直立しているキャラクターを射撃する場合を考えます。正面から射撃し
たら、弾丸は全身のどの部位に命中してもおかしくありません。しかし、右側面か
ら射撃したなら、左腕に命中するとは思えませんね。また、真上から射撃したら、
おそらく足には命中しないでしょう。同様に、キックが頭に命中するのは考えにく
いですし、パンチが足に命中するのも変です。
こういった不自然な命中をなくすために、姿勢や攻撃方向によって表を選ぶわけ
です。表を正しく選ぶと、不自然な命中が生じないようになっています。例えば右
からの攻撃に関する命中部位決定表には、左腕や左足の項目はありません。左側の
部位には決して命中しないわけです。
さて、これだけでも賢明なプレーヤーなら「射撃されるとき、キャラクターの向
きが重要になるケースがあるな」と気づくはずです。そう、左腕があと少しで重傷
になるが右腕は無傷という場合、なるべく敵に右側をさらすような向きで行動すべ
きなのです。(前回説明した通り、同じ部位に何度も命中するとその部位にダメー
ジが集中してしまい、つらいからです)
命中部位決定表を見ると、さらに重要なことに気づきます。例えば「伏せている」
キャラクターを「正面から」射撃したときに使う命中部位決定表では、ダイスの出
目のうち半分くらいは「頭」「胸」「右腕」「左腕」を示していますが、残り半分
くらいは「命中取消」になっているということです。
これは、「立っている」キャラクターに比べて「伏せている」キャラクターの方
が、正面からの射撃に対する断面積が小さく、命中させにくいことを意味します。
お分かりの通り、姿勢として「伏せて」いるキャラクターに対する正面からの射
撃は、たとえ射撃手が命中判定に成功しても、命中部位決定のとき50%の確率で
命中取消になる(外れる)わけです。
これで、TNEにおいて「伏せ」がいかに大切かお分かりでしょう。
もちろん「伏せ」さえすればよいというわけではありません。伏せているキャラ
クターを上空から射撃する場合、「立っている」キャラクターを正面から射撃する
のと同じ表を使うことになります。「命中取消」は、ありません。
上空からだけでなく、側面から射撃されても、やはり射線に対する断面積は小さ
くならないと見なされ、「命中取消」はありません。
伏せたことで「命中取消」の結果を得るためには、キャラクターは射撃手の方を
向いていなければならないのです。
TNEで戦闘が発生すると、みんないきなり地面に伏せて、敵に向かってほふく
前進を開始するものですが、もうこれで理由がお分かりですね。
「何はともあれ、ほふく前進」をお忘れなく。
次は遮蔽です。
曲がり角に身を隠して廊下にいる敵を撃つ、壁をカバーにして窓から射撃、よく
あるシーンです。このように遮蔽物に身を隠すのは、敵の射撃を命中しにくくする
ためです。
こういうシーンを再現するのは大切ですから、多くのRPGに遮蔽ルールがあり
ます。ただ、一般的には「部分遮蔽だと命中判定で−2の修正」といった具合に、
遮蔽効果を抽象的に処理することが多いようです。メガトラベラーもそうでした。
これに対して、TNEでは遮蔽を非常に具体的に扱います。つまり、どの部位が
遮蔽物でカバーされているのかを、キャラクター・遮蔽物・射撃手の位置関係から
具体的に決定するのです。これは、射撃を受けたときに決めるのではなく、あらか
じめ(ということは、そのキャラクターが行動する手番のときに)決めておかなけ
ればなりません。
例えば「曲がり角に身を隠して廊下にいる敵を撃つ」という場合、プレーヤーは
PCがどのような姿勢で射撃するのかを説明しなければなりません。なぜなら、次
に相手から撃ち返されたとき、どの部位が曲がり角によって遮蔽されているかがと
ても重要になるからです。
レフリーは、プレーヤーの説明から遮蔽部位を決定します。「では左腕と左足は
曲がり角で遮蔽されていることにしよう。残りの部位は廊下に出ている」とかいっ
た具合です。
プレーヤー:ビルの屋上の隅に腹這いになって、道路にいる敵を狙撃します
レフリー :では、胴・右足・左足が遮蔽されていることにしよう。だが頭と胸、
それに両腕は遮蔽されてないので、下から撃たれるかも知れない。
命中部位決定表により決めた命中部位が遮蔽されていたなら、それは遮蔽物(廊
下の曲がり角など)に命中したことになり、ダメージ無しなのです。
これは実質的な命中率をぐんと下げます。遮蔽面積が広ければ広いほど、つまり
遮蔽部位が多ければ多いほど、それに比例して命中率が下がってゆくわけです。
さらに言うなら、ダメージが既に入っている部位がなるべく遮蔽されるように行
動することで、生存率をかなり高めることが出来ることもお分かりでしょう。
このルールにより、「何らかの行動を行うとき、そのシーンを視覚化して思い浮
かべることが強制される」という素晴らしい副作用が得られます。
前述した例だと、プレーヤーもレフリーも、脳裏に「キャラクターが、廊下の曲
がり角から右半身を出して射撃している」とか、「屋上から上半身を乗り出して、
道路上の敵に照準をつけている」といったシーンを思い浮かべなければ遮蔽部位を
決められません。
「部分遮蔽は−2の修正」といった抽象的なルールだと、視覚映像を思い浮かべ
ることなく、ごく機械的にダイスを振るだけで戦闘シーンを進めてしまいがちです。
これでは味気ないですね。
TNEでは、誰もが「シーンを視覚的に思い浮かべること」を強制されるため、
自然と感情移入が強まり、盛り上がることになります。
さて、弾丸の貫通力が大きい場合、遮蔽されていても安全とは限りません。遮蔽
物を貫いてくるかも知れないからです。TNEでは、弾丸が遮蔽物を貫通するかど
うかを決定するのに「装甲値」と「減衰率」という2つのデータを使います。
まず装甲値ですが、これは遮蔽物の「貫通されにくさ」を示す値です。装甲値が
高ければ高いほど、その遮蔽物は貫通されにくいことになります。
一般には、装甲値は、遮蔽物の材質と厚さで決まります。
そこで、TNEでは、主な材質(木材、岩、コンクリート、鉄板・・・)につい
て、「厚さ1cm当たりの装甲値」がデータとして提供されています。この値に、
遮蔽物の厚さ(cm)をかけると、その遮蔽物の装甲値が決まるわけです。
(戦車のリアクティブアーマーのように、特殊な仕掛けにより特定種類の砲弾に対
する実効装甲値を高めているケースについては、個別にルール化されています)
さて、次に減衰率ですが、これは弾丸が遮蔽物にぶつかったときに、貫通力がど
れくらい削がれるか(減衰するか)を示す値です。つまり、減衰率が高いほど、そ
の弾丸には貫通力がないことに注意して下さい。
余談になりますが、減衰率の原語はPenetration Ratingです。これを素直に訳す
と「貫通率」となりますが、それだと「値が高い方が貫通しやすい」という誤解や
混乱が避けられません。そこで、「この値が高い方が、勢いがすぐ減衰するので、
貫通しにくい」という意味で、ここでは「減衰率」という訳語を使います。
なお、今回は説明しませんが、TNEではPenetration Value というデータも使
います。「貫通力」と言えばこれを指します。
弾丸が遮蔽物にぶつかると、減衰率×装甲値だけダメージ値が削がれてしまいま
す。この結果、ダメージ値が全部削がれてしまえば、その弾丸は遮蔽物を貫通でき
ません。ダメージ値が残れば、弾丸は遮蔽物を貫通し、残ったダメージ値で運動を
続けることになります。
例えば、ダメージ値5で減衰率1のライフル弾が、装甲値2の遮蔽物にぶつかっ
た場合を考えましょう。減衰率×装甲値は1×2=2です。ダメージ値が2だけ削
がれますから、5−2=3。つまり、ライフル弾はこの遮蔽物を貫通し、貫通した
弾丸はダメージ値3となるわけです。
もし減衰率が2なら、削がれるダメージ値は2×2=4となります。それでも貫
通しますが、貫通した後の弾丸はダメージ値1となってしまいます。
減衰率が3なら、削がれるダメージ値が3×2=6となり、ダメージ値5は全て
削がれてしまい、弾丸は遮蔽物を貫通できないことになります。
遮蔽物のうち、身体に装着するものを「防具」と呼びます。
TNEでは、防具には「遮蔽部位」と「装甲値」のデータが与えられています。
遮蔽部位とは、その防具がどの部位をカバーするかを示します。防弾チョッキは
「胸」と「胴」をカバーし、ヘルメットは「頭」をカバーするという具合です。
命中部位を決定したとき、防具がその部位をカバーしている場合に限って、その
防具が意味を持ちます。防弾チョッキを着ていても、命中部位が「右腕」なら防弾
チョッキは何の意味も持ちません。
装甲値は、さきほど説明した遮蔽物の装甲値と同じです。同じ部位に複数の防具
を重ねて着ていた場合には、装甲値を足し合わせます。
遮蔽物と防具の違いは、遮蔽物により削がれたダメージ値は遮蔽物に吸収されて
消えてしまうのに対して、防具により削がれたダメージ値は、物理的な衝撃として
命中部位にダメージを与えることです。
ライフル弾が胸に命中したが、防弾チョッキを着用していたので貫通しなかった
としましょう。このとき、貫通しなかったとはいえ、ライフル弾を受け止めたこと
で凄まじい衝撃が来ます。馬に蹴られたようなものでしょう。場合によっては衝撃
で肋骨が折れてしまうことだってあります。これが、衝撃によるダメージです。
TNEでは、「衝撃によるダメージ」を表すため、「防具で削がれたダメージ値
1につき、ダメージ1が命中部位に与えられる」となっています。(ダメージ値と
ダメージを混乱しないよう、ここは特に気をつけて下さい)
ダメージ値5で減衰率3のライフル弾が、装甲値2の防具に命中しました。5の
ダメージ値は全て削がれてしまいます。ですから、弾丸は貫通しません。ところが、
削がれたダメージ値5は、衝撃となって命中部位にダメージ5を与えるのです。
ダメージ値5で減衰率2のライフル弾が、装甲値1の防具に命中しました。削が
れるダメージ値は2、従ってダメージ値3が残ります。
この場合、弾丸は防具を貫通し、ダメージ値3を命中部位に与えます。さらに、
削がれたダメージ値2もまた、衝撃となって命中部位にダメージ2を与えるのです。
結果として、命中部位に与えられるダメージは「3d6+2」で決定されます。
以上で、射撃が命中してから、ダメージを決定するまでに判断しなければならな
いことは終わりです。射撃手が命中判定に成功したからといって、必ずしもダメー
ジが入るとは限らないし、またダメージがどこにどれだけ入るかも決まっているわ
けではないことが分かりましたね。
PCがちゃんと防具を着用し、戦闘時には姿勢に注意し、きちんと遮蔽を活用し
たとしても、それでもいずれはダメージを受けるときが来ます。そのときになって
慌てないように、心の準備をしておきましょう。
というわけで、今回はダメージと負傷について解説します。
以降の説明を読む上で、「ダメージ」と「ダメージ値」の区別を理解しておくこ
とが大切です。両者の違いは前回に解説した通りですが、繰り返しておきましょう。
弾丸には全て「ダメージ値」が割り振られています。弾丸が命中したときには、
ダメージ値に等しい個数の6面ダイスを振って出目を合計して「ダメージ」を決め
るのです。命中部位に対して、それだけのダメージが与えられます。
例えば、ダメージ値が5のライフル弾が命中したとき、遮蔽物も防具もなければ、
5d6のダメージを食らうことになるというわけです。
さて、弾丸が命中したときに何が生ずるか、順番に見てゆきましょう。
まず「即死判定」です。
全身7つの部位のうち、「頭」と「胸」は急所として扱われます。前者には神経
中枢(脳)が、後者には血流中枢(心臓)があるからです。
これらの急所に弾丸が命中した場合、運が悪いと中枢が破壊されて即死します。
これを表すため、急所に命中すると、ダメージを決める前に1d20を振ります。
もし出目がダメージ値(遮蔽物や防具で削がれた場合は、最終的に削がれ残ったダ
メージ値)以下であれば、犠牲者は即死します。
ですから、ダメージ値5のライフル弾が裸の胸を直撃すると、4発に1回は即死
です。
即死するためには、射手が命中判定に成功し、急所に命中し、さらに犠牲者が即
