ペルー共和国とボリビア共和国編

旅行第3日目その1

オリャンタイタンボ駅に向かう

高山病の症状にはいろいろあって、その中には「なかなか寝付けない」というのがある。そのせいなのか、やっぱり時差ボケがあるのか、翌朝は4時頃には目が覚めてしまった。

昨夜フェリペさんが「朝食は6時半にしましょう」と言っていたので、散歩を兼ねてそれより少し早く部屋を出る。すぐ裏を流れているウルバンバ川の流れる音が部屋にいると常に聞こえているので、その河原へ行ってみる。実はこの川はあのアマゾン川の支流の支流で、このあと6,000q流れて南米大陸を横断し、大西洋に流れ出ている。

7:05、昨日のワゴン車で宿を出発する。今日これから行くのは、あのマチュピチュ遺跡。マチュピチュへは車の走る道がなく、鉄道で行くしかない。
その鉄道はクスコを起点とし、昨日行ったオリャンタイタンボを通る。車でそのオリャンタイタンボ駅に向かう。

 

オリャンタイタンボ駅

15分も走るとオリャンタイタンボの村内に入り、中心部を通り抜けて村はずれにある駅に着く。

そこは、想像していたのとは少し違う光景であった。駅前広場のような狭い駐車スペースがあり、その向こうにフェンスがある。駅舎は別の建物の陰に隠れ見えない。



このフェンスから向こう側が駅構内
 

フェンスの入口部分には鍵のかかった門扉があり、門番の人が立っている。その人に切符を見せると中に入ることができる。逆に言うと切符を持っていなければ、駅舎に近づくこともできないのである。
この駅はそうではなかったが、もっと大きな駅になると、駅から出入りする線路のところまで含めて駅構内全体がフェンスで囲まれている。徹底したセキュリティーである。

オリャンタイタンボ駅構内は、単線の本線1本(すれ違えない)と引込線が2本あるだけで、けっこう手狭である。



オリャンタイタンボ駅の構内
 

駅舎、と言っても切符は町中の旅行会社で売っているのでここではほとんど待合室のようなのだが、内部の壁には鉄道沿線の観光地図のようなものが描かれていた。このあたりからマチュピチュにかけての山道「インカ道」はトレッキングのメッカで、フェリペさんがコースをいろいろ説明してくれた。このへんは彼の専門分野である。

8時少し前、マチュピチュ方面からローカル列車がやって来た。クスコからマチュピチュまでの鉄道路線には、通しで走る列車が4本と、車道のないオリャンタイタンボ〜マチュピチュ間に5往復の区間列車が走っている。この列車はその区間列車の1本。相当な年代物の機関車に引かれた客車4両+貨車1両で、かなり混み合っていた。この駅が終点なので一斉に客が降りてきて、構内はかなりの人ごみになった。

一方、マチュピチュ方面に向かう観光客たちもかなり集まってきた。そういう人たちを目当てに、おみやげを売る地元の人たちもたくさん構内にいた。

 

アウトバゴン Autovagon

8:10すぎ、私の乗るマチュピチュ行きの列車がやって来る。クスコ〜マチュピチュ間を通しで走る4往復のうちで一番速い、アウトバゴンという列車である。機関車牽引ではなく、ディーゼルカーの6両編成。クスコを朝6時に出発し、すでに2時間以上走り続けてきた。



アウトバゴンがやってくる
 

到着したときには列車にはかなり空席があった。ところがこの駅で満席になった。いかにこの駅で乗る客が多いかということである。

8:16、発車。マチュピチュまでウルバンバ川に沿った渓谷をひたすら走ることになる。川は終始進行方向左側にあり、私の席は幸いそちら側(全席指定)であった。

最初のうちは渓谷ではあってもまだ平地もそれなりにあって、畑の中を走ることが多い。今がちょうど作付の時期で、ジャガイモとかトウモロコシとかおなじみの植物が植わっていたりまだ何もなかったりする。

たまに駅がある。基本的には通過のようなのだが、この列車は車両間の行き来ができないような構造になっているので、検札する車掌が移動するために最初のうちはほとんどの駅で停車した。

車掌の他に、列車には何人ものサービス係が乗っていた。軽食とコーヒーのサービスがあったり、その他車内販売があったりする。

ずーっと川に沿った下り勾配なので、列車は比較的軽快に走る。ただし保線状態が今イチで、カーブも多くてそんなにとばすわけでもない。ときどきあるトンネルは、掘りっぱなし状態である。



まだ深い谷に入る前
 

そのうち、本格的な深い谷の底になってくる。フェリペさんに言われて気がついたが、当初樹木の少ない乾燥した景色だったのが、いつの間にか植物の生い茂った湿気の多そうな景色になる。だいぶ標高が下がってきて、アマゾンの熱帯雨林に近づいたのだそうだ。
マチュピチュまであと少し、というところにダムがあった。ここに水力発電所があって、クスコ周辺の電力をまかなっているそうである。発電設備は山をぶち抜いた反対側(マチュピチュの向こう側)にあり、よってここから先で川の水量が減った。

 

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