朝鮮民主主義人民共和国
+  中国国境地帯編

旅行第2日目 その3

チュチェ思想塔

開城からだいたい2時間くらいで平壌に戻ってくる。そしてまず向かうのが、「チュチェ思想塔」というもの。「チュチェ(主体)思想」とは金日成が創始した思想で、要はそれを称えようとする塔である。あしたは定休日なので、何としても今日来なければならなかったらしい。



こういう塔です
 

この塔の高さは150m。そこまでエレベータで登ることができ、その展望台から市内が一望できる。位置的に、目の前に流れている大同江を挟んで真正面に金日成広場がある。今いるのが東平壌地区で、川の向こう側が中地区である。中地区には首都機能が集中していて、東地区にはアパート群、病院、大学、大使館などが集まっている、と張さんが言った。ちなみに展望台の上にはのろしのモニュメントが乗っていて、夜になるとこれが燃えているように光る



塔のてっぺんから平壌市の中心部を見る
 

塔から降りてくると、専門の案内係がやってきて、なんと日本語で周囲を案内する。それによるとこの塔は金日成の生誕70周年の日に除幕されたらしい。
四角い塔の四隅に、表18段、裏17段の段があり、これをあわせると70段。塔は石を積み上げてできているのだが、この石の数が
25,550個、つまり
70年×365日。塔の川面には、巨大な石碑が埋め込まれていて、チュチェ思想を称える文章が12個書かれている。で、この石碑の大きさが4m×15m。これで、金日成の生まれた「1912年4月15日」を表している。
まあとにかく、いかにも
この国らしい設計というか何というかのオンパレードで、どういうリアクションをしていいかちょっと困ってしまうのであった。

今は冬だからないけど、それ以外の時期には目の前を流れている大同江に高さ150mも吹き上がる大噴水があるらしい。と言うことを自慢したかったようだが、「でも風が吹いたら大変ですね」と思わず言ったら、「確かにそうです」と正直な返事が返ってきた。

 

人民軍サーカス

チュチェ思想塔から今度はサーカス会場に向かう。市内には平壌サーカスと、人民軍サーカスの2つがあり、私たちが向かうのは人民軍サーカスである。



人民軍サーカス場
 

車は一般市民が入っていく正面玄関ではなく、建物の横の方にある入口から中に入り、2階席に行く。ちょうど舞台が真正面にある2階席の一番前であった。私たちの席のさらに前には貴賓席らしき席があったが、今日は誰もいなかった。舞台を囲むようにしてある1階席には、一般市民が座っている。平壌では数少ない娯楽のひとつで、客席は満員の盛況であった。



オープニング




満員の盛況です
 

開演時間は17時で、私たちが席に着くとまもなく開演した。演奏は生バンドである。いかにもサーカス的なアクロバチックなものもあれば、コミック的なものもある。特にコミック的なコーナーでは、この国のイメージらしくなく、かなりハメを外していた。それでも国民性なのか、「なぜここで拍手が起きないんだろう」とか、「なんでこんなところで爆笑が起きるんだろう」とか思うことがしばしばであった。

私はサーカスを見ること自体が初めてである。だから比較対象が何もないのだが、レベル的にはかなり高いように思えた。特に最後の空中ブランコでは、一番最後の演技で失敗して、やり直しでピタッと決める、あとで思うにこれは雰囲気を盛り上げるためにわざと失敗したのではないか、そして彼らならそれくらいの技術はあるのではないかと思った。

公演は1時間20分ほどで終わった。終わるやいなや、観客は余韻も何もなく一斉に出口に殺到する。これも国民性だと思われる。

私たちも張さんと洪さんにせかされて、すぐに建物の外に出て車に乗った。出発したあと、張さんが「今の席は私が特に希望して取りました。人民軍サーカスの方が女性がきれいです。あの席はその顔がよく見えるのです」と言った。すかさず洪さんが「ね、張さんそんなところばっかり見てるでしょ。せっかくサーカス見に行くんだから、もっと技術的なところを見ないと」と突っ込みを入れ、一同爆笑となった。

 

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