死判定に成功(?)しなければならないので、その確率はけっこう低くなります。
しかし、「弾1発で即死」の可能性があることは、心理的に極めて大きな脅威と
なります。PCがヒーロー的に活躍しないよう、PCは生かさず殺さず、というT
NEのデザイン思想がここにも表れているのですね。
ただ、セッション開始直後とか、ここでPCが死ぬとシナリオが崩壊するといっ
た場合など、PCが即死判定に成功したものの「即死」は避けたいとレフリーが思
う場合(レフリーがそう思う場合であって、プレーヤーが泣き言をいった場合では
ありません!)、即死をやめて「ダメージを2倍にする」という処理を行ってもよ
いことになっています。
これはPCだけの特権でして、NPCは即死の結果になればとにかく即死です。
さて、即死を免れた場合、6面ダイスをじゃらじゃら振って、ダメージを決定し
ましょう。
もし命中部位が「頭」なら、受けたダメージに1d6を足して下さい。結果が、
「体力」を越えていれば、キャラクターは気絶します。気絶したキャラクターは、
自動的に転倒です。
気絶したキャラクターは、次の戦闘ターンから、自分の行動手番がくる度に意識
回復判定を行います。意識回復判定に成功するまで、ずっと気絶状態が続きます。
ここら辺の判定は全て「体力」をベースにしているので、戦闘時のPCの生存にと
って、「体力」は「筋力」の次に重要な能力となります。
次に「転倒」の判定です。これは簡単で、受けたダメージが「敏捷」を越えてい
れば、キャラクターは転んでしまいます。
転倒すると姿勢が「伏せ」扱いなので、敵から命中させにくくなります。ですか
ら、ダメージにより転倒したことが「伏せる手間が省けてラッキー」という場合も
あります。
その反面、伏せていると、立ち上がって移動するときに移動速度が半分になって
しまうというルールがあります。ですから、全力で逃げている場合など移動速度が
重要なときには、転倒が致命的なトラブルになる可能性があります。
ようやく負傷の処理です。
命中部位について、その部位の耐久力と蓄積ダメージを比較します。蓄積ダメー
ジが耐久力の2倍を越えていれば「致命傷」です。耐久力を越えているが、2倍以
下なら「重傷」、耐久力以下なら「軽傷」となります。(PCの場合、これに加え
て「かすり傷」という負傷段階があります)
前に説明した通り、各部位の負傷段階のうち最も重いものが、キャラクター全体
の負傷段階となります。
[致命傷]
「致命傷」になっても、即死するわけではありません。
戦闘が終わってからすぐに応急処置に成功すれば、一命を取り留めることが出来
ます。もちろん応急処置できないか、または処置に失敗すれば、さようならです。
ただし「頭」だけは例外です。頭が致命傷になれば、キャラクターは死にます。
これはPCもNPCもなく、有無を言わさず死亡となります。
これで、TNEの戦闘で最も多い死因が「頭への命中」だということが納得でき
ることと思います。私はここ数年、清く正しいレフリーとして今まで何人ものPC
を抹殺してきましたが、死因は全て「頭への命中」でした。他の部位が致命傷にな
って死んだという例を見たことがありません。
なぜか。1つの理由は、頭への命中については「即死」「気絶」の判定があるこ
とです。しかし、最大の理由は、頭の耐久力が他の部位に比べて非常に低いという
ことにあります。
ルール上、頭の耐久力は、胸と比べて1/3、手足と比べてさえ半分というとて
も小さな値になります。ライフル弾2発も命中すれば致命傷です。
これが、誰もがヘルメットを着用したがる理由です。
TNEで戦闘をやっていると、たまたま立ち寄った見物人が「PCがみんなヘル
メットをかぶって、ほふく前進している」という光景を見て笑うことがありますが、
これはルール上そうしないと非常に危ないのです。
RPGの戦闘ルールというものは、全てデザイナーが「戦闘とはこういうものだ」
「私はこういう戦闘を再現したい」と考えて決めるものです。TNEの場合、デザ
イナーが「戦闘というのは、ヘルメットをかぶった兵士が、ほふく前進するもので
ある」と考えているわけですから、これはTNEの正しいプレイスタイルなのです。
笑ってはいけません。
[重傷]
「重傷」になれば、戦線離脱です。
まず、重傷になると「体力」で気絶判定を行います。これで気絶すれば戦闘不能
というわけです。
気絶しなかったとしても、あるいは気絶した後に意識回復判定に成功したとして
も、イニシアチブが無傷のときに比べて3つも下がってしまいます。ですから、も
ともとイニシアチブが3以下のキャラクターは、行動不能になります。
意識持続判定に成功して、あるいは気絶した後で意識回復判定に成功したとして、
戦おうとしても、イニシアチブの低下に加え、筋力が半分になって命中値が下がっ
ています。つまり攻撃力が激減しているわけです。
ですから、事実上「重傷になったら、戦線離脱」だと思って構いません。重傷に
なっても戦おうとするのは、よほどの場合(戦術的に、どうしてもこのPCが敵に
一撃くらわさないと総崩れになる、とか)を除いて避けるべきでしょう。
またもや「PCは生かさず殺さず」です。PCが死なないように、かつヒーロー
的に活躍しないように、「PCは、重傷になったらおとなしくしてなさい」という
わけです。お分かりですね。
[軽傷]
「軽傷」による影響は、イニシアチブが無傷のときに比べて1つ下がるだけです。
ですから、イニシアチブが2以上のキャラクターは、軽傷になっても戦闘能力はほ
とんど変わりません。
[かすり傷]
PCの場合、ダメージ蓄積が耐久力の半分以下なら、軽傷ではなく「かすり傷」
として扱います。なお、NPCには「かすり傷」の概念はなく、少しでもダメージ
が入れば「軽傷」として扱います。
かすり傷による影響は1つだけです。それは、始めてかすり傷を負ったときに、
1回だけ行動権を失うということです。1度かすり傷によって行動権を失ったら、
(あるいは、かすり傷を飛ばしていきなり「軽傷」になったら)、その後24時間
は何度かすり傷を負っても何の影響もありません。
かすり傷のルールがなぜ存在するかについては、以前に解説したので繰り返さな
いことにしましょう。
以上がダメージと負傷のルールです。TNEの戦闘ルールが、きちんとした方針
に従った一貫性を持っていることがお分かりのことと思います。そして、そこらの
軟弱なシステムとは一味違う硬派なシステムだということも。
TNEのシナリオを作成するとき、まず最初に決めるべきことは、PC達とその
グループの「背景設定」です。つまり、彼らは何者で、どういう組織に属しており、
何を目的に行動しているか、という点です。
TNEは極めて自由度の広いRPGなので、PCは事実上どんな立場に立つこと
も可能です。ですから、レフリーは色々と迷うことになるでしょう。
が、迷っても仕方ありません。少なくともTNEのレフリーを始めて行うのであ
れば、「PC達はリフォーメーションコーリション探査局(RCES:Reformation
Coalition Exploratory Service)のメンバーであり、特殊任務のエキスパートであ
る。PC達のグループは、今回のミッション遂行のために編成されたチームだ」と
いう設定に決めつけてしまうことをお勧めします。
なぜなら、これで導入部が随分と楽になるからです。RCESのメンバーである
以上、PC達は与えられた任務を断れないのです。
熟練レフリーだと、PC達が仕事の依頼を断っても、巧妙な押しや引きを使って
結局のところ予定したシナリオに引き込んでしまうということも出来ます。しかし
これは初心者レフリーにはちょっと荷が重いことでしょう。そこで、いきなり「探
査局から君達のチームにミッションが与えられた」というわけで、有無を言わさず
シナリオを始めてしまった方が面倒がなくてよいのです。
次に決めなければならないことは、ミッションのタイプです。といっても、ミッ
ションのタイプには限られた定番があります。その中から気にいったものを選ぶだ
けでよいでしょう。
探査局から与えられるミッションのうち、定番的なタイプを並べてみます。
・諜報(Intel)
PC達は、探査局が作戦を遂行するために必要となる情報を収集しなければなり
ません。
「ある惑星の都市Xに潜入し、現地の状況を報告せよ」「軍事施設Zの警備状況
について詳細に報告せよ」「敵の計画(作戦内容)について調査し報告せよ」とい
うようなミッションになります。要するにスパイ活動ですね。
・回収/救出(Cold Recovery)
PC達は、特定の目標を回収/救出しなければなりません。
例えば「ある惑星に不時着した宇宙船を見つけてジャンプドライブを回収する」
「帝国時代に研究所だったと思われる廃墟から、手に入る限りのデータを回収する」
「遭難したと思われる人物を捜索し救出する」といった任務です。
・襲撃/奪取(Hot Recovery)
PC達は、敵対勢力により警備/保護されている特定の目標を回収/奪取/破壊
しなければなりません。
典型的なミッションとしては、「独裁者を暗殺せよ」「軍事施設を襲撃して核ミ
サイルを奪え」「政府要人を誘拐せよ」「ダムを爆破し、敵軍の渡河を阻止せよ」
「敵に捕らわれている仲間を救出せよ」「敵の研究所を襲撃してデータを奪え」と
いうようなものがあります。
・外交(Diplomacy)
PC達は、特定のグループ/組織/国家の代表と交渉し、何らかの政治的/経済
的合意を得なければなりません。
例えば「ある惑星政府の代表と交渉し、通商貿易に関する条約を締結せよ」とか、
「現地で発生した事件が、対立する2国家間の軍事衝突に発展しないよう、政治的
解決を図れ」といったミッションになります。
・通商(Commerce)
PC達は、特定の個人/グループと交渉し、商談を成立させなければなりません。
・その他
未知惑星探査:未知の惑星を探査して、データを収集する。
植民地運営 :無人惑星に植民地を築き、その運営を行う。
再開発 :未開の惑星に施設を設立し、原住民の文明向上を支援する。
これらのうち、初心者レフリーにお勧めしたいのが「襲撃/奪取(Hot Recovery)」
型のミッションです。TNEではこの種のミッションを「スマッシュ&グラブ」と
呼びます。以降では、「S&G」と略します。
S&Gをお勧めする理由は、大きく2つあります。
まず、「分かりやすい」という点があります。
諜報や外交といった任務だと、TNEを始めてプレイする人は「何をどうすれば
よいか」が分からないことがあります。特に、TNEの背景世界について詳しくな
いプレーヤーは、何をすればよいのか悩んでしまうことになりかねません。
その点、S&Gなら何をどうすればよいか明確です。目的地に行き、敵を蹴散ら
して、目標を奪って(破壊して)、敵が反撃態勢を整える前に脱出すればよいので
す。TNEの背景世界に詳しくないプレーヤーでも、ほとんど悩まなくて済むでし
ょう。
次に、「応用が効く」という点。
TNEのシナリオでは、まず間違いなく戦闘が発生します。S&Gでは戦闘がメ
インとなりますから、ここで戦闘の処理や演出に慣れておけば、どんなシナリオに
も応用できるわけです。
さらに、シナリオがうまく進まない場合、破綻した場合など「いきなりS&G」
という大技が使えるようになります。
これは、シナリオの進行に詰まってしまったときに、ともかく
・重要人物が反政府ゲリラによって誘拐された。現場には「3日後に処刑する」
という旨の犯行声明が残されていたぞ!
・君は致命的な風土病に感染した。3日以内に特効薬を飲まないと間違いなく
死ぬ。そうそう、特効薬は敵対勢力の研究施設にあるはずだ。
・宇宙船が故障しているぞ。修理にスペアパーツが必要だ。この惑星でパーツ
が手に入る場所があるとしたら、宇宙港跡だけだな。敵の占領下だが。
という具合に、いきなりS&Gに持ち込んでしまうというものです。この技は「諜
報任務シナリオだが、うまくゆかないときはいきなりS&G」「外交任務シナリオ
だが、うまくゆかないときはいきなりS&G」というように、シナリオ展開に詰ま
ったとき、いざというときの切り札として使えるので、非常に便利です。(これに
頼りきらないように!)
