ブループラネット移民ガイド
第2部「ポセイドン・アドベンチャー」


ブループラネット移民ガイド 第2部「ポセイドン・アドベンチャー」

・キャラクター作成の概要

 では、ブループラネット第1版のルールシステムについて詳しく見てゆくことに
しましょう。

  備考)以降で解説するルールシステムは、全て第1版のものです。新しくなっ
     た第2版のルールシステムについては、「移民ガイド第3部」で解説す
     る予定です。ご期待下さい。

 まずブループラネットにおけるキャラクター作成について説明します。キャラク
ター作成は、おおよそ次の手順で行われます。

[ステップ1:キャラクターテンプレートの選択]

 まず作成するキャラクターの「種族」と「職業」を選択します。例えば「海棲人
のポセイドン原住民」「原種人のパイロット」「イルカの学者」「オルカの警備員」
といった具合です。

 基本ルールブックでは、種族が基本5種+人類亜種6種と、職業が40種類も定義
されているので、これらを組み合わせることで数百種類ものテンプレートが提供さ
れることになります。

 テンプレートを選択するだけで、能力値、スキル、年収、基本的な持ち物、特殊
能力といったものが自動的に決まります。NPCの場合、これでもうキャラクター
作成は完了です。

[ステップ2:プロファイル]

 キャラクターの過去や内面などの様々な特徴を決めていきます。

 具体的には「出身」「背景」「教育」「目標」「動機」「態度」の各項目につい
て、ルールブックに載っている選択肢からそれぞれ1つづつ選択します。各項目の
選択肢を選ぶ度に、能力値やスキルにボーナスやペナルティが与えられます。

 後は、まあ身長とか体重とか皮膚の色などは任意に決めて下さい。そうそう名前
も決めなければなりません。

[ステップ3:バイオモッド(生体改造)]

 ブループラネットの舞台となる2199年の世界では、サイバーテクノロジーや遺伝
子工学の進歩により、人為的な身体の強化/拡張がごく一般的に行われています。
このステップでは、様々なサイバーウェア、バイオウェアによりキャラクターの身
体を改造します。合法的な改造もあれば・・・そう、ばりばりに違法改造するのも
ありです。

**

 このルールで、例えば次のようなキャラクターを作ることが出来ます。

[キャラクター例その1]

  ・テンプレート:原種人の考古学者
  ・出身:GEO関係者
  ・背景:コスモポリタン
  ・教育:大学
  ・目標:発見
  ・動機:冒険
  ・態度:活発
  ・バイオモッド:なし

  GEOの学術調査チームの一員としてポセイドンに赴任してきた若くハンサム
  な考古学の助教授。謎の「ポセイドン超古代文明」の秘密を解き明かすために
  海底から熱帯ジャングルまでどこであろうと調査に出向いては、冒険に明け暮
  れる日々を送る。


[キャラクター例その2]

  ・テンプレート:生体改造人のマーシャル(保安官)
  ・出身:巨大企業関係者
  ・背景:悲劇
  ・教育:職業訓練(警官)
  ・目標:正義
  ・動機:強迫観念
  ・態度:内省的
  ・バイオモッド:内蔵コンピュータ(補助電脳)、赤外線センサ(サイバー強
          化視覚)、ニューラルジャック(神経電気系接合端子)、
          神経加速処置、自動照準システム(ターゲッティング・イン
          ターリンク)、人格改変プログラム(マインド・ジョブ)、
          人為反射(プログラムド・リフレックス):自分に対し攻撃
          しようとする相手を自動的に撃つ

  犯罪組織によって虐殺された企業州の雇用警官。だが彼は巨大企業の最先端バ
  イオテクノロジーの力によりサイボーグとして蘇り、マーシャルとして犯罪に
  戦いを挑むのであった。

[キャラクター例その3]

  ・テンプレート:海棲人のポセイドン原住民
  ・出身:原住民集落
  ・背景:保護
  ・教育:なし
  ・目標:愛
  ・動機:好奇
  ・態度:楽観
  ・バイオモッド:海棲人(人工エラ、水かき、抗塩分、エコーロケーション
          (音響知覚)、抗毒

  彼女は原住民の集落を統べるリーダーの娘として生まれ、一族から大切に育て
  られてきました。ところが、ひょんなことから出会った巨大企業の若い御曹司
  に一目惚れしてしまって、さあ大変。集落の掟を破って彼がいる企業州の海上
  浮遊都市へ向かった彼女は、果たして彼のハートを射止めることが出来るでし
  ょうか?

**

 ブループラネットのキャラクター作成ルールを使うと、非常にバラエティに富む
キャラクターを作成できます。しかし、気をつけなければならない点も沢山ありま
す。

 まず、ブループラネットのキャラクター作成は各項目について次々に選択肢を選
んでいく方式ですが、選択肢が実に多い上に、選んだ選択肢が自動的に整合するよ
うな仕掛けは用意されていません。つまり、その場その場の思いつきで選択肢を選
んでいくと、特徴がバラバラで整合性のないわけわからんキャラクターが出来てし
まいます。

 ですから、キャラクター作成に入る前に、まずキャラクターのイメージをはっき
りと確定することが大切です。そして、そのイメージに沿って選択肢を選んでいけ
ば、きっとイメージに近い整合性のとれたキャラクターが出来ることでしょう。

**

 次に、ブループラネットのルールは(なにしろハードSFですから)リアリティ
重視、シミュレーション性重視になっています。これは戦闘ルールも同様で、拳銃
の弾丸でさえ、当たり所が悪ければ一発で死ぬというバランスです。ヒーローポイ
ントのような仕掛けもありません。(ブループラネットの戦闘バランスは、PCが
弱いことで有名な「クラシック・トラベラー」と同程度だと思って下さい)

 ですから、熱血ヒーローなキャラクターを作っても「スターウォーズ」な活躍が
できるとは限りませんし、サイバー戦闘力強化キャラクターを作っても「シャドウ
ラン」な戦闘が出来るとは限りません。っていうか、出来ません。

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 さらに、ブループラネットのキャラクター作成ルールには、ルール的な意味での
「ゲームバランスに関する配慮」が全くと言ってよいほどありません。早い話が、
バイオモッドをいくつ採用してどれだけ強化/改造しようと、ルール上は何の制限
もないのです。

 戦闘力が弱いキャラクターは、代わりに魔法か何か特殊能力が使えるかというと、
そういうこともありません。「どのテンプレートにもルール面で長所と短所があり、
どれを選んでもルール的に不利にならないようバランスがとられている」というこ
とは、ぜんぜん全くてんでないのです。弱いキャラクターは単に弱く、無能なキャ
ラクターは単に無能なだけです。

 ですから、ゲームバランスをとるためには、GMとプレーヤーが全面的に協力す
る必要があります。ルール的な有利不利だけにこだわるプレーヤーや、各キャラク
ターをバランスよく活躍させようとしないGMがいれば、ブループラネットのシス
テムは破綻します。

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 ブループラネットのルールには、他のプレーヤーよりもルール的に有利なキャラ
クターを作ろうとするプレーヤーがいた場合には、「背景設定からそれなりのデメ
リットや制限が生じるようにして、プレーヤーがそれを守るように約束させて下さ
い。GMとプレーヤーが協力してうまく考えれば、ゲームバランスを崩すことなく、
興味深いキャラクターを作ることが出来るはずです」と書いてあります。

 つまり、ブループラネットは「ゲームバランスはルールが強制するものではなく
GMとプレーヤーが協力して守るもの」という思想に基づいてデザインされている
のです。これを忘れないで下さい。


・キャラクターの種族(1)

[ステップ1:キャラクターテンプレートの選択]

 ブループラネットにおけるキャラクター作成は、種族の選択から始まります。
 とにかく、あなたのキャラクターがイルカなのか人間なのかくらい最初に決めま
しょう。

 種族は次のように分類されています。・をつけた10項目が選択の対象となります。

    クジラ類

      ・イルカ(フィン、フリッパー)
      ・オルカ(キラーホエール)

    人類

      ・原種人(チンプ、ダーウィン、モンキー)

      ・生体改造人(モジ、バグ)

       遺伝子改造人(ジーニー)

          海棲人(アクアフォーム)

            ・ダイバー
            ・スクイド

          獣人(ハイブリッド)

            ・猿人(ジルバ)
            ・猫人(キャッツ)

         ・宇宙人(スペーサー)

         ・優生人(トランスヒューマン)

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 種族を選ぶと、能力の基本値(初期値)の多くが決まります。ブループラネット
では、次の14種類の能力値が使われます。

 知覚(Awareness) 、魅力(Charisma)、教養(Education) 、経験(Experience)、

 イニシアチブ(Initiative)、知力(Intellect) 、根性(Will)、敏捷(Agility) 、

 外観(Appearance)、頑強(Constitution)、器用(Dexterity) 、体力(Endurance) 、

 速度(Speed) 、筋力(Strength)

 ちなみに、原種人における能力の基本値は(教養と経験を除いて)全て50です。

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 では、種族について解説してゆきます。

 まず、クジラ類の2種族、イルカとオルカについては特に改めて解説する必要は
ないでしょう。いずれも遺伝子工学により「知性化」された海棲哺乳類です。
(詳しくは「ブループラネット移民ガイド:第1部」をご覧下さい)

 クジラ類は、人類にはない特殊な知覚力を持っています。例えば、音響知覚(エ
コーロケーション)、環境知覚、天候知覚、海中ナビゲーション、動物共感能力と
いったものです。

 さらに、クジラ類が人類より有利な点として、わざわざ武器を購入しなくても、
身体的武器が使えるということがあります。具体的には「噛みつき」「突撃」の2
つが可能です。これは馬鹿にしたものではありません。水中におけるイルカの噛み
つきや突撃は、小口径のピストルに相当するダメージを与えるのです。もちろん、
弾切れすることはありません。

 クジラ類が人類より不利な点は、もちろん陸上ではほとんど行動できないという
ことです。ですから、クジラ類のキャラクターを作成するときは、必ずGMに確認
してからにして下さい。

 もし、シナリオが陸上シーンばかりで構成されている場合には、あなたのキャラ
クターは遠隔操縦ロボットを使って間接的に冒険に参加するしかありません。これ
は、やや退屈かも知れません。(ただし、こういう戦闘というのも、「ジョジョの
奇妙な冒険」でいう遠隔操作型スタンドで戦うようなもので、それはそれで味があ
るかも知れませんが)

**

 もしあなたがブループラネットに慣れていないのであれば、クジラ類のキャラク
ターはお勧めできません。他の陸上系キャラクターとの協調活動が難しいからです。
また、クジラ類を選ぶとしても、GMから特に指示がない限り、オルカのキャラク
ターは避けた方が無難です。

 というのも、オルカは知力が低く、不器用で、衝動的・本能的に行動するくせに、
一度行動(特に攻撃)を決めるとダメージを受けようが状況が変わろうがその行動
に執着するという、ひどくやっかいな性質を持っている上、信じがたいほどの体力
(戦闘力)を持っているので、PCとして扱うのは非常に困難だからです。よほど
のベテランプレーヤーでない限り、バトルメックかジャイアントロボになってしま
うでしょう。(むろん、PC達に襲いかかる強敵NPCとしてオルカは理想的です)

**

 原種人というのは、遺伝子に何ら人為的な操作を加えられることなく生まれ、し
かも後天的な生体改造を受けてない「自然な」人類のことです。

 エルフやドワーフといった亜人類が登場するファンタジーRPGでは、多くの場
合「人類」は平均的で無難な選択となります。ところが、ブループラネットにおい
て原種人を選ぶというのは、かなり不利で挑戦的な選択なのです。

 これはなぜかと言うと、ブループラネットの背景となっている2199年の世界では
生体改造(バイオモッド)はごく一般的に普及した(安全で安価な)技術となって
いるからです。つまり、2199年の世界であえて生体改造しない道を選ぶというのは
今日の感覚で言うなら一切の医療技術に頼らない(健康診断も予防接種も受けず、
薬も飲まない。手術や輸血は拒否する)という生き方に相当するのです。

**

 原種人を選ぶ際には、ちゃんとした理由が必要です。ただ何となく生体改造を受
けない人などいません。特に、ポセイドンのような危険で厳しい世界への移民者で
あれば、原種人であることを選ぶということは命懸けの挑戦だということを理解し
て下さい。

 原種人たる「ちゃんとした理由」としては、ほとんどが宗教または経済となりま
す。(ごくわずかな例外として、何らかの研究、実験の対象という場合があります)

「宗教の教義で生体改造を認めてないから」というのは、原種人であることの最も
一般的な理由です。特定の宗教でなくても、「人間はあるがままの自然な姿でいる
べきなのだ」とかいった個人的な信念で原種人を選ぶのもいいでしょう。

 経済上の理由というのは、貧乏で生体改造を受けることが出来なかったとか、よ
ほどの未開地(あるいは無法地帯)で生まれ育ったため生体改造を受けるチャンス
がなかった、というケースです。

