前年、アメリカ大リーグを観戦しに行き、「今年は韓国のプロ野球だ」と常々思っていた。
この年になってイチローや新庄がメジャーリーグに行き、日本でもあれだけ毎日大きく報道されている中、あえて韓国プロ野球を見に行くのも私らしいですね・・・。

 

@ 7月5日(木)
 

ソウル・蚕室(チャムシル)総合運動場野球場
LGツインズ 6−6 ヒョンデ・ユニコーンズ  観衆 ; 4,156人

お昼ちょっと前、成田からの大韓航空機にてインチョン国際空港に到着。
それにしてもものすごい濃霧である。着陸5秒前まで雲の中。着陸した地点から空港ターミナルビルが霧で見えない。管制塔なんか、てっぺんが雲に隠れている。こんな状態でよく着陸できたものである。

インチョン空港からソウル市内へ向かう途中では、そんな空から雨が降ったりやんだりしていて、「はたして今日は試合を行うのだろうか」と不安になった。実際、この日は馬山(マサン)大邱(テグ)という南の方の都市で行われるばずだった2試合が雨で中止になったようである。
しかし、ソウル市内は午後3時くらいには完全に雨もやみ、空が明るくなってきた。

 

LGツインズと、トゥサン・ベアーズという2つのチームの本拠地であるチャムシル野球場は、ソウル地下鉄2号線の総合運動場駅の5,6番出口を出ると目の前にある。
ソウル市の南東部にあり、市の中心部近くにある泊まったホテルからだと地下鉄で30分以上かかった。駅名のとおり、この周辺にはスポーツ施設がかたまっており、野球場の向こう側にはソウルオリンピックのメインスタジアムだった競技場がある。



チャムシル野球場の外観
この右手奥にオリンピックスタジアムがある。
 

今日は、その2チームのうち、LGツインズ主催のゲームが行われる。

球場前には午後5時過ぎに到着した。雨上がり、気温も高くて蒸し暑い。日本ではまだ鳴いていないセミがうるさくて、余計暑さを感じる。
駅の出口、特に6番出口を出てすぐのところに切符売り場がある。窓口が3つあったが、区別がわからないので適当な窓口に行く。
韓国プロ野球の観戦料は、すべての球場共通で、
指定席8,000ウォン一般席(自由席)5,000ウォン学生3,000ウォンとなっている。
(ご存じのように1円≒10ウォン)。

最初だからまずは地元・ツインズ側の指定席に入ろうと思う。
チャムシル野球場は指定席が1塁側と3塁側で分かれているとのことなので、「イルル、チジョンソク(1塁、指定席)」と日本語を単純に韓国語読みしただけの発音をしたら、そのまま通じて切符とおつりが出てきた。特に今はオールスターゲームのファン投票期間中なので、投票用紙も一緒に渡された。



この日の1塁側指定席の入場券です。
 

切符売場の横には、コンビニ「LG25」と、KFCとバーガーキングと普通の地元料理を出す3つの店が一緒になったフードコートがある。そこでまずは腹ごしらえ。
KFC(ケンタッキーですよ)とバーガーキングは日本にもあるので、そうではなくて地元料理の店(おばちゃんがやっていて庶民的)でビビンバを注文し、豪快にかき混ぜて食べる(4,000ウォン)。そう言えばこれが韓国に来て最初に食べる現地料理である。



切符売場の周辺 (この左側が切符売場)。
この奥にコンビニとフードコートがある。
 

今いるのが3塁側スタンドの下(それもレフトスタンドに近いところ)なので、1塁側へ行くには、そこから球場を半周ぐらいする。球場の正面もそちらのほうである。球場正面前は駐車場になっていて、関係者だけでなく一般の客も停められるようである。
スタンドの入口までの通路は階段が1段もなく、スロープになっていて、
完全に身障者対応になっている。



切符売場から、球場を約半周したところにある球場正面。
手前が駐車場。
 

そしていよいよ1塁側スタンドの中へ。まずはスタンド下の通路があり、ここにはLG25、KFC、バーガーキングというさっきと同じ組み合わせの店が並び、そのほかにツインズのグッズを売る店が2つある。



スタンド下の通路
 

通路から指定席への入口は2ヶ所だけで、そこでは係員が結構厳しくチェックする。同じ内野席でも自由席は1塁側から3塁側への行き来が自由にできるのに対し、指定席はその2ヶ所からしか出入りできず、バックネット裏はボックスシートのようになっていてこれまた入り口が区別されているので、要するに他の席と行き来ができない。指定席を買うときに1塁側か3塁側か言わなければならない理由はそこである。
内野席は指定席が肘掛け付き、自由席は肘掛けなしのいずれも背もたれイス。外野席は長イス。バックネット裏には記者席なのかボックス席なのか不明だけど、机付きの席が並んでいた。

