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<私の観劇記>
出演者:一路真輝(アンナ・レオノウェンズ) 高嶋政宏(シャム王) 本田美奈子(タプチム)
秋山恵美子(チャン夫人) 安崎 求(ルンタ) 松山政路(総理大臣)
藤木 孝(エドワード・ラムゼイ卿) 鈴木良一(オルトン船長) 真島茂樹(サイモン王) 他
ある方に、2階のど真ん中という、素晴らしい席を夫と二人分いただき、新年早々、幸せな気分で観劇に臨んだ(娘は、その方が預かりたいと預かってくださった。感謝感謝)。
私は、昨年7月の「ローマの休日」で、博多座は経験済みだが、夫は今回が初めて。ならば、劇場探索しようと、開演1時間前に入場しようとしたが、入り口のお姉ちゃんに優しく、「開演30分前にお越し下さい。」と言われ、隣のブランドビルで、めったにできない、夫婦水入らずのお茶の時間をもった(ただ単にケーキが食べたくなったのだが)。
さて、いよいよ劇場へ。「ローマの休日」の時は、バイクや「真実の口」など公演にちなんだものが、設置されてあったが、今回はタイ旅行のパンフや、タイの人形、ポスターなど、これまたタイをにおわすものが、あちこちに置かれていて、博多座さんの工夫が感じられた。
「ローマの休日」にはひとりでいったので、食事はしなかったが、今回は2人だったので、劇場内の食堂で、休憩時間に夕食をとろうと、予約。1600円〜3000円前後のお寿司やお弁当があった。
座席につき、パンフの「ストーリー」を読んで、予習をしておく。そのうち、音楽が始まる。いつものごとく、このオープニングはなぜか、うれしくって震えてしまう。やっぱり、舞台に飢えてるんだなあ・・・私は、この幕があくまでのオーバーチュアで、どんな曲がこの劇で流れるのかがとっても楽しみだ。「王様と私」では、有名な「シャル ウィ ダンス」しか知らなかったが、かわいい感じの曲が聞けそうで、わくわくしてきた。
船の到着とともに、のっけから一路くん(一路真輝)登場。うわ〜〜〜♪♪ 元タカラジェンヌがああいう豪華なドレスを着てくれると、とってもうれしい!! 声も相変わらずだが、やっぱりやせたなあ。すっかり女になってしまって。。。(※ 一路くんは宝塚時代男役だったので)
子役は博多の子かしら?そうよね。一生懸命セリフを言っていて、かわいい。そのうち、一路くんの歌が始まるが、どうしても歌声は好きになれない・・・(ごめんね、一路くん) でも、優しさが伝わってきて何だか妙な気分になってきた。そうそう、私にとって一路くんは男だったのだ。でも、この前、テレビのトーク番組に出ている姿を見て、優しい女らしい雰囲気が妙な気分だったのだ。こそばいような、気恥ずかしいような・・・タカラジェンヌ時代、楽屋待ちをしていて、写真をとらせてもらったことがある。高校生の私たちのために、にっこり笑って立ち止まってくれた一路くん。こんなに遠い存在になってしまったのね・・・などと思い出にふけりながら見ていた。
舞台はどんどん進み、いよいよ王様登場!! 正直言うと、私は高嶋兄がちと苦手だ。今回見るにあたっても、博多座だから、「王様と私」だから、そして、チケットをもらったから行ったようなもので、大阪にいていろんなミュージカルを見れるのなら、もしかしたら見なかったかもしれない。。。そんな気持ちだった。
最初は不安だった。高嶋兄とミュージカルとは、ミスマッチだったからだ。歌って踊るところは想像できなかった。そして、歌は案の定、・・・というところだった。が、なかなか演技がおもしろい。いやあ、予想以上に笑える、愛嬌のある王様だった。やはり、親譲りなのか、存在感はしっかりあった。
それにしても、「王様と私」が「サウンド・オブ・ミュージック」のように見える場面がいくつかあった。博多っ子たちがわんさか登場してきて、一路くんの周りに、まるでマリア先生を取り囲むかのように、アンナ先生を取り囲んで歌っているシーン。かわいい。子どもがでてくると、ひやひやするけど、観客もなごむようだ。