**

 原種人も、ブループラネットに慣れた人にしかお勧めできません。理由は明白で
しょう。ただし、原種人にもメリットが1つだけあります。キャラクター作成が早
く終わるということです。(バイオモッドを選択しなくてよいので)

 ですから、NPCを素早く作成したいGM、短時間でキャラクター作成を終わら
せて初心者プレーヤーのキャラクター作成を手伝おうというベテランプレーヤーが
現種人を選ぶというのは1つの手です。

**

 生体改造人は、遺伝子に何ら人為的な操作を加えられることなく生まれたものの、
後天的な生体改造を受けた人類のことです。

 生体改造(バイオモッド)には2種類の技術が使われます。

 1つはサイバネティクスで、ニューラルジャック(神経電子系接合端子)、感覚
レコーダ、赤外線センサ、ターゲティング・インターリンク(自動照準)といった
各種のサイバーウェアを身体に埋め込んで、神経系と電子系の融合システムをつく
り出す技術です。いわゆるサイボーグ手術というやつですね。

 2199年のサイバネティクスは完成の域に達しています。実際、2199年の一般的な
感覚では、遺伝子操作は「ホットでかつ不気味な最先端テクノロジー」ですが、サ
イバー手術は「ローテクな感じの親しみ深い技術」なのです。

 何を言っているかというと、いくらサイバー化しても何のペナルティもないとい
うことです。エッセンスが下がることもありませんし、サイバーウェアが不調を起
こすということも(ルール上は)ありません。海に潜っても錆びたりしませんから
ご安心。世間からの偏見もないし、そもそも何ら特別なことでもありません。サイ
バーウェアによる身体改造は、今日の世界で言えば、入れ歯、カツラ、コンタクト
レンズ、ピアスといったものに相当するのです。

**

 生体改造(バイオモッド)のもう1つの技術は、バイオテクノロジー、特に遺伝
子操作です。こちらは、しばらく前まで非常に高価で手間のかかる技術だったため
一般にはあまり普及してなかったのですが、ポセイドンでロング・ジョンが発見さ
れてからというもの、劇的にコストが下がり、爆発的に発展、普及しました。
(詳しくは「ブループラネット移民ガイド:第1部」をご覧下さい)

 バイオテクノロジーは人間の身体そのものを改変します。2199年においては、顔、
皮膚の色、身長、体重、そして性別まで、全て人為的に改変することが出来ます。
(ただし、そうは言っても、遺伝子操作はまだまだ高価で時間のかかる技術なので
気楽にほいほい出来るものではありませんが)

 だが、遺伝子操作の真価は、人間の生理的機能を改変できるということでしょう。
筋肉の強化、視覚や聴覚のパワーアップ、必要睡眠時間の短縮、心肺機能の増強、
神経加速といった量的な改変だけでなく、例えば音響知覚(エコーロケーション)、
毒素中和能力、塩分耐性、人工免疫系、負傷治癒アメーバといった新しい生理的機
能を実現する技術が次々に開発されているのです。

**

 生体改造人は、もっとも有利でしかも無難な選択です。初めてブループラネット
をプレイするときは、これを選ぶとよいでしょう。

 ただし、バイオモッドを選ぶ際には、GMとよく相談して下さい。なにしろルー
ル上の制限は全くないので、やろうと思えばありとあらゆるバイオモッドを選択し
てキャラクターの身体をぐちゃぐちゃに加工できるのです。が、あまりにも過剰な
バイオモッドを施すと、シナリオがうまく機能しなかったり、ゲームとしてつまら
ないものになる恐れがあるのです。

 GMは、必ず事前にバイオモッドの制限を考えておいて下さい。特にブループラ
ネットに慣れてない初心者を相手にするときは、バイオモッドの選択範囲を絞り、
かつ選択できるバイオモッドの個数を制限した方がよいでしょう。


・キャラクターの種族(2)

[ステップ1:キャラクターテンプレートの選択]

 さて、キャラクター種族の選択についての解説を続けましょう。

 前回は、クジラ類(イルカ、オルカ)および原種人、生体改造人について説明し
ました。今回のテーマは、遺伝子改造人(ジーニー)です。

**

 遺伝子工学の急速な発展は、前回説明した生体改造(バイオモッド)による肉体
の部分的な強化や機能追加だけでなく、細胞分裂を開始する前の受精卵の遺伝コー
ドに対して人為的に手を加えることで、肉体構成や生理機能を根本的に変更拡張し
た亜人類を創り出すことを可能にしました。

 このようにして、人為的にデザインされた遺伝子を持つ新しい「種族」として生
まれてきた亜人類たちは、一般に遺伝子改造人「ジーニー」と呼ばれます。

 ただし、出産から成長、生殖、老化に至るまで正常に機能し、その特徴が世代を
越え安定して受け継がれるという意味での「種族」をデザインするのは容易なこと
ではありません。それは長年に渡る研究期間、大量の人員、そして莫大な予算を必
要とする大型プロジェクトになります。

 初期の頃は、遺伝子改造人の1種族を創り出す計画は、国家プロジェクトとして
進められました。現在でも、新たな遺伝子改造人の創出に取り組むことが出来るの
は、真に優れた技術と潤沢な研究費、長期的な大型プロジェクトを支えられる安定
した経営状態を保つ一握りの巨大企業だけです。

**

 以下に、プレーヤーキャラクターの種族として選択できる範囲を示します。・印
がついている項目が選択範囲です。

       遺伝子改造人(ジーニー)

          海棲人(アクアフォーム)

            ・ダイバー
            ・スクイド

          獣人(ハイブリッド)

            ・猿人(ジルバ)
            ・猫人(キャッツ)

         ・宇宙人(スペーサー)

         ・優生人(トランスヒューマン)

**

 まず、海棲人(アクアフォーム)については既に説明しました。海棲人のキャラ
クターを作るのであれば、「ダイバー」か「スクイド」かを決めて下さい。
(詳しくは「ブループラネット移民ガイド:第1部」をご覧下さい)

 ポセイドンの「原住民」は、全員が海棲人です。ですからブループラネットのシ
ナリオにもっともよく登場する遺伝子改造人は、海棲人ということになります。

 海棲人は、というより原住民は、初心者にもお勧めできます。何と言っても水陸
両用ですから、陸上シーンでも海中シーンでも活躍できますし、それに立場が明確
(ポセイドンは我々の世界だ。自然環境を破壊しようとする巨大企業は出て行け。
GEOは我々の味方のふりをしているが、しょせん新参者だ信用できるものか)で、
ロールプレイも容易なのです。

 もちろん「原住民」だからといって、未開の集落で魚釣りばかりしているとは限
りません。資格を取って働いている者だっていますし、新参者と結婚して都会に住
んでいる者だっています。エコテロリストやゲリラ兵となって巨大企業の傭兵部隊
と戦う者も、スラム街に身を沈め麻薬に耽る毎日をおくる者だっています。彼らに
共通しているのは、たった1つ。それは「自分たちこそが真の意味でポセイドンの
住民なのだ」という認識なのです。

**

 獣人(ハイブリッド)は、最も初期の遺伝子改変計画から生れた種族で、その起
源は、2065年に米国・独国・バイオジーン社が共同で進めていた極秘プロジェクト
にまでさかのぼります。その極秘プロジェクトとは、遺伝子を改変することで超人
的な戦闘力を持つ無敵の兵士を創り出そうというものでした。

 当時の技術では遺伝子コードを完全に人為的に作ることは難しかったので、代わ
りに、人類の遺伝子に他の哺乳類の遺伝子を混入させるという手法が採られました。

 結果的に2つのサンプルが成功しました。1つは、大型類人猿の遺伝子をかけ合
わせることで出来た、超人的な筋力と体力を持った亜人類「ジルバ」"Silva" です。
もう1つは、猫族の遺伝子をかけ合わせることで出来た、驚異的な敏捷力と反射神
経を持つ亜人類「キャッツ」"Cats"です。

**

 彼らは優れた戦闘力を持っていましたが、当初の予定のように「その他の特徴は
人類と同じ」というわけにはいきませんでした。彼らは色盲に近く、手先が不器用
で、言葉をうまく話すことが出来なかったのです。そして、何より困ったことに、
彼らの外見には猿や猫の特徴(例えばジルバの体毛や体格、キャッツの瞳や爪)が
色濃く表れており、誰が見ても一目で亜人類だと分かるのでした。そして不幸なこ
とに、普通の人類の美的感覚からすると、彼らの姿は決して美しくは思えないもの
だったのです。

 彼らは、自分たちの創造者を憎み、そして反乱を起こしました。極秘プロジェク
トの内容は世間の知るところとなり、猛烈な批判が起こりました。計画は頓挫し、
政治家は互いに責任を押しつけ合って右往左往しました。最終的にハイブリッド達
には独立居住区が与えられ、世間は彼らの存在を忘れようとしたのです。

**

 多くの人類は、ハイブリッド達に強い偏見と嫌悪感を持ちました。彼らを「獣と
人の”あいのこ”」だと恐れ蔑み、少なくとも精神的には彼らも普通の人類と何ら
変わりないということについて深く考えようとしませんでした。人々はハイブリッ
ドの居住区を忌み嫌い、彼らとの交流を拒みました。ハイブリッド達は孤立したの
です。

 ポセイドンとの再コンタクトに成功したというニュースにより、彼らは新世界へ
の移住に希望を見いだしました。GEOのサポートで、地球にいたハイブリッド約
6000人は、ポセイドンへ移住しました。(現在では人口は約2倍に増えています)

 ポセイドンは、彼らにとって安住の地となりました。ここでも偏見や蔑視がない
わけではありませんが、ポセイドンでは原住民を始めとして遺伝子改造人は珍しく
ないため、地球に比べればそれはずっとましでした。そして、辺境の植民地におい
てはハイブリッド達の肉体的パワー、戦闘力は非常に貴重なものとなりました。そ
ういうわけで、この辺境の地において、ついに彼らは社会に受け入れられたのです。

**

 獣人(ハイブリッド)は、うまくロールプレイすると印象的なキャラクターにす
ることが出来ますが、慣れないプレーヤーだと単なる戦闘員になってしまいがちで
す。しかも格闘戦では大活躍できますが、銃撃戦だと出番がないでしょう。(彼ら
は手先が不器用なので銃器をうまく扱えないのです)

 それと、ハイブリッドには、どうしても人種差別問題が付きまとうので、GMと
プレーヤーは協力してこれを積極的に活かすように努めてもらう必要があります。

 結果としては、初心者にはあまりハイブリッドはお勧めできません。どうしても
ハイブリッドをやりたいプレーヤーがいた場合には、GMは他のPCとの関係や、
社会的偏見(人種差別)をシナリオに折り込むように工夫してみて下さい。

**

 人類が進化してきた世界とは異なる環境に適応するために創り出された遺伝子改
造人は、海棲人だけではありません。2102年、月面居住区の協力の元に火星植民地
政府が火星と木星の間に広がるアステロイドベルト(小惑星帯)への植民のために
創り出した種族、それが宇宙人(スペーサー)です。

 宇宙人は、無重力環境に適応した亜人類です。彼らは無重力下で何十年も過ごし
ても、骨格や内蔵に問題が生じません。さらに放射線に対する耐性、高温や低温に
対する耐性も大幅に強化されています。何よりも彼らの足は、原種人の手と同じよ
うに器用に物をつかみ、身体を支えたり細かい作業を行ったりすることが出来るよ
うになっているのです。彼らには手足が2本づつあるというよりは、手が4本ある
といった方が実態に近いでしょう。

 お分かりの通り、彼らは無重力あるいはそれに近い環境である宇宙基地、宇宙船、
小惑星植民地を故郷とする種族です。上下の区別がなく、あらゆる壁面に機器が取
り付けられた空間。そこを縦横無尽に飛び回りながら、同時に4本の手を使って極
めて効率的に作業を行う宇宙人たちにとってみれば、重力に縛られた惑星環境など
牢獄に等しいように感じられるのです。

**

 宇宙人(スペーサー)は、PCとしてはお勧めできません。理由は明らかでしょ
う。ポセイドンは、自転により人工的に重力を作りだしているプロスペリティ・ス
テーション(ポセイドン軌道ステーション)を含めて、全て有重力環境にあります。
ですから、大抵のシナリオは有重力環境で進められることになります。そして、宇
宙人にとって重力は不快なものなのです。

 無重力環境(航行中の宇宙船内、ヘビ座ラムダ恒星系の衛星や小惑星など)が主
な舞台となるシナリオであれば、GMと相談して宇宙人をPCとして使ってもよい
かも知れません。

**

 21世紀には、遺伝子工学の発達によって遺伝病は克服されました。出産前に胎児
の遺伝子を検査し、必要に応じて遺伝病を引き起こす遺伝因子を取り除くというこ
とが、ごく普通に行われるようになったのです。

 豊かな社会階層に属する人々は、さらにその先を望みました。生れてくる(そし
て自分の事業や家系を継がせることになる)わが子の遺伝子から、成人病にかかり
やすい体質、癌にかかる確率を高める危険因子、精神疾患の元になる遺伝情報、若
年ボケ、「特殊な」性嗜好、その他その他の「不利な」遺伝情報を取り除くことを
期待したのです。

