秋には開く               
幹に残る蔓草の跡指を埋め道にだけある夢にとどまる

ゆれ交わすあの木の影のなでる壁 窓から見やる膝をさすって

花ガラを摘んで応えた遣り水に一直線に飛び去る鳥に

練り上げた空から垂れる月の根の端をうずめた腕のやさしさ

花のない木を見るために乗る列車 声がつかんだ季節を飛ばす

家のない木はただ枯れた掌にあつめた熱の跡を燃やして

風だけが震わす雲の色を見て枯れる葉陰に這い寄る蜥蜴

残された道に剥がして捨てていく膿んだ腕から咲いた花達

散っていく るいりと延びる光線を撃ち落とす音胸に埋め込む

肩を出しつかんだ石の行く先をあざ笑う声蝉に似ている

茎を折る匂い夕闇乗り越えて夢には月の蜜をこぼした

のびる髪空にからんで星を待つ鳥の輝き乗せる雲から

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