人類の未来へ、地球から遠く離れた異星へ、旅立つ運命があなたを待っている。そこは、常に死と隣り合わせの世界。犯罪と戦うGEOマーシャル達や、深海にひそむ攻撃型潜水艦に乗り込んだサイバー傭兵達の世界。
その果てなき欲望ゆえに異星の生態系を脅かす人類は、ここで太古の遺産に直面し、やがて生存を賭けた戦いへと巻き込まれることになるだろう・・・。
地表の97%を広大な海に覆われた海洋惑星「ポセイドン」。抗老化物質を含む
海底鉱脈の発見が、この星の運命を激変させてゆく・・・。
「ブループラネット」は1997年にBiohazard Games 社から出版され、全米RPG
ファン達の熱い注目を集めた本格ハードSF−RPGです。映画「アビス」を連想
させる背景世界。知性化されたイルカやオルカになれるキャラクター作成ルール。
そして何よりも、ハードSFへの徹底したこだわりが魅力的な作品です。
2000年 8月、新たに版権を獲得したFantasy Flight Games社から「ブループラネ
ット」第2版が出版されました。背景世界は第1版と同じですが、ルールシステム
は刷新され、プレイヤビリティが大幅に向上しています。
「ブループラネット移民ガイド」では、第3部「シナジー効果」として、第2版
のルールシステムを詳しくご紹介してゆきます。
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ブループラネット第2版は、「プレーヤーズ・ガイド」と「モデレーターズ・ガ
イド」の2冊組で構成されています。いずれもハードカバーで、大きさと厚さは、
そうですね、ちょうど「シャドウラン日本語版」ルールブックと同じくらいだと思
って下さい。
ちなみに、このRPGでは、いわゆる”ゲームマスター”のことを「モデレータ」
(調停者)と呼んでいます。略語はGM(ゲームモデレータ)で、一般的なゲーム
マスターの略語と同じになります。
プレーヤーズ・ガイドには、このRPGをプレイするために必要な設定情報、お
よび全てのルールが書かれていますから、プレーヤーはこちらを購入すれば十分で
しょう。なお、モデレーターズ・ガイドには、第1版サプリメント「アーキペラゴ
(群島)」に載っていた情報の全てと、第1版のルールブックに載っていた情報の
一部(ゲーマーのための海洋学入門、ポセイドンの生態系、サイクロン(嵐)、ポ
セイドン動植物図鑑、太陽系の情報、アボリジニー関連の秘密情報、などなど)が
収録されています。こちらはGM専用ですから、「アクセス禁止」(プレーヤーが
読んではいけない情報)も満載されています。
背景世界の設定は、第1版と第2版で全く同じです。変更されたのは、ゲームシ
ステムだけです。
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さて、第2版のゲームシステムですが、簡単に言うと「第1版のシステムで処理
が煩雑だった部分を思い切って簡略化し、プレイヤビリティの高い洗練されたゲー
ムシステムに改善した」ということになります。逆に言えば、「ブループラネット
らしい(もたもたした、ダサい)処理がなくなって、何だかシャドウランみたいな
スマートなシステムになってしまった(でも死にやすさは相変わらず)」といった
不満が残るかも知れません。
では、第2版での変更点をまとめてみましょう。
まず、第1版のパーセントダイス方式は、全て10面ダイスの下方ロールに変わ
りました。10面ダイスをいくつか振って、目標値以下の出目が1つでもあれば成
功、というのが基本となります。目標値以下の出目を出したダイスの個数、または
目標値から「最も低い出目」を引いた値(これを達成値と呼ぶ。失敗した場合には
達成値はマイナスになる)により、成功の度合いや生じた効果の大小が決まります。
このシステムは「シナジー・ゲームシステム」と呼ばれています。第2版におけ
るルールは、原則として全てこのシナジー・ゲームシステム(SGS)の応用とな
っています。
例えば、一般的な成功判定は、「能力値+スキルレベル+難易度修正」を目標値
として、SGSにより解決します。なお、各スキルには、対応する才能分野という
ものが決まっており、キャラクターはそれぞれの才能分野について1〜3の才能値
を持っています。SGSによる成功判定の際には、この才能値に等しい個数のダイ
スを振ることが出来るというわけです。
もちろんダイスを沢山振る方が、言い換えれば才能豊かな方が、判定に成功する
確率も、その効果も高くなります。おそらく、多くのプレーヤーは、才能のことを
なぜか「ダイスプール」「ダイスプール」と呼ぶに違いありません。
なお、第1版ではパーセントダイス方式を採用していたため、能力値もスキル値
も全て2桁だったのですが、第2版では10面ダイスによる下方ロールということ
で、全て1桁の数値になっています。ですから、2桁の足し算/引き算が暗算でき
ない(平均的な)RPGプレーヤーでも、第2版のシステムならOKですね。
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第1版の特徴だった「成功するまで行動できないイライラ・イニシアチブロール」
「行動宣言から行動実行までのタイムラグがあるイライラ・行動順番ルール」は、
きれいさっぱり姿を消しました。どうもイライラ方式は評判が悪かったようです。
まあ、確かに、実際にプレイしてみるとかなり辛いものがありましたからねぇ。
代わりに、各ラウンドの最初に全員が「反射速度」能力値によるSGS判定を行
って、得られた達成値によって行動順番を決める方式になりました。たとえ判定に
失敗しても、各ラウンドに最低1回は行動できます。さらに、達成値が高いと、複
数回行動が可能となります。ここら辺、「シャドウラン」みたいですね。
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さらに、第1版のもう1つの特徴だった「全身を21箇所に分けて、弾一発毎に
命中部位を決める詳細な負傷部位ルール」「色々な意味で吐き気を催す痛打表」も
また、大方の予想通り、消えてしまいました。
第2版では、ここら辺が大幅に簡略化されました。攻撃が命中したら、武器のダ
メージ値から防御値などを引いた値を目標値として、SGSで判定します。成功ダ
イス個数がそのまま負傷レベルになります。負傷レベルにより様々な(不利な)修
正がついてきますが、ここら辺も、「シャドウラン」に似ています。
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キャラクター作成ルールですが、新たに「アーキタイプ」によるジャンプスター
トが可能になりました。各「アーキタイプ」は、能力値、スキル、生体改造、所持
品からイラストまで付いた完成品であり、そのままプレイに使えます。第2版ルー
ルブックで提供されているアーキタイプは9種類。ブッシュパイロット(リガーだ
と思えばよい)、イルカの技術者(エルフデッカーだと思えばよい)、ギャングス
ター(ギャングメンバーだと思えばよい)、GEOショックトルーパー(ストリー
トサムライだと思えばよい)、オルカの兵士(マーセナリーだと思えばよい)など。
いまさらですが、「シャドウラン」みたいです。
通常のキャラクター作成ルールの最も大きな変更点は、「パワーレベル」の導入
でしょう。これは、キャラクターがどのくらい非凡(有能)であるかを示す尺度で、
習得できるスキルや生体改造にはっきりとした制限を与えます。
言うまでもなく、第1版のキャラクター作成ルールにおいて、スキル習得や生体
改造に何の制限も与えなかった(プレーヤーとGMで相談して自主的に制限を設け
ることにしていた)ことが、色々なトラブルを引き起こしたのでしょう。どうやら
デザイナーも「RPGプレーヤーの良識や分別に期待してはならない」という鉄則
を学んだようです。
馬場秀和
(続く)