 金持ちたちは、わが子を(庶民の子に比べて)肉体的、精神的に「優れた」人間
にするためなら、投資を惜しみませんでした。そして、この巨額の利益を生む需要
を企業が無視するはずはありません。

 こうして、2074年にラベンダー・オーガニクス社(Lavender Organics) が最初の
優生人(トランスヒューマン)を創り出しました。彼らは「アルファ」と呼ばれま
した。

**

 アルファ達は、外見上は(極めて健康的で美しいという点を別にすれば)普通の
人類と見分けがつきませんし、原種人との間に子供を作ることができるという点で
も、生物学的には人類と同じ種に属すると言えます。

 しかし、彼らは決して伝染病にかかりません。癌から虫歯まで、彼らはあらゆる
疾病から逃れることが出来るのです。負傷しても通常の2倍の早さで治癒し、決し
て傷跡が残りません。彼らは1日に数時間の睡眠で完全に健康を保つことができる
のです。

 さらに彼らは例外なく美男美女で、知能指数が高く、魅力的で、精神的に安定し
ており、肉体的に健康で頑強です。彼らの平均年齢は120 歳に達し、適切な医療手
当てを受けていれば160 歳まで生きることが出来ます。

 類人猿と人類が異なる種だというのと近い意味で、彼らは原種人とは異なる種族
だと言ってよいでしょう。

**

 アルファには次々と改良が加えられ、バリェーションが広がりました。これらの
技術により生まれる遺伝的に改良された人間は、優生人(トランスヒューマン)と
呼ばれます。

 わが子を優生人にするためには、莫大な費用がかかります。ですから、一部の本
当に裕福な金持ちか、権力者しか、この技術の恩恵を受けることは出来ません。
当然のことながら、金持ちや権力者が「優れた子供を金で買う」風潮に対する世間
の風当たりは強いものがあります。それでも、自分の財産でわが子の健康と幸福と
長寿が買えると知っていて、その誘惑を退けることが出来る親がいるでしょうか。

**

 ついでながら、「ロング・ジョン」の発見は、この風潮をさらに加速することに
なりました。親から、財産や権力と共に、改良された遺伝子を与えられた優生人た
ちは、定期的に抗老化セラピーを受けることで不老不死まで手に入れたのです。

 既に財産や権力を余るほど手にし、支配階級にある人々が、生まれながらにして
優生人であり、しかも不老不死だとすれば、いったい社会はどうなってしまうので
しょうか。権力者は、貧しい人々、虐げられた人々、自分の欠点に苦しむ人々、健
康を望んでも手に入れられない人々、そして志なかばにしてこの世を去らなければ
ならない人々に対して共感できるのでしょうか?

**

 正直に言って、優生人をPCとして選ぶことをお勧めしたくありません。設定の
面からも、ゲームデータの面からも、優先人にはメリットだけがあり、デメリット
はありません。これでは不公平というものでしょう。(私には、プレーヤー全員が
「ボクのキャラクターは優生人で、しかも生体改造して強化してるんだよ。あと、
オルカの親友がいるんだ」と言い出す光景が見えるようです・・・)

 ですから、もし自分のPCを優生人にしたいというプレーヤーがいれば、GMは
よく話し合って下さい。単に「有利だから」優生人を選んでいるのであれば、説得
して止めさせましょう。「エリートとして生れたことで苦悩するキャラクター」と
か、「親のあとを継ぐのが嫌で、家出して正体を隠し原住民の集落で働いている巨
大企業の御曹司」とか、自分の能力を封じるような設定を作って、興味深いロール
プレイに挑戦するというのであれば、そうですね、やらせてみてもいいでしょう。


・キャラクターの職業(1)

[ステップ1:キャラクターテンプレートの選択]

 前回までの説明で、キャラクターの「種族」についてはご理解して頂けたものと
思います。今回は、キャラクターテンプレートを構成するもう1つの情報、すなわ
ちキャラクターの「職業」について解説します。

**

 ミステリー小説のカバー折り返しなどに、よく「登場人物」リストが付いていま
すね。これを見ると、登場人物の名前と共に、大抵の場合「刑事」とか「作家」と
かいった具合に、その人物の「職業」が書かれています。

 これは「職業」が決まれば、だいたいその人物の基本的なイメージが分かるから
です。いわゆる職業的ステレオタイプという奴です。

 例えば、あるパーティ会場で「古本屋の老店主」「スポーツ選手」「コンピュー
タ技術者」「凄腕弁護士」「新米警官」「清純派アイドル」の6人が出会った、と
言えば、だいたい彼らの(ステレオタイプな)イメージが頭に思い浮かぶことでし
ょう。また、たまたま彼らが一緒にいるパーティ会場で何か事件(例えば殺人)が
起こったときに、彼らがそれぞれどのような反応を示すかという点についても、イ
メージできるに違いありません。

 このように、「職業」を決めることで、キャラクターの基本的なイメージが固め
易くなるのです。そのイメージに沿ってキャラクターを作るのも良いですし、逆に
それを裏切って予想外のキャラクター、意表をついた性格にすることもまた良いで
しょう。

 いずれにせよ、ブループラネットのキャラクター作成では、キャラクターの種族
を決めた後に、「職業」を選んで下さい。この2つの情報を選ぶことにより、キャ
ラクターテンプレートが定まり、能力値やスキルといった基本的なデータが確定す
るのです。(そしてキャラクターがNPCの場合、これだけでキャラクター作成は
基本的に完了です)

**

 ブループラネットの基本ルールでは、50を越える「職業」が定義されています。
職業を選ぶと、次のような情報が自動的に決まります。

  ・背景(Background)

    ブループラネット世界においてその職業が果たしている役割の説明です。
    これを読めば、社会におけるキャラクターの位置づけが明確になることで
    しょう。

  ・スキルグループとスキル(Skill Groups and Skills)

    各職業の定義では、スキルグループと個別スキルについて、それぞれ値が
    示されます。

  ・生活水準(Standard of Living)

    各職業に就くチャンスがどれくらいあるか、その職業に就いたときのライ
    フスタイル、そして平均的な収入といった説明です。

  ・リソース(Resources)

    各職業に就くことで得られる人脈、情報、物資などの説明です。

  ・長所と短所(Edge)

    各職業に就くことで得られるメリット、デメリットの説明です。


 では、キャラクターが就くことの出来る職業について、ごく簡単に紹介してゆき
ましょう。

**

[民間パイロット](Civilian Pilot)

 個人で航空輸送サービス会社を提供しているパイロットです。会社といっても、
たいていは小さな格納庫と愛機、それに整備員と事務員が1名づつといった規模の
零細企業です。仕事は、お客の依頼とあらば危険な地域にでも迅速に荷物や旅客を
届けるということになります。

 民間パイロットのテンプレートは、技術系を中心に幅広く豊富なスキルを得るこ
とができるし、また他のキャラクターと行動を共にするのも楽(他のキャラクター
は旅客)なので、初心者にもお勧めです。


[ガイド](Guide)

 研究者、レスキュー隊員、探査チーム、冒険者、ハンターといった人々をポセイ
ドンの未開地域につれてゆき、そして生還させるのが仕事です。ポセイドンの未開
地域というのは、本当に危険な場所です。そこに何度も出かけていく仕事ですから
単に勇敢なだけでは務まりません。担当地域に関する深い知識や、原住民や他のガ
イドとのコネがないと、長く生き延びることは出来ないでしょう。

 ガイドは、野外活動のベテランです。地質学や気象学、動物学といった知識系の
スキルが豊富にとれる上に、学者系と違って戦闘力もそこそこあるので、野外を舞
台とするシナリオでは大活躍できるでしょう。このテンプレートを使いたいときは
GMに野外シナリオかどうか確認してみましょう。野外がメインとなるシナリオで
あれば、初心者にもお勧めです。

[巨大企業パイロット](Incorporate Pilot)

 巨大企業に雇われているパイロットです。民間パイロットに比べて高収入である
上、最高級の航空機を飛ばすことが出来ます。反面、フライトは全て企業からの指
示に従わなければならず、勝手に飛ぶことは許されません。

 民間パイロットと違って、個人の自由で勝手に航空機を飛ばすことは出来ないの
で、企業パイロットはあまりPCには向いてないかも知れません。PC達のパーテ
ィが巨大企業から請け負った仕事で現地に移動するときに、航空機を飛ばしてくれ
るNPCパイロット、というのがこのテンプレートの最もよくある使い方でしょう。

[水上船乗組員](Sailor)

 緊急時には航空機が使われるものの、ポセイドンにおける貨物や旅客の大半は、
水上船舶で輸送されます。水上船乗組員(要するに水夫、船乗りです)の生活とは、
貨物船、旅客船、軍艦に乗って港から港へ移動を続けることです。

 水上船乗組員も活躍の場が限定される(船上、あるいは港の周辺)職業なので、
初心者には向いてないかも知れません。このテンプレートを使いたいときは、GM
に相談してみましょう。

[宇宙船乗組員](Spacer)

 ポセイドンと地球、あるいはその他の惑星やアステロイドベルトの間で運行され
る宇宙船の乗組員です。

 この職業につくと色々と珍しいスキル(無重力とか環境工学とか天文学とか)を
得ることが出来るのですが、さすがにポセイドンの地表ではあまり役に立たないこ
とでしょう。お勧めできません。

[開拓者](Pioneer)

 ポセイドンへの植民者(新参者)です。辺境の集落に住んで、農耕や牧畜などに
従事し、自給自足の生活をしています。
 この職業は地味ですが、何しろ自給自足の生活なので大量のスキル(修理、応急
手当てから獣医学まで)を得ることが出来ます。もちろんローテクなものに限られ
ますが。

 そういうわけで、パーティに開拓者が1人含まれていると、野外シーンで何かと
重宝されるに違い有りません。初心者にもお勧めですが、ただし都会が舞台になる
とたちまち「田舎者」「お上りさん」になってしまうことを覚悟しておいて下さい。

[貿易商人](Trader)

 ポセイドンに点在する集落間で商品をやりとりして利益を稼ぐ商人です。贈賄と
か口車、兵站学(物流学)といったスキルがたんと手に入ります。

 幸運ロールに成功すると「たまたま必要なアイテムを持っていた(倉庫に積んで
ある商品に含まれていた)ことになる」という特殊能力が強力です。パーティに1
人いると皆からドラエモンと呼ばれ重宝されることでしょう。採算重視、利益重視
の姿勢はロールプレイもやり易く、初心者にもお勧め。ただし戦闘に参加するのは
止めた方がいいでしょう。

[エコテロリスト](Ecoterrorist)

 「ポセイドンの環境を守るためには、暴力や破壊も辞さない」というテロリスト
グループのメンバー、あるいは一匹狼のテロリストです。爆破、重火器、ハッキン
グといった派手なスキルがごっそり手に入ります。

 エコテロリストの行動はもちろん非合法ですが、原住民を始めとして巨大企業の
環境破壊に恨みや反感を持つ人々は、エコテロリストの活動に内心で共感を覚える
ことが多いのです。人を殺したり傷つけたりしない限り、その活動(巨大企業の環
境破壊に対するサボタージュなど)を密かに支援してくれる人や団体がいることで
しょう。

 このテンプレートに限らず、犯罪者のテンプレートを使うときには、GMと相談
して下さい。その上で、他のキャラクターとどうやって行動を共にするかを決める
必要があります。

[海賊](Freebooter)

 ポセイドンにおける海賊は、単なるならず者の集団です。輸送船や旅客船を襲っ
て船荷を奪い、乗員や旅客は殺してしまいます。人質にとったとしても、食わして
おくのが大変な上、身代金の受け渡しには危険が伴うので、たいていの海賊は犠牲
者を皆殺しにして証拠を残さないようにする方を選ぶでしょう。

 そういうわけで、極悪非道な海賊のテンプレートはPCとしてはお勧めできませ
ん。このテンプレートは、主にPC達に襲いかかる敵NPCとして使うことになる
でしょう。

[ギャング](Gangster)

 犯罪組織の手下(あるいは中ボス)です。交渉時に「恫喝」が使えるという特殊
能力が魅力的ですが、やはりこのテンプレートもPC向きではありません。PCの
行く手を阻む妨害者NPCとして登場することが多いでしょう。

[山師](Opportunist)

 「わずかな投資で、労せずして膨大な利益が手に入りますよ」とささやくことで
出資金を募ろうとする点は詐欺師に似ていますが、山師はかなり本気で自分の計画
が素晴らしいものだと信じているところが少し違います。世の中というのは不思議
なもので、一攫千金を夢みて次から次へとアイデアを出す山師の言葉を信じて、そ
の計画に出資しようというカモもまた絶えることがないのです。