というわけで、まずはS&Gの練習をしましょう。「とにかくS&Gなら問題な
くレフリー出来る」という自信がついてから、他のタイプのシナリオを練習し、そ
れから色々なタイプのシナリオをつなげてキャンペーンを運営する、というのが最
も効率的なレフリー上達方法でしょう。
私は、「メガトラの始め方」において、シナリオの基本構成要素は次の5つだと
書きました。(まだ「メガトラの始め方」をお読みでない方、FRPGM のデータライ
ブラリ4番に登録されていますので急いでダウンロードすることをお勧めします)
・目的:何を達成すればシナリオをクリアできるのか。具体的な勝利条件。
・脅威:もし「制限」内に「目的」を達成できなければどういう事態になるのか。
・制限:目的達成までの時間制限、空間的制限、装備の制限、テックレベルや治安
度による行動制限など、守るべき制限
・障害:目的の達成を妨げる要因であり、PC達が克服しなければならない対象。
・利点:PC達が有利な点。「障害」の克服のためには、この利点を最大限に活か
さなければならないだろう。
S&Gタイプのシナリオをやるときには、この5つの構成要素がレフリーの頭の
中で明確に決まっていることが大切です。
というわけで、順番に各構成要素について解説してゆくことにしましょう。
まず今回は、「目的」と「脅威」について、です。
S&Gの「目的」は、少なくとも論理的には、大した問題ではありません。回収
の対象が「人質」でも「反重力モジュール」でも「重要書類」でも、とにかくPC
達は現地に潜入/突入してドンパチやらなければならない点は同じです。シナリオ
の流れも、恐らくだいたい似たようなものになるでしょう。
しかし、「脅威」は違います。なぜなら、これがどのようなものであるかによっ
てプレーヤー達の「やる気」が全く異なってくるからです。こういう心理的な問題
を軽視してはいけません。
例えば、「ある薬品のデータとサンプルを奪取する」という目的のシナリオだと
しても、理由が単に「文献を読んだ研究者が興味を持っているから」では、ミッシ
ョンを命がけで達成しようという気にはちょっとなりません。
しかし、同じ目的でも「PC達の故郷で、恐ろしい伝染病が広がっている。特に
乳幼児の死亡率が高い。このままでは、数千万人の死者が出ると予測されている。
帝国時代にはこの病気の特効薬が流通していたが、今やそれを製造する知識は失わ
れているのだ。そこで君達の使命だが・・・」となれば、プレーヤー達も(よほど
のひねくれ者でない限り)燃えてくれることでしょう。
このように、プレーヤーをその気にさせる「脅威」としては、次のようなものが
あります。
・人命の損失
人命は何物にもまして尊いものです。そこで、「あるもの(物品、情報、技術)
がないと、人命が失われる」という脅威は、プレーヤー達をその気にさせる上で極
めて有効です。
さきほどの「薬品」ネタがこれに相当します。もっと直接的なものとしては「捕
らわれている仲間(人質)を救出しないと、彼らは処刑されてしまう」というのが
あります。
このタイプの脅威を使うときは、犠牲者は「非道な」死に方をしなければなりま
せん。その方がプレーヤーの義憤を引き出すことが出来るからです。
そこで、犠牲者は「無力」な老人/子供、「虐待」されている囚人/奴隷、「か
弱いが、気高い精神を持った」指導者/学者、といった人々にして下さい。
・作戦全体の失敗
「PC達がミッションを達成できないと、大きな作戦(特に軍事的な作戦)が失
敗に終わる」というタイプの脅威です。全体作戦が失敗すると友軍(仲間)に多数
の犠牲者が出ますから、間接的には「人命の損失」パターンに含まれるかも知れま
せん。
典型的な例としては、「敵の軍事施設を破壊(無力化)しないと、友軍が集中攻
撃を浴びて全滅する」というものがあります。目標としては、観測基地(レーダー
基地)、ミサイル発射施設、乗物(エアラフトなど)の格納庫、秘密兵器(原爆と
か)を開発中の工場、といったものがあります。
また「ダムを破壊して河川を氾濫させる」「橋を爆破して敵軍の移動を妨げる」
といった破壊工作ネタも、この類に含まれるでしょう。
このタイプの脅威を使うときは、「友軍は窮地に陥っており、敵軍は圧倒的な物
量で殲滅にかかっている」「友軍が無事に撤退できるかどうかは、PC達のミッシ
ョン成否にかかっている」というシチュエーションにすることをお勧めします。
理由は2つあります。1つは、PC達のような少人数の特殊部隊に頼らなければ
ならなくなる、というのはどう考えても負け戦だからです。
第2に、RPGプレーヤーは、たいてい「負け戦にもかかわらず、最後まで希望
を捨てずに戦い続ける」というシチュエーションが大好きだからです。
・「不正」がのさばる
卑怯な、不正な、非道な行動をとった者が利益を得ている。その陰で多くの被害
者が泣いている。と、こういうパターンは、時代劇でも西部劇でも不滅であります。
そこで、「ああ、神も仏もないものか」と嘆く被害者に代わって、晴らせぬ恨み
を晴らしましょう、というミッションです。
この場合の脅威は「このままだとあいつが何の罰も受けずにのうのうと暮らすこ
とになるぞ」というものです。
TNEでは、「TED(独裁者)が民衆を弾圧、虐待している」というパターン
が最も多用されます。具体的な弾圧、虐待の内容については、レフリーが心を鬼に
して色々と考えればよいわけです。
こういうミッションの場合、目標はずばり「TED自身の暗殺」というのがよい
でしょう。
もちろん、PC達には、そのTEDを暗殺することが長い目でみてその世界のた
めになる、恒星間文明の発展に寄与する、という大義名分を与えておいて下さい。
例えば、「TEDを暗殺すれば、ナンバー2が権力を握ることになるだろう。彼
は比較的若く、合理的な考えを持った男であり、恒星間の通商貿易に踏み出すよう
説得できる可能性は高い」といった具合です。
このパターンを使う場合、抽象的にならないように注意して下さい。「民衆がこ
んなに酷い目にあっている」といくら口で言っても、大抵のプレーヤーは想像力に
不自由していますから、なかなか怒りを実感できるものではありません。
そこで、まずPC達を酷い目に合わせます。例えば、何らかの方法でPC達が反
撃できないようにしておいて、TEDの手先に暴行させるのです。反撃封じとして
は、人質をとられている、大衆の面前でテックレベルの高い武器を使うことがミッ
ション条件で禁止されている、単に武器を没収されている、などがあります。
で、PC達をぼこぼこに殴った上、装備を奪って、足に2、3発撃ち込んで、お
まけに唾などはきかけてやりましょう。で、悪漢達が高笑いしながら去っていった
後、一人の可憐な少女がPC達を助けてくれる、というわけです。もちろん、この
娘は、後にTED自身の手で虐殺、またはその、言いにくいようなことをされるわ
けですね。
んで、実はTEDは裏で麻薬密売にも手を出していて、中毒患者を大量に作って
は彼らを奴隷として死ぬまで働かせている、とかそういう情報を出します。(PC
達にその情報を伝えた若者は、もちろんその直後に口封じのために殺されます)
PC達が「TED許すまじ」という気になれば成功です。大義名分は最初から与
えてありますから、大儀と私怨が一致すれば、後は目標めがけて一直線、でありま
す。
以上見てきたように、「脅威」は、とにかくプレーヤーのやる気を引き立てると
いう点を重視して選んで下さい。プレーヤーがやる気にさえなれば、セッションは
成功したも同然なのです。
前回は、シナリオ要素のうち「目的」と「脅威」について解説しました。
今回から、おそらく最も大切な要素である「障害」について解説してゆきます。
最初に指摘しておきたいことは、一口に「障害」と言っても、その内容は大きく
次の3種類に分類できる、ということです。
直接的障害 : PC達と戦う敵NPC、トラップ、迷路など、PC達の目的達
成を直接妨害するもの
間接的障害 : 情報や物資の欠如、困難な地形、悪環境、劣悪コンディション、
味方の裏切りなど、PC達の目的達成を困難にする要因。
最も単純なシナリオでは、直接的障害しか登場しません。
ダンジョンタイプのシナリオを考えてみて下さい。迷路とトラップ、それにモン
スターを配置しておけば「障害」の準備は完了ですね。PC達は単に目前の障害を
一つ一つクリアしてゆけば、目的を達成できるというわけです。
少し複雑なシナリオになると、「情報や物資の欠如」という間接的障害が登場し
てきます。「ボス敵を倒すためには特殊アイテムを3つ集めなければならない」と
か、「最後の扉を開くためにはある呪文が必要」といった類です。
この場合、PC達はまず間接的障害を克服して、それから直接的障害と対決する
ことになります。
さらに間接的障害を加えてゆくと、シナリオのバリェーションはどんどん広がっ
てゆきます。例えば水に落ちてたいまつが濡れてしまう(周囲は真っ暗)とか、毒
を受けて歩くたびにHPが減ってゆくとか、魔法が全く効かない場所とか、地図に
載っている脱出口が実際にはなかったとか。
間接的障害の規模を大きくすると、それを克服するだけでキャンペーンシナリオ
すら作ることが出来ます。
例えば、「盗賊ギルドに加入を認めてもらわないと仕事が出来ない」「国王の信
頼を得ないと城に入ることすら許されない」「自分達の無罪を証明しない限り外を
出歩けない」とか。
このように、「障害」の内容を工夫することで、単純なシナリオからキャンペー
ンシナリオまで様々なシナリオを作り出すことが出来ます。逆に言えば、「障害」
さえ決まれば、シナリオの根幹が出来たも同然ということになります。
実際、レフリー作業に慣れてくると、「目的」と「障害」だけ決めて後は何も用
意しなくても、ちゃんとセッションを進められるのです。
TNEに話を戻しましょう。
TNEのS&Gシナリオにおいては、実のところ直接的障害にさほどの工夫は必
要ありません。敵NPCとマップだけ用意すればよいでしょう。
創意工夫を注ぎ込むべきは、間接的障害の方なのです。
が、まあ慌てないで、まずは直接的障害をどうやって用意するか説明します。
最初に決めるのは、PC達と戦う敵NPCのデータです。これは簡単で、だいた
い人数にしてPC達の2倍の経験者(Experienced) に、ベテラン(Veteran) を1〜
2名加えておけばOKです。
ですから、全部で10名分くらいのNPCデータ(しかも、その大半は同じデー
タ)を用意すれば、それで準備完了なのです。
実際のセッションではもっともっと多くの敵NPCを登場させる必要があるので
すが、そのほとんどは「エキストラ」です。単に雰囲気を作ったり、演出のために
登場するだけですから、データも必要ありません。
たとえ数100人の兵士が駐屯している基地を襲撃するシナリオでも、データを
用意しておくのは、実はたった10名だけでよいのです。
技能ですが、基本ルールブックのP64〜P66を見て適当なテンプレートNP
Cを選ぶか、またはシナリオ作成時には決めないでおいて、セッション中に必要に
応じて決めるというのでもよいでしょう。
NPCの技能レベルや目標値をセッション中にとっさに決めるための方法はルー
ルブックには書かれていませんが、例えば次のような方法をお勧めします。気にい
らなければ、自分で工夫してみて下さい。
能力値 : 筋力、敏捷、体力については、NPCのレベルによって決まる。
(ルールブックP59参照)
その他の能力値が必要になれば、2d6で決める。
技能レベル : 戦闘関係の技能は、NPCのレベルによって決まる。
(ルールブックP59参照)
その他の技能が必要になれば、1d6を振って決める。
出目が1〜4なら、その値をそのまま技能レベルにする。
5〜6なら、この技能は習得していないことにする。
敵NPCの防具ですが、まず敵のテックレベルを決めて、そのテックレベルで手
に入る防具のうち「胸と胴を保護する」くらいのものを装着します。防弾チョッキ
かフラックジャケットくらいが良いでしょう。あと、ヘルメットも忘れずに。
敵NPCが使う武器については、レフリーの経験と趣味によって選びます。テッ
クレベルの制限に注意して下さい。
初心者レフリーの場合、まずはライフル(銃剣付)に予備弾倉1つを持たせてお
けばよいでしょう。ライフルは単射モード固定(連射不可)なように改造してある
ことにします。
あまり軍事的でないシナリオなら、セミオートのピストルに予備弾倉1つ、とい
うので充分です。
慣れてくれば、ベテランクラスの敵NPCに、ショットガンや連射モードにセッ
