大韓民国ソウルとその近郊編

旅行第2日目 その1

早朝、地下鉄に乗る

2日目は朝6:45起床。昨夜ホテルに帰ってきたのが11時半を過ぎていたから、結構しんどい。

なぜこんなに早起きしたか。
プロローグで述べたように、昼間はちょっとソウル近郊の鉄道に乗ってみようと思っている。日帰りで、予約もなしに気軽に行けるところと言うことで、今日は
京元(キョンウォン)線、明日は京義(キョンウィ)線に乗ろうと思っている。期せずして両線とも38度線を境に北朝鮮と分断されてしまった路線である。
その他、両線をつないでいる超ローカル線の
ソウル郊外(キョウェ)線にも乗ろうと思っているのだが、実はこれがくせ者で、ソウル郊外線は1日たったの4往復(週末はさらに減って3往復)しか走っていない。本来の目的である、野球の試合時間までにこれに乗ろうと思ったら、朝早く出発しなければならない。日本を出発前、韓国の時刻表を取り寄せ、かなり検討したがこればっかりはどうしようもなかった。
つまり今日はその犠牲の1日なのである。

そして京元線も1時間に1本ダイヤで、議政府(ウィジョンブ)駅8:20発に乗らないとならない。議政府駅は、ホテルの近くの「市庁」駅を通る地下鉄1号線がそのまま乗り入れている京元電鉄線の終点ひとつ手前の駅だが、調べてみたら45分近くかかる。

7:05、ホテルを出発。このままだと朝飯にありつけなさそうなので、ホテル近くのセブンイレブンに行き、「キムチのりまき」を買う。

7:19、市庁駅から地下鉄1号線、議政府北部(ウィジョンブプクブ 「北議政府」という感じ)行きの電車に乗る。今日は金曜日であるが、さすがにこの時間の郊外へ向かう電車はすいている。
東京で言えば上野駅に相当する清涼里(チョンニャンニ)駅から国鉄京元電鉄線になり、地上に出る。景色は日本の大都市から郊外に向かう感覚に非常に似ている。国鉄の「電鉄線」と名がつくものは、各駅停車が基本なので、この電車もこつこつ全部の駅に停まり(だから時間がかかるんだけど)、8:02に議政府駅に着く。ソウル近郊、議政府市の中心駅なので、やや混雑してきた車内の客がほとんど降りた。

 

京元(キョンウォン)線

議政府駅までは、昨日買った「交通カード」が使える区間で、改札も自動改札である。一方ここから先、終点新炭里(シンタンリ 読み方が日本語と同じ)駅までは普通の国鉄線で、新たに切符を買わないとならない。

議政府駅の切符売場は、電鉄線と国鉄線の窓口が並んでいて、国鉄線の方で新炭里駅までの切符を買う。今や日本ではほとんど見かけなくなった硬券切符である。



議政府→新炭里の切符。ほぼ実物大。2,100ウォン。
「706 1405」という数字が読めるが、これは「7月6日 1405列車」という意味。つまり、列車指定制。
 

ちょっと解説を加えると、韓国国鉄の列車等級は、速い順に「セマウル」「ムグンファ」「トンイル」「ピドゥルギ」となっていて、このうち「ピドゥルギ」号はほとんど廃止になってしまったので、実質「トンイル」が鈍行列車扱いになっている。「セマウル」「ムグンファ」が指定席制を基本としているのに対し、「トンイル」は基本的に全車自由席である。
で、私が買ったのはその「トンイル」号の自由席切符なのである。自由席切符とは言っても、切符には列車番号のハンコが押してあって、
列車指定制であることがわかる。

新炭里方面の改札は、自動改札ではなく、駅員が鋏を入れるという、これまた日本ではあまり見かけなくなったことをする。自動改札の電鉄線だって国鉄なのだが、改札は別々で、まるで違う会社のようである。

議政府駅はホームが3面あり、そのうち@〜C番線が電鉄線、D〜E番線が国鉄線に使われている。韓国国鉄は電鉄線以外はほとんど非電化で、新炭里行きも5両編成のディーゼルカーであった。内部はセミクロスシート、もちろん冷房車である。

発車まで少し時間があり、車内はほぼ席が埋まって居場所がないので、ホームの駅名標のところに座り込んでさっき買ったのり巻きを食う。日本のとは違いご飯を酢で締めていないのだが、はっきり言ってこっちの方がおいしい。私の口には韓国のり巻きの方が合う