 山師はほとんど全く役に立たないので、あまりお勧めできるテンプレートではあ
りません。が、キャラクタープレイが容易でかつとても楽しいという点で捨てがた
い魅力があり、ある程度慣れたプレーヤーなら挑戦してみるのも良いでしょう。

[強盗](Thug)

 追いはぎ、強盗、盗賊、ストリートギャング、チンピラ、その他その他。PCと
してはお勧め出来ませんが、シナリオによっては面白い役割を負うことが可能かも
知れません。GMと相談してみて下さい。でも基本的には雑魚敵NPCとして使用
するテンプレートでしょう。

[学者](Scholar)

 学者のフィールドワークというのは、ブループラネットのシナリオ導入で頻繁に
使われる手です。未開の地に行って何かを調査する学者に、現地を案内するガイド、
出資者である巨大企業の関係者、原住民との間の調停のためにGEOから派遣され
た警備員、報道担当のジャーナリストか作家(実はエコテロリストの一味)、そし
て彼らを運ぶ民間パイロット。こういうパーティがブループラネットの基本です。

 学者は全く戦闘には役立ちませんが、豊富な知識系スキルや、情報源へのアクセ
スといった点で有用であり、パーティに1人はいると便利でしょう。ただし物知り、
博学なキャラクターを演じる必要があり、初心者には向いてないかも知れません。

[教師](Teacher)

 学者に比べると教師は知識の点で劣りますが、情報源へのアクセスの点では同じ
くらい有能で、かつ対人関係のスキルが豊富なのでそれなりにお勧めできます。

 特に教師のキャラクターは、困ったときに「実は、相手は昔の教え子だった。今
でも君のことを恩師と仰いでいる」という設定を作ってしまうという必殺技が使え
るので、いざというときには学者よりずっと役に立つことでしょう。


・キャラクターの職業(2)

[ステップ1:キャラクターテンプレートの選択]

 今回もキャラクターの「職業」の紹介を続けましょう。

**

[芸術家](Artist)

 ミュージシャン、俳優、画家などの職業です。残念ながら芸術家が活躍できるシ
ナリオは少ないでしょう。このテンプレートは、主にNPCのためにあると思って
間違いありません。

[ジャーナリスト](Journalist)

 ジャーナリストのテンプレートは初心者にもお勧めです。対人技能を中心に幅広
いスキルが習得できる上、情報収集力も抜群ですし、しかもシナリオに関わるのが
簡単だからです。(取材だと言えばどこに首を突っこんでも不自然ではありません)
 その上、ジャーナリストは、乗物、通信機器、撮影機器、さらには助手に至るま
で、出版社(新聞社)から借りることが出来るという特典付きです。

 初心者のパーティには、ジャーナリストを1人は入れておくことをお勧めしてお
きます。ただし、言うまでもありませんが、戦闘力として期待してはいけません。

[管理者](Administrator)

 巨大企業やGEOなどの組織の管理者です。彼らはかなり大きな権力を持ってい
ます。しかも、ルール上、1回だけ職権濫用が許されます。危機一髪のときに「こ
ういうこともあろうかと、実はあらかじめこういう手配をしておいたのだ」と言っ
てGMの顔を見てはどうでしょうか?

 管理者は他のPCと行動を共にするのが難しいので初心者にはあまりお勧めしま
せんが、熟練プレーヤーにとっては挑戦しがいのあるテンプレートかも知れません。

[秘密工作員](Covert Operative)

 巨大企業やGEOに雇われているスパイです。もちろん情報収集や対人交渉を中
心に様々なスキルを習得でき、そこそこ戦闘力もあるし、それに他のテンプレート
に「なりすまして」密かに活動することが出来るので、きっとどんなシナリオでも
活躍できることでしょう。初心者にはお勧めです。

[GEO:司法長官](GEO Magistrate)

 GEOの司法組織の頂点に君臨する長官達です。保安官、警察機構の全てを統括
する地位にいます。ポセイドン全体で3名しか存在しない要職ですから、実のとこ
ろNPC専用のテンプレートと言ってよいでしょう。

[GEO:マーシャル](GEO Marshal)

 ポセイドンの治安を維持するマーシャル(保安官)です。ロング・ジョン・ラッ
シュで賑わうブームタウンを渡り歩き、必要とあらば躊躇なく悪漢を射殺して法と
正義を守るサイバー保安官。西部の、失礼、ポセイドンの荒くれ男たちも、マーシ
ャルの名を聞くだけで震え上がることでしょう。彼らは生ける伝説なのです。

 このテンプレートは非常に有利です。何と言っても高価なサイバーウェアを惜し
げもなく使って身体改造できるし、マーシャル専用の高性能武器を所有でき、もち
ろん戦闘能力バリバリの上、その迫力ゆえに味方には全て1レベルボーナス(高揚)
敵には全て1レベルペナルティ(萎縮)が課せられるという「それはいくら何でも
不公平では・・・」という感じのルールが適用されます。

 このテンプレートを使うと、どうしてもジャッジ・ドレッドかマッド・マックス
か北斗ケンシロウかというキャラクターになってしまいます。あまりPCとして使
うべきではないかも知れません。

[GEO:警官](GEO Patrol)

 マーシャルは伝説ですが、本当に治安を守る仕事をこなしているのは警官たちだ
と言ってよいでしょう。ポセイドンにおける警察機構は未発達で、警官の人数は常
に不足しています。にも関わらず彼らの必死の努力により、何とかポセイドンの治
安は(いくつかの例外地域を除いて)何とか保たれているのです。

 警官のテンプレートは初心者にもお勧めです。そこそこ戦闘力がありますし、対
人関係のスキルを幅広く習得できます。それに、行動指針が明確なので迷うことが
少ないでしょう。不正を暴き、法の権威を守ることがあなたの務めなのです。

[私立探偵](Private Investigator)

 ポセイドンはあまりにも広く、GEO警察機構はどうしようもなく人手不足です。
そこで私立探偵の出番です。彼らは警察の手が回らない事件、あるいは色々な事情
から警察(というかGEO)に関与されたくない事件に取り組みます。もちろん、
事件だけでなく、あらゆる調査、さらには産業スパイのような活動も、私立探偵の
仕事になります。

 私立探偵は初心者にもお勧めです。それなりに戦闘力があるというだけでなく、
何と言ってもキャラクタープレイが容易だからです。(あなたが気に入っている名
探偵の風体や性格をベースにすればいいのです)

[賞金稼ぎ](Warden)

 ポセイドンで活動している賞金稼ぎは、野生動物の密猟、産業廃棄物の不正投棄
といった「環境犯罪」を追跡し、犯人を見つけてGEOに密告して賞金を受け取る
仕事をしています。(その後はマーシャルの出番です)

 当然、環境犯罪者(例えば巨大企業の子会社)はうるさく嗅ぎまわる賞金稼ぎに
対し先手を打って黙らせようとしますから、賞金稼ぎは危険な職業です。また環境
犯罪は誰にも見られないように人里はなれた場所で行なわれますから、賞金稼ぎの
活動は主に野外で行なわれます。

 賞金稼ぎも、ガイドと同じく野外派のテンプレートです。ガイドほど野外知識が
豊富ではありませんが、戦闘力が高いのが特徴です。

[医者](Doctor)

 病院で患者の診察をする医者ですが、RPGではあまり役に立たないかも知れま
せん。何しろ「応急手当て」スキルすら持っていません。そういうのは医療スタッ
フの仕事なのです。

[医療スタッフ](Medic)

 緊急医療チームの一員です。負傷者が出ると応急手当てを施し、設備の整った病
院に運び込むまで患者の命を何とか維持するのが仕事です。お分かりの通り、RP
G、特にブループラネットのように戦闘がデッドリーなRPGにおいては、非常に
重要な役割となります。

 パーティ内に医療スタッフが1名いると、全員が何かと心強いことでしょう。し
かも医療スタッフには、そこそこ戦闘力もあるのです。果たすべき役割が明確だと
いうことから、初心者にもお勧めです。

[巨大企業:警備員](Incorporate Security)

 巨大企業に雇われている警備員です。この時代における警備員は、今日の傭兵に
近い仕事だと思って下さい。彼らは最先端の装備を持った実戦経験豊富な兵士であ
り、彼らを侮る者には即座に死が訪れることでしょう。

 このテンプレートはNPCとして多用されます。というのもRPGのプレーヤー
は、何かと言うとすぐに「巨大企業の施設を襲撃して、何々を奪取する」といった
計画を立てたがるからです。GMはこのテンプレートを使用して、ブループラネッ
トにおける警備員がどれほど恐ろしい戦闘のプロであるか教えてあげるとよいでし
ょう。

[従軍パイロット](Military Pilot)

 戦場に物資や兵士を輸送する輸送機パイロットから、最新鋭の戦闘機を操るエー
スパイロットに至るまで、GEO平和維持軍や巨大企業が維持している空軍に所属
するパイロットです。

 このテンプレートも他のPCと行動を共にするのが困難なので、基本的にはNP
C向けと見なすべきでしょう。

[傭兵](Mercenary)

 ポセイドンには、中央政府のようなものは存在しません。GEO、巨大企業、原
住民という3つの対立するグループを始めとして、大小様々な組織が互いに対立し、
密かに、あるいは公然と戦っています。ですから、戦闘への参加、ゲリラの訓練、
特殊任務の請け負いなど、傭兵の需要がなくなる心配はありません。

 軍事系のテンプレートの中では、傭兵は比較的自由に行動できるので、PCとし
て使うことも可能です。しかし、このテンプレートを選択する前にGMと相談して
おきましょう。シナリオによっては全く出番がないかも知れません。

[GEO:平和維持軍兵士](GEO Peacekeeper)

 ブライトによって引き起こされた国際秩序の崩壊という未曾有の危機に対処する
ため、国連はGEOに全権を委任すると共に、国連軍を「平和維持軍」として再編
成してGEOの配下に置きました。GEOは、平和維持軍という圧倒的な軍事力を
存分に使い、力ずくで秩序の回復に務めたのです。

 他のPCと一緒に行動することが困難になるため、このテンプレートはお勧めで
きません。おそらく兵士NPCのテンプレートとして使うというのが一般的な使用
方法でしょう。

[GEO:ショックトルーパー](GEO Shock Trooper)

 ショックトルーパー隊は、海兵隊と特殊部隊を合わせたような戦力であり、GE
Oにとって伝家の宝刀とも言うべき存在です。彼らは全員が徹底的に戦闘用バイオ
モッドで生体改造しており、1人1人が生ける兵器なのです。

 個人的な戦闘能力という点では、このテンプレートが最強です。他のテンプレー
トでは到底太刀打ちできないでしょう。しかし、言うまでもなく他のPCと行動を
共にすることは困難ですから、PCとしてはお勧めできません。

[海底坑夫](Miner)

 巨大企業に雇われて海底でロング・ジョン鉱石を掘り出す坑夫です。その生活は
楽ではありません。何週間もの間、太陽を見ることなく深海と海底基地の間を往復
して過ごし、やっと1週間の休暇をもらって地上に出られるといった具合ですから。

 海底坑夫のテンプレートは、たくましい肉体労働者を表しています。意外に豊富
なスキルが習得できますし、戦闘力もついてきます。他のPCとは休暇中に出会う
ことが出来るでしょう。そういうわけで、初心者にもお勧めできます。

[採掘技術者](Mining Engineer)

 巨大企業のロング・ジョン採掘プロジェクトを管理する技術者です。海底坑夫達
の上司に当たります。技術屋であると同時に、巨大企業の要求(利潤、効率)と海
底坑夫達の要求(待遇改善)の間で板挟みになる中間管理職でもあります。

 このテンプレートは、海底坑夫と技術者の中間です。それなりにバランスがとれ
ているので、初心者にもお勧め出来ます。

[科学者](Scientist)

 再コントタクトの後、真っ先にポセイドンにやってきたのは科学者たちでした。
自然科学のあらゆる分野にとって、今日もなおポセイドンは尽きせぬ興味の対象で
す。地球にいる科学者のほとんどがポセイドンへの移住を希望しており、競争を勝
ち抜いて移民許可が下りた科学者は、いずれも専門分野で第一人者と見なされてい
る人々なのです。

 科学者のテンプレートを選択すると、言うまでもなく様々な自然科学方面のスキ
ルを取得できます。戦闘力はありませんが、他のPCと行動を共にすることが容易
(調査のために出向いてきたのです)であること、キャラクタープレイが楽しいと
いう点から、初心者にもお勧めできます。

[技術者](Technician)

 ポセイドンではハイテク機器の供給が限られており、これらの機器の使用、修理
の訓練を積んでいる技術者は非常に価値があります。

 技術者のテンプレートを選択すると、メカ・技術・修理といった方面のスキルを
大量に習得できます。RPGでは、医者よりも負傷を応急手当てする医療スタッフ
の方が重要だというのと同じような意味で、一般に科学者よりもアイテムの故障を
修理する技術者の方が重宝します。PCのパーティに一人は技術者を入れておいた
方がいいでしょう。初心者にもお勧めです。