トしたライフルを持たせてみると銃撃戦の楽しさが増します。
さらに慣れてくると、車載武器を導入します。トラック、軽装甲車、エアラフト
などに機関銃を設置して、弾幕を張りましょう。
あと、ベテランクラスの敵1名にレーザー銃器やプラズマ銃器を持たせると、何
かと派手になってよろしい。
それと、レフリーは早めにグレネードランチャー、または手榴弾に慣れる必要が
あります。これらを使って、最初の一撃で複数のPCにダメージを与え、ひるんだ
(ルール的に言うと行動権を失った)ところを全力で叩く、というのは基本です。
レフリーもプレーヤーも戦闘に慣れたら、一度は「戦闘ヘリ」「戦車」「戦術ミ
サイル」「バトルドレス」といった兵器をバリバリ使った地上戦をやってみるべき
です。
ここまでが、直接的障害のうち、敵NPCの準備です。
前回は、「直接的障害」のうち、敵NPCのデータを用意する方法について書き
ました。今回は、マップの準備について書きましょう。
TNEの戦闘システムにおいては、移動や射線がとても重要になります。ですか
らレフリーは戦闘が行われる場所のマップをきちんと準備しておかなければなりま
せん。
まず文房具店に行って、Project Paper というのを探してみて下さい。正方形の
マス目が薄く印刷されている紙です。もともとフリーハンドで図表を書くためにあ
る用紙で、100枚くらいがセットになっています。1枚づつ自由にペリペリと切
り離せるようになっています。
見つからなければ、グラフを書くための方眼紙でも構いません。
TNEの戦闘ルールに明記されているように、1つの正方形のマス目を、屋内マ
ップでは2m×2m、屋外マップでは10m×10mとして扱います。この縮尺で
地図を描いてゆくわけです。
壁やドア、机や椅子などは、なるべくマス目の境界線に沿って配置します。複数
階の建物の内部見取り図を描くときには、階段の位置や接続関係が各階で矛盾しな
いように注意して下さい。(1階には上り階段があるのに、2階のその場所に下り
階段がない、というようなミスをしてはいけません)
実際のセッションにおいては、この手書きのマップはプレーヤーから見えないよ
うに、マスタースクリーンで隠します。テーブルの上には、マップを描くのに使っ
たのと同じProject Paper (または方眼紙)を置いて下さい。
そして、PC達から見える部分だけ、鉛筆でマップを描いてゆきます。もちろん、
手元にあるマップを描き写してゆくのです。視線が通らない場所は描かないように
気をつけて下さい。例えば、PC達が廊下にいるとすれば、PC達が目にすること
ができるであろう廊下とドアだけを描き、部屋は描かないようにするのです。
今、私の手元にあるProject Paper は、A4で1Cm×1Cmのマス目が印刷された
ものです。私がTNEのセッションをやるときは、いつもこの1Cmのマス目を屋内
マップで1m、屋外マップで5mにします。つまり印刷されたマス目にして2×2
合計4マス分を、戦闘ルールで使う1グリッドに当てはめるわけです。
この大きさだと、ちょうどキャラクターを示すカウンタ(シミュレーションゲー
ム等でよく使う、厚紙で出来たコマ)をマップの上に置くことが出来るのです。屋
内マップだと、ちょうど1グリッド(実スケール2Cm×2Cmの4マス)に1つのカ
ウンタを余裕を持って置けます。
昔はフィギュアを使っていたこともあるのですが、TNEだとキャラクターの姿
勢(伏せ、直立、など)や向き(右向き、後ろむき、など)が重要になるので、カ
ウンタ方式に変えたのです。
カウンターの裏表に、それぞれ姿勢と向いている方向を示す矢印を記入してある
ので、例えば射撃が命中して転倒したときは、カウンタを引っ繰り返せば「←伏せ」
などと書かれている(姿勢は「伏せ」で、頭の向きは矢印の方向)という具合です。
PCとNPCを示すカウンターをマップの上に並べて戦闘を処理していると、気
分はシミュレーションゲーマーであります。PCのカウンターが移動する度にマッ
プがどんどん描き足されてゆくときの感じも好きです。
話がだんだん逸れてきました。もとに戻しましょう。
で、問題は、マップ自体をどうやって手に入れるかという点です。
「メガトラの始め方」では、私は「自分が実際に行ったことのある建物(喫茶店
とか駅とか)の見取り図を手帳に描け」などと言いました。
しかし、TNEのシナリオだと、この方式はうまくゆきません。S&Gミッショ
ンの対象となるような場所(武器貯蔵庫、ミサイル発射基地・・・)に行って見取
り図を手帳に描き写す作業はちょっと危険だからです。
そこで、色々な資料をあたってマップを集めてゆくことにします。
まず、文房具店に行って、ファイルバインダを買ってきます。A4の大きさで、
紙に穴を開けず透明な袋に入れてどんどんとじることが出来る奴がいいでしょう。
そして、色々な資料で、地図や見取り図があれば、すぐにそのコピーを取って、
ここにファイリングしてゆくのです。
例えば、TNE製品では、"Smash & Grab"に沢山のマップや見取り図が描いてあ
りますから、これをコピーして保存しておきます。
他のRPG用の資料でも、マップが載っていれば、どんどんコピーを取りましょ
う。例えば、同じGDWの製品では、Twilight : 2000 のルールブックやサプリメ
ントは、マップや建物の見取り図の宝庫です。
TNEのレフリーをやるならTwilight : 2000 は絶対に買いです。
他にも、FASA社の「シャドウラン」の未訳サプリメントには、建物の見取り
図がかなり載っています。
それと、特にお勧めしておきたいのが、Chameleon Eclectic Entertainmentとい
う会社が出している、"Milennium's End" というRPGのためのサプリメントであ
る"GMs Companion" というやつです。
このサプリメントには、すぐ役に立つ多数のマップや見取り図が含まれています。
それだけでなく、例えば判定に大失敗したときに起こるイベントのリストとか、
ドラマチックな場所のリスト、NPCの妙な癖のリスト、企業名リスト、NPCの
名前リスト(国籍別)といった、色々なRPGでそのまま使える便利な情報が山盛
りです。
実のところ、私が今まで手に入れたRPG用資料のうち、これほど実用的なもの
は他にありません。
このようにして集めたマップや見取り図のコピーを、分類整理してゆきます。
例えばオフィス関連、酒場の見取り図、ホテルの内部見取り図、という具合に。
何だか面倒に思えるかも知れませんが、いざ実際にシナリオを作るときに、この
ファイルはものすごく役立ちます。例えば、軍の補給基地にある「武器庫」のマッ
プが必要になれば、机の上に倉庫の見取り図を並べてみます。一番気に入った倉庫
の見取り図をもとに、「武器庫」の見取り図を描いてゆくのです。
いや、それ以前に、そもそも「軍の補給基地」のマップを想像だけで描くのは無
理でしょう。そこで、「工場」とか「研究所」のマップをもとに手を入れてゆきま
す。ほらほら、「工場」のマップをにらんでいるうちに、生産管理ビルが作戦指令
室に、資材保管棟が武器貯蔵庫に、製造ラインが訓練施設に、変わってゆきます。
従業員の寮は兵士の宿舎(バラック)になります。食堂やバーはそのまま使えます
ね。
そんないい加減な、と思うかも知れませんが、これでいいのです。プレーヤーが
求めているのは「もっともらしさ」であって、正確さや厳密さではないのです。そ
れに、そもそも普通のプレーヤーは、あなたと同様に「軍の補給基地」がどうなっ
ているかなど知らないのです。自信を持って下さい。レフリーが自信を持っていれ
ば、マップはもっともらしく見えます。
というわけで、もうあなたは「原子力発電所」の見取り図だって、「核ミサイル
発射制御室」の様子だって描けるわけです。後は、PC達をそこに突入させるだけ
ですね。
今回から、いよいよ最も重要なシナリオ要素である「間接的障害」について書い
てゆきます。
さて、ここまでの解説で、PC達が奪取(または破壊)すべき目標が決まり、そ
の目標を目指す動機も用意され、目標達成を阻止すべく配置される敵NPCのデー
タを用意し、それらをもっともらしくマップ上に配置することが出来ました。
しかし、実のところ、ここまでの作業はセッションの「骨格」を作ったに過ぎな
いのです。確かに「骨格」だけでセッションを行うことも出来ます。が、それだと、
本当に戦闘だけの単純なゲームになってしまうことでしょう。
TNEを最初にプレイするときは、それでもいいかも知れません。TNEのルー
ルは、単純に戦闘するだけでも充分に楽しめるものになっていますから。
しかし、戦闘だけのセッションを2度、3度と繰り返せば、すぐに飽きがきます。
「骨格」だけのセッションを何度も繰り返すことは出来ないのです。
TNEを何度もプレイするためには、「骨格」の中に「血肉」に相当する要素を
つめてゆかなければなりません。ここで血肉に例えている重要な要素こそ「間接的
障害」なのです。
というわけで、私が「間接的障害」の重要性を強調したい気持ちが読者の皆さん
に何となく伝わったとして、皆さんが疑問に思うことは、ずばり「間接的障害って
いったい何?」ということでしょう。
間接的障害とは、PC達のミッション達成を間接的に阻害する要因です。もっと
はっきり言えば、「ラストの戦闘に突入するまでに、PC達が解決しなければなら
ない課題」ということです。
映画や小説のストーリーを考えて下さい。
主人公はまっすぐ目標に向かってつき進むことが出来るでしょうか。まず、そん
なことはありません。必ず何らかの問題、例えば「情報が不足している」「手持ち
の金が足りない」「やりたいことの許可が出ない」「行方不明になっている人物の
助けが必要」「目標達成より何より、まず安全なところに逃げ込まないと殺されて
しまう」といった問題やトラブルにぶつかります。
映画や小説におけるストーリーの大部分は、主人公がこういった問題を解決しよ
うと悪戦苦闘するシーンに費やされます。これが、エンターテイメントの本道とい
うものです。
RPGのセッションも同じことです。
用意してあるマップに敵NPCを配置して「さあどうぞ」ではエンターティメン
トとして不十分なのです。PC達をそこに突入させる前に、まず簡単には解決でき
ない課題を突きつけて、それを解決しない限り先に進めないようにして下さい。
TNEでは、極めて多くの非戦闘系技能(対人技能、修理技能、乗物技能、技術
系技能・・・)が用意されていますが、これらは全て「間接的障害」を解決するた
めに使うものだと思って下さい。
自分が持っている技能を使って何とか課題を解決することが出来ないかと知恵を
絞る。色々な手を試してみる。駄目なら手をかえ品をかえチャレンジする。複数の
PCが協力してそれぞれ得意な技能を使うことで何とか課題をクリアする。ようや
く先が見えてきた。さあ、後はラストの戦闘に突入だ・・・というわけです。
この、「間接的障害の解消」という部分に力を注ぐことで、戦闘力が低いキャラ
クターも活躍でき、セッションは厚みとリアリティを増し、プレーヤーの感情移入
は促進され、そして参加者全員が他のゲームでは味わえないRPG特有の楽しみを
得ることが出来るのです。
ですから、レフリーが力を注ぐべきポイントは、まさに「間接的障害」なのです。
さて、ここで、とても大切なことがあります。注意して聞いて下さい。
それは「レフリーは、間接的障害を解決するための手段を1つに決めつけてはい
けない」ということです。
よくある間違いが、シナリオ作成のときに「この課題は、こうやれば解決するこ
とにしよう」と決めてしまい、セッションを進めているときもその解決策しか念頭
になく、それ以外の解決策を認めないという態度です。
このような態度だと、プレーヤー達がその「正解」に気づかないとセッションが
進まなくなってしまいます。(たとえレフリーが「正解」を用意していても、まず
絶対にプレーヤーはその方法に気づかないものです)
何とか「押し」「引き」で誘導して正解にたどり着かせたとしても、プレーヤー
達は不満を持つことが多いでしょう。RPGのセッションはクイズやパズルではな
いのです。正解が1つしかなく、それ以外の試みは全て無駄に終わる、というので
は、いかにも不自然で作為的な感じがします。プレーヤーはこういった「不自然な
制限」に敏感なことに注意して下さい。
セッションの最中にプレーヤーが何か解決策を考えつけば、それがあまりにも安
直だったり愚かだったりしない限り、一応「それで解決する可能性」を検討して下