議政府駅5番ホーム
のり巻きを食べたのはこの駅名標のところです・・・
 



「議政府→新炭里」のサボ
 

8:20、定刻通り発車。単線になるが、となりにはこれまた単線になった京元電鉄線が平行していて、すぐに終点駅の議政府北部駅がある。片面ホームで、私の列車は通過。
電鉄線の車内放送はもちろん、こういうローカル線の列車まで、
車内放送はテープである。鈍行列車であっても車内販売員が乗っていて、ワゴンが列車内を行き来する。
列車は市街地からすぐ抜けてしまうが、沿線はマンション等の建設ラッシュで、その他住宅地が結構多い。こういうところに駅をたくさん作れば利用客がもっと増えるのではないかと思うが、駅間距離がものすごく長い。そもそも1時間おきのダイヤである。しかし見たところ路線バスがたくさん走っているようで、この辺の人たちはみんなバスを使っているのであろう。
最初の州内(スネ)駅の横に平行している国道には、検問所があって兵隊さんが立っていた。ここまであまりそういう感じはなかったが、このあたりは北朝鮮との国境に近く緊張感のある地域であることを思い出させる。
そのうちだんだんとローカル線らしい景色になってきた。大きな駅周辺は町になっているが、その他はほとんど田園地帯で、日本のローカル線と何ら変わらない光景である。最初やや混み合っていた車内も、途中からはかなりすいてしまう。
終点の2つ手前の駅を過ぎたところの山の中腹に、「38」と大書きされた標識があった。北朝鮮との国境は実際には38度線と平行しているわけではなく、ずれていて、ここから先は「
北緯38度線より北」の地域である。だいたい、今年3月に訪れた北朝鮮の開城(ケソン)市は、38度線より南にある町である。



日本のローカル線とあんまり変わらないですね
 

9:34、終点新炭里駅着。定刻より4分早かった。
改札口のところで「記念にこの切符がほしいんですけど」ということを片言の韓国語で言ったら、「どうぞ」と言う感じで返してくれた。今回の旅行では、この手を使って
使用した切符をすべて持ち帰った。返してくれた確率100%である。日本ではあり得ない。切符に日付と列車名が書き込んであるので、再使用しようがない事情があるんだろうけど。

 

新炭里駅にて

新炭里駅は、「なんでこんなところが」というような、のんびりした集落の中にある終着駅であった。しかし、韓国の鉄道線の中では、今のところ最北端の駅となっている。
そもそも「京元線」という名称そのものが、ソウルと北朝鮮の元山(ウォンサン)を結んでいた路線であったことを示している。つまり、分断されてしまった結果の暫定的な終着駅なのである。



新炭里駅の駅舎
 



駅構内
 

駅前の雰囲気は、日本のローカル駅周辺のそれとあんまり変わらない。

駅の先数百メートルのところに、分断されてしまった線路の終端があるはずなので行ってみる。駅の構内から線路づたいに行けないこともないが、ここは集落内の細い道を歩いていく。今日は雲ひとつないいい天気、道は途中から未舗装となり、セミもじりじり鳴いていて、このあたりは何とも言えない素朴な田舎の光景である。

線路の終点(つまり「分断地点」)には、車止めのところに韓国国鉄が建てた「We want to be back on track」という看板があった。
ここで写真を撮っていると、地元の農家の人が通りかかる。こちらも勝手に線路内に立ち入っているわけで「まずいなあ」と一瞬思ったが、私のような人は多いらしく、その人もニコニコしながら「どーも」という感じで行ってしまった。



線路の終端
 



車止めのところにある看板のアップ
 

駅に戻ったのは折り返し列車の発車8分前くらいであった。窓口で議政府までの切符を買う。
時間もあまりないが、駅構内の写真も撮りたい。韓国では、鉄道関係の写真を撮る場合は一応許可を取ることになっていて、切符を買うときについでに「記念にこの駅構内で鉄道写真を撮ってもかまいませんか」と韓国語で書いた紙を見せたら(発音に自信がなかったので)、その駅員さんは快諾してくれたどころか、
「韓国鉄道同好会」の名前の入ったスタンプ用紙をくれた

構内で何枚か写真を撮っていると、その駅員さんが出てきて、「撮ってあげましょう」というので、ありがたく撮ってもらう。出発時間が来たので列車に乗り込むと、その駅員さんも乗ってきて、私の向かいの席に座った。韓国語がわからないので、片言の英語で会話したところ、この駅員さんはとなりの駅に書類を持っていく用事があったようであった。
新炭里駅員のソン・ヨンギさん、その節はお世話になりました(この場を借りてお礼をひとつ)。


10:00、折り返し議政府行き発車。このあとソウル郊外線に乗る予定でなかったら、もう1本待ってのんびりしたいところであった。

最初の大光里(テクァンリ)駅でソンさんが降りていった。握手で別れる。
それにしても新炭里では時間が足りなくて、汗かいてのどが渇いたのに飲み物とか買っている暇がなかった。さっきの車内販売員さん来ないかなあ、と思っていたらやって来たので、缶ジュースを買った。缶コーラが500ウォン。日本の半額以下。



参考までに帰りの「新炭里→議政府」の切符です

 

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