[原住民:長老](Elder)
[原住民:治療師](Healer)
[原住民:戦士](Warrior)
[原住民:自警団員](Native Patrol)
[原住民:身売者](sell-out)

 種族として「海棲人」を選んだのであれば、職業はこれら5種類の中から選んで
下さい。長老は原住民集落のリーダーです。治療師と戦士の仕事は説明するまでも
ないでしょう。自警団員は、集落の治安を守る警察に相当します。

 身売者というのは、集落を離れて都会で生活する道を選んだ者に対する蔑称です。
残念ながら、近代的な生活に憧れて集落を飛び出した者が辿る道は、スラム街や貧
民窟であることが多いのです。


・キャラクターのプロファイル(1)

[ステップ2:プロファイル]

 キャラクターの種族と職業を選択すれば、それで「ステップ1:テンプレートの
選択」は終了です。これだけで、能力値、スキルなどキャラクターデータの大半が
決まります。

 ステップ2では、ロールプレイに必要な設定情報を決めてゆきます。具体的には、
プロファイルと呼ばれる各項目について、与えられた選択肢を選んでゆけばよいの
です。各項目を選択すると、能力値に修正が付いたり、ボーナスでスキルを獲得し
たり、といったようにキャラクターデータが増減します。

 なお、重要でないNPCについては、ステップ2は省略して構いません。

 ステップ2の選択は注意深く行う必要があります。最もまずいのは、能力値やス
キルに対するボーナスにばかり目を向けて、有利だと思える選択肢ばかり選んでゆ
くことです。こういうやり方だと、支離滅裂なわけの分からないキャラクターが出
来上がってしまうことでしょう。

 まず、キャラクターのイメージを確立して下さい。小説や映画などの登場人物を
モデルにするとよいでしょう。それから、そのイメージに合う選択肢を探すのです。
ブループラネットのキャラクタープロファイルは、非常に自由度が高いシステムで
す。何も考えずに使うと無茶苦茶なキャラクターが出来てしまう反面、きちんとキ
ャラクターイメージを固めてから使えば、まず大抵のキャラクターイメージを実現
することが出来ることでしょう。あなたがベテランなら、きっと挑戦しがいのある
システムだと思うに違いありません。

**

 最初に選択するのは、キャラクターの「出身」(Origin)です。キャラクターが幼
少期をどこで、どのような社会階級の家庭で過ごしたのかを決めることになります。
選択肢は次の通りです。

  [アステロイドベルト植民地](Belt Colonies)

  [地球軌道](Earth Orbit)

  [フリーゾーン:独立解放区](Free Zone - Enclave)

  [フリーゾーン:荒野](Free Zone - Wasteland)

  [地球都市](Urban)

  [月面居住区](Lunar Settlements)

  [火星植民地](Mars Colony)

  [ポセイドン:植民者](Poseidon Colonist)

  [ポセイドン:GEO](Poseidon GEO)

  [ポセイドン:巨大企業](Poseidon Incorporate)

  [ポセイドン:労働者](Poseidon Laborer)

  [ポセイドン:原住民](Poseidon Native)

**

 続いて、「背景」(Background)です。キャラクターの過去が全体的にどのような
トーンだったかを決めることになります。ルール的にはトーンを決めるだけですが、
出来れば具体的な事情や事件まで設定した方がいいでしょう。そういった過去の体
験が、キャラクターの基本的な性格や雰囲気といったものを作り上げるのです。

  [虐待](Abusive) :精神的、肉体的な虐待を受けた

  [権力闘争](Byzantine) :権力をめぐる謀略や暗闘が渦巻いていた

  [コスモポリタン](Cosmopolitan):様々な文化に接してきた

  [犯罪](Criminal):警察から追われている

  [危険](Dangerous) :常に死と隣り合わせで生きてきた

  [病気](Illness) :大病、大怪我により生死の境をさまよったことがある

  [独立](Independent) :自分しか頼るものはなかった

  [マイノリティ](Minority):被差別グループの一員として生きてきた

  [貧困](Poor):貧しかった

  [宗教](Religious) :信仰によって支えられてきた

  [田舎](Rural) :田舎で牧歌的に生きてきた

  [保護](Sheltered) :保護者に守られ、世間の荒波を知らずに育った

  [ストリート](Street):大都市のストリートで力づくで生き延びてきた

  [悲劇](Tragic):過去に起こった悲劇が、今も心を苦しめ解放してくれない

  [裕福](Wealthy) :金銭の苦労を知らずに育った

**

 続いてキャラクターの「教育」(Education) を決めます。これは要するに学歴で、
高卒、大卒とか、法律学校を卒業したとか、軍隊に入隊したことがあるとか、そう
いった項目を選択します。

**

 いよいよ、実際のセッションでキャラクターの言動を決める際に考慮すべき設定
情報を決めてゆきます。まずは「目標」(Goal)を選びます。これをはっきり決めて
おけば、言動を決める際にあまり悩まなくてよくなるでしょう。キャラクターは、
自分の人生の「目標」に近づくように行動するはずだからです。

 ・達成(Accomplishment)

   このキャラクターは何かを達成することを求めています。甲子園で優勝する
   とか、紅天女を演じるとか。

 ・慈善(Altruism)

   他人を助けることが生き甲斐です。困った人、虐げられている人を見れば、
   手を差し伸ばさずに入られません。

 ・満足(Contentment)

   今、とにかく何か不満なことがあり、これを解消したいと思っています。

 ・発見(Enlightenment)

   謎をとくこと、真理を発見することが目標です。科学者、研究者の多くが、
   この目標を目指していることでしょう。

 ・名声(Fame)

   有名になること、他人に知られることが目標です。科学者、研究者の多くが、
   本当はこの目標を目指していることでしょう。

 ・自由(Freedom)

   今、何らかの意味で拘束されており、そこから解放されることを切望してい
   ます。

 ・不滅(Immortality)

   何か永遠不滅なものを目指しています。単純に不老不死になることかも知れ
   ませんし、不滅の業績を残すことかも知れません。

 ・正義(Justice)

   天呼ぶ地呼ぶ人が呼ぶ、悪を倒せと俺を呼ぶ。このキャラクターは、正義を
   貫こうとします。

 ・愛情(Love)

   その対象が誰、または何であれ、愛のために生きているキャラクターです。

 ・忘却(Oblivion)

   あの忌まわしいことを忘れ、心が解放されるときがくるまで、このキャラク
   ターに安息はありません。

 ・権力(Power)

   権力を握り、他人を思うがままに支配する。これこそ目指すべきものです。

 ・復讐(Revenge)

   仇はきっと討つ。その執念だけがキャラクターを支えています。

 ・革命(Revolution)

   この堕落した現政権を打倒し、新しい秩序を打ち立てて、民を救うこと。そ
   れ以外に目指すべき目標などあるでしょうか。

 ・生存(Survival)

   死にたくない。とにかく今は生き延びることしか頭にありません。

 ・裕福(Wealth)

   世の中、やはり金です。富さえあれば、かなわぬ願いはありません。


・キャラクターのプロファイル(2)

[ステップ2:プロファイル]

 キャラクターのプロファイルについての紹介を続けましょう。

 前回は、キャラクターの「出身」から「目標」までを決めました。これで、その
キャラクターがどのような過去を持ち、何を目指して生きているのかが決まったわ
けです。これらは、いわば長期的な視点で見たキャラクター設定と見なせるでしょ
う。

 今回は、短期的な視点で見たキャラクター設定を決めてゆきます。つまり、その
キャラクターがセッションに登場するとき、どのような雰囲気をまとい、何をしよ
うとしているのか、といったことを考えるのです。

**

 まずは「動機」(Motivation)です。

 前回、キャラクターの「目標」を決めました。これは言わば長期的な、生涯に渡
る夢や志を表しています。しかし、キャラクターにも日々の生活というものがあり
ます。いつもいつも「自分は、結局のところ何を目指して生きているのか」と自問
して暮らしているわけではありません。とりあえず、今やりたいこと、今ほしいも
のがあり、それを目指して行動するというのが普通の生き方でしょう。

 キャラクターの「動機」は、セッションに登場する時点でキャラクターにとって
「今やりたいこと、今ほしいもの」が何かを表しています。それは必ずしも「目標」
と整合しているとは限りません。

 ・冒険(Adventure)

   このキャラクターは、退屈な生活に我慢なりません。スリルあふれる冒険を
  やってみたい、そう思っています。RPGのセッションは何らかの意味で冒険
  を扱いますから、この動機を選べばどんなセッションにもごく自然に参加でき
  ることでしょう。

 ・同情(Compassion)

   このキャラクターは、苦しんでいる他人に同情し、何とか力になってやりた
  いと思っています。他人を救うために危険に飛び込んでゆく、そういうキャラ
  クターを作りたいなら、この動機がお勧めです。

 ・好奇(Curiosity)

   強い好奇心に突き動かされているキャラクターです。知りたい、経験したい
  という思いが抑えきれません。この動機を選べば、これまたどんなセッション
  にも自然に参加できることでしょう。

 ・不満(Discontent)

   不満を持っているキャラクターです。何がどう不満なのか決めるべきですが、
  GMと相談してセッションに自然に参加できるように決めるとよいでしょう。
  このキャラクターは、自分の欲求不満を解消するために参加してきたのです。

 ・義務(Duty)

   このキャラクターは自分の義務をきちんと果たそうとしています。軍人、警
  察官といった職業に就いているキャラクターであれば、それが任務だからとい
  う理由でセッションに参加することが簡単に出来るでしょう。

 ・信念(Faith)

   宗教的あるいは哲学的な深い信念に基づいて行動するキャラクターです。ど
  のような信念なのか、GMと相談して具体的に決めて下さい。熟練GMなら、
  信念が試されるシーン、あるいは信念が葛藤を生むシチュエーション(信念と
  人情が矛盾してどちらかを犠牲にしなければならないとか)を用意してくれる
  ことでしょう。

 ・恐怖(Fear)

   何かを激しく恐れ、それから逃れるため、またはそれを克服するために行動
  するキャラクターです。恐怖の対象についてはGMと相談して決めて下さい。
  単純なもの(虫とか死とか)でもいいですが、むしろ特定のシチュエーション
  (愛する者を失うとか、誰かを裏切ってしまうとか)を恐れているという方が
  よいでしょう。

 ・悔恨(Guilt)

   何か過去の行いを激しく後悔しており、それを償うか、または隠すために行
  動するキャラクターです。悔恨の対象についてはGMと相談して決めて下さい。
  単純に犯罪や不道徳な行いでもいいですが、例えば臆病風に吹かれて自分だけ
  逃げたために仲間を死なせてしまった、などというのもいいでしょう。熟練G
  Mなら、きっと同じようなシチュエーションを用意して、キャラクターの見せ
  場を作ってくれることでしょう。

 ・憎悪(Hatred)

   何かを激しく憎んでおり、その憎悪に突き動かされて行動するキャラクター
  です。憎悪の対象についてはGMと相談して決めて下さい。熟練GMなら、必
  ず憎悪の対象となっているものをシナリオにからめてくれることでしょう。

 ・名誉(Honor)

   名誉を重んじ、それを守るために行動するキャラクターです。

 ・忠誠(Loyalty)

   何かある対象(氏族、集落、企業、国家、団体、個人)に対して忠誠を誓っ
  ており、そのために行動するキャラクターです。

 ・強迫(Obsession)

   このキャラクターは、強迫性障害を持っています。ある特定の(たいてい無
  意味な)行為に縛られており、どんなシチュエーションでもそれをしなければ
  気が済まないのです。

 ・自尊(Pride)

   プライドの高いキャラクターであり、そのプライドゆえに危険(あるいは愚
  か)なことに挑戦するはめになるのです。

 ・職業(Professionalism)

   プロ意識が強く、任務を見事にやり遂げることを何よりも大切にしているキ
  ャラクターです。

 ・社会(Social)

   文化的/社会的に「あるべき姿」とされているパターンを守ろうとするキャ
  ラクターです。「男は女を守らなければならない」とか「勇者は正々堂々とし
  た戦い以外はやってはいけない」といった規範に従って行動するのです。

**

 次に決めるのは「態度」(Attitude)です。これは要するに、雰囲気や考え方のパ
ターンといったものを表しています。これを決めておくことで、キャラクタープレ
イが容易になることでしょう。

 ・傲慢(Arrogant)

   傲慢で横柄、何にせよ自信たっぷりな奴です。

 ・心配(Brooding)

   何か心配事があるのでしょうか、そわそわしたり落ち込んだりしています。

 ・自信(Confident)

   「傲慢」と同じですが、嫌な奴だと「傲慢」、良い奴だと「自信」になると
   いうわけですね。

 ・協調(Cooperative)

   社交的で、つきあいのよい奴です。

 ・憂鬱(Depressed)

   悲観的で、気難しく、つきあいにくい奴です。

 ・慎重(Disciplined)

   細部まで考え抜いた計画と、徹底した準備。それが済むまでは行動しない奴
  です。なぜか友人は「活発」タイプだというのが定番です。でないと話が進ま
  なくて困りますから。