さい。
可能性があると判断すれば、それで解決するための具体的な条件(ちゃんとNP
Cを説得できたら、タスク判定に大成功すれば、必要な情報を見つけ出したら、な
ど)を決めて、処理を行って下さい。
逆に、シナリオを作成する段階では、あえて「間接的障害」の解消方法を決めな
いようにします。まあ、最低限1つは「模範的」解決手段を用意しておき、プレー
ヤー達がどうしても自力で課題を解決できないようなら、そちらに誘導するという
ことが必要でしょう。
しかし、プレーヤーが、レフリーの用意した「模範的」解決手段より優れた、あ
るいは少なくとも面白い方法を考えだしたら、ためらわずにそれを採用すべきなの
です。
大抵のシナリオでは、ミッションの目的である「直接的障害」のクリア(もっと
はっきり言うなら、ラストの戦闘シーン)の前に解決すべき課題が与えられます。
この課題のことを「間接的障害」と呼ぶこととします。
何度も強調しているように、レフリーが創意工夫をつぎ込むべきポイントは、こ
の「間接的障害」です。PC達にユニークで魅力的な課題を突きつけることができ
さえすれば、その後に待っている「直接的障害」がいくら平凡なものであっても、
きっとセッションは成功することでしょう。
このように「間接的障害」はシナリオの中核とも言うべき重要なポイントであり、
そこにはレフリー毎の創意工夫が求められます。このため、「間接的障害」となる
べき課題の例をリストアップするというのは困難な作業となります。
以下に示すのは、大雑把な枠組みに過ぎません。この枠組みの中でも様々な課題
が考えられるでしょうし、レフリーの発想が豊かなら、どの分類にも当てはめられ
ないユニークな課題を作ることも出来るはずです。
「間接的障害」リスト
1.欠如
ミッション達成に必要な資源が不足しており、それを手に入れなければならない、
という課題です。
(1)「情報」の欠如
PC達は、目的地の見取り図、ターゲットの居場所、移動スケジュール、現地の
警備状況など、ミッションを達成するために必要な情報を集めなければなりません。
この手の課題は、PC達が対人関連技能を使うチャンスです。また、多くの場合、
会話によって情報を聞き出すシーンがあるので、ロールプレイを楽しむこともでき
るので、とても有益です。
(2)「物資」の欠如
PC達は、武器、機械の補修部品、食料、弾薬、技術者、案内者など、ミッショ
ンを達成するために必要なもの(あるいは人物)を現地で手に入れなければなりま
せん。
多くの場合、「作戦準備段階では、これらの物資は現地で手に入る予定だった」
のに、トラブルのため手に入らなくなるのです。(輸送船が撃沈された、とか)
また、事故、敵の攻撃、陰謀や裏切りなどにより、持参していた物資が略奪され
たり破壊されたりする、というシナリオもよくあります。
いずれにせよ、PC達は、これらの物資を現地で手に入れるためのプランを練っ
て、実行することになります。このプランの立案から実行までの処理については、
プレーヤーの創意工夫に任せ、なるべく柔軟に処理するようにして下さい。プレー
ヤーにとっては、このシーンが腕の見せ所となります。
この手の課題は、TNEに慣れたプレーヤー向きの課題と言えます。
2.妨害
ミッション達成を間接的に妨害する人物、組織、勢力があり、この妨害を排除し
なければならない(または妨害にも係わらず作戦を進めなければならない)という
課題です。
たいていの場合、この課題は上の「欠如」と組み合わせて使われます。敵対勢力
の様々な妨害を受けつつも、「欠如」している情報または物資を手に入れなければ
ならない、という具合です。
・お役所的な妨害
PC達は、ミッションの前に何らかの法的な援助、許可などを得なければなりま
せん。しかし、現地の役人は信じられないほど頭が固く、また恐ろしいほど怠慢で
あり、PC達の申請は即座に却下されるか、または「未決」書類箱に積まれたまま
無視されることになります。
抗議しても、担当者が長期休暇をとったために誰も対応してくれず、手続きが変
更されたために今までの申請は全て無効となります。
せっかく許可が下りても、発注した物資はなぜか届きません。理由はいくらでも
考えられます。税金監査、業者の手続きミス、検疫待ち、ささいな違反による回収
指示など。
PC達は、まずは「説得」「協調」「社交」「世渡り」「リーダーシップ」など
の対人技能を駆使し、場合によっては「言語」「演技はったり」「心理学」を用い、
ついには「贈賄」「変装」「偽造」を使うか、それとも役人の個人的な弱みを「調
査」「捜査」により調べ上げて恐喝するか、というところまでやらなければなりま
せん。
どうしても駄目なら、いよいよ「コネ」を活用しなければならないでしょう。
タスク判定に大失敗すると、警察に通報されてしまうというのが普通です。
こういう課題をロールプレイにより解決するのが大好きなプレーヤーだと、セッ
ションはもの凄く白熱します。厭味な役人NPCと、頭に血がのぼったPCが、実
際に机をばんばん叩きながら怒鳴りあうわけですね。
逆に、「戦闘以外には興味ない」というプレーヤーだと、こういう課題をどう解
決してよいか分からず進行が止まってしまうかも知れません。
このように、この手の課題はプレーヤーを選びますが、なにしろこの類はトラベ
ラーにおける伝統的な課題ですから、ぜひレフリー、プレーヤーとも慣れて、楽し
めるようにして下さい。
・司法当局の介入
司法当局(ようするに警察)は、伝統的に余所者を嫌います。治安維持に責任を
持つ彼らとしては、とにかく外世界人や旅人(トラベラー)は犯罪者予備軍としか
思えず、なるべく早めに立ち去ってほしいのです。
ですから、嫌がらせ(しょっちゅう職務質問して無駄な時間をとらせる、など)
から、露骨な妨害(何かと理由を付けて別件逮捕して、留置所に拘束する)まで、
あらゆる手を使ってPC達の行動を邪魔し、出ていかせようとします。
PCのミッションが違法なもの(TEDの暗殺など)であった場合、またはPC
達の正体(外世界人)自体が違法である場合、司法当局に目を付けられるのは深刻
なトラブルとなります。もしPC達の正体や目的がばれれば、ミッション達成どこ
ろか、命の危険にさらされます。
この手の課題は、「司法官(警察官)との遭遇」という形で処理されるのが普通
です。例えば外を出歩いているPCについて、4時間(1ピリオド)毎に2d6を
ふって「昼間なら10以上、夜間なら11以上でパトロール警官に遭遇」といった
具合です。
パトロールに遭遇したPCは、例によって対人技能を駆使して遭遇を処理しなけ
ればなりません。失敗すれば「ちょっと署まで来てもらおうか」となるでしょう。
大失敗でもすれば、「いきなり逮捕」「いきなりスタンガン」といったトラブルに
巻き込まれることになります。
この手の課題は、他の課題と組み合わせて使われます。多くのプレーヤーは「密
かに違法な活動に従事する」という生活にほのかな憧れを持っているので、この手
の課題は嫌がられません。
・敵に対する支援
「PC達が対決しなければならない敵」に対する支援を行う人物や勢力です。敵
の背後にいる「黒幕」も含まれます。
TNEでは、この手の代表的な勢力として「ギルド」と「コンピュータウイルス」
が用意されています。
「ギルド」(または「商人ギルド」)は、恒星間の通商貿易を独占しようとする
組織です。まあ要するに「宇宙マフィア」「宇宙ギャング団」「宇宙海賊」の類だ
と思って下さい。
彼らはリフォーメーション・コーリションと対立していますが、PC達を直接攻
撃するようなことはあまりやりません。(必要ならやりますが)
むしろ、彼らはTEDやローカル軍に対して「スターヴァイキングの脅威」を吹
き込んで武器や軍事物資を売りつける、という形でPC達を妨害します。(PC達
に恨みがあるわけではなく、要するにPC達をダシにして儲けたいだけなのです)
よくあるのが、「作戦準備段階では、現地の兵士はテックレベル5のはずだった」
のに、実際に現地に到着してみると「レーザーライフルを持った敵兵がエアラフト
に乗って哨戒していた」というやつです。PC達のミッションを知った(または予
想した)ギルドが、ハイテク装備を売りつけたのです。
「コンピュータウイルス」は、たいてい黒幕として登場します。例えばTEDが
敵だと思っていたら実は「ウイルスに乗っ取られたコンピュータ」に操られていた、
とか、謎の支配者の正体を探ったら実はそもそもウイルスが作り出した疑似人格だ
った、とか。
よくあるのが、「警備が手薄だと思って安心して侵入したらいきなり凶悪な警備
ロボットがわらわらと登場した」とか「無人の工場を調査していると、工作機械や
車両や消火設備による攻撃を受けた」といった不意打ちです。特に後者のシーンは
うまく演出するとホラーRPGのような恐怖を与えることが出来るので、一度はや
りたいものですね。
というわけで、これらを参考にレフリーは大いに知恵を絞り、プレーヤーがあっ
と驚くような課題を用意しましょう。それがTNEの醍醐味なのです。
S&G(スマッシュ&グラブ:襲撃と奪取)タイプのシナリオ作成について解説
を続けます。今回は「制限」について見てみましょう。
5つのシナリオ要素、つまり「目的」「脅威」「制限」「障害」「利点」のうち、
「制限」は最も単純でバラエティが少ない要素です。
制限は、「間接的障害」と似た効果(PC達のミッション達成を阻害する)を持
っていますが、多くの場合、クリアすることはできません。PC達は、最初から最
後まで制限を守った上で、ミッションを達成しなければならないのです。
だいたい、制限として使われるのは次のものです。
・法的制限
法律上、その世界で使用が禁止または制限される機器があります。
代表的なのは、武器です。世界データ(UWP)に明記されている「治安度」を
見れば、その世界で携帯が許可される武器の範囲が分かります。
携帯が許可されないような武器を持ち歩くことはもちろんのこと、そのような武
器の修理部品や補給用品(弾薬など)を手に入れようとすることも違法でしょう。
他にも政治的、経済的、文化的、宗教的な理由から、特定の機器の持ち込みや携
帯が禁止されることはよくあります。
TNEでよくあるのが、ウイルスに対する恐怖から「コンピュータ、およびコン
ピュータで制御される機器は一切持ち込み禁止」となっているケースです。
また、TEDがテクノロジーを独占している世界の場合、テックレベルの高い機
器は全て政府の管理下にあり、特定のテックレベル以上の機器は「許可がない限り
所有を禁ず」となっている場合もあります。
レフリーが望むなら、「宗教的な理由」を使うことで、ほとんどあらゆる物を禁
止することが出来ます。
・テックレベルによる制限
世界データ(UWP)には、その世界で生産できる物品のテクノロジーレベル上
限が明記されています。これを越える物品は、原則としてその世界では手に入りま
せん。
「あらかじめテックレベルの高い世界でハイテク装備を購入しておいて、現地に
持ち込めばいいじゃん」と思うかも知れませんが、ほとんどの世界では、その世界
のテックレベルを越える機器の持ち込みを「法的制限」により禁止しています。
そうでなくても、「ミッション遂行中に所持品が故障したり、弾切れを起こした
としても、修理部品や補給品が現地では手に入らない」ということを考えると、テ
ックレベルの高い機器を持ち込むのは必ずしも得策とは限りません。
もしPCが深く考えずにテックレベルの高い機器を持ち込もうとしている場合、
レフリーは上のような点について注意してあげて下さい。
それでも持ち込もうとするなら、使う度に故障判定を行ってあげましょう。故障
したら「修理部品がないと直らない」と宣言します。しかも、使用現場に目撃者が
いて警察に通報されるのです。
一度、こういう目にあったプレーヤーは、次からはテックレベルの制限を尊重す
るようになるでしょう。(あるいは、より巧妙な手段で制限を回避しようと試みる
ようになる人もいます。これはこれで、まあよいでしょう)
・移動の制限
もしレフリーがPC達の移動を妨げたいと思うのであれば、移動手段を制限して
しまうのが手っとり早い手段です。
例えば、車両、航空機、反重力機器などの便利なパーソナル移動機器が手に入ら
ないようにします。PC達が移動しようと思ったら、公的な交通機関に頼らざるを
得ません。
もちろん公的な交通機関はレフリーの管理下にありますから、持ち込める所持品
に制限を付けるのも、行ける場所に制限を付けるのも、行ける時間に制限を付ける
ことも、何でも自由に出来ます。