スコアーボードはオール電光のきれいなもの。私がスタンド入りしたのは試合開始50分ほど前であったが、すでに先発全選手が表示されていた。日本やアメリカのように、セレモニーのような先発選手発表はなかった。
あと異なるのは、攻撃が始まるとき、
そのイニングのところに最初から「0」の文字が入ること。たぶん「この回はまだ点が入っていませんよ」と言うことなのだろうが、慣れないと面食らう。

両チームの応援団は、内野自由席に陣取っている。通路に応援団長が乗る舞台みたいなものがあり、その両側に大きな音響装置がある。
みんな
ひょろ長くした風船状のものを2つ持って、それをたたくと「パンパン」と乾いた太鼓のような音がする。日本でいうところのメガホンに相当するものと思われる。日本と同じで、その風船の色はチームカラーと一緒。風船状であるから、たたんでしまえば持ち歩きに便利な代物である。

ちなみに、今日のLG応援団は内野指定席にもかたまっていた。1回裏が終わったところでその1団に弁当と飲み物が配給されていたところをみると、LGグループからの動員かも知れない。

 

1回の表、ツインズの選手が守備位置につくと、韓国の国歌が流れる。もちろんこの間選手も観客も全員起立して国旗に向かい脱帽。それどころか、多くの人たちは胸に手を当てている。この愛国心は、日本人の比ではないと感じた。
ちなみに、恥ずかしながら韓国の国歌はそれまで全く知らなかったが、3回(=3試合)聴いたので、さすがにさびの部分ぐらいは憶えたのであった。

そして、午後6時半、試合開始。

 
 

選手のレベル的には日本のそれと大差がないので、グラウンド内の様子は日本とあまり変わらないのだが、スタンドの雰囲気は大幅に異なる。応援団長や4人のチアガール(どのチームもチアガールは4人だった)が壇上に上がり、その音頭で応援するのだが、電子オルガンを使って、その音が音響装置から大音響で出てくるし、ドラムのような太鼓もガンガンたたくので、かなり騒がしい。



4人のチアガール。主にイニングの合間に出てくる。
プレー中は応援団長がこの台の上で応援の音頭をとる。
 

観衆は4千人ちょっとであったが、その割にはけっこう場内は騒々しいのである。ただし、統制は見事にとれている。
ちなみに日本のようなトランペットでの応援はない。
で、この応援団長であるが、チームごとに特徴はあるにしても、かなり動きが激しい。はっきり言って選手よりも体力を使いそうである

ところで、この応援中に「あれ、聞いたことあるな」というリズムを、何度も耳にした。日本の千葉ロッテが取り入れている応援そのままのものが何種類かある。というか、千葉ロッテがマネしたんだろうけど。

さて試合は1回裏に、いきなりLGの4番ヤン・ジュンヒョクに3ランが飛び出し、1塁側スタンドは大騒ぎ。
しかし、この時点でサムソン・ライオンズと激しい首位争いをしているヒョンデもじわじわ盛り返し、3回表に逆転ホームランが出て試合をひっくり返す。
すると、5回裏には再びLGが逆転と、試合的にはかなりおもしろい内容であった。
ただ、両先発ピッチャーの制球がいまいちで、試合のスピードはかなりゆっくり目であった。LGの先発はバルデスという黒人ピッチャーであった。



点が入って盛り上がるツインズの応援団
 

5回が終わると、グラウンド整備に入る。その間、スコアーボードの電光表示板では「KISSコーナー」とか言って、ここに写ったカップルはキスしなければならないという、ある意味かなり怖い企画をやっていた。でもスタンド内もノリがよくて、結構盛り上がっていた。
ちなみに、韓国プロ野球ではこれがハーフタイムのような扱いとなり、
7回裏にはなんの企画もない

試合はしばらく硬直していたが、7回裏にLG3番のイ・ビョンギュが3塁打。この3塁塁上での判定がかなり微妙で、ヒョンデのキム監督が激しく抗議ていたが、審判に突っぱねられると、腕を組んだまま内野グラウンドをウロウロ。明らかな遅延行為のような抗議に、1塁側スタンドからは激しいヤジが飛ぶ。もともと韓国語は激しい言葉なので、それでヤジるとかなり迫力がある
ちなみにキム監督は、この判定がかなり不満だったと見え、9回に選手交代を告げに出てきた時もまだ抗議をしていた。
これをきっかけにLGが1点を加え、6−4となって試合が決まったかに見えたが、その直後の8回表にヒョンデの8番サード(助っ人なのにこの打順)のクィンランが同点2ラン。これで6−6。


 

9回表を終えた時点で10時半が近づき、引き分けが濃厚になってきた。韓国プロ野球には「延長の場合、試合開始から4時間たったら新しいイニングに入らない」という規定があるとのことである。
9回裏のLGの攻撃は、明らかな1発ねらいの大振りが目立ち、けっこうあっけなく終わってしまった。

試合終了時刻、午後10時35分。ホームチームの選手は、試合の結果に関わらず試合後必ず全員グラウンドに出てきてスタンドに一礼する
内容はそれなりに濃かったが、結果が引き分けに終わると、なんだか疲れが残るのであった。

 

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