 ・活発(Energetic)

   じっとしているのは大嫌いで、我慢なりません。計画を細部まで考え抜いた
  り、準備に時間をかけるくらいなら、たとえ失敗してもさっさと行動した方が
  ずっとマシです。

 ・達観(Holistic)

   しょせん、物事はなるようにしかなりません。何が起ころうと、どこか他人
  事のように感じます。

 ・謙虚(Humble)

   結局のところ、他人の助けがあったからこそ自分の業績があるのです。自分
  の力など小さなものです。

 ・内省(Introspective)

   思慮深く落ち着いており、寡黙なキャラクターです。無駄口を叩くことなど
  決してありません。

 ・躁鬱(Manic)

   感情の起伏が激しく、ノリノリ/落ち込み、沈鬱/狂騒、と次々に精神状態
  が変わります。

 ・楽観(Optimistic)

   何事も全て最終的にはハッピーエンドになると信じています。どんなに事態
  が絶望的に思えても、きっと何か活路があるはずです。

 ・不信(Paranoid)

   他人を信じることが出来ません。どんな話にもきっと裏があります。まず他
  人を疑うことから始めなければ、長生きはできないのです。

 ・悲観(Pessimistic)

   どんなに調子よく進んでいるように見えても、きっと何か悪いことが起こっ
  て全てを台無しにしてしまうことでしょう。間違いありません。

 ・反逆(Rebellious)

   権威や規則、そういったものに強い反感を覚えます。

**

 最後に、名前、年齢、性別、身長、体重、体系、皮膚の色、髪形といった項目を
決めて、キャラクターのプロファイルは完成です。


・バイオモッド(1)

[ステップ3:バイオモッド(生体改造)]

 さて、完成したキャラクターをバリバリ改造してみましょう。

 2199年現在、テクノロジーによる生体改造はごく当たり前の習慣になっています。
ましてやポセイドンは地球とは比較にならないほど危険な世界です。経済的あるい
は宗教的な理由でもない限り、改造できるところは出来るだけ改造して、生存率を
高めるべきでしょう。

**

 ステップ3におけるバイオモッド(生体改造)は、大きく2種類に分類されます。
サイバーウェアと遺伝子操作です。今回のテーマは、サイバーウェアです。


[サイバーウェア]

 サイバーウェアとは、電子機器や機械を身体に埋め込むタイプのバイオモッドで
す。脳・神経系と、コンピュータの入出力をダイレクトに接続する神経電気系接合
技術(Neural Interface Circuit:NIC)の発達により、多くのサイバーウェア
が実用化されました。

 今ではニューラルジャックやコンピュータを身体に埋め込むのは、ごく当たり前
の習慣です。というか、今日(2199)では、サイバーウェアは古めかしい技術と見な
されています。(ばりばり遺伝子改造に励む若者についてゆけない中高年は、時代
に取り残された「サイバー世代」とか呼ばれているのでしょう)

 以下に、基本ルールブックに載っているサイバーウェアの一部を紹介します。
 なお、発売が予定されているブループラネット・テクニカルサプリメントで、サ
イバーウェア関連は大幅に増強されるものと予想されます。

・内蔵計算機(Implanted Calculator)

 身体に埋め込むタイプの超小型計算機です。NICにより脊髄に接合され、脳の
一部であるかのように利用できます。(外部インタフェースはありません)
 装着者は、頭の中に計算式、あるいは方程式を思い浮かべるだけで、それを解く
ことが出来ます。科学者、技術者の多くが愛用しているサイバーウェアです。

・内蔵マイコン(Implanted Micro Computer)

 内蔵計算機のコンピュータ版です。通常のパソコンと互換性があります。つまり
同じソフトが走るのです。ある意味では、これこそ真の「パーソナル」コンピュー
タかも知れません。なにしろ身体に埋め込まれて装着者の脳・神経系の一部と化し
ているのですから。

 内蔵マイコンは、外部インタフェースとしてニューラルジャックとデータスパイ
クポートを使用します。ですから内蔵マイコンを手術で腰骨あたりに埋め込む際に
は、同時に頭蓋骨に穴を開けてニューラルジャックやデータポートを装着する必要
があります。

・内蔵感覚レコーダ(Implanted Sensory Recorder)

 神経系を流れた信号を記録するデバイスです。最大記録時間は、ほぼ100時間。
記録された感覚データを再生すると、五感がとらえた感覚が全て再現されます。つ
まり過去の経験を完全な形で再体験できるわけです。

 記録の開始/終了/編集は、全て思考スイッチにより制御可能です。この装置が
素晴らしいのは、データスパイクポート経由で感覚データを外部とやり取りできる
ことでしょう。つまり、自分の経験を他人に経験させたり、他人の経験を自分のも
のとして再体験したり、さらに体験データをデータスパイクに「レコーディング」
して、メディアに載せて放送したり販売することすら可能になるのです。(よくサ
イバーパンクに登場する「擬験」とか「シムスティムス」とか呼ばれるアレです)

 ただし、内蔵感覚レコーダに記録されるのは純粋に感覚だけであり、体験者の思
考や感情は記録されません。ですから、それを他人が再生しても我を忘れて没入し
てしまうわけではありません。むしろ超リアルな映画を観ている感じでしょうか。

・内蔵翻訳機(Implanted Translator)

 脳の言語中枢をインターセプトして、自然言語間の自動翻訳を行うデバイスです。
翻訳機の入力言語を、例えば日本語にセットしたとします。すると、英語で話しか
けられても、翻訳機はそれを日本語に翻訳して言語中枢に入力してくれるのです。
さらに、翻訳機の出力言語を英語にセットしておけば、日本語で話そうとするだけ
で、翻訳機がその言葉を英語に翻訳して、しかも声帯を制御して英語で発音させて
くれるのです。

 実に素晴らしい装置ですが、「翻訳」というものに本質的な限界があることに気
をつけて下さい。韻文、比喩、慣用句、不完全文、文化的背景に強く依存した文脈
などなど、翻訳機では充分に、あるいは全く対応できない発言は多いのです。

・ニューラルジャック(Neural Jack)

 NIC技術を応用した外部インタフェース、ソケットです。ニューラルジャック
を経由して、脳・神経系の電気信号と外部の光学系デジタル信号が相互に変換され
るのです。

 多くの電子機器、コンピュータ、乗り物には、ニューラル操作ポートが装備され
ています。利用者は、自分の頭蓋骨に埋め込まれているニューラルジャックと、機
器の操作ポートを光ファイバで接続するだけで、「思考の速度で」機器を操作でき
るのです。少し訓練するだけで、自分の手足を動かすのと同じ感覚で自動車を運転
したり、頭の中でものを考えるのと同じようにコンピュータを操作できるようにな
ります。

・条件反射プログラム(Programmed Reflexes)

 NICで脊髄に接合され、特定の条件反射をプログラムとして保持する埋め込み
チップです。あらかじめ指定した感覚入力あるいは思考パターンを検出すると、運
動神経を直接制御して、特定の条件反射を起こさせます。もちろん、条件反射の有
無は、思考スイッチでON/OFFできます。

 最も典型的な条件反射プログラムは、「他人が自分に向かって銃を抜こうとして
いるのを見たら、条件反射で自分の銃を抜いてそいつを射殺する」というものです。
条件反射による行動は大脳を経由しないので、非常に素早いのです。(保安官は、
この手のプログラムを常にONにしていると思って下さい)

・赤外線センサ(Infrared Sensors)

 頬の皮下に埋め込まれる小型の赤外線センサです。思考スイッチにより視覚を赤
外線モードに切り換えるだけで、装着者は赤外線で周囲を「見る」ことが出来るよ
うになります。暗闇で周囲を観察したり、隠れている人体などの熱源をサーマルイ
メージとして捉えたり、さらに熱跡を追って追跡するといったことが可能です。

・内蔵レーダー(Implanted Radar)

 額を通って頭をぐるりと一周する鉢巻きのような形で埋め込まれた、低出力レー
ダーです。装着者は、電磁波の反射により自分の周囲360度を見渡すことが可能
になります。暗闇、煙幕、霧などは障害になりません。

**

 この他にも内蔵タイプの超小型ツールキット、スパイ器具、各種の人体改造器具
があります。おそらく、今後もサプリメントで次々とサイバーウェアが追加される
ことでしょう。


・バイオモッド(2)

[ステップ3:バイオモッド(生体改造)]

 今回のテーマは、遺伝子操作です。

[遺伝子操作]

 まだ遺伝子工学の発達が未熟だった頃には、遺伝子操作と言えば受精卵あるいは
それ以前の段階で行うものでした。つまり胚が細胞分裂により各器官に分化してゆ
く前に、既に遺伝子に手を加えておかなければならなかったのです。

 やがて、遺伝子工学の進歩により、成人後の遺伝子操作が可能になりました。身
体の特定部位を構成する細胞が持っている遺伝情報を書き換えることにより、原理
的にはどのような生体改造も可能になったのです。しかしながら、遺伝子操作は極
めて高価で時間のかかるため、一般に普及することはありませんでした。

 だが、ロング・ジョンの発見が全てを変えました。ロング・ジョンの無欠損結晶
格子は、高分子に対して活性触媒のように作用します。このため、ロング・ジョン
は超微細レベルでの分子操作プラットフォームとして理想的な物質だったのです。
つまり、精製したロング・ジョン結晶を使えば、それまでとは比較にならないほど
安価かつ短期間に遺伝子操作を行えるのです。

 以下に、基本ルールブックに載っている遺伝子操作の一部を紹介します。

・抗老化セラピー(Longevity Therapy)

 定期的に抗老化セラピーを受けるだけで、全身の細胞に蓄積された老化因子が除
去され、老化を抑えることが出来るようになります。つまり、年に1回の抗老化セ
ラピーを受け続ける限り、肉体的に歳をとらなくなるというわけです。

 抗老化セラピーには大量のロング・ジョンが必要となります。このため、抗老化
セラピーは最も高価な遺伝子操作になっています。毎年このセラピーを受けること
が出来るのは、ほんの一握りの金持ちだけです。

・再生(regeneration)

 ロング・ジョンが引き起こす奇跡は、不老だけではありません。あらゆる負傷を
完璧に修復することが可能になるのです。これは、細胞のクローン培養により手足、
臓器、皮膚、その他ダメージを受けた身体組織を再生し、それを本人の身体に移植
することで実現されます。

・抗毒(Anti-Poison)

 毒物、毒素に対する抵抗力を大幅に強化します。

・無呼吸活動(Improved Blood Oxygenateion)

 血液の酸素供給メカニズムを強化し、10分程度なら呼吸なしに活動し続けるこ
とを可能にします。

・人格改変(Mind-Job)

 脳内メカニズムを操作することで、嗜好や性格などの精神的特徴を強制的に変え
る技術です。本来、精神疾患や薬物中毒に対する治療を目的として開発されたもの
ですが、そう、マインドコントロールや洗脳といった目的で悪用することも可能に
なります。このため、この技術は世間から忌み嫌われています。

・抗汚染大気(Respiratory Filter)

 化学物質や塵芥などによる大気汚染に対する抵抗力を大幅に強化します。

・内分泌系制御(Multi-Glands)

 自分の身体の内分泌系を意識的にコントロールできるようになります。(訓練が
必要です)
 これにより、アドレナリン、エンドルフィンなどのホルモンの量を調整し、自分
の感情や身体的反応(興奮、萎縮など)を意識的に作り出すことが可能になるので
す。もちろん、脳内麻薬も出し放題。戦闘シーンで恐怖や痛みを消し去ることから、
感情を制御して迫真の演技をやってのけることまで、様々な応用が可能です。

・抗塩分(Salt Tolerance)

 海水を飲んで水分を補給できるようになります。ポセイドンでは非常に人気のあ
る遺伝子操作です。

・電撃(Electro-muscular Analogs)

 筋肉細胞に発電能力を持たせ、デンキウナギのように瞬間的に高電圧を発生させ
ることを可能にします。指先、または手のひらに放電プレートを埋め込むことによ
り、接触した相手を電気ショックで倒すことも出来ます。これがッ、バオー・ブレ
イク・ダーク・サンダー・フェノメノンだ! ・・・っても若い人は知らないかも。

・免疫アメーバ(Immunological Symbiote)

 遺伝子工学により人為的に作り出したアメーバ状細胞群で、普段は血液中を漂っ
ています。体内に病原体などの異物が進入すると、免疫アメーバが強化抗体として
機能し、それらを破壊します。これにより、身体の免疫力が飛躍的に増大するので
す。他にも血管に付着したコレステロールを食べたり、ガン細胞を破壊したり、傷
口を保護して怪我の治癒を早めたり、宿主を健康に保つためにあらゆる努力をして
くれます。ハル・クレメントの「20億の針」に登場する異星人そのものですね。

・聴覚強化(Amplified Hearing)

 遺伝子操作により聴覚を強化します。

・音響知覚(Echolocation)

 人類に対して、クジラ類と同じエコーロケーション能力を与えるものです。周囲
に超音波を放射し、その反射波から脳内に精密な音響知覚像を作り上げます。暗闇
や煙幕は障害になりません。

・嗅覚強化(Enhanced Smell)

 嗅覚を強化し、犬に匹敵する追跡能力を持たせます。

・視覚強化(Night Vision)

 視覚を強化し、わずかな光でもはっきりと周囲が見えるようにします。薄暗がり
でも明るい日中と同じ視界が得られるのです。

・望遠視覚(Telescopic Vision)

 望遠鏡のように、視覚イメージを5倍まで拡大して知覚できるようになります。

・神経加速(Accelerated Neurons)

 主な神経系を強化して、神経パルスの伝搬速度を著しく改善します。結果として
身体の反射速度が劇的に向上するのです。

・GEOショックトルーパー(GEO Shock Trooper)

 遺伝子操作による筋肉強化、バイオポリマーによる骨格強化、外皮の人為硬質化
によるダーマルアーマー。治癒力増強、補助心臓、免疫アメーバ、知覚強化、抗毒
抗汚染、無呼吸活動、そして神経加速。遺伝子工学により全身を作り替えた最強の
生物兵器(バイオウェポン)。そいつにふれることは死を意味するッ!
これがッ、これがッ、GEOの誇る精鋭戦士、ショックトルーパーだッッ!

