十四枚目の紙の色
呼んでいる風を横切る月に向け仰向く花の視線に出会う

枝先の言葉を読んで座り込む声のない空染める羽ばたき

四段の跳び箱またがり見た望み近くに迫る季節に届く

釜に置く四本目の薪くすぶった夜の退屈もう出会わない

腕を組み四度目の橋立ち止まる次へ次へと身投げする雲

薄闇にうずくまる石欠け跡を四本の指で隠して拾う

痛まない髪を切った日四回の季節は渡る自明のように

爪を切る夜に選んだ四辻の窪みに腕を埋めに行こうか

心にもない音が行く道に撒く四筋の糸を編もうとする夜

挫かれた花の野望が絡み付く四角い鉄線照らして走る

日の陰る庭先の石四足の靴を並べた崩れた家で

繰り返す律動四音 塗り込めた髪をゆっくり梳く夢を見る

人の手の届かない手摺り四羽目の鳥の居場所もないものらしい

はみだした四冊の本 苦しみを知らずに生きてしまうと思う

温まった空濃い色に浸された四個の星の手探りをする

日溜まりを踏む四枚の葉の音に似る服の影どこへ仕舞おう

教室は四階にある空へ向く線路の曲線窓を塞いで

四輪の花の迎える玄関に傷み比べの鏡を張って

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