ネパール王国編

旅行第5日目 その1

ポカラの朝

夜が明けて3月1日。5日目にして今回の旅行ではじめてのゆっくりした朝である。ホテルはもともと静かなレイクサイド地区のさらにはずれにあるので、聞こえてくるのは鳥のさえずりだけ、本当に静かな朝である。このホテルはコテージ式なので部屋を出るとすぐ表で、廊下のところでしばらくぼーっと景色を眺めていた。晴れていればマチャプチャレやアンナプルナなどのヒマラヤの山々が目の前に見え絶景のはずなのだが、曇っていてその手前の低い山しか見えない。

朝食はホテル代に含まれているとのことなのでレストランへ。朝食はふつうのブレックファーストとインディアンブレックファーストが数種類ずつあり、その中から選ぶ。ここまで来たのだからインディアンの方にする。

まず出てきたのがラッシー。はてしなく牛乳に近い飲むヨーグルトというような感じ。そしてメインはプリ・バジ(Puri-Bhaji)というもの。これはパイ生地をからっと揚げたような、サクサクした食べ物で、カレー味の肉じゃがのようなものがついていた。

 

ダムサイド

今日は1日自転車を借りて市内を見ようと思う。昨日とは別の貸自転車屋(道沿いに自転車が並んでいるだけなんだけど)で自転車を借りる。昨日3時間借りたのと同じ値段(50ルピー)であった。

まずは湖をせき止めているダムに行く。ダムのあたりは、ダムサイドというこれまたホテルが多い地区なのだが、ホテルといってもせいぜい3階建てくらい、民家のような2階建てのホテル(というよりゲストハウス)も多い。

ダムそのものはそれらから少し離れた静かなところにあった。湖はかなり大きいが、その割にはダムは小規模である。ダムから先は渓谷のようになっていた。

 

パタレ・チャンゴ

そこからその川の下流方向にあるパタレ・チャンゴというところに向かう。実際にはまっすぐ行く道はなくて、かなり大回りに、集落の中を走る。ちょうど通学の時間帯で、小中学生に相当する子供たちが多かった。途中からはバスも通るがあまり広くない通りに出る。道はずーっとゆるい下り坂であった。沿道は家がまばらに建っているのんびりしたところである。

パタレ・チャンゴはその道沿いにあった。その前にはみやげ物屋が建ち並んでいる。案内するよ、という少年(あとで聞いたら中学生)が声を掛けてきた。今まで、こういうのは断り続けてきたから、今回は案内してもらうことにした。

入り口で5ルピー払って中に入る。その少年はタダ。パタレ・チャンゴとは、要するにさっきの川が急に深い渓谷になっているところで、Davidという人が落ちたことから「David's Fall」とも呼ばれ、それが通称になっている。いまは乾期だけど、雨期にはこの渓谷の上まで水が来る、とその少年が英語で説明する。一般の観光客は、柵で囲われているところから下をのぞき見るだけだが、少年はその柵を乗り越えて、渓谷の下の方まで案内してくれる。なんだか得したような気分。



パタレ・チャンゴ

 

チベット村

それからそのすぐ近くのチベット村へ行く。もともとはチベットから来た人たちの難民キャンプだったのが、そのまま集落になってしまったところだという。

集落の中にはチベット仏教の寺や、じゅうたんを作っている作業場などがあり、そんなところにずかずか入っていく。どうも少年は、この集落の住民らしい。集落内のみやげ物屋で何か買ってほしそうな感じだったので、いつかは買おうと思っていた、毛糸製品やらマニ車やらを買った。

その集落のはずれに行くと、急にきりたったガケのようになっていて、はるか下方が広い河原になっていた。さっきのパタレ・チャンゴから、一気にあそこまで流れていくらしい。すごい地形である。 最後に集落の入り口近くにある、洞窟へ。ここも雨期には水没するらしい。内部は蒸し暑かった。



 チベット村内部

 

パタレ・チャンゴのみやげ物店の前にて

自転車の置いてあるところに戻る。そこのテーブルに座り込んでその少年と少し話をした。

1人で行ったのではなかなか見られないところをいろいろ見せてくれたその少年には、日本に帰ったら手紙を書くことを約束する。

そこには、彼の友人がいて、姫路から来た日本人を案内して、その人に手紙を出したいんだけど、ネパールから送ると時間がかかるので日本に帰ったら送ってほしいと頼まれた。

そんな会話をしているときに、前の道をよたよた歩いていた馬が、突然倒れた。たちまちそのあたりにいた人たちが集まってきて、水をやったりしていた。ネパール人は本当に人がいいなあと思うが、その一方で事態のわりには緊迫感のない、どこかのんびりした光景であった。

 

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