 というわけで、あまりにも極端なので、プレーヤーキャラクターには許可したく
ない気持ちで一杯になるアームドフェノメノンというか戦闘バイオモッドです。

**

 これでブループラネットのキャラクター作成に関する解説は終わりです。非常に
バラエティに富んだキャラクターを作成できることがお分かりでしょう。


・ダイスロール

 ブループラネットにおける能力値、スキルなどは全て1〜100の数字で表され
ます。判定方法もパーセントダイスで統一されています。

 目標値が、例えば58だとすると、パーセントダイス(10面ダイス2つ)を振っ
て出目が58以下で成功です。成功率は58パーセント。このように「目標値と成
功率%が一致するので、直感的に分かりやすい」というのがパーセントダイス方式
の大きな利点です。

 目標値の決め方ですが、通常は「能力値」や「スキル」がそのまま目標値になり
ます。(能力値が極端に大きいまたは小さいときには、スキルに対する修正が付き
ますが、まあ細かいことはいいでしょう)

 判定内容や状況によっては、目標値に修正が付きます。
 例えば何かを見つけることが出来たかどうかを判定する際に「周囲が暗いので、
目標値−30%」といった具合です。また、アイテムやバイオモッドにより目標値
が修正されることもあります。「赤外線センサを装備しているので、目標値+20
%」というわけです。

**

 ご覧の通り、良く言って「堅実な」、悪く言って「平凡な」、そういうシステム
です。おそらく「ブループラネットは背景世界で勝負するタイプのRPGであり、
ルールシステムはあえて奇をてらわない、誰もが知っている方式にしよう」という
のがデザイナーの意図だと思われます。実際、ベテランRPGプレーヤーなら、す
ぐに「ああ、あのタイプね」でルールを理解することが出来るはずです。

**

 スキルについて説明しましょう。

 ブループラネットのスキルは、スキルグループと個別スキルという2階層に分類
されています。スキルグループというのは、例えば[医療(Medicine)]といった大
きな分類で、ここに<応急手当(First Aid) >、<薬学(Pharmacology)>、<遺伝子工学
(Genetic Engineering) >、<獣医学(Veterinary Medicine) > ・・・といった個別
スキルが含まれるわけです。

 判定に使用されるスキル値は、スキルグループ値と個別スキル値の合計になりま
す。だから、[医療]が40で、個別スキルとしては<応急手当>20しか習得して
ないキャラクターがいたとして、応急手当ての目標値は60%となります。このキ
ャラクターが動物の手当てをするときには、<獣医学>を習得してないので、目標値
は40%です。同様に、薬品を調合する場合の目標値も40%となります。

 スキルグループにより、ある分野のスキルを薄く広くカバーすることが可能にな
ります。ですから、キャラクター作成の際には、プレーヤー間でよく相談して、ど
のスキルグループも少なくとも誰か1人が習得しているように役割分担することを
お勧めします。こうすれば、誰も習得していない個別スキルが必要になった場合で
も、少なくともスキルグループ値による判定に持ち込むことが出来るわけです。

 スキルグループをうまく分担してどんなシナリオにも対応できるようにした上で、
個別スキルによって各キャラクターを特徴づけるとよいでしょう。

 ブループラネットでは、23個のスキルグループ、100個の個別スキルが定義
されています。

**

 次に、能力値の説明。

 ブループラネットで使用される能力値は、次の14種類です。スキルシステムの
RPGとしては多い方ですが、他のRPGでもよく見かける定番的な能力値が大半
を占めているので、迷うことはないと思います。

    「知覚(Awareness) 」
    「魅力(Charisma)」
    「教養(Education) 」
    「経験(Experience)」
    「イニシアチブ(Initiative)」
    「知力(Intellect) 」
    「根性(Will)」
    「敏捷(Agility) 」
    「外観(Appearance)」
    「頑強(Constitution)」
    「器用(Dexterity) 」
    「体力(Endurance) 」
    「速度(Speed) 」
    「筋力(Strength)」

 注意を要するのは「経験」能力値で、何とこの値がそのままキャラクターの年齢
になります。能力値の平均は50ですから、ブループラネットのプレーヤーキャラ
クターの平均年齢は50歳というわけです。(まあ「トラベラー」に慣れていれば
特に違和感はないでしょうが・・・)

 実は、GMにとってこの能力値は非常に便利です。というのも、特定のスキルや
能力値ではカバーしにくいことを判定するとき、「まあ、年の功で判定してみよう」
などと言ってこの能力値で判定させればよいからです。ブループラネットの世界で
は、老人はただ年を食っているというだけで貴重な戦力となります。

**

 「イニシアチブ」と「速度」は主に戦闘で用いられる能力値です。

 戦闘が始まったとき、どれだけ素早く戦闘態勢をとれるかはイニシアチブで判定
します。この能力値が低いと、戦闘が始まっても「敵の攻撃にとっさに反応できず、
何が何だか分からず呆然と立ちすくんでいる」状態で最初の数ラウンドを過ごすは
めになります。もし敵がこのような状態になったら、集中攻撃してあげましょう。

 戦闘態勢に入った後は、「速度」で行動回数が決まります。というのも、ブルー
プラネットにおける1行動ラウンドはわずか0.5 秒(これは私の知っているRPG
の中では最短記録です)、誰もが毎ラウンド行動できるわけではないのです。平均
的なキャラクターは3行動ラウンドに1回しか行動できません。しかし「速度」能
力値が高ければ、2行動ラウンドに1回、さらには1行動ラウンドに1回の行動を
行うことも可能になります。ですから、例えば「速度」能力が高いキャラクターが
赤いザクに搭乗していれば、通常の3倍のスピードで攻撃してくるということにな
ります。

 むろん、行動回数を増やす方法は他にもあります。例えば、ニューラルリンクで
武器と脊髄を接続しておけば、大脳で考えるより早く射撃できます。神経加速バイ
オモッドにより反射神経を強化する手もあるでしょう。


・行動ラウンド

 では、ブループラネットの戦闘システムについて解説してゆきましょう。まず、
今回は行動ラウンド処理について説明します。

 大抵のRPGが、戦闘を処理するために時間を「ラウンド」とか「ターン」とか
呼ばれる短い単位に区切って処理します。ラウンド/ターンの実際の長さとしては、
1秒〜10秒くらいが多く、5秒〜6秒というのが平均のようです。剣と魔法しか
登場しないRPGだと、キャラクターが1回攻撃するのに数秒かかりますから、ま
あ時間単位が5〜6秒というのは妥当なところでしょう。

 当然のことながら、連射や速射が可能な銃器が登場するRPGになると、時間単
位は短くなる傾向にあります。シャドウランは3秒、ガープスは1秒です。そして
ブループラネットの時間単位である「行動ラウンド」は、何と0.5 秒なのです。

**

 1行動ラウンド0.5 秒と言うと、すごく高速で戦闘が進むような気がしますが、
実際には戦闘モッドに入ると全てがスローモーションで動いているようにもどかし
く感じられることでしょう。というのも、キャラクターは毎ラウンド行動できるわ
けではなく、行動を宣言してから、その行動が実行されるまで何ラウンドか待つこ
とになるからです。

 ブループラネットに登場するキャラクターには、「必要ラウンド数」というデー
タが与えられています。必要ラウンド数は、「速度」能力値が高いほど、少なくな
ります。平均的なキャラクターの必要ラウンド数は3です。

 ある行動ラウンドにおいて、例えば「射撃する」と行動宣言したとしても、その
ラウンドでは射撃は行われません。必要ラウンド数だけ待った後のラウンドで実行
されるのです。ですから、必要ラウンド数3のキャラクターなら、第1行動ラウン
ドで「射撃する」と宣言してから、実際に射撃が行われるのは第4行動ラウンドと
いうことになります。その間、キャラクターは「じわじわと」トリガーを引きつつ
ある状態のままで過ごすわけです。ブループラネットにおける戦闘はスローモーシ
ョンのように感じられるというのは、こういうことです。

**

 では、ブループラネットで戦闘がどのように処理されるか、例を示してみます。

 [準備]

   ・GMは、各プレーヤーにメモ用紙と筆記用具、そして色違いのコマを3個
    づつ配ります。GMも、NPCについて同じようにコマを持ちます。また、
    それとは別に特別なコマを「現在ラウンド指定コマ」として用意します。

   ・GMは、大きめの紙を用意してそこに長い直線を引き、途中を細かいマス
    に区切ります。各マスは行動ラウンドを表しています。

   ・行動ラウンド処理が始まると、GMは上記の紙をテーブル上に広げてマス
    がプレーヤー全員から見えるようにします。また現在ラウンド指定コマを
    最も左のマス上に置きます。現在は第1ラウンドであることを示すわけで
    す。下の図では、○印が現在ラウンド指定コマを表しています。

    +-○-+----+----+----+----+----+----+----+----+----+----+----+----+

 [処理]

   ・各行動ラウンドで「行動宣言」が行なわれたら、宣言したプレーヤーは、
    自分のコマの1つを、現在ラウンド指定コマが置いてあるマスに置きます。
    さらに必要ラウンド数を考慮して、「行動実行」が行なわれるであろう行
    動ラウンドに対応するマスにもう1つのコマを置きます。
    (必要ラウンド数が3なら、コマを置いた「現在」から、右に3つ進んだ
    マスのところにもう1つのコマを置くわけです)

   ・さらに、行動宣言したプレーヤーは、行動内容(パンチ、キック、射撃、
    照準、ほふく前進など)をメモ用紙1枚に1つはっきりと書き、自分の手
    元に(全員に見えるように)置いて下さい。(戦闘中は同じ行動、例えば
    射撃、を何度も行なうことが多いので、同じメモ用紙が何度も使えます)

   ・新しい行動ラウンドに入る毎に、GMは現在ラウンド指定コマを一マスづ
    つ右へ移動します。新たに「現在」となったマスにコマが置いてあれば、
    そのコマの持ち主が、メモに明記してある行動を起こします。
    プレーヤーの手元には3つ目のコマが残っているはずですから、どのコマ
    が誰のものかは一目で分かるでしょう。

   ・行動を解決したら、そのプレーヤーは2つのコマを回収します。次の行動
    ラウンド以降、「行動宣言」する度に上の処理を繰り返します。

   ・なおNPCについては、GMが上と同じ処理を担当します。PCを表すコ
    マは線のプレーヤー側に、NPCを表すコマは線のGM側に置くことにす
    れば、「敵」がいつ行動するか視覚的に分かります。
    また、「手榴弾の爆発」「自動車の衝突」など数秒後に起こると予想され
    るイベントがあれば、対応するマスにイベントを表すコマを置いておきま
    す。

 [例]

   ・下の説明図では、PC3名(赤、青、緑)とNPC2名(黒、白)が戦闘
    しています。○印が現在ラウンド指定コマです。

               青    緑                
             赤  緑    赤    青           
    +----+----+----+----+----+----+-○-+----+----+----+----+----+----+
             黒    白  黒  白             

   ・上の例では、今から3行動ラウンド前に赤と黒が「行動宣言」しており、
    彼らの必要ラウンド数は3なので、現在の行動ラウンドで「行動実行」が
    行なわれることが分かります。また緑の必要ラウンド数は2で、やはり現
    在の行動ラウンドで行動が実行されます。そこで、赤黒緑の3者が行動し
    ます。(このとき、順番は「速度」能力値による判定で決めます)

   ・赤が手榴弾を投げました。3秒後に爆発します。爆発を示すコマ×を対応
    するマスに起きます。

               青    緑                
             赤  緑    赤    青           
    +----+----+----+----+----+----+-○-+----+----+----+----+----+-×-+
             黒    白  黒  白             

