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 その点を経済的誘因について見ると、貨幣を活動の誘因として成員に分配しうるために
は、その前に集団が貨幣を入手しなければならない。その貨幣は物の生産・販売・サービ
スなど、集団の活動により、その代償または報酬として集団に与えられる。だから、集団
の活動が誘因を生産していることになる。社会的誘因としての名誉なども同様、集団の活
動の結果として与えられることが多い。
 このようにして活動と誘因が相互規定の関係にあるとすれば、その関係を好循環に向か
わせるか、悪循環に向かわせるかを分けるものとして、活動の効率が問題になる。その効
率が悪ければ、活動の結果として得られる誘因の量が、効率の良い場合と比較して少量と
なり、したがって将来の活動が低調となる。そのことがさらに誘因の量の減少を招き、こ
のようにして集団の活動がしだいに衰退する。逆の場合には活動と誘因がプラスの方向に
相互助長をする。
 アメリカの組織論ではこのような場合、有効性(effectiveness) と能率(efficiency)を
区別して考える人が多いようである。バーナードは協働体系の目的が達せられる程度を有
効性、協働行為が参加者の動機をみたす程度を能率と定義している(6@,pp.43-44) 。
そのほか組織体が「一単位のアウト・プットを生産するのに使用される資材の量」で能率
を定義する人もある(6E,p.8 ) 。
 われわれは独自の見地から、「集団の活動の中で、集団の目的を実現するのに有効であ
る部分の割合」をもって「活動の効率」と呼ぶことにする。


(4)活動の損失
 集団の活動について効率が考えられるのは、その活動の中に集団の目的を実現するのに
有効でない部分が含まれているからである。それを活動の損失(loss) と呼ぶことにすれ
ば、全活動量からその損失活動量を差し引いた残りが有効活動量となり、全活動量にたい
する有効活動量の割合が、活動の効率ということになる。
 もちろん現実の活動について、どれだけが有効であり、どれだけが損失であるかを量的
に示すことは容易ではない。しかし活動の効率をこのように活動の損失と結びつけて理解
しておくと、効率を向上させる方策を考えるのに便利である。というのは、有効活動量よ
りも損失活動量について考える方が、具体的に考えやすいからである。



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