この方法はシナリオを管理する上で非常に便利なので、初心者レフリーにはお勧
めです。
例えば「まず都市Xである情報を入手するまでは、都市Yには行かせたくない」
と思うのであれば、X−Y間の交通を制限してしまうのです。理由は、ストライキ
でも天候悪化でも犯罪発生による封鎖でも「理由は未発表だがとにかく軍の命令」
という奴でも何でも構いません。
で、PC達がある情報を手に入れたころ、偶然にもX−Y間の交通が再開される
というわけです。
この制限を巧妙に使うと、実は「PC達は、レフリーがあらかじめ準備しておい
た数カ所の地点以外には決して行けない」ようになっていたにも関わらず、プレー
ヤーには「広大な世界マップが用意されていて、自由にどこにでも行こうと思えば
行けた(たまたま数カ所しか行かなかったけど)」という印象を残すことができま
す。
・時間制限
PC達のミッション達成までにかかる時間を制限します。「3日以内に助け出さ
ないと、彼らは処刑されてしまう」という具合ですね。
時間制限はセッションをだれさせないために非常に効果的です。必須と言ってよ
いでしょう。
しかし、RPGのセッションで時間制限をうまく処理するのは、思った以上に難
しいテクニックが必要になります。
「あと3日」と言われても、大抵のプレーヤーはそれがどれくらいの制限なのか、
実感として把握できません。で、行き当たりばったりに行動しているうちに期限が
来てしまいます。「仕方ない。期限切れだ。決行しよう」となって、準備不足で失
敗するのです。
こういう場合、プレーヤーは決して「もっと時間を有効に活用すべきだったな」
と反省したりしません。必ず「バランスが悪すぎるよ。こんなミッション、はなっ
から無理じゃん」とか言い出すものです。言い出さなくても心の中でそう思ってい
ます。
これは、実はレフリーにも問題があるのです。レフリーは、時間制限という要素
を逆手にとって、PC達が積極的に、かつ効率的に行動せざるを得ないよう誘導す
べきなのです。それも、実際にはレフリーが「ほとんど強制的に行動させている」
にもかかわらず、プレーヤーに「自分から積極的に行動した」と思わせるように。
次回は、この「時間制限による行動の誘導」というテクニックについて書きます。
今回は、「制限」のうち、特に時間制限の扱いについて説明します。この話は、
TNEに限らず様々なRPGに応用できるはずです。
情け容赦なくじりじりと過ぎてゆく時間、迫るタイムリミット、焦るプレーヤー。
時間制限によるサスペンスをうまく活かすと、実に緊迫感あふれるセッションを演
出することが出来ます。
ところが、経験不足のレフリーは、しばしば「時間制限を付けさえすれば、それ
だけで緊迫したセッションにすることが出来る」と思いがちです。
実際にやってみれば分かりますが、単に「君達は3日以内にある人物を捜し出さ
なければならない」と言っても、プレーヤー達はちっとも焦ってくれません。3日
という時間制限がどれくらい厳しいのか、あるいは大して厳しくないのか、実感と
してよく分からないのです。
で、「どうしようか」とか相談を始めてなかなか動こうとしなくなったり、また
は思いつきでふらふらと行動して、レフリーを困らせることになるのです。
そこで、「タイムスケール管理」という考え方が重要になってきます。これにつ
いて一般的に説明してみましょう。
まず、戦闘を考えて下さい。たいていのRPGでは、戦闘が発生すると時間をあ
る単位(ターンとかラウンドとか呼ばれる)に区切って処理してゆきます。PCは
原則として1つの時間単位に1つの行為(例えば「攻撃する」とか)しか行うこと
が出来ません。
戦闘時にこのように時間を管理するのは、もともとは「集中的に発生する多数の
行為の解決順番をきちんと規定する」ことが目的なのです。
しかし、このように「時間をある単位に区切って、その単位内では1つの行為し
か行えない」と規定することで、いくつか有益な副作用が発生します。
その1つは、プレーヤーに行動を強制させる効果です。
他のシーンではいわゆる「お地蔵さん」と呼ばれるような「自発的に行動申告を
しないプレーヤー」が、戦闘シーンでだけはダイスを振っている、という光景を見
たことはありませんか。これは戦闘ルールに「敏捷度の順番に行動を解決してゆく」
とか書かれているため、嫌でも行動しないとシーンが先に進まないことが誰の目に
も明らかなためでしょう。
このように、行動を順番に解決するという約束ゆえに、どのプレーヤーも傍観者
になることが許されず、強制的に戦闘に「巻き込まれている」ことになるのです。
これを「行動の強制」効果と呼んでよいかも知れません。
もう1つの副作用は、プレーヤーに時間制限を実感させ、とるべき行動について
考えるようにしむける効果です。
例えば、「自爆スイッチを止めないと、1分後に基地ごと全員が吹き飛ばされる」
というシチュエーションを考えてみましょう。ここで戦闘シーンに入ると、戦闘時
の時間単位が例えば10秒なら、「あと6回の行動で敵を倒して自爆スイッチを解
除しなければならないんだな」とはっきり分かります。
あるいは「全力で走って逃げるとして、1回の行動で何メートル移動できるから、
爆発の有効エリアから出るためには最低3回の全力疾走が必要だな。じゃ、とりあ
えず3回は戦って、それまでに敵勢力が半分以上残っていれば全速力で撤退しよう」
と考えるプレーヤーもいるかも知れません。
いずれにしても、注目してほしいのは、「1分」という時間が「6回の行動」に
変わったことです。このように、「時間」という抽象的な制限が、「行動回数」と
いう非常に具体的な制限になることで、プレーヤーが制限を実感できるようになり、
また「この限られた行動回数をどのように使うべきか」という方向で作戦を考える
ようになるのです。
これは「制限の実感」とでも呼ぶべき効果です。
戦闘のスリルとサスペンスが盛り上がる原因の一部には、上に述べた2つの効果
があるのです。
さて、これで「3日以内に何かを達成せよ」というシーンをうまく処理する方法
がお分かりのことと思います。
そう、時間をある単位、例えば8時間単位に区切って、1つの時間単位には1つ
の行為しか許さないことにするのです。つまり「3日以内に」という制限を、暗黙
に「9回以内の行動で」という制限に変えてしまうのです。そして、1つの時間単
位の処理を行う毎に全員の行為を申告させ、それを順番に処理して、それから次の
時間単位の処理に入る、という手順で進めることで、行動を強制するわけです。
時間単位を8時間にするとしましょう。すると、1日(24時間)は「3単位」
ということになります。
この3単位のうち、1単位は「睡眠」に費やすことにします。もし、睡眠をとら
なければ、睡眠不足(徹夜明け)による大きなペナルティが与えられることにして
もよいでしょう。(行為の難易度が全て1段階上昇する、とか)
残りは2単位です。例えば「聞き込み」という行為を1つ行うのに1単位かかる
ことにします。
「おかしいよ。聞き込みに8時間もかからないはずだ」と文句を言うプレーヤー
がいれば、「いや、これは歩き回ったり、タクシーで移動したり、電話帳を調べた
り、訪れたアパートの管理人に事情を説明したり、疲れて休憩したり、食事したり、
そういった聞き込みに伴って発生するもののゲームとしては省略するあらゆる細か
い出来事を含めているんだ。ゲーム処理としては聞き込み判定でダイスを1回振る
だけだけど、実際には8時間くらいは当然かかる」などと説明します。
また、都市から都市へ移動するなら、移動時間を「往復で1単位を費やす」など
と決めます。「片道4時間もかからないはずだ」と(例によって)文句を言われれ
ば、「いや、始めて訪れた街で交通機関を使おうとすると、信じられないくらい時
間を浪費するものなんだ。バス路線を間違えたり、電車の連絡が悪くて乗換に1時
間くらい空費したり、空港で予約をとろうとすると満席でない便は4時間後だった
り。前に僕がニューヨークにいったときのことだけど・・(中略)・・こういった
トラブルの類を全部含めて、往復8時間でよいと言ってるんだ」などと、慣れたレ
フリーなら簡単に言いくるめられるでしょう。
さあ、よく考えてみましょう。1日のうち、行方不明の人物を捜索できるのは2
単位だけ、しかも都市から都市へ移動すると、移動だけで1単位を費やすのです。
すると、「3日以内に」という制限は、いきなり「ダイス4〜5回を振るうちに」
というものすごく具体的な制限になります。
そして、何らかの行為で成功する度に「よし、手掛かりがつかめた。彼が潜伏し
ていると思われるのは都市Zだな。さあ、次に判定に成功すれば彼がどのあたりに
住んでいるか見当をつけることが出来るぞ」という具合に、判定に成功する度に1
段階づつ目的達成に近づいていることを示します。
こうなれば、プレーヤーは真剣に考え始めるでしょう。ダイスを振れる回数と、
目的を達成するまでにあと何回くらい「判定に成功」することが必要か、これらが
明確になったからです。
たぶん「手分けして聞き込みだ。なるべく移動を最小限にするには、まず僕が今
いる都市の警察署で過去の記録を調べている間に、君が都市Zに行って・・・」と
いう具合にPC間で分担して効率よく進めてゆくことになります。
このように、3日という(比較的)長い時間を、より細かい時間単位に区切って
処理することで、さきほど戦闘処理を例にして解説した「行動の強制」「制限の実
感」という2つの効果を享受できるのです。原理的には、ちょうど戦闘シーンを盛
り上げるのと同じように、しばしば退屈になりがちな「長い時間かかる行動」例え
ば調査、捜査、追跡、といったシーンを盛り上げることが出来るわけです。
これが、タイムスケール管理という手法の考え方です。
今回は一般的な話でしたが、次回はTNEにおけるタイムスケール管理について、
より詳しく見てみることにしましょう。
ここまでの解説で、戦闘に比べて比較的長い期間に渡って行われる活動を処理す
るときに威力を発揮する「タイムスケール管理」の考え方について、一般的なこと
はお分かりのことと思います。
「戦闘以外のシーンが、どうもだれてしまう」とお悩みの方は、タイムスケール
管理をきちんと適用してみて下さい。きっと、セッション全体がきびきびと進んで
ゆくことと思います。
今回は、一般的に使えるちょっとしたテクニックをご紹介して、それからTNE
におけるタイムスケール管理について説明してゆくこととします。
さて、そのちょっとしたテクニックというのは、いわゆる「タイムリミット隠し」
という奴です。
これまでの解説で、「君達は3日以内にある人物を見つけなければならない」と
いう例を何度も使いました。しかし、このようにタイムリミットがはっきり分かる
ケースはむしろまれでしょう。
実際にシナリオに登場するタイムリミットは、「3日」というように決まった時
間ではなく、
・警察が事件に気づいて非常線を張る(君達を指名手配する)前に
・本物の外交官を乗せた連絡船が到着して、君達が偽物だとばれる前に
・敵の援軍(補給品)が到着する前に
・嵐がやってきて空港が閉鎖される前に
といった具合に、だいたいの目安は分かるものの、正確にいつタイムリミットがや
ってくるかは予想できないというケースがほとんどです。
このような場合、次のようにして正確なタイムリミットを予測できなくすること
でスリルとサスペンスを盛り上げることが出来ます。
1.時間単位を決め、経過した時間単位の数を10面ダイスで表示する。
つまり、最初の時間単位が経過したら「1」と表示し、次の時間単位が経
過したら「2」と表示する。以下、同様。
2.時間単位が経過する度に、上に示したように10面ダイスの表示を増やし
てから、2d6を振る。結果が表示された数以下なら、タイムリミットが
来たこととする。
例えば、時間単位を「1日」とします。すると、最初の1日が終わると、10面
ダイスで「1」と表示して、2d6を振ります。どうかご安心を。2d6の出目が
1以下になる可能性はありません。
しかし、2日目は違います。2d6で1のゾロ目が出ると、いきなりタイムリミ
ットです。3日目は3以下、4日目は4以下です。
お分かりの通り、時間が経過すればするほど、タイムリミットになる確率は上昇
してゆきます。また、だいたい1週間くらいでタイムリミットだという目安も得ら
れます。(ちなみに、実のところ、だいてい1週間より早くタイムリミットが来ま
す)
2d6は当然オープンで振ります。振るときにプレーヤー達の間に緊張感が走っ
て非常によろしい。ただし、いつタイムリミットになるかレフリーにも分からない