   ・赤黒緑の行動が終了すると、対応するコマは回収され、次のようになりま
    す。現在のマスにもうコマが置いてないので、この行動ラウンドは終了と
    なります。

               青         青           
    +----+----+----+----+----+----+-○-+----+----+----+----+----+-×-+
                  白    白             

   ・次の行動ラウンドに移ります。白のキャラクターが行動します。

               青         青           
    +----+----+----+----+----+----+----+-○-+----+----+----+----+-×-+
                  白    白             

   ・白のキャラクターの「行動実行」が終わると、赤緑黒の3者は改めて「行
    動宣言」します。また、青が「行動変更」すると言い出しました。従って
    赤緑黒青の4名の「イニシアチブ」によって行動宣言の順番を決めます。

                       青             
                       緑             
                       赤    緑  赤  青   
    +----+----+----+----+----+----+----+-○-+----+----+----+----+-×-+
                       黒       黒      

   ・次の行動ラウンドには誰も行動実行できません。白のキャラクターが「行
    動宣言」するだけです。

                       青             
                       緑             
                       赤    緑  赤  青   
    +----+----+----+----+----+----+----+----+-○-+----+----+----+-×-+
                       黒  白    黒      
                              白      

   ・次の行動ラウンドでは、緑が行動します。

                       青             
                       緑             
                       赤    緑  赤  青   
    +----+----+----+----+----+----+----+----+----+-○-+----+----+-×-+
                       黒  白    黒      
                              白      

**

 とまあ、こんな風に戦闘は進んでゆきます。

 この「行動宣言と行動実行の間にタイムラグがある」という独特のシステムを、
「サスペンスがあって楽しい」と感じるか、それとも「イライラする」と感じるか
は、人によって異なるかも知れません。

 さらに、戦闘開始時には全員がイニシアチブで判定を行います。判定に成功した
キャラクターだけが戦闘行動をとれるのです。判定に失敗したキャラクターは、成
功するまで毎ラウンド、イニシアチブ判定を繰り返すことになります。もちろん、
その間は「急に始まった戦闘にとっさに反応できず、呆然としている」という状態
で過ごすことになります。

**

 なぜ、このようにタイムラグだのイニシアチブといったルールが採用されている
のでしょうか。それは、ブループラネットの戦闘が非常にデッドリーであることと
深い関係があります。

 なにしろ、ブループラネットの戦闘では、ピストルの弾が1発当たれば、だいた
いそれで戦闘不能に陥るのです。このような「当たれば終わり」というバランスで
すから、ガンガン撃ち合いをやらせるわけにはいきません。そんなことをすれば、
「最初のラウンドで全員がダイスを振って、それで戦闘は終わり」ということにな
りかねません。これでは呆気なさ過ぎる、というわけで、場面をスローモーション
にして、サスペンスを盛り上げようというわけです。

 例えば、「部屋に入ったところ、物陰から敵が君に向けて銃を発射・・・しよう
としているが、実際には発射されるのは3ラウンド後だ」というシーンを想像して
みて下さい。銃弾は命中するのかしないのか。結果が分かるまで3ラウンド待たな
ければならないのです。

 スローモーションで時間が流れている間、このプレーヤーはやきもきする以外に
手はありません。たとえ次のラウンドでイニシアチブロールに成功して「伏せる」
などと行動宣言をしても、必要ラウンド数だけ待たないと実行されないのです。

 お分かりの通り、いきなり「部屋に入ったところ、物陰から敵が君に向けて銃を
発射。おお、命中した」というのに比べると、サスペンスがあります。

 全員が行動宣言をするおかげで、プレーヤーには「数ラウンド後に何が起こるの
か」が分かるが、それを阻止することは困難。これがブループラネットの戦闘なの
です。


・戦闘とダメージ

 ブループラネットの戦闘システムを読めば、このゲームが全く戦闘指向でないこ
が明らかになります。というのも、戦闘システムが次のような特徴を持っているか
らです。

 ・デッドリーである。そのバランスは「クラシック・トラベラー」並にシビアと
  言ってよい。なにしろ、通常のキャラクターは、拳銃の一発が命中しただけで
  重傷、場合によっては死亡する。

 ・攻撃に関するルールがあっさりしている。距離や視界や移動速度で修正をつけ
  たスキル値を目標にパーセントダイスを振るだけ。かろうじて照準や連射とい
  ったルールがあるだけで、戦術ポイントもダイスプールも推奨行動も魔法もド
  ラマカードも何もない。

 ・それに比べて、負傷ルールが異常なほど詳しい。「ヒットポイントの減少」と
  いった抽象的な形ではなく、全身を21箇所の部位に分けて具体的な命中部位
  を決定し、痛打表を用いてリアルに負傷の有様を描写し、出血、ショック症状、
  骨折、痛みといった要素を1つ1つ判定していく。


 要するに、敵を撃っても大して面白くないのに、敵に撃たれるのは非常に痛い、
というわけです。これでは積極的に戦闘を仕掛ける理由はありませんね。

**

 ブループラネットの戦闘システムは、「敵を撃つスリル」ではなく「敵に撃たれ
るかも知れないというサスペンス」を再現しようとしているのです。ブループラッ
トのシナリオを作るときには、常にこのことを念頭に置いて下さい。このゲームで
「激しい銃撃戦」をやろうとしてはいけません。特に、多人数の「雑魚敵」を出そ
うなどと考えてはいけません。PC達がたちまち重傷を負うばかりか、負傷処理に
追われてゲームが中断してしまうことになります。

 逆に戦闘システムが最もうまく機能するシチュエーションとしては、刑事物TV
番組にありがちなサスペンスシーンが挙げられるでしょう。例えば「刑事たちが拳
銃を持った犯人を追いかけたところ、犯人は倉庫に逃げ込んだ。出口が全てロック
されていることを確認してから、刑事たちは倉庫内の捜索にとりかかる」といった
シーンです。

 倉庫の中は薄暗く、巨大な貨物クレーンが乱雑に置かれているせいで視界が通り
ません。いつ、どこから撃たれるか分かったものではありません。犯人に居場所を
悟られないように、息を殺して静かに移動します。犯人はどこかの物陰に潜んで、
今まさにこちらに銃の狙いをつけているのでしょう。右か、いや左か。どこから弾
が飛んできてもおかしくないのです・・・。

**

 こういうシーンの再現になると、ブループラネットの戦闘システムが活きてきま
す。まず、拳銃の一発が致命傷になりかねないということがサスペンスを盛り上げ
てくれます。負傷ルールのリアルさ、細かさも、「撃たれたらすごく嫌だ」という
感覚を強める働きをします。

 さらに前回に解説した行動順番のルールを思い出して下さい。

 例えば「右手の方から物音がした」とGMが言い、プレーヤーが「そちらに拳銃
を向けながらゆっくり近づいてゆく」と行動宣言したとします。そこでGMが「左
の貨物の上で犯人がさっと立ち上がって、君の背後から発砲・・・しようとする」
とNPCの行動宣言をします。

 このとき、プレーヤーはTV番組の視聴者の立場に身を置くことになります。と
いうのも、この時点でまだPCは犯人が背後にいることに気づかず、物音がした方
向に慎重に移動中で、プレーヤーはそれを手に汗握りながら見守ることしか出来な
いからです。(行動宣言してから行動が行われるまで「必要ラウンド数」だけの遅
れが生ずるのでしたね)

 残りのPCに、必要ラウンド数が少ない(素早い)キャラクターがいれば、知覚
ロールに挑戦させます。成功すれば犯人に気づきます。続いてイニシアチブロール
を振らせます。成功すれば、行動宣言することが出来ます。例えば「立ち上がった
犯人を撃つ」とか。

 またもやプレーヤーはTV番組の視聴者状態に置かれます。拳銃を構えて慎重に
歩くPC、それを背後から撃とうとする犯人、それより一瞬早く犯人を撃とうとす
る別のPC。さあ、どうなるのか。チャンネルはそのまま、3ラウンド後の解決編
をお楽しみに。

**

 この後、事態がどう展開するにしても、実際の銃撃は数発で終わり、1〜2名の
負傷者が出て戦闘は終了するでしょう。これくらいなら負傷ルールで処理できます。

 繰り返しますが、ブループラネットの戦闘は、「撃たれるかも知れないというサ
スペンス」を再現するためにあるのです。延々とサスペンスシーンを繰り広げた後、
実際の銃撃戦は素早く終わる、というのがコツです。敵は少数(せいぜい2〜3名)
だが、物陰に隠れていて正確な人数が分からない、というのがセオリーです。

**

 では、負傷ルールについて解説しましょう。

 まず、最初に命中部位を決定します。前述したように、全身を21箇所の部位に
分けて、パーセントダイスを振ってどこに命中したのかを決めるわけです。姿勢、
遮蔽物、防具はこの命中部位のルールによって処理します。

 例えば「床に伏せた状態で前方から射撃された場合、命中部位が下半身だったら
弾は外れたことになる」とか、「PCは廊下の曲がり角から右に身を乗りだして射
撃しているので、命中部位が身体の右半分だったら弾は壁に遮られたことにする」
といった具合です。また、防具は身体部位のどこをカバーするかデータに明記され
ていますから、攻撃が命中したときに防具の効果があるか否かは命中部位により決
まります。

 命中部位が決まれば、ダメージロールを振ります。

 ブループラネットの武器データには、ダメージランクが表示されています。
 例えば大型拳銃の場合、"1/15 2/35 3/55 4/75 5/90 6/100" となっていま
す。攻撃が命中したら、パーセントダイスを振って、出目によりダメージを決定す
るのです。これをダメージロールと呼びます。上の例では、ダメージロールの出目
が15以下ならダメージ1、出目が16〜35ならダメージ2ということです。

 ダメージを軽減する効果は、主にこのダメージロールに適用されます。「頑強」
能力値が高いのでダメージロールに−5、命中部位は防具でカバーされていたので
ダメージロールに−15、といった具合です。

 ダメージが決まれば、出血によるショック症状を確認します。もちろんパーセン
トダイス方式で、目標値はダメージ1なら90、ダメージ2なら80となります。
お分かりの通り、ダメージ5なら五分五分の確率でショック症状を起こして死亡す
るわけです。ショック症状を抑えるためには、「応急手当」ロールに成功すること
が必要です。

 ショック症状とは別に、痛みのあまり麻痺したか判定するため「根性」ロールを
振ります。ダメージ1なら−10、ダメージ2なら−20といった具合に不利な修
正が付きます。ロールに失敗すれば、麻痺して動けなくなります。

**

 処理が多くて煩雑だ?
 いや、ここからが本番なんですよ。いよいよ「痛打表」の出番です。

 ブループラネットでは、部位とダメージ毎に痛打表が与えられています。例えば
顎(あご)に命中してダメージ4だと、次のようになります。

    顎へのダメージレベル4
     顔面の下半分の肉がずたずたに裂け、唇がずるりと垂れ下がる。
      ・一時的なエコーロケーション(音響知覚)不可
      ・永続的なエコーロケーション(音響知覚)不可:90%
      ・歯が砕け散る
      ・顎が外れる
      ・顎骨折:80%
      ・顎が砕ける(顎骨折した場合のみ判定):50%
      ・気絶:40%
      ・脳震盪:50%
      ・必要ラウンド数に+2
      ・移動は匍匐前進のみ

襟首(えりくび)のダメージ3だと次のような感じです。

    襟首へのダメージレベル3
     肉がえぐりとられ、傷口から骨が見える。大出血。
      ・脊椎骨折:80%
      ・一時的な全身麻痺(脊椎骨折の場合のみ判定):60%
      ・脊椎破損(脊椎骨折の場合のみ判定):50%
      ・即死(脊椎破損の場合のみ判定):20%
      ・永続的な全身麻痺(脊椎破損の場合のみ判定):60%
      ・気絶:30%
      ・精神的活動に対する修正:−2レベル
      ・肉体的活動に対する修正:−1レベル
      ・必要ラウンド数に+1
      ・疾走(sprint)不可


 えー、こんな感じの痛打表が何ページにも渡って延々と書いてあります。正直言
ってここを訳すのは辛いものがありました。

 「おぞましい音や血しぶきと共に、顔面から顎がもぎ取られている」

 「肉も骨もざっくり裂け、血と肉片が辺りに飛び散っている」

 「腹部が引き裂かれ、血しぶきと共に内臓が外に飛び出している」

なんてのを延々と訳していると「俺は何をやっているのだろう」という気にもなり
ます。さきほどブループラネットの戦闘システムは、サスペンスを盛り上げるため
に「撃たれたらすごく嫌だ」という感覚を強めているというようなことを申し上げ
ましたが、今やその意味がお分かりのことと思います。

 痛打表で上から順番に判定して、負傷処理が終わります。おそらく拳銃で撃たれ
ても即死はしないでしょうが、よほど運がよいか、または防具やバイオモッドで守
られていない限り、戦闘を続けることは無理でしょう。

 それがブループラネットの戦闘システムなのです。


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馬場秀和

第2部「ポセイドン・アドベンチャー」完結

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