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 活動の損失として主要なものは次の三種であると思われる。
 @不統一の損失・・・これは、成員一同の意思の不統一や、具体的行動の不統一によっ
てできる損失である。たとえば軍隊が敵を攻撃するとき、攻撃目標が一致していなかった
り、陸海空各部隊相互間の連絡が十分でなかったりすると、兵士の戦闘意欲は旺盛であっ
ても、その行動に無駄が多くなり、攻撃力は減少する。これは部分集団相互間の不統一に
よる損失である。
 A不安定の損失・・・これは組織化の不十分または不安定に由来する損失である。組織
化が不十分であると、各成員は状況に応じてさまざまの行動をしなければならない。それ
ぞれの新しい行動について準備し、また習熟するのに多くの時間と労力が使われる。同様
の損失は、組織化が不安定で、人事移動や配置転換が頻繁に行なわれる場合にも現れる。
地位の昇進のための配置替えは人心を一新し、モラールを高めることが多いけれども、そ
れと活動の効率とは別の概念であり、現実には双方の調和(さじ加減)が問題である。
 B不適当の損失・・・これは各成員の具体的行動が集団の目的実現のために有効適切で
ないことによって生ずる損失である。民主的決定が低俗化して衆愚政治になったり、審議
が長びいて決定の時期を失するのはその例である。集団が組織化されている場合には、こ
の種の損失を少なくするためには、重要なポストに優秀な人材を配置して、各レベルの支
配者の下す命令の適正化をはかることが、何よりも肝要である。一般に、不適当の損失の
多くは集団運営の失敗に由来するといえる。
 集団の活動の効率を上げるためには、以上三種の損失をなるべく少なくすることを考え
なければいけない。能率至上主義がつねに正しいとはいえないけれども、活動の効率につ
いて一応の知識をもっておくことは、それにもかかわらず重要である。


〔参考文献〕6
 @ Barnard,C.I. ; The Function of the Excecutive, 1956 
 A Simmel,G. ; Soziologie, 1958
 B Miller,D.C. & Form,W.H. ; Industrial Sociology, 1964
 C 尾高邦雄『産業社会学』1964年、ダイヤモンド社
 D 田杉競『人間関係』1967年、ダイヤモンド社
 E Etzioni,A. ; Modern Organization, 1964


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