子ども達は、学校が始まると、「今日は『王様と私』の出演があるので欠席します」、もしくは「早退(遅刻?)します。」などというんだろうなあ。いいなあ。私もそういう生活をしてみたかったなあ。。。そうだ、娘にこういうオーディションがあったら受けさせよう!と考え、早速休憩タイムに夫に言ったら、即却下されてしまった。でも、いつかそういうチャンスがあって、子どもも興味を持っていたら(ここが肝心だけど)、こっそり受けさせちゃおうっかなあ〜ふふふ♪
ミュージカルで本田美奈子を見るのは、10年ほど前に見た「ミスサイゴン」以来だ。当時、あの歌手が〜?と思って行ったにもかかわらず、あまり違和感を感じなかったような気がする。さて、今回は、と期待して(半分不安に)見ていたら、まあびっくり!!! 歌がとってもうまくって、本当にびっくりだった。ところどころ、地声があるものの、高音部は素晴らしくきれいで、体中が震えてきて涙まで出そうになった。どうして、あんなに細いのに、劇場いっぱいに響き渡るような声が出せるのか、不思議だ。
そして、何度かミュージカルではお目に掛かっている安崎さんも、言っちゃ悪いが高嶋兄よりはうまいので、この2人のデュエットは、本当に涙を誘うものがあった。
そうこうしているうちに、休憩に突入。いそいそと食堂へ向かうと、まるで修学旅行の夕食の時のように、名前の書かれた紙がテーブルの上においてあって、食事も用意されていた。味も、そう悪くなく、少し時間を気にしながらでゆったりと・・・というわけにはいかなかったが、幸せな気分だった。予想以上に多くの人が入っていたが、みんな時間を気にしているためか、もくもくと食べているのが、かなり異様だった。
さて、2幕目。私が、この「王様と私」で、二つ興奮してしまったところがある。その二つともが、この2幕のシーンだった。ひとつは、劇中劇「アンクル・トムの小屋」。振り付けの森田守恒氏もパンフの中でコメントされていたが、私も、本当に素晴らしいと思った。タイ舞踊を、鮮やかにこんな形で見ることができ、時には観客を笑わせ、あでやかな踊りだった。出演者の練習には並々ならぬものがあったに違いない。とにかく、ほ〜〜っ!!!とため息まででそうなくらい、感激した場面であった。
そして、もう一つは、おなじみ王様とアンナ先生が、「シャル ウィ ダンス」に会わせて、踊るシーンである。高嶋兄の、照れくささを隠しながらの、誘い方が、なんだか母性本能をくすぐられてしまい、かわいいなあと思えてしまった。
カーテンコールでは、もう一度2人のダンスを披露してくれて、感激だった。こういうところが、ミュージカルの醍醐味だなあ。
それにしても、この王様。実は、うちの夫にそっくりなのである。外見ではない(当たり前だが)。性格が、である。男尊女卑、俺の前を歩くな、横着な口をきくな、などなど。。。(そのとおり従う私ではありませんが(^^))。そのため、終演後、帰りながら、夫が「あの王様には親近感がわいた。いい王様やった」などと言い始めた。しまいには、「家に帰ったら『王様と私』ごっこをしよう。俺よりも頭を高くするなーって。」だと。は〜あ。何を考えてるんだか・・・
九州男児にとっては、シャム王は身近な存在だったに違いない。もちろん、言うまでもなく、うちの夫も生粋の九州男児だが。。。
残念ながら、CDを買おうという気持ちには至らなかった。しかし、今まで「シャル ウィ ダンス」を聞いても、よさがわからなかったが、これからは親しみをもって聞くことができるであろう。
そして、なによりも、この話は実際にあった話。全く文化の違う国へ、はるばるやってきて、いろんな困難にあいながらも、立派に役目を果たしたアンナ先生の存在は、同じ女性として、とても勇気ある、そして尊敬できるものであった。
自分の持っている才能、知識をいかしながら、生き抜く女性に、とても憧れる。。。
2000年の初めに、多くの勇気と元気をもらったミュージカルだった。