ので、どんな場合でも適切に対処できるだけの技量か前準備が必要になりますが。
さて、ではTNEにおけるタイムスケール管理について解説しましょう。
TNEでは、「標準日」と「ピリオド」という2つの時間単位がよく使われます。
標準日は、24時間です。(なぜ20時間でも25時間でもなく24時間なのか、
ルールブックでは説明されていません。たぶん、帝国時代からの慣習でしょう)
数週間から1カ月以上に渡って継続する活動は、この標準日を時間単位にして処
理します。例えば、未知惑星の探査、都市に潜入しての諜報(スパイ)活動、刑務
所での服役、長距離の移動(地表の旅)などがそうです。そうそう、シナリオで詳
細には扱わない「普段の生活」というのも、この時間単位で処理します。
ルールブックの「地表の旅(Wilderness Travel and Encounters)」という章では、
標準日を時間単位とした処理、特に「疲労」「睡眠」「食事」について規定してい
ます。また、負傷の回復についても、標準日を時間単位として規定されています。
要するに、1日が過ぎる度に、シナリオを進める上で重要な処理(何かに成功し
たかどうかの判定など)をPC毎に1回行って、それから、どれだけ疲れたか、ち
ゃんと寝たか、飯は食ったか、怪我はどれくらい治ったか、というチェックを行う
わけです。ちなみに、睡眠不足や栄養不足のペナルティも規定されていますので、
よく読んで下さい。(睡眠不足のペナルティは、かなり致命的)
ピリオドは、4時間です。
(「ピリオド」というくらいだから28日だ、と思った人、反省するように)
数日から1週間くらいに渡って継続する活動は、ピリオドを時間単位にして処理
します。
例えば、捜索、捜査、追跡、特定施設に関する諜報(スパイ)活動、監禁、比較
的短距離の移動、などがそうです。
たぶん、多くのシナリオで最もよく使用される時間単位が、このピリオドでしょ
う。
このため、乗物などの速度は、時速ではなく「Km/ピリオド」で表示されてい
ます。乗物データを見るときは注意して下さい。そこに表示されている巡行速度と
は、4時間に進む距離なのです。(もう1つの速度データは、戦闘速度といって、
5秒間に進む距離をメートルで表したものです)
ルールブックの「地表の旅(Wilderness Travel and Encounters)」という章では、
ピリオドを時間単位とした処理、特に「遭遇」「移動距離」「食料収集」について
規定しています。
また、乗物などの大型機械については、2ピリオド(8時間)動かす毎に、不調
や故障の判定を行います。
同様に、天候や気温の変化も2ピリオドを単位に処理します。(これは基本ルー
ルではなく、World Tamer's Handbookというサプリメントで追加されたルールです)
ピリオド処理も、今までのやり方と同じです。ピリオドが過ぎる度に、シナリオ
を進める上で重要な処理(何かに成功したかどうかの判定など)をPC毎に1回行
って、それから遭遇判定、食料収集判定、特別なイベント有無の確認、もし移動中
なら現在位置を変更する、などの処理を行うのです。
このように、TNEではタイムスケール管理がルールで明記されているので、レ
フリーは楽です。常に「現在、採用している時間単位」を意識しておき、その時間
単位で処理を行うのです。
そして、必要に応じて、素早く時間単位を変更します。
どんなレフリーでも、戦闘が発生したら素早く戦闘ターン(5秒)処理に入るこ
とは忘れないでしょう。しかし、立派なレフリーになるためには、それ以外のケー
スでも、素早く的確に時間単位を切り換えることが出来なければなりません。
「よし、戦闘は終わった。ここからは1分単位に処理しよう。警察が踏み込む前に、
目的の品物を見つけることが出来るか。さあ、最初の1分だ・・・」
「残念ながら時間切れだ。君達は逮捕された。全員、別々に取り調べを受ける。こ
こからはピリオド単位に処理しよう。まず最初のピリオドだ・・・」
「どうやら君が自白してしまったみたいだね。全員、刑務所暮らしということにな
る。ここからは標準日単位に処理しよう。まず最初の日だが・・・」
「みんな、そろそろ疲労と栄養不足で参ってきたようだね。さて、ある日のことだ。
弁護士らしい人がやってきて、こう言うんだ・・・(中略)・・・もちろん、この
申し出を受けるかどうかは君達の自由だ。罠かも知れない。よく考えてくれ。そう
だ、外部への電話や、刑務所仲間との情報交換をしていいよ。ただし、時間単位は
1時間だ。弁護士さんが何時間待っていてくれるかは分からない」
「よし、仮釈放だ。必要な装備を準備して、それから手分けして捜索を開始しよう。
ぐずぐずしてはいられないぞ。時間単位はピリオド。期限は3日だ」
お分かりでしょうか。タイムスケール管理を適切に行うことで、セッションがど
んなにきびきびと進んでゆくか。
タイムスケール管理は非常に重要な技法であるにもかかわらず、あまり意識され
てないような気がします。この機会に、RPGの種類によらず、ぜひ自分のセッシ
ョンに取り入れてみて下さい。
ここまでの解説で、シナリオ要素のうち「目的」「脅威」「制限」「障害」につ
いての説明が終わりました。
後は「利点」だけです。今回は、この「利点」について説明しましょう。
たいていの場合、PC達はわずか数名のチームで敵地に乗り込んでゆきます。し
かも、普通、現地には自分達で運べるだけの装備しか持ち込めません。(その装備
も、失われたり、水びたしになって使えなくなったりします)
この悪条件で、例えば「何十人もの兵士が守っている通信基地を破壊する」とい
ったミッションを達成しなければならないのですから、まともにやったら勝ち目は
ありません。
しかし、少なくともTNEのセッションでは、PC達にはある程度の勝ち目があ
るようにしなければなりません。(そんなのは嫌だと思うかも知れませんが、いつ
も勝ち目のないミッションばかり与えていると、誰も一緒に遊んでくれなくなりま
す)
したがって、PC側に何らかの「利点」を与えることでバランスをとる必要が生
ずるわけです。
まず、ほとんど常にPC側に与えられる利点として、「奇襲」があります。
S&Gシナリオでは、PC達はいつどこにどのように攻撃を仕掛けるかを選ぶこ
とができます。ここに大きな(極めて大きな)利点が存在します。
PC達がうまく立ち回れば、敵の警備が最も薄い地点を、最も有効なタイミング
で、電撃的に奇襲することで、実際に戦わなければならない敵勢力を「PC達に勝
ち目がある」程度の人数にすることが出来るでしょう。
もちろん、レフリーの観点からすると、PC達が実際に戦うことになるはずの敵
勢力(「直接的障害」と呼ぶのでしたね)は、最初からだいたい戦闘のバランスが
とれる程度の人数に調整しておくわけです。
例えば最初から「敵勢力は8人」と決めてデータを用意しておくとして、
A:8人の敵と、牧場で白昼堂々と決闘し、全員を倒した。
B:何十人もの兵士が守っている通信施設を襲撃して爆破すべく、新月の真夜
中に奇襲をかけた。敵はパニックを起こして混乱した結果、PC達が爆薬
を仕掛け撤退するまでに反撃できたのは、当直についていた8人だけだっ
た。
という2つは、実は同じ戦闘バランスになるわけです。
S&Gシナリオでは、上のBを狙います。設定上は「敵は何十人もいる」という
こことにしてドラマ性を高めますが、実際にはAと同じバランスだというわけです。
Bの方がAよりもシナリオとして工夫できるのは、Aは単に戦闘するだけで解決
するのですが、Bの方は事前準備が必須だという点にあります。
Bのシナリオで、PC達が事前準備を怠れば、「奇襲」は失敗し、ほとんど自動
的に作戦も失敗します。つまり、Bにおいては、戦闘バランスをAと同じにするた
め、PC達は事前の情報収集などで散々苦労する必要があるわけです。
ここが、シナリオ上の工夫のしどころです。
次に、PC達が持っている利点として、「テックレベルの高い装備が使える」と
いうことがあります。これはシナリオによって異なるわけですが。(シナリオによ
っては敵の方がテックレベルが高い、ということもあります)
しかし、テックレベルの高い装備が使えるといっても、単に「威力の大きい武器
が使える」というだけでは、あまりにも芸が足りません。やはり、テックレベルの
高さを利点にする場合は、「PC達が利点を生かすために工夫しなければならない」
というような装備を与えるべきでしょう。
基本ルールブックの装備を眺めながら、色々と考えてみて下さい。「PC達がこ
の装備を持っているために、非常に有利になるシチュエーションはないか」と。
例えば、PC達にエア・ラフト(トラベラー宇宙における標準的な反重力機器)
を与えるとします。そして「敵は城砦に立てこもっているが、テックレベルが低い
世界なので、空中からの侵入や攻撃があるなどとは想像もしていない」という設定
を作ります。PC達は大喜びで上空からの奇襲を計画することでしょう。
また、PC達に赤外線ゴーグルを渡すのであれば、敵の暗殺部隊(忍者みたいな
連中)が闇に紛れてPC達の宿舎を襲ってくる、という設定にします。敵はテック
レベルが低く、PC達が夜間でも自分達を「見て」射撃できるなどとは予想してい
ません。
ある意味で、トラベラーにおけるテックレベルの差は、ファンタジーRPGにお
ける「魔法」のような役割を果たします。「進化したテクノロジーは魔法と見分け
がつかない」と誰かも言っています。
ファンタジーRPGで魔法や「マジックアイテム」が果たす役割を考えれば、ト
ラベラー宇宙においてテクノロジーを上手く活用することがどれほど大切かよく分
かることと思います。
他に、シナリオによっては、意外な利点というのを用意することもあります。こ
のような利点は、多くの場合、SF的なフレーバーとしても機能します。
例えば、メガトラベラーのあるシナリオでは、「聞いた音をほとんど完璧に再生
する動物」が登場します。オウムや九官鳥のような不完全な物真似ではなく、オリ
ジナルと区別できないくらい見事に音を再生してのけるわけです。
PC達が敵ゲリラのキャンプを襲撃するとき、この動物の存在が「意外な利点」
として働きます。銃撃戦が始まった途端、ジャングルのあちこちから銃声が連続的
に響き渡ります。(もちろん、興奮した動物が闇雲に銃声を再生しているのです)
敵ゲリラは、大部隊に完全に包囲されたものと錯覚してパニックを起こします。
その隙をついて、PC達はまんまと目的を達成することが出来る、というわけで
す。
この例では、架空の動物の習性が、PC達にとって大きな利点となると共に、い
かにもSF的なフレーバーとしてプレーヤーに強い印象を残します。
冒険アクションSFには、よくこの手の意外な「利点」を作り出すSF的アイデ
アが登場します。パターンはこうです。まず最初の方で、SFらしい架空の自然現
象・生物・技術・社会習慣などが登場します。これは実は伏線で、ラスト近くにな
って、これが主人公にとって「利点」として機能したおかげで、何とか目的を達成
することが出来る、というわけです。
この手のアイデアを得るためには、普段から映画、小説、コミックなどエンター
ティメント、科学解説本など、とにかく様々なソースから情報を得て、勉強するし
かありません。
とにかく、たくさん読んで観て学んで下さい。質も無視は出来ませんが、まず何
より量です。どんな知識を得ても、どんな勉強をしても、どんなエンターティメン
トを楽しんでも、とにかくRPGにとって何かの役に立ちます。
いよいよシナリオ要素を配置して、全体として1つのシナリオを組み立てる方法
について解説します。
と言ってもこれは実に簡単で、要するに定番パターンを守ればそれでよいのです。
〔ミッション指向のシナリオ定番パターン〕
1.ブリーフィング
概要:召集を受けたPC達は、RC探査局からミッションの説明を受けます
要素:「目的」と「脅威」を提示します。
2.準備
概要:PC達は計画を立て、必要な装備を整えます。
要素:装備に関する「制限」を提示します。
3.宇宙船の運行
概要:PC達は目的の世界まで宇宙船で移動します。
要素:一般には、特にシナリオ要素は関わりません。
宇宙船運行ルールに従って処理を進めます。
4.トラブル発生
概要:現地に到着してみると、状況はブリーフィングで説明されたものとは異な
っています。または、予定外のトラブルが発生します。
PC達は臨機応変に対応しなければなりません。
要素:「間接的障害」を提示します。
5.事態の悪化
概要:トラブルは拡大してゆきます。さらに、ミッション達成までの時間制限が
厳しくなります。もはや、ミッション達成はおろか、生還すら困難に思え
る状況になります。
要素:新たな「間接的障害」および各種の「制限」を提示します。
6.急展開
概要:PC達の努力によって(少なくともプレーヤーにそう思わせて)、事態は
打開されます。(間接的障害が解決されます)
PC達は当初の予定通りミッションの最終段階に取りかかりますが、残り
時間は、あとわずかです。
要素:「時間制限」がポイントになります。プレーヤー達にゆっくり考える時間
を与えてはいけません。強引にぐいぐい進めます。
7.決戦
概要:PC達は敵勢力と交戦します。
要素:「直接的障害」を提示します。
また、シチュエーションによっては「時間制限」が付くこともあります。
8.結末
概要:PC達はミッションを達成し、帰還します。
要素:一般には、特にシナリオ要素は関わりません。
この定番パターンは「PC達が何らかのミッションを与えられ、それを達成する」
というタイプのシナリオに広く汎用的に使うことが出来ます。
以下では、例としてTNEにおける典型的なS&Gシナリオを示しますが、他に
もこの定番パターンは様々なRPGのシナリオに応用できることと思います。
〔TNEにおけるS&Gシナリオの典型例〕
1.ブリーフィング
惑星ミノス。この星は、政治的に対立する2つの大国、A国とB国が支配してお
り、2大国間での紛争が絶えない。この2大国のうちA国が、「ギルド」(宇宙商
人)から熱核弾頭を購入し、核ミサイル発射基地を建造中だという情報が入った。
このままでは、A国がB国に対し核攻撃を行うのは時間の問題であり、その場合
には民間人を含む多数の犠牲者が出る恐れがある。〔脅威〕
君達は何としてでも惑星ミノスの核弾頭貯蔵庫にゆき、核中和装置により弾頭を
無力化しなければならない。〔目的〕
現地へ到着すれば、この報告を送ってきた諜報員Pが、君達を核貯蔵庫まで案内
してくれるだろう。幸い、貯蔵庫の警備は手薄とのことだ。
2.準備
レフリーは、プレーヤーに対し現在地と惑星ミノスが載っている星図を示します。
また、偵察艦と核中和装置を貸し与え、TL=10、治安度=4の範囲で装備を購入
するように指示します。〔制限〕
3.宇宙船の運行
PC達が乗った偵察艦は、いつもの通り通常エンジン損傷(軽度障害)、パワー
プラント動作不良(不調)を起こしつつも、何とか惑星ミノスに不時着します。
4.トラブル発生
PC達は諜報員Pとの待ち合わせ場所にゆきますが、彼の姿はありません。
さらに、待ち伏せしていたA国の兵士による襲撃を受け、多大な損害(負傷、お
よび装備の破損)を受けつつ何とか逃げのびます。彼らは、敵の追跡をかわしつつ、
とりあえず安全な潜伏場所を見つけなければなりません。〔間接的障害〕
5.事態の悪化
宇宙船は敵勢力により押収されます。PC達はA国陸軍から追われており、道路
も空路も封鎖されています。PC達は何とかして国境を越えて、中立国に逃げ込ま
なければなりません。このためには、どうしても現地の民間人の協力を得る必要が
あるでしょう。〔間接的障害〕
さらに「A国のミサイル基地は既に完成しており、核ミサイルはもう運び込まれ
ている」ということが判明します。PC達は、厳重に警備されているミサイル発射
基地を襲撃しなければなりません。これはどう考えても不可能ですが、かと言って
帰還するすべも失われており、PC達は完全に追い詰められてしまいます。
6.急展開
中立国に逃げ込んだPC達は、諜報員PおよびB国の特殊部隊と接触します。
交渉の結果、彼らはPC達のミッション達成に協力することになります。
そのころ、A国とB国の国境で紛争が発生し、急速に戦火が広がってゆきます。
いつA国首脳部が核ミサイルの発射を決心するか分かりません。PC達はすぐに
作戦を決行しなければならなくなります。〔時間制限〕
7.決戦
B国の特殊部隊が行った大規模な陽動のおかげで、PC達は無事ミサイル基地に
潜入できます。基地内部で戦闘が発生します。〔直接的障害〕
戦闘中に、核ミサイルの発射指示が届きます。PC達は、1分以内にコンピュー
タ制御の発射シーケンスを止めなければなりません。〔時間制限〕
8.結末
PC達が核ミサイル発射を阻止し、核中和装置で弾頭を無力化して、速やかに撤
退できればシナリオは終了です。数週間後にリフォーメーション・コーリションの
艦隊が惑星ミノスに到着し、武力誇示により強制的に紛争を解決し、PC達は救助
されます。
PC達が核ミサイル発射を阻止できなかった場合、核ミサイルは発射されますが、
不発に終わります。「ギルド」が売りつけた核弾頭は、実は偽物だったのです。
PC達は、自分達の努力が最初から全くの無駄だったことを知るはめになります。
その後の事態の進展は上と同じです。
以上で、シナリオ構成に関する解説を終わります。
自分なりの方法論に基づいて、きちんとした構成を持つシナリオが作れるように
なれば、初級レフリー卒業と言ってよいでしょう。
現在(1995年12月)までに出版されたTNE関連製品のリストです。
「入門TNE」のリストに新製品を追加したものなので、一部重複があることを
お断りしておきます。
購入必要性については、私の独断で次のように評価しています。
A:必須。借金してでも購入するように。
B:出来るだけ購入した方がよい。
C:無理に購入しなくてもいいでしょう。
・Traveller : The New Era (Deluxe Edition)
基本ルールブックとFire, Fusion, & Steel を箱に詰めた、ボックスタイプの
「TNEスタートセット」です。これからTNEを始める方にお勧めです。
購入必要性 レフリー:A プレーヤー:A
・Survivel Margin
副題に"Gateway to the New Era"とあるのを見ても分かる通りメガトラベラー
からTNEへの橋渡しのためのサプリメントです。
メガトラベラーを長く続けていた人が、「帝国の終焉を見とどける」という目
的で読むとよいでしょう。
購入必要性 レフリー:C プレーヤー:C
・Traveller : Players' Forms
TNEをプレイする際に使える各種のフォーマット集です。実用一点張りで、
情報は特に含まれていません。
購入必要性 レフリー:C プレーヤー:C
・Fire, Fusion, & Steel (including TNE:Upgrade Booklet)
各種のアイテム設計ルール集です。基本セットのボックスに入っています。
このサプリメントを使えば、宇宙船から弾薬まであらゆるアイテムを自作する
ことが出来ます。
なお、Fire, Fusion, & Steel には、"TNE:Upgrade Booklet" という小冊子が
はさまっていますが、この小冊子の方が実は本体より重要です(笑)。
というのも、この小冊子はTNE基本ルールブックの正誤表であり、極めて重
大な修正が大量に載っているからです。
購入必要性 レフリー:A プレーヤー:A
・Traveller Referee's Screen
いわゆるマスタースクリーンです。特に必要ではないかも知れませんが、入門
用のシナリオが1本と、(例によって)基本ルールブックの正誤表が付いてい
るので、レフリーは買った方がよいでしょう。
購入必要性 レフリー:B プレーヤー:C
・Path of Tears : Reformation Coalition Manual #1
リフォーメーション・コーリション(再建同盟)とその作戦活動を解説するサ
プリメントです。コーリションを背景にしたプレイを行うために必須の情報が
満載されています。
購入必要性 レフリー:A プレーヤー:B
・Smash & Grab : Reformation Coalition Manual #2
シナリオ集。
スマッシュ&クラブ(襲撃と奪取)タイプのシナリオ5本が載っています。
購入必要性 レフリー:A プレーヤー:×
・Reformation Coalition Equipment Guide : Reformation Coalition Manual #3
Fire, Fusion, & Steel の設計ルールを使って作成したアイテムのカタログで
す。武器から宇宙船まで300個近いアイテムが載っており、だいたいこの1
冊だけで必要なアイテムは揃ってしまいます。
購入必要性 レフリー:A プレーヤー:A
・Star Vikings : Reformation Coalition Manual #4
TNEに登場する主要なNPCについて解説するサプリメント。
PCを作成する時間がないとき、ここからキャラクターを選んでPCとして使
わせることが可能です。
購入必要性 レフリー:B プレーヤー:C
・World Tamer's Handbook
探査局の活動のうち「未知の世界の探査」、「植民地の運営」、「再開発」を
解説するサプリメント。これらの活動をテーマにしたシナリオ付き。
購入必要性 レフリー:B プレーヤー:C
・Aliens of the Rim, Volume One : Hivers and Ithklur
オールドエクスパンス地域でよく遭遇する異種族、Hiver とIthklur を解説す
るサプリメント。彼らをNPCとして登場させるために必要な情報が満載。
購入必要性 レフリー:B プレーヤー:C
・Vampire Fleets : The Virus Sourcebook
コンピュータウイルスとその活動について解説するソースブック。TNEのレ
フリーにとって必須でしょう。ウイルス、バンパイア艦隊、そしてロボットを
テーマにしたシナリオ3本付き。
購入必要性 レフリー:A プレーヤー:C
・The Regency Sourcebook : Keepers of the Flame : Regency Manual #1
かつて「デネブ領域(含スピンワードマーチ宙域)」と呼ばれていた地域であ
るRegency の現状を解説するソースブック。
ちょうど、リフォーメーションコーリションマニュアル#1 "Path of Tears"
のデネブ版というところです。
この地域を舞台にするレフリー、および旧トラベラーのファンは「買い」です。
購入必要性 レフリー :Regency を舞台にするならA
プレーヤー:同上
・Regency Combat Vehicle : Regency Manual #2
Regency で使われているハイテク(TL=15くらい)戦闘車両のカタログ。
反重力戦車など凶悪なものが満載されている。RPGに登場させるのは困難と
思われ、おそらくウォーゲーム"Striker II"あたりで使うためのデータ集であ
ろう。
購入必要性 レフリー:C プレーヤー:C
・The Guilded Lilly : Virus Redux Epic #1
シナリオ集。Virus Redux Epicというキャンペーンの第1弾。
購入必要性 レフリー:B プレーヤー:×
・Brilliant Lances : Traveller Starship Combat
宇宙戦闘を扱ったボードゲーム。TNEの宇宙戦闘ルールをもっと精密にした
上級ルールとして使うこともでき、またTNEでそのまま使える宇宙船データ
が大量に付属しているので、レフリーなら買っても損はない。
購入必要性 レフリー:B プレーヤー:C
・Battle Rider
宇宙艦隊戦を扱ったボードゲーム。TNEの宇宙戦闘ルールでも、Brilliant
Lancesでも扱えない「艦隊戦」を処理するための追加ルールとして使うことが
出来る。
購入必要性 レフリー:C プレーヤー:C
・Striker II : Miniatures Warfare in the far future
ミニチュアフィギュアを使うウォーゲーム。TNEの陸戦を精密に処理するた
めに使うことも出来る。
購入必要性 レフリー:C プレーヤー:C
・その他
1996年の前半に出版が予定されている製品は次の通りです。
The Regency Starship Guide
Regency で使われているハイテク(TL=15以上)宇宙船のデータ集。
The Reformation Coalition Player's Handbook
プレーヤーのためのガイドブック。「トラベラー宇宙」の歴史や恒星地理
の説明から、TNE時代の日常生活に至るまで、トラベラー宇宙を生き抜
くために必要なあらゆる情報が詰まった1冊(らしい)